てい‐けい【定型】例文一覧 19件

  1. ・・・自分の目にはこの二人のばあさんがもっとも理解しやすい「定型」として現われる。この二人の憎まれ役は、おそらく見ようによってはもっとも善良なる旧時代の残存者である。これに反してもっともわかりにくい存在はこの若く美しい生徒に慕われる女教師である。・・・<寺田寅彦「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  2. ・・・どうもこういうのが近ごろのアメリカ映画の一つの定型であるらしい。たとえば「白衣の騎士」などもやはり同じ定型に属するものと見ることができはしないかと思う。この型の映画は見たあとで物語の筋などは霧のように消えてしまうが、ただ筋とはたいした関係も・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  3. ・・・ これらの邦劇映画を見て気のつくことは、第一に芝居の定型にとらわれ過ぎていることである、書き割りを背にして檜舞台を踏んでフートライトを前にして行なって始めて調和すべき演技を不了簡にもそのままに白日のもと大地の上に持ち出すからである。それ・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  4. ・・・その中に現われる人物が実際にあったとか、なかったとかいう事はほとんど問題にも何もならないことであって、それらの仮想人物によって代表された人間の定型と、叙述された事件の定型はたしかに存在したのである。これはあらゆる「史実」よりもはるかに確実で・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  5. ・・・ この二つの実例から見ても新聞記事にはちゃんとした定型が確立されていて、いかなる場合にでもそれを破ることが禁ぜられているらしく思われるのである。自分らのようなつむじ曲がりの読者にとっては、むしろ来るはずの大臣がその日来なかったという偶然・・・<寺田寅彦「ジャーナリズム雑感」青空文庫>
  6. ・・・ この甲乙丙三種の定型はそれぞれに長所と短所をもっている。甲はうっかりにせ物に引っかかるような心配はほとんどない代わりに、どうかするとほんとうに価値のある新しいいいものを見のがす恐れがある。既知の真実を固守するにのみ忠実で未知の真実の可・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  7. ・・・今のところでは既にいくらかの定型が出来ているようでありますが、しかしもっとちがった型式がまだまだいろいろあってもよいような気がするのであります。 一人の作者の一聯の連作と並んで別の題でまた同じ人の数首の歌の出ているのは、私のような眼で読・・・<寺田寅彦「書簡(2[#「2」はローマ数字2、1-13-22])」青空文庫>
  8. ・・・我等の同胞の顔貌の中にはまたあらゆる人種の定型がそれぞれに標本的に洩れなく代表されているようである。 日本人が真に日本の土の中から生れ、日本の言語が全く独立に発生したと考えるのは、孑ぼうふらが水から発生すると考えるよりも一層非科学的であ・・・<寺田寅彦「短歌の詩形」青空文庫>
  9. ・・・朝起きて顔を洗う金盥の置き方から、夜寝る時の寝衣の袖の通し方まで、無意識な定型を繰返している吾人の眼は、如何に或る意味で憐れな融通のきかきぬものであるかという事を知るための、一つの面白い、しかも極めて簡単な実験は、頭を倒にして股間から見馴れ・・・<寺田寅彦「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」青空文庫>
  10. ・・・ 映画の場合においてもカメラを向け動かすものは人間であるから、そこに選択の自由があり従って人為的な公式定型の参加する余地は充分にある。しかしレンズとフィルムは物質であってなんらの既成概念もなければ抽象能力もない、一見ばか正直のようであっ・・・<寺田寅彦「ニュース映画と新聞記事」青空文庫>
  11. ・・・それよりも大切なのは十七字の定型的詩形から来る音数律的な律動感である。 短い詩ほど詩形の規約の厳重さを要求する。そうでなければ、詩だか画題だか格言だかわからなくなる。のみならず、近来わが国諸学者の研究もあるように、七五の音数律はわが国語・・・<寺田寅彦「俳諧の本質的概論」青空文庫>
  12. ・・・ そういう、現在のわれわれには夢のような不思議な詩形ができる日が到着したとして、そのときに現在の十七字定型の運命はどうなるであろうか。自分の見るところでは、たぶんその日になっても十七字俳句はやはり存続するであろうと思われる。生物の進化で・・・<寺田寅彦「俳句の型式とその進化」青空文庫>
  13.      一 俳句の成立と必然性 五七五の定型と、季題および切れ字の插入という制約によって規定された従来普通の意味での俳句あるいは発句のいわゆる歴史的の起原沿革については、たぶんそういう方面に詳しい専門家が別項で述べ・・・<寺田寅彦「俳句の精神」青空文庫>
  14. ・・・ これはしかし記者自身が人間の心理を理解しないのではない、ただいわゆる社会記事の「定型」というものが、各種の便宜的必要からおのずからきまってしまって、それによらないわけには行かないためだという説明を、そのほうの事情に通じた人から聞いた事・・・<寺田寅彦「一つの思考実験」青空文庫>
  15. ・・・少くとも自然を描こうとする感情の中から余計な支那的誇張、風流の定型、哲学的衒学を洗いすてようとしたことからだけでも、写生文の運動は相当評価されるべきであると思われるのである。 現代の文学において、自然というものは、きわめて特徴的な歴史的・・・<宮本百合子「自然描写における社会性について」青空文庫>
  16. ・・・        怪物 ステファン・ツワイクはフーシェを、一人のロマン的人物として定型した。――次から次へと裏切らずにはいられない悲喜劇的性格として。ツワイクによってこういう風に主観化されうすめられたフーシェとバルザックが描い・・・<宮本百合子「バルザックについてのノート」青空文庫>
  17. ・・・一つは、左翼的な或る作家の経験であるが、そのA氏は日本の企業界で歴史的に有名な或る会社の現実を、芸術に描こうと発意し、日本の実業家列伝中でも巨星であるその会社の創始者のやりかたなどを定型的資本家の観念で考えていた。創作の準備がすすむにつれ実・・・<宮本百合子「文学の大衆化論について」青空文庫>
  18. ・・・ふだん其等の人々の書いていらっしゃる言葉づかいと、何かちがって受け身な言葉づかいで、妙に襷をかけて膝をついたり、旗をヒラヒラやって涙ぐむのが、慰めの定型のようでもある。岡本かの子さんは、近頃一貫してああいう感情表現をしていられるが、村や店先・・・<宮本百合子「身ぶりならぬ慰めを」青空文庫>
  19. ・・・ これらのさまざまの声々の底には、女というものはしかじか、女の幸福はしかじか、という定型へのものわかりよさ、困難をさけようとするときのおのずからなるものわかりよさが、作用しているのである。 愛すべき若い人生のどの位の部分が、この悲し・・・<宮本百合子「ものわかりよさ」青空文庫>