て‐がる【手軽】例文一覧 20件

  1. ・・・況や殺戮を喜ぶなどは、――尤も相手を絞め殺すことは議論に勝つよりも手軽である。 我我は互に憐まなければならぬ。ショオペンハウエルの厭世観の我我に与えた教訓もこう云うことではなかったであろうか? 夜はもう十二時を過ぎたらしい。星も相不・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・――それは彼には昔のように手軽には解けない問題だった。彼は机に向ったまま、いつかこの謎を口にしていた。「林檎とは一体何であるか?」 すると、か細い黒犬が一匹、どこからか書斎へはいって来た。のみならずその犬は身震いをすると、忽ち一人の・・・<芥川竜之介「三つのなぜ」青空文庫>
  3. ・・・ 最近も、私を、作者を訪ねて見えた、学校を出たばかりの若い人が、一月ばかり、つい御不沙汰、と手軽い処が、南洋の島々を渡って来た。……ピイ、チョコ、キイ、キコと鳴く、青い鳥だの、黄色な鳥だの、可愛らしい話もあったが、聞く内にハッと思ったの・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  4. ・・・それもあいつが浮気もので、ちょいと色に迷ったばかり、おいやならよしなさい、よそを聞いてみますという、お手軽なところだと、おれも承知をしたかもしれんが、どうしておれが探ってみると、義延という男はそんな男と男が違う。なんでも思い込んだらどうして・・・<泉鏡花「夜行巡査」青空文庫>
  5. ・・・た様だった、お町はにこにこしながら、伯父さん腹がすいたでしょうが、少し待って下さい、一寸思いついた御馳走をするからって、何か手早に竈に火を入れる、おれの近くへ石臼を持出し話しながら、白粉を挽き始める、手軽気軽で、億劫な風など毛程も見せない、・・・<伊藤左千夫「姪子」青空文庫>
  6. ・・・私には手軽に、歴史小説も書けません。作品の行きづまりは、私のようなその日ぐらしの不流行の作家にとって、すなわち生活の行きづまりでもあります。私に、何が出来るでしょう。私は戦地へ行きたい。嘘の無い感動を捜しに。私は真剣であります。もっと若くて・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  7. ・・・御不浄拝借よりも更に、手軽な依頼ではないか。私は人から煙草の火の借用を申し込まれる度毎に、いつもまごつく。殊にその人が帽子をとり、ていねいな口調でたのんだ時には、私の顔は赤くなる。はあ、どうぞ、と出来るだけ気軽に言って、そうして、私がベンチ・・・<太宰治「作家の手帖」青空文庫>
  8. ・・・このような神経の異常を治療するのにいちばん手軽な方法は、講演会場から車を飛ばしてどこかの常設映画館に入場することである。上映中の映画がどんな愚作であってもそれは問題でない、のみならずあるいはむしろ愚作であればあるほどその治療的効果が大きいよ・・・<寺田寅彦「映画と生理」青空文庫>
  9. ・・・そうして簡易な解析と手軽な実験によって問題の大きい輪郭を明快に決定するという行き方であったように見える。解析の方法でも、数学者流に先ず最も一般の場合を取扱った後に a=0 b=0 c=0……と置く流儀ではなかったようである。実験の方でも高価・・・<寺田寅彦「工学博士末広恭二君」青空文庫>
  10. ・・・い、また義務を尽した後は大変心持が好いのであるが、深くその裏面に立ち入って内省して見ると、願くはこの義務の束縛を免かれて早く自由になりたい、人から強いられてやむをえずする仕事はできるだけ分量を圧搾して手軽に済ましたいという根性が常に胸の中に・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  11. ・・・のみならずその当時は交通が非常に不便でありまして、東京から大阪へちょっと手紙一本で呼出されて来て講演をすると云うようなことすら、できないとは限りませんが、なかなか億劫でこう手軽には行きません。来るにしても駕籠に揺られて五十三次を順々に越すの・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  12. ・・・ けだしそのこれを軽蔑するとは、学理を妄談なりとして侮るに非ず、ただこれを手軽にみなして、いかなる俗世界の些末事に関しても、学理の入るべからざるところはあるべからずとの旨を主張し、内にありては人生の一身一家の世帯より、外に出ては人間の交・・・<福沢諭吉「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」青空文庫>
  13. ・・・ずいぶん手軽に滞留すべき宿もあるべし。一、社中に入らんとする者は、芝新銭座、慶応義塾へ来り、当番の塾長に謀るべし。一、義塾読書の順序は大略左の如し。社中に入り、先ず西洋のいろはを覚え、理学初歩か、または文法書を読む。この間、・・・<福沢諭吉「慶応義塾新議」青空文庫>
  14. ・・・これとてもさきの紳士連中は無礼と知りて行うたるにあらず、その平生において、男女品行上のことをば至って手軽に心得、ただ芸妓の容姿を悦び、美なること花の如しなどとて、徳義上の死物たる醜行不倫の女子も、潔清上品なる良家の令嬢も大同小異の観をなして・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  15. ・・・ 日本ではまさか女ばかりでそんなことも出来ますまいが、罐詰にバタその他必要な程度のものの入った小さなバスケット一つに、折畳みの簡単なベッドに毛布これだけで自分が望む土地への避暑ができるのですから頗る手軽で愉快な方法です。海辺はどうも日本も・・・<宮本百合子「女学生だけの天幕生活」青空文庫>
  16. ・・・その困難な仕事に比べると、各作家の内部の現実にとってもずっと手軽で耐え易く、即効的である題材での打開策、というより、やや彌縫の策がとられたことは、その後の二三年間に他の事情とも絡んで文学を非文学的なものにする多くの危険の遠因となったとともに・・・<宮本百合子「人生の共感」青空文庫>
  17. ・・・ 日本が地理的に大陸からはなれていて、人民の経済能力が低いことは、ヨーロッパの学生や勤人が休暇旅行に隣りの国の親戚や友人を訪問しあう手軽さを許さない。旅費の関係からだけでも、これまでの日本で外国生活を経験している人の種類は多く中流以上の・・・<宮本百合子「それらの国々でも」青空文庫>
  18. ・・・ 広い領地を持ってござる方々のけんかはそう手軽には参らぬでの。 つかみ合いがしたくなれば兵士を互に出してつかみ合わせ短気なものがあやにく斯うした時にはふえるものですぐに剣の柄に手をかければこなたもだまって居られず、恐ろしい様子をいた・・・<宮本百合子「胚胎(二幕四場)」青空文庫>
  19. ・・・又、現代社会の経営的機構は一個のXなる青年の生涯を冷酷な一部分品、しかも消耗したら手軽にいくらでもとりかえることの出来る部分品としてだけ扱っているので、謂わばこの世に自分という人間の生きているという固有名詞をせめて印刷物の上にでも主張したい・・・<宮本百合子「文学の大衆化論について」青空文庫>
  20. ・・・――しかしこれは片づける事自身に対する反感ではなくて、人生の矛盾や撞着をあまりに手軽に考える事に対する反感である。先生は望ましくない種々の事実のどうにもできない根強さを見た。そうしてそのために苦しみもがいた後、厭世的な「あきらめ」に達した。・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>