てい‐しゅつ【呈出】例文一覧 22件

  1. ・・・という随筆を、口述筆記させてもらって、編輯長のところへ少し得意で呈出したら、編輯長はそれを読むなりけッと笑って、「なんだいこれは。号令口調というんだね。孔子曰く、はひどいね。」と、さんざ悪口言いました。ちゃんと長兄の侘びしさを解していな・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  2. ・・・強な大学生ではあったが、けれどもこの瀬川先生の飾らぬ御人格にはひそかに深く敬服していたところがあったので、この先生の講義にだけは努めて出席するようにしていたし、研究室にも二、三度顔を出して突飛な愚問を呈出して、先生をめんくらわせた事もあって・・・<太宰治「佳日」青空文庫>
  3. ・・・という具合にあくまでもねばり、僕の財布の中にあるお金を全部、その主人に呈出した。「よろしい!」とその頭の禿げた主人は、とうとう義侠心を発揮してくれた。「そんなわけならば、私の晩酌用のウィスキイを、わけてあげます。お金は、こんなにたくさん・・・<太宰治「未帰還の友に」青空文庫>
  4. ・・・されば其の際僕の身は猶海外に在ったから拙著の著作権を博文館に与えたという証書に記名捺印すべき筈もなく、又同書出版の際内務省に呈出すべき出版届書に署名した事もないわけである。官庁及出版商に対する其等の手続は思うに当時博文館内に在った木曜会会員・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  5. ・・・ 作家が評家に呈出する答案はかくのごとく多種多面である。評家は中学の教師のごとく部門をわけて採点するかまたは一人で物理、数学、地理、歴史の智識を兼ねなければならぬ。今の評家は後者である。いやしくも評家であって、専門の分岐せぬ今の世に立つ・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  6. ・・・文芸家は世間からこの問題を呈出されるからして、いろいろの方便によって各自が解釈した答案を呈出者に与えてやるに過ぎんのであります。答案が有力であるためには明暸でなければならん、せっかくの名答も不明暸であるならば、相互の意志が疏通せぬような不都・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  7. ・・・単なる形式論理の立場からは、如何なる問題にても呈出することができる。しかしそれは学問的問題となるのではない。問題は、我々の自己が真実在の自己表現の過程となる所から起るのである。答は問所にありとも考えられる。 我々の知識は単なる物の世界か・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  8. ・・・だから、いきなり新宿のカフェーであばずれかかった女給としておふみが現れたとき、観客は少し唐突に感じるし、どこかそのような呈出に平俗さを感じる。このことは、例えば、待合で食い逃げをした客にのこされたとき、おふみが「よかったねえ!」と艶歌師の芳・・・<宮本百合子「「愛怨峡」における映画的表現の問題」青空文庫>
  9. ・・・などを凌駕する、どのような作品が農民作家によって呈出されたであろうか? ファジェーエフは「ラップ」の作家だ。イワノフは同伴者作家として、まだ新鮮な力のあった時分「装甲列車」を書いた。赤軍も、農民とは切りはなせない。なぜなら、赤軍は労働者・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  10. ・・・等が晦渋に呈出されつつある一方で、万歳と漫談、とりとめなくエロティックな流行歌とが異常な流行を見た時であった。文学における「嗚呼いやなことだ」と一味通じて更にそれを、封建時代の日本ユーモア文学の特徴である我から我頭を叩いて人々の笑いものとす・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  11. ・・・彼は、左様な質問を呈出したなら、きっと、其那事を質問する馬鹿があるか、何の為に修身を習って来た! と真赤になりますでしょう。 然し、C先生、此は決して冗談ではございません。日本の所謂先覚婦人は、兎角、青年自らの発言に耳を傾けるより先ず先・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  12. ・・・ 作者は、この人生に日本の過去の教養的常識が呈出して来たあくの抜けたもの、静的な美のかわりに、「動物的なもの」「骨格をつくる」ところの「アクのつよいもの」の価値を主張している。亮子という溌剌として生来の生活力を豊富に蔵した若い女を通じて・・・<宮本百合子「十月の文芸時評」青空文庫>
  13. ・・・彼女の経験の増大と、社会的事情の進みとは、彼女が呈出しているこの重大な人間的課題を、今日どう解いているであろう。彼女は女及び人間、そして革命的ジャーナリストとしての自身の生活で、どのように答えているであろうか。恐らく、スメドレーは「女一人大・・・<宮本百合子「中国に於ける二人のアメリカ婦人」青空文庫>
  14. ・・・この社会の正義というものについて大きい疑問を呈出したのがユーゴーの「レ・ミゼラブル」であり、その主人公ジャン・バルジャンの飢えである。 六月四日の新聞は世界の人の目に何ともいえない皮肉さで腹の底までしみとおるような写真をのせた。六月三日・・・<宮本百合子「動物愛護デー」青空文庫>
  15. ・・・ころが、その俳優の役は、生活態度のふっきれない、決断のしにくい、社会現象のうちにある歴史的な意味や価値をすぐつかめない崩れた感覚の若者であってその人物の性格が、俳優の現実的人間性と絡んで、大きい困難を呈出した。その若い俳優は、自分の精神と肉・・・<宮本百合子「俳優生活について」青空文庫>
  16. ・・・ この小説は、夫婦ともどもに一定の仕事をもって行く結婚生活、家庭生活について、又、それぞれ独立した社会的存在である夫妻が、仕事の上で互に影響し合う微妙な心理について、夥しい問題を呈出している。これらの問題の中には読者にとって明かに普遍性・・・<宮本百合子「はるかな道」青空文庫>
  17. ・・・そして誰の目にも明らかなように、反動的な動機から呈出されている両氏のいい分のかげに隠されているものに対して、注意をひかれたのであった。何故なら、もし一般の人々の感情が、ひと頃のように、プロレタリア作家の間でさえいわゆる転向しない者は間抜けの・・・<宮本百合子「冬を越す蕾」青空文庫>
  18. ・・・ ゴーリキイは率直にその疑問を呈出した。「何にするんだい?」「辻堂さ、似てるだろう?」そして「雀から聖骸がとれるかもしれないよ。罪科もないのに苦しみを受けた致命者なんだから……」 ゴーリキイは、いかにも彼の性質らしい現実的な問い・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  19. ・・・けれども、舟橋氏が告知板にかかれた文章そのものが、短い表現であるがそのものとして、私たちに一つの課題を呈出していると思う。その点をここで触れて見たい。 舟橋氏は子供を愛することと、ヒューマニズムとは牴触しない、ヒューマニズムのはじまりは・・・<宮本百合子「夜叉のなげき」青空文庫>
  20. ・・・うたう雲雀、可愛いい人形から、急に一人の女に転生しようとしたノラの前途に、ふせられていたこの課題は、きょうの日本の勤労女性全般の前に、ノラの時代より、遙かに具体的に矛盾の諸相を呈出している。 結婚の問題にあたって、私たちを深刻に考えこま・・・<宮本百合子「離婚について」青空文庫>
  21. ・・・ ――我々が一室に二十人いるとき、或るものはたった二人でそこを占領してるという事実は、空間の問題を呈出するよ。 彼等は笑いながら、ぞろぞろ二階の教室へのぼってった。教授はまだ出て来ない。喋ってると、 ――一寸、しずかにして下さい・・・<宮本百合子「ワーニカとターニャ」青空文庫>
  22. ・・・には、この作家の弱点というべきものが典型を示していて、人間の生命の浪費が、当然向けられるはずの疑問もなく美化して呈出されているのである。 現代は歴史も、文学の現実に対するみかたもともに進展して来ているのだから、時代や永遠なものに対する個・・・<宮本百合子「若き精神の成長を描く文学」青空文庫>