つり‐せん【釣(り)銭】例文一覧 13件

  1. ・・・今朝の勘定は四文釣銭が足らなかった。おれはこれから引き返して、釣銭の残りを取って来るわ。」と云った。喜三郎はもどかしそうに、「高が四文のはした銭ではございませんか。御戻りになるがものはございますまい。」と云って、一刻も早く鼻の先の祥光院まで・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・蝶子は、鞄のような財布を首から吊るして、売り上げを入れたり、釣銭を出したりした。 朝の間、蝶子は廓の中へはいって行き軒ごとに西瓜を売ってまわった。「うまい西瓜だっせ」と言う声が吃驚するほど綺麗なのと、笑う顔が愛嬌があり、しかも気性が粋で・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  3.  その男は毎日ヒロポンの十管入を一箱宛買いに来て、顔色が土のようだった。十管入が品切れている時は三管入を三箱買うて行った。 敏子は釣銭を渡しながら、纒めて買えば毎日来る手間もはぶけるのにと思ったが、もともとヒロポンの様な・・・<織田作之助「薬局」青空文庫>
  4. ・・・八銭のパン一つ買って十銭で釣銭を取ったりなどしてしきりになにかに反抗の気を見せつけていた。聞いたものがなかったりすると妙に殺気立った。 ライオンへ入って食事をする。身体を温めて麦酒を飲んだ。混合酒を作っているのを見ている。種々な酒を一つ・・・<梶井基次郎「泥濘」青空文庫>
  5. ・・・ そして母は、十銭渡して二銭銅貨を一ツ釣銭に貰った。なんだか二銭儲けたような気がして嬉しかった。 帰りがけに藤二を促すと、なお、彼は箱の中の新しい独楽をいじくっていた。他から見ても、如何にも、欲しそうだった。しかし無理に買ってくれと・・・<黒島伝治「二銭銅貨」青空文庫>
  6. ・・・ようやく、私はいちまいの紙幣をポケットから抜きとり、それを十円紙幣であるか五円紙幣であるか確かめてから、女給に手渡すのである。釣銭は、少いけれど、と言って見むきもせず全部くれてやった。肩をすぼめ、大股をつかってカフェを出てしまって、学校の寮・・・<太宰治「逆行」青空文庫>
  7. ・・・ しかし一日の善行で百日の悪行を償ってまだその上に釣銭をとるような心持が万一でもあってはかえって困る。一体そういう心配は全然ないものだろうか。一般には云われないまでもそういう了簡の人もまるでないとは云われないようである。 そういう事・・・<寺田寅彦「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  8. ・・・少くともここに押しよせた連中は二十分の停車時間の間に、たった一人ののぼせた売子から箱かインク・スタンドか、或はYのようにモスクワから狙いをつけて来ている巻煙草いれかを、我ものにし、しかも大抵間違いなく釣銭までとろうと決心して、ゆずることなく・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  9. ・・・ 銀映座の割引の切符を小さい窓口で買い、釣銭をうけとりながら、私はまざまざと馴染ふかかったその町の穢い映画館で過したいくつかの夜のことを思い出した。 ある年のある日の午後、本郷座をひとりで観ていて、私はなんだか胸が燃えるような思いに・・・<宮本百合子「映画」青空文庫>
  10. ・・・ 俄車掌は、動揺のためのめるまいと長い両脛でうんと踏張り、自分の尖った鼻を腰かけている相手の帽子の下へ突っこみそうに背をかがめ、間のびのした形で腰にぶら下っている鞄の中から釣銭をさがし出す。よほど緊張していると見え、その車掌は客に切符を・・・<宮本百合子「電車の見えない電車通り」青空文庫>
  11. ・・・ 主人は釣銭を出しながら後の文句を軽くそう答えたのであったが、私はそれをきいていて商売の細かさと合わせ、同じ商売でもこういう特別な商売におのずから滲み出している官僚風な特色をつよく感じた。自分でお書きになってもいいんですというところまで・・・<宮本百合子「日記」青空文庫>
  12. ・・・ ――私馬車へ二ルーブリ払わなけりゃならないんだけれど、きっと釣銭がないって云うだろうから。 引こんで、三ルーブリ札を二枚もったリーダが廊下へ現れた。 ――さ、これ! ――どうして? 六ルーブリじゃないの! ――かまやし・・・<宮本百合子「モスクワの辻馬車」青空文庫>
  13. ・・・市街電車へ乗り換える所へ来て、改札口で乗越賃を払おうとすると、釣銭がないと言って駅夫が向こうへ取りに行く。釣銭などでグズグズしてはいられないのでそのまますぐ駈け出したくなる。しかしあとから駅夫が大声を出して追い駈けて来たりすると気の毒だと思・・・<和辻哲郎「停車場で感じたこと」青空文庫>