でき‐ごと【出来事】例文一覧 30件

  1. ・・・が、半三郎の日記の中でも最もわたしを驚かせたのは下に掲げる出来事である。「二月×日 俺は今日午休みに隆福寺の古本屋を覗きに行った。古本屋の前の日だまりには馬車が一台止まっている。もっとも西洋の馬車ではない。藍色の幌を張った支那馬車である・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  2. ・・・けれどもそれは懸け値なしに、一瞬の間の出来事だった。お嬢さんははっとした彼を後ろにしずしずともう通り過ぎた。日の光りを透かした雲のように、あるいは花をつけた猫柳のように。……… 二十分ばかりたった後、保吉は汽車に揺られながら、グラスゴオ・・・<芥川竜之介「お時儀」青空文庫>
  3. ・・・彼れはじっとその戯れを見詰めながら、遠い過去の記憶でも追うように今日の出来事を頭の中で思い浮べていた。凡ての事が他人事のように順序よく手に取るように記憶に甦った。しかし自分が放り出される所まで来ると記憶の糸はぷっつり切れてしまった。彼れはそ・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  4.        ○ これも正しく人間生活史の中に起った実際の出来事の一つである。       ○ また夢に襲われてクララは暗い中に眼をさました。妹のアグネスは同じ床の中で、姉の胸によりそってすやすやと静・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  5. ・・・そしてそれから処刑までの出来事は極めて単純である。可笑しい程単純である。 獄丁二人が丁寧に罪人の左右の臂を把って、椅子の所へ連れて来る。罪人はおとなしく椅子に腰を掛ける。居ずまいを直す。そして何事とも分からぬらしく、あたりを見廻す。この・・・<著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」青空文庫>
  6. ・・・戦争とか豊作とか饑饉とか、すべてある偶然の出来事の発生するでなければ振興する見込のない一般経済界の状態は何を語るか。財産とともに道徳心をも失った貧民と売淫婦との急激なる増加は何を語るか。はたまた今日我邦において、その法律の規定している罪人の・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  7. ・・・且つ天の星の如く定った軌道というべきものもないから、何処で会おうかもしれない、ただほんの一瞬間の出来事と云って可い。ですから何日の何時頃、此処で見たから、もう一度見たいといっても、そうは行かぬ。川の流は同じでも、今のは前刻の水ではない。勿論・・・<泉鏡花「一寸怪」青空文庫>
  8. ・・・それから、森を通る、姿は翠に青ずむまで、静に落着いて見えたけれど、二ツ三ツ重った不意の出来事に、心の騒いだのは争われない。……涼傘を置忘れたもの。…… 森を高く抜けると、三国見霽しの一面の広場になる。赫と射る日に、手廂してこう視むれば、・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  9.  古来例のない、非常な、この出来事には、左の通りの短い行掛りがある。 ロシアの医科大学の女学生が、ある晩の事、何の学科やらの、高尚な講義を聞いて、下宿へ帰って見ると、卓の上にこんな手紙があった。宛名も何も書いてない。「あなたの御関係・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  10. ・・・たとえば自然の風物に対しても、そこには日毎に、というよりも時毎に微妙な変化、推移が行われるし、周囲の出来事を眺めても、ともすればその真意を掴み得ないうちにそれがぐん/\経過するからである。しかし観察は、広い意味の経験の範囲内で、比較的冷静を・・・<小川未明「文章を作る人々の根本用意」青空文庫>
  11. ・・・枕から上らないから、それから上は何にも解らない、しかもその苦しさ切無さといったら、昨夜にも増して一層に甚しい、その間も前夜より長く圧え付けられて苦しんだがそれもやがて何事もなく終ったのだ、がこの二晩の出来事で私も頗る怯気がついたので、その翌・・・<小山内薫「女の膝」青空文庫>
  12. ・・・ 昼間の出来事で溜飲は下がったものの、しかし、夜の道は暗く寂しく、妻や子は死んでいるのか生きているのかと思えば、足は自然重かった。 途中にあるバラックから灯が洩れ、ラジオの歌が聴こえていた。「あ、ラジオが聴こえてる」 と、ミ・・・<織田作之助「昨日・今日・明日」青空文庫>
  13. ・・・五 これはあなたにこの手紙を書こうと思い立った日の出来事です。私は久し振りに手拭をさげて銭湯へ行きました。やはり雨後でした。垣根のきこくがぷんぷん快い匂いを放っていました。 銭湯のなかで私は時たま一緒になる老人とその孫ら・・・<梶井基次郎「橡の花」青空文庫>
  14. ・・・僕はその時初めて恋の楽しさと哀しさとを知りました、二月ばかりというものは全で夢のように過ぎましたが、その中の出来事の一二お安価ない幕を談すと先ずこんなこともありましたっケ、「或日午後五時頃から友人夫婦の洋行する送別会に出席しましたが僕の・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  15. ・・・そうすればちょっとした出来事にも深い運命や悲哀やまた美の調和や不調和やつまり人生に対する愛と悲しみの意識がだんだんこまやかになるものである。この心持はすなわち良い作の生まれる原動力になる。一、よく読書すること。われわれの・・・<倉田百三「芸術上の心得」青空文庫>
  16.       一 彼の出した五円札が贋造紙幣だった。野戦郵便局でそのことが発見された。 ウスリイ鉄道沿線P―の村に於ける出来事である。 拳銃の這入っている革のサックを肩からはすかいに掛けて憲兵が、大地を踏みなら・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  17. ・・・ と直次は姉を前に置いて、熊吉にその日の出来事を話して無造作に笑った。そこへおさだは台所の方から手料理の皿に盛ったのを運んで来た。 おげんはおさだに、「なあし、おさださん――喧嘩でも何でもないで。おさださんとはもうこの通り仲直り・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  18. ・・・プロフェッサアという小説は、さる田舎の女学校の出来事を叙したものであって、放課後、余人ひとりいないガランとした校舎、たそがれ、薄暗い音楽教室で、男の教師と、それから主人公のかなしく美しい女のひとと、ふたりきりひそひそ世の中の話を語っているの・・・<太宰治「音に就いて」青空文庫>
  19. ・・・そこには最新の出来事を知っていて、それを伝播させる新聞記者が大勢来るから、噂評判の源にいるようなものである。その噂評判を知ることも、先ず益があって損のない事である。 この店に這入って据わると、誰でも自分の前に、新聞を山のように積み上げら・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  20. ・・・おれはこの出来事のために余程興奮して来たので、議会に行くことはよしにした。ぶらぶら散歩して、三十分もたってから、ちょうど歩いていたスプレエ川の岸から、例の包を川へ投げた。あたりを見廻しても人っ子一人いない。 晩までは安心して所々をぶらつ・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  21. ・・・がおそらくある出来事の「確率」と結び付けられるものであろうと云っている。これに対するアインシュタインの考えは不幸にしていまだ知る機会を得ない。ただ彼が昨年の五月ライデンの大学で述べた講演の終りの方に、「素量説として纏められた事実があるいは『・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  22. ・・・犬の身に起った不幸な出来事は薄弱な太十の心を掻き乱して畢った。彼は殺すと口には断言した。然し彼の意識しない愛惜と不安とが対手に愁訴するように其声を顫わせた。殺すなといえばすぐ心が落ち付いて唯其犬が不便になったのである。然し対手は太十の心には・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  23. ・・・天下に夜中棺桶を担うほど、当然の出来事はあるまいと、思い切った調子でコツコツ担いで行く。闇に消える棺桶をしばらくは物珍らし気に見送って振り返った時、また行手から人声が聞え出した。高い声でもない、低い声でもない、夜が更けているので存外反響が烈・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  24. ・・・たとえば、人間の一人々々が、誰にも云わず、書かずに、どの位多くの秘密な奇怪な出来事を、胸に抱いたまま、或は忘れたまま、今までにどの位死んだことだろう。現に私だって今ここに書こうとすることよりも百倍も不思議な、あり得べからざる「事」に数多く出・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  25. ・・・ある偶然の出来事から、わたくしはそれを発見いたしました。夫はある日机の抽斗に鍵を掛けることを忘れたのでございます。リイユやブリュクセルやパリイに、夫は昔馴染を持っていて、わたくしと一しょになってからも、始終その関係を断たずにいたのでございま・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  26. ・・・そして新聞で、あのときの出来事は、肥料の入れようをまちがって教えた農業技師が、オリザの倒れたのをみんな火山局のせいにして、ごまかしていたためだということを読んで、大きな声で一人で笑いました。 その次の日の午後、病院の小使がはいって来て、・・・<宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」青空文庫>
  27. ・・・ 世の中の出来事のすべてに対して左様です。 私の心の驚いたり感じさせられたりする事は、善悪の区別もなく、美醜の見境えもないので、私の毎日は何と云う動かされどうしな事でしょう。 或る時は身の置き所のない程自分が小さく見すぼらしいも・・・<宮本百合子「動かされないと云う事」青空文庫>
  28. ・・・ これは長々とは書いたが、実際二三分間の出来事である。朝日を一本飲む間の出来事である。 朝日の吸殻を、灰皿に代用している石決明貝に棄てると同時に、木村は何やら思い附いたという風で、独笑をして、側の机に十冊ばかり積み上げてある man・・・<森鴎外「あそび」青空文庫>
  29. ・・・ お霜は小鉢を台所へ置くと、さて何をして好いものかと迷ったが、別に大事な出来事が起ったのでもなく、ただ自分ひとりが勝手に狼狽えているのだと気が附いた。が、その狼狽えたどこかには、常より却って晴やかな気持が流れていたことには彼女とても気附・・・<横光利一「南北」青空文庫>
  30. ・・・それは何でもない小さい出来事ですが、しかし私の心を打ち砕くには十分でした。 私は妻と子と三人で食卓を囲んでいました。私の心には前の続きでなおさまざまの姿や考えが流れていました。で、自分では気がつきませんでしたが、私はいつも考えにふける時・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>