てき‐ど【適度】例文一覧 20件

  1. ・・・   敵意 敵意は寒気と選ぶ所はない。適度に感ずる時は爽快であり、且又健康を保つ上には何びとにも絶対に必要である。   ユウトピア 完全なるユウトピアの生れない所以は大体下の通りである。――人間性そのものを変・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・耡き起される土壌は適度の湿気をもって、裏返るにつれてむせるような土の香を送った。それが仁右衛門の血にぐんぐんと力を送ってよこした。 凡てが順当に行った。播いた種は伸をするようにずんずん生い育った。仁右衛門はあたり近所の小作人に対して二言・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  3. ・・・の臨終に立会った時、傍らに、彼の許嫁の妹が身を慄わせ、声をあげて泣きむせぶのを聴きつつ、彼は心から許嫁の死を悲しみながらも、許嫁の妹の涕泣に発声法上の欠陥のある事に気づいて、その涕泣に迫力を添えるには適度の訓練を必要とするのではなかろうか。・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  4. ・・・本文は、すべて平仮名のみにて、甚だ読みにくいゆえ、私は独断で、適度の漢字まじりにする。盲人の哀しい匂いを消さぬ程度に。     葛原勾当日記。天保八酉年。○正月一日。同よめる。  たちかゑる。としのはしめは。なにとなく。・・・<太宰治「盲人独笑」青空文庫>
  5. ・・・大げさな言いかたで、自分でも少からず狼狽しながら申し上げるのであるが、謂わば、詩と真実以外のものは、適度に整理して叙述した、というわけなのである。ところどころに、大嘘をさえ、まぜている。けれども、大体は、あの入江の家庭の姿を、写したものだ。・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  6. ・・・しかしこの選択も適度にやれば好結果を得られない事はあるまい。これまでの経験ではまだ具体的な案は得られないが、適当にやれば、従来なら日影でいじけてしまうような天才を日向へ出して発達させる事も出来ようというのである。 著者はこれにつづいて、・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  7. ・・・病気で休学して郷里で遊んでいたときのことであるが、病気も大体快くなってそろそろ退屈しはじめ、医者も適度の運動を許してくれるようになった頃のことであった。時々宅の庭の手入れなどに雇っていた要太という若者があって、それが「鴫突き」の名人だという・・・<寺田寅彦「鴫突き」青空文庫>
  8. ・・・そうして、この鉄片の軽く地面をたたくコツコツという音が、次第にそれほど不愉快でなく、それどころか、おしまいにはかえって一種の適度な爽快な刺激として、からだを引きしめ、歩調を整えさせる拍節の音のようにも感ぜられるようになって来た。 思うに・・・<寺田寅彦「試験管」青空文庫>
  9. ・・・ 池の表面の氷結した上に適度の降雪があった時に、その面に亀甲形の模様ができる、これには、一方では弾性的不安定の問題、また対流の問題なども含まれているようであるが、この亀甲模様の亀甲形の中心にできる小さな穴から四方に放射して、「ひとで」形・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  10. ・・・ 日本では、土壁の外側に羽目板を張ったくらいが防寒防暑と湿度調節とを両立させるという点から見てもほぼ適度な妥協点をねらったものではないかという気がする。 台湾のある地方では鉄筋コンクリート造りの鉄筋がすっかり腐蝕して始末に困っている・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  11. ・・・この人の句がうまく適度に混入しているために一巻に特殊な色彩の律動を示していることは疑いもないことであるが、ただもし凡兆型の人物ばかりが四人集まって連句を作ったとしたらその成績はどんなものであるかと想像してみれば、おのずから前述の所論を支持す・・・<寺田寅彦「連句雑俎」青空文庫>
  12. ・・・飯を食う処は、その辺から見える山の裾にあったが、ぶらぶら歩くには適度の距離であった。道太はいたるところで少年時代の自分の惨めくさい姿に打つかるような気がしたが、どこも昔ながらの静かさで、近代的産業がないだけに、発展しつつある都会のような混乱・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  13. ・・・いずれも三尺あるかなしかの開戸の傍に、一尺四方位の窓が適度の高さにあけてある。適度の高さというのは、路地を歩く男の目と、窓の中の燈火に照らされている女の顔との距離をいうのである。窓際に立寄ると、少し腰を屈めなければ、女の顔は見られないが、歩・・・<永井荷風「寺じまの記」青空文庫>
  14.  書物に於ける装幀の趣味は、絵画に於ける額縁や表装と同じく、一つの明白な芸術の「続き」ではないか。彼の画面に対して、あんなにも透視的の奥行きをあたへたり、適度の明暗を反映させたり、よつて以てそれを空間から切りぬき、一つの落付・・・<萩原朔太郎「装幀の意義」青空文庫>
  15. ・・・もしまた、適度の砂糖は人間の健康に必要なものであるから、というのならば、つい先頃まで砂糖の害だけを云いたてて、科学的に国民保健上最低の糖分の必要さえ示そうとしなかった政府と栄養専門家、医者たちの軍事的御用根性について、この際正直に反省してほ・・・<宮本百合子「砂糖・健忘症」青空文庫>
  16. ・・・一度男の荒い掌がそこにさわってなでると、彼女は丁度荒い男の掌という適度な紙やすりでこすられた象牙細工のように、濃やかに、滑らかに、デリカになる。野生であった女は、もっと野生な、力ある男の傍で、始めて自分の軟らかさ、軽さ、愛すべきものであるこ・・・<宮本百合子「一九二五年より一九二七年一月まで」青空文庫>
  17. ・・・ どんなに陰気になっていても、彼女の年の持つ単純さが、新らしく彼女を取り繞った周囲に対して、驚くべき好奇心、探究心を誘い出し、ことごとに満たされ、ことごとに適度な緊張となる新規な習慣や規則が、実に無量の鼓舞と慰安とを与えたのである。・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  18. ・・・健康で余り安逸を貪ったことの無い花子の、いささかの脂肪をも貯えていない、薄い皮膚の底に、適度の労働によって好く発育した、緊張力のある筋肉が、額と腮の詰まった、短い顔、あらわに見えている頸、手袋をしない手と腕に躍動しているのが、ロダンには気に・・・<森鴎外「花子」青空文庫>
  19. ・・・それは紅色としては感じられないが、しかし白色に適度の柔らかみ、暖かみを加えているのであろう。われわれが白い蓮の花を思い浮かべるとき、そこに出てくるのはこういう白色の花弁であって、真に純白の花弁なのではあるまい。そう私は感ぜざるを得なかった。・・・<和辻哲郎「巨椋池の蓮」青空文庫>
  20. ・・・ 我々の祖先は今、適度の暗さを持った荘厳な殿堂の前に、神聖な偶像の美に打たれて頭を垂れている。やがて数十人の老若の僧侶が夢の中に歩く人のごとく静かに現われて、偶像の前に合掌礼拝しあるいはひざまずきあるいは佇立する。柔らかな衣の線の動き。・・・<和辻哲郎「偶像崇拝の心理」青空文庫>