てき‐ごう〔‐ガフ〕【適合】例文一覧 30件

  1. ・・・戦争をしている国民が、より多く自国の国力に適合する平和の為という目的を没却して、戦争その物に熱中する態度も、その一つである。そういう心持は、自分自身のその現在に全く没頭しているのであるから、世の中にこれ位性急な(同時に、石鹸玉心持はない。…・・・<石川啄木「性急な思想」青空文庫>
  2. ・・・その要求に適合しうべき声がどこかから聞こえてくるとすれば、その声はひとりでに人形に乗り移ってしまう。ところが、これが人間の役者の場合だとそうは行かない。われわれは人間が声を発しうることを知っている。のみならず、その声がどこから、どういうふう・・・<寺田寅彦「生ける人形」青空文庫>
  3. ・・・これが単にちょっと一風変わった構図であるというだけならそれまでであるが、この構図があの場合におけるあの頭巾とあのシャツを着たあの三人のシチュエーションなりムードなりまたテンペラメントなりに実によく適合している。こういう技巧はロシア映画ではあ・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  4. ・・・しかし、例えば蚯蚓の研究所で鯨の研究をやりたいといったような場合には、ともかくも一応上長官の諒解を得るために、その研究の結果がその研究の目的に直接適合する所以を説明して許可を得るのが穏当である。上長官がよほどの人でない限りあまり勝手な事は許・・・<寺田寅彦「学問の自由」青空文庫>
  5. ・・・の訳は明らかにちがっているようではあるが、他の三句に対してはこの訳の方がぴったりよく適合するから妙である。それは別として、ここのドイツ訳は数学者や物理学者にとってなかなか面白く読まれるであろう。同様な意味で面白いのは「大曰逝。逝曰遠。遠曰反・・・<寺田寅彦「変った話」青空文庫>
  6. ・・・多くのすぐれた器械の結果が互いに一致し、そうしてその結果が全系統に適合する時に、その結果を「事実」と名づけることがいけなければ、科学はその足場を失うであろう。 もう一つの困難は、感官の「読み取り」が生理的心理的効果と結びついて、いろいろ・・・<寺田寅彦「感覚と科学」青空文庫>
  7. ・・・ コーヒーに限らず、デパートの商品でも、あのようにたくさんにあるものの中で自分の趣好に適合するものの少ないのに困ることがしばしばある。コーヒー茶わんとか灰皿とかのこわれた代わりを買いに行っても、近ごろのものには、大概たまらなくいやだと思・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  8. ・・・ 来客用の団扇を買おうと思って、あちこち物色してみて気のついたことは、われらの昔ふうの団扇の概念に適合するようなものがほとんど影をかくしたことである。丸竹の柄の節の上のほうを細かく裂いて、それを両側から平面に押し広げてその上に紙をはり、・・・<寺田寅彦「錯覚数題」青空文庫>
  9. ・・・         三 文楽の義太夫を聞きながら気のついたことは、あの太夫の声の音色が義太夫の太棹の三味線の音色とぴったり適合していることである、ピアノ伴奏では困るのである。 小唄勝太郎の小唄に洋楽の管絃伴奏のついた放送を・・・<寺田寅彦「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  10. ・・・ その翌日の正午ごろ自分たちの家の前を通っている電線に止まったとんぼを注意して見ると、やはりだいたい統計的には一定方向をむいているが、しかし、太陽に尻を向けるという仮説には全然適合しない方向を示していた。ちょうど正午であるから、たとえど・・・<寺田寅彦「三斜晶系」青空文庫>
  11. ・・・         二 新しい学説が学界から喜んで迎えられるならば、それはその説がその当代の学界の痛切な要求にうまく適合するからであることは明らかである。もう十年も前から世界中の学者が口をもぐもぐさせて云おうとしていたが、適当・・・<寺田寅彦「スパーク」青空文庫>
  12. ・・・子供に固有な鋭い直観の力を利用しないで頭の悪い大人に適合するような教案ばかりを練り過ぎるのではないかと思われる節もある。これについては教育者の深い反省を促したいと思っている次第である。 ついでながら、昨年の室戸颱風が上陸する前に室戸・・・<寺田寅彦「颱風雑俎」青空文庫>
  13. ・・・しかしともかくも出発点における覚悟と努力の向け方においては自分が本当の南画の精神要旨と考えるものに正しく適合している。狭く南画などとは云わず、一般に芸術というものが科学などの圧迫に無関係に永存し得べき肝心の要素に触接しているように思われるの・・・<寺田寅彦「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」青空文庫>
  14. ・・・似非風流や半可通やスノビズムの滑稽、あまりに興多からんことを求めて却って興をさます悲喜劇、そういったような題材のものの多くでは、これをそのままに現代に移しても全くそのままに適合するような実例を発見するであろう。十四世紀の日本人に比べて二十世・・・<寺田寅彦「徒然草の鑑賞」青空文庫>
  15. ・・・ところがまたこの象を取り扱う人間もまたあいにくきわめて純良で正直であって、この異郷の動物の気持ちなどをいろいろと推測してそれに適合する事をあえてするにはあまりに高い人格を持っていたのである。こうした二つのものが相接触すればいつかはけんかにな・・・<寺田寅彦「解かれた象」青空文庫>
  16. ・・・これも元はシナあたりから伝来したものかもしれないが、日本の風土に適合したために土着したものであろう。空気の流通がよくてしかも雨やあらしの侵入を防ぐという点では、バーベリーのレーンコートよりもずっとすぐれているのではないかという気がする。あれ・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  17. ・・・なるほどちゃんと五、七、五の音数律には適合している。いわれを聞いてみると、「昔頼朝時代などには鎌倉へんに鶴がたくさんにいて、それに関連した史実などもあったが今日ではもう鶴などは一羽も見られなくなって、世の中が変わってしまった」という感慨を十・・・<寺田寅彦「俳諧瑣談」青空文庫>
  18. ・・・しかしまた、そうした奇形児がいくらできてもその当時の環境に適合しなければその変形は存続することができなくて死滅したであろうと考えられる。 短歌から連歌への変遷もやはり一種の進化と見られる。たとえば一個のポリプを二つにちぎって、それぞれに・・・<寺田寅彦「俳句の型式とその進化」青空文庫>
  19. ・・・雄弁な饒舌は散文に任して真に詩らしい詩を求めたいという、そういう精神に適合するものがまさにこうした短詩形であろう。この意味でまた日本各地の民謡などもこのいわゆるオルフィズムの圏内に入り込むものであるかもしれない。 詩形が短い、言葉数の少・・・<寺田寅彦「俳句の精神」青空文庫>
  20. ・・・そしてそれが近代人の伝統破壊を喜ぶ一種の心理に適合するために、見当違いに痛快がられているようである。しかし相対原理が一般化されて重力に関する学者の考えが一変しても、りんごはやはり下へ落ち、彼岸の中日には太陽が春分点に来る。これだけは確実であ・・・<寺田寅彦「春六題」青空文庫>
  21. ・・・を成して一般の性と為り、政治上に於て君々たらざるも臣々たらざるを得ずと言うに等しく、婦人の道は柔和忍辱盲従に在り、夫々たらざるも妻々たらざるを得ずとて、専ら其一方の教に力を籠めて自から封建社会の秩序に適合せしめ、又間接に其秩序を幇助せしめた・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  22. ・・・その政事の然るを見て、教育法もまた然らんと思い、はなはだしきは数十百年を目的にする教育をもって目下の政事に適合せしめんとするが如きは、我が輩は学問のためにも、また世安のためにもこれを取らざるなり。・・・<福沢諭吉「政事と教育と分離すべし」青空文庫>
  23. ・・・もしもこの限界を越ゆるときは、徳教の趣を変じて輿論に適合し、その意味を表裏・陰陽に解して、あたかも輿論に差支なきの姿を装い、もってその体をまっとうするの実を見るべし。蛮夷、夏を乱だるは聖人の憂うるところなれども、その聖人国を蛮夷に奪われたる・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  24. ・・・その発展的段階に適合する組織として「ラップ」は狭くなったし、この指導部はブハーリン的な段階論を固守していたことによって批判されたのである。 作家同盟の成員が種々の層からなりたっているということは、作家同盟という一組織の内部でそれら様々の・・・<宮本百合子「前進のために」青空文庫>
  25. ・・・皮相の形式的な適合性をもって来たが、摂取と創造との力は薄弱であった。 現実の一例として、再び自分の手紙の場合について考えて見よう。 ここに、一人の知識人が、理性に立った社会判断の故に治安維持法にふれて、自由を奪われ、獄中生活をし・・・<宮本百合子「「どう考えるか」に就て」青空文庫>
  26. ・・・着物もつまりは、その生活の二つの基調に適合した変化が必要だし、その必要をみたすことが衣服の最低の条件なのだろうと思う。 簡単服という言葉はホーム・ドレスを意味する日本名だが、日本の女性たちの生活は、働き着として朝身につけたその簡単着を、・・・<宮本百合子「働くために」青空文庫>
  27. ・・・そして、テエヌはそのことこそ「彼の文体の癖がわれわれの生活の習慣と適合し、作家たるバルザックが公衆によって認められる所以」であると結論しているのである。 謂わば非難囂々たるバルザックの文体も、根本は当時の社会生活の特質によって来らしめた・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  28. ・・・その荷風の見かたに適合した何人かの「婦女」がかつて彼の「後堂に蓄え」られたこともあったのである。 私が、荷風のロマンティシズムを常識的な本質であるとするのは、女のロマンティックな見かたそのものに現れている以上のようなあり来りの特徴にもよ・・・<宮本百合子「歴史の落穂」青空文庫>
  29. ・・・その若衆のしらじらしい、どうしても本の読めそうにない態度が、書見と云う和製の漢語にひどく好く適合していたが、この滑稽を舞台の外で、今繰り返して見せられたように、僕は思ったのである。 そのうち僕はこう云う事に気が附いた。しらじらしいのは依・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>
  30. ・・・個所などを除く時、トルストイの芸術観に適合する作物となるそうである。現代徳育の理想もまた八犬士の境地である。この理想はよい。よいには相違ないがこの理想によって「虚栄を根本より覆せ」と叫ぶものは過激だとお叱りを蒙る。「不徳の人間を社会より放逐・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>