てき‐おう【適応】例文一覧 30件

  1. ・・・むしろそれが時勢に適応することだと思っているらしい。 少し作家的反省と自負とがあるならば、これは、単に、資本家の意図にしかすぎないことを知るのである。真の大衆は、最も彼等の生活に親しみのある。いろ/\な真実の言葉を聞こうと欲するにちがい・・・<小川未明「作家としての問題」青空文庫>
  2. ・・・人間もやはり自然界の一存在で、その住んでいる土地に出来るその季節の物を摂取するのが一番適当な栄養摂取方法で、気候に適応する上からもそれが必要で、台湾にいれば台湾米を食い、バナナを食うのが最も自然で栄養上からもそれがよいとのことである。野菜や・・・<黒島伝治「外米と農民」青空文庫>
  3. ・・・その際における口のまわりの運動の仕事の大部分が何に使われるかと思ってみると、それは各種の母音に適応するように口腔の形と大きさを変化させるために使われているのである。そしてこういう声を出さずに口だけ動かす読み方では子音を発するに必要な細かい調・・・<寺田寅彦「歌の口調」青空文庫>
  4. ・・・人間でさえも、ほんの少しばかりいつもより鍔の広い麦藁帽をかぶるともう見当がちがって、いろいろなものにぶっつかるくらいであるから、いかに神経の鋭敏な三毛でも日々に進行するからだの変化に適応して運動を調節する事はできなかったにちがいない。それは・・・<寺田寅彦「子猫」青空文庫>
  5. ・・・るとこれは何も神様が人間の役に立つためにこんないろいろの薬草をこしらえてくれたのではなくて、これらの天然の植物にはぐくまれ、ちょうどそういうものの成分になっているアルカロイドなどが薬になるようなふうに適応して来た動物からだんだんに進化して来・・・<寺田寅彦「災難雑考」青空文庫>
  6. ・・・ところが、何かしらある些細な題目についてやや確実詳細な具体的知識を得たいと思って参考書を捜すとなってみると、さて、なかなか容易に自分の要求に適応する本は見つからないものである。 たとえば、ばらの葉につくチューレンジ蜂の幼虫を駆除するに最・・・<寺田寅彦「錯覚数題」青空文庫>
  7. ・・・ 思うに、従来はいていた靴のかかとがだいぶ減って低くなっていたので、それに長い間慣らされた足の運びが、今度の新しい靴の少しばかり高いかかとに適応するまでに少しばかり骨が折れたものと見える。 そのうちに、古いほうの靴のゴム底ができて来・・・<寺田寅彦「試験管」青空文庫>
  8. ・・・ジャーナリストの側から言わせると、これも読者の側からの強い要求によって代表された時代の要求に適応するためかもしれないのである。 昔はまたよく甲社でたとえば「象の行列」を催して、その記事で全紙の大部分を埋め、そのほとんど無意味な出来事が天・・・<寺田寅彦「ジャーナリズム雑感」青空文庫>
  9. ・・・今のついさきに思った事とあまりによく適応したからである。 それにしても、その程度の地震で、そればかりで、あの種類の構造物が崩壊するのは少しおかしいと思ったが、新聞の記事をよく読んでみると、かなり以前から多少亀裂でもはいって弱点のあったの・・・<寺田寅彦「断水の日」青空文庫>
  10. ・・・他の文句は忘れてしまったが、その当時の自分の心境にこの文句だけが適応したと見えて今でもはっきり記憶に残っている。今から考えてみると日下部博士のようなオリジナルな頭脳をもった人には、多く読み少なく考えるという事はたといしようと思ってもできない・・・<寺田寅彦「読書の今昔」青空文庫>
  11. ・・・たとえば相対性原理とはどんな事か、マルキシズムとは何か、バロック芸術とは何、ベースボールとは何、ジャズとは何、そういうことが望みのままに早分りがすれば甚だ便利であり、また時代に適応する所以であるかもしれない。 現代に隆盛を極めている各方・・・<寺田寅彦「夏」青空文庫>
  12. ・・・人類もあらゆる植物や動物と同様に長い長い歳月の間に自然のふところにはぐくまれてその環境に適応するように育て上げられて来たものであって、あらゆる環境の特異性はその中に育って来たものにたとえわずかでもなんらか固有の印銘を残しているであろうと思わ・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  13. ・・・そうして、そういう接触に人間が馴れ得るためにはそういう接触の時間的変化があまりに急激過ぎるか、ないしは人間の頭の適応性があまりに遅鈍であり過ぎるか、とにかくそのために接触界面の現象として色々な異常現象が頻出するかと思われるふしも少なくないよ・・・<寺田寅彦「猫の穴掘り」青空文庫>
  14. ・・・それがだんだんに三十一文字の短歌形式に固定して来たのは、やはり一種の自然淘汰の結果であって、それが当時の環境に最もよく適応するものであったためであろう。それには、この詩形が国語を構成する要素としての語句の律動の、最小公倍数とか、最大公約数と・・・<寺田寅彦「俳句の型式とその進化」青空文庫>
  15. ・・・ しかしまたこれらの語彙の意義内容は一方では進化し発展しつつ時代に適応するだけの弾性をもっている。「春雨」はビルディング街に煙り「秋風」は飛行機の翼を払うだけの包容性を失わないのである。 こう考えて来ると、和歌と俳句は純粋な短詩の精・・・<寺田寅彦「俳句の精神」青空文庫>
  16. ・・・このことがまた実に延焼区域を増大せしめるためにまるであつらえたかのように適応しているのである。もしも最初の南々西の風が発火後その方向を持続しながら風速を増大したのであったらおそらく火流は停車場付近を右翼の限界として海へ抜けてしまったであろう・・・<寺田寅彦「函館の大火について」青空文庫>
  17. ・・・彼がこの文章の形式を選んだのは、一つには彼の肉体が病弱で、体系を有する大論文を書くに適しなかつた為もあらうが、実にはこの形式の表現が、彼のユニイクな直覚的の詩想や哲学と適応して居り、それが唯一最善の方法であつたからである。アフォリズムとは、・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  18. ・・・したがって、映画女優のあたまのよさは一方に瑞々しい適応性や柔軟性をもっていなければならず、シルビア・シドニイというような女優は学問をやったという意味での頭脳はあるかもしれないが、例えば、カザリン・ヘッバーンの持っている感性としての溌剌とした・・・<宮本百合子「映画女優の知性」青空文庫>
  19. ・・・今の時代では、妻は自分の生活をすべて夫の生活に適応させなくては生活することはできないということ。または、たとい妻の意見が夫の意見と違っていても、世間の人は、夫の意見は妻の意見だという風に看做してしまうし、それから夫が間違ったことをして、妻が・・・<宮本百合子「夫即ち妻ではない」青空文庫>
  20. ・・・読者が、新聞小説に求めている面白さの本質の問題から云わば制約の第一歩がはじまっていることも、時代風俗的なディテールへの作者の適応性が要求されていることも変りはないであろう。 しかし、今日の文学のありよう、作家のありようとの関係では、新聞・・・<宮本百合子「おのずから低きに」青空文庫>
  21. ・・・に描かれている女主人公の生きかたは、女の動物的な悲しく滑稽な男性への適応を描き出したものである。 芸術鑑賞に即して主観的と云われる場合は、それが好きだから好き、というのが原型である。客観的と云うとき、自分の好ききらいを、自分の心から黙殺・・・<宮本百合子「女の歴史」青空文庫>
  22. ・・・ 移り変りに重点をおく、という現象への人間の適応を辿る生態描写には、生存の跡はうつせても生活は彫り出しきれない。一つの移りから次の移りそのものの肯定はあって、動きの現実がもっている評価は作家の内部的なものとの連関において考えられていない・・・<宮本百合子「今日の文学の諸相」青空文庫>
  23. ・・・其故わかり易い文章によって、そういう事物の表現を必要とする読書層の実質を、文化的に高めて行こうとするよりも、先ずその層の程度に適応して行って、そこで一定の或るまとまりに入れられたものの云い方考えかたを導こうとする態度が示された。その態度は、・・・<宮本百合子「今日の文章」青空文庫>
  24. ・・・『文学界』のロマンティシズムがその踵をしっかりとつかまえられていた封建の力を、殆どそれなり背面にひっぱったまま大正末から昭和の十年間という時期をも経て、今日の、或る点から云えば極めて高度な近代の秩序に適応していてしかも本質の土台は遠く遠く数・・・<宮本百合子「職業のふしぎ」青空文庫>
  25. ・・・ 何も、壮麗でなく、材料が素晴らしいのではなくてよいから、各自の性格と、仕事の種類とに適応した勉強部屋が欲しい。一日の中、大部分は、其部屋の中に生活するのですから、客間、食堂、寝室などと云うものは、皆、勉強部屋での、深い緊張を緩める処、・・・<宮本百合子「書斎を中心にした家」青空文庫>
  26. ・・・そして Mem タニが女性の適応性によって、キャパンの流行巴里料理を通じ熱心に one of them たろうとする時 Mr. タニは更に一層の熱をもってロンドン日本料理店献立表を報告した。 ヨーロッパ人の云うところの soyuや食える・・・<宮本百合子「一九二九年一月――二月」青空文庫>
  27. ・・・低さとを歴史の光に照らして客観的に比較評価する力を失って、現象的に目前多数者の持つレベルはここであるから、と世界的低賃銀で生きていなければならない日本の民衆の、それに応じて高くあろう筈のない文化水準に適応してしまって、そこに引止める役割をも・・・<宮本百合子「全体主義への吟味」青空文庫>
  28. ・・・単純な適応を積極性と呼ばないとすれば、自身の芸術境に忠実であろうとする作家、例えば川端康成というような作家の本年度の芸術が、ゆたかな社会性に充たされていただろうか。武田麟太郎の作品が社会性において一歩をすすめ得ていたであろうか。 婦人作・・・<宮本百合子「地の塩文学の塩」青空文庫>
  29. ・・・こういうような性質を持つ菊池文学が愛されたのは当然のこと、従って菊池の常識性の反面は戦争になればそれに適応した戦争を鼓吹し、戦争宣伝もどしどしやって疑問を持たなかった。戦争が一般人民にどんな犠牲を与え、しかも戦争物で自分がもうけてますます競・・・<宮本百合子「“慰みの文学”」青空文庫>
  30. ・・・ 大宅氏は、『文芸』の論文で腹立たしげな口ぶりをもって、「日本の文化全体を支配している安価な適応性の一つ」として転向の風に颯爽と反抗するプロレタリア作家の見えないことを痛憤している。階級的立場のはっきりした人物は、今日、加藤勘十が見得を・・・<宮本百合子「冬を越す蕾」青空文庫>