て‐くび【手首/手×頸】例文一覧 30件

  1. ・・・ 手を当てると冷かった、光が隠れて、掌に包まれたのは襟飾の小さな宝石、時に別に手首を伝い、雪のカウスに、ちらちらと樹の間から射す月の影、露の溢れたかと輝いたのは、蓋し手釦の玉である。不思議と左を見詰めると、この飾もまた、光を放って、腕を・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  2. ・・・ おらあ、それを聞くと、艪づかを握った手首から、寒くなったあ。」「……まあ、厭じゃないかね、それでベソを掻いたんだね、無理はないよ、恐怖いわねえ。」 とおくれ毛を風に吹かせて、女房も悚然とする。奴の顔色、赤蜻蛉、黍の穂も夕づく日・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  3. ・・・ などと間伸のした、しかも際立って耳につく東京の調子で行る、……その本人は、受取口から見た処、二十四、五の青年で、羽織は着ずに、小倉の袴で、久留米らしい絣の袷、白い襯衣を手首で留めた、肥った腕の、肩の辺まで捲手で何とも以て忙しそうな、そ・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  4. ・・・ ふるえながら、そっと、大事に、内証で、手首をすくめて、自分の身体を見ようと思って、左右へ袖をひらいた時、もう、思わずキャッと叫んだ。だって私が鳥のように見えたんですもの。どんなに恐かったろう。 この時、背後から母様がしっかり抱いて・・・<泉鏡花「化鳥」青空文庫>
  5. ・・・……手につまさぐるのは、真紅の茨の実で、その連る紅玉が、手首に珊瑚の珠数に見えた。「ほん、ほん。こなたは、これ。(や、爺と、姉さんと二人して、潟に放いて、放生会をさっしゃりたそうな人相じゃがいの、ほん、ほん。おはは。」 と笑いながら・・・<泉鏡花「小春の狐」青空文庫>
  6. ・・・ 男はあっと自分の手首を押えた。血が流れていたのだ。 鋭利な刃物が咄嗟に走ったらしかった。走らせたのは豹吉だ。 豹吉はあっけに取られている男の耳へ口を近づけると、「掏るなら、相手を見て仕事しろ」「豹吉だなア」 男はき・・・<織田作之助「夜光虫」青空文庫>
  7. ・・・ 家を出て二三町歩いてから持って出た脚絆を締め、団飯の風呂敷包みをおのが手作りの穿替えの草鞋と共に頸にかけて背負い、腰の周囲を軽くして、一ト筋の手拭は頬かぶり、一ト筋の手拭は左の手首に縛しつけ、内懐にはお浪にかつてもらった木綿財布に、い・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  8. ・・・そして揃えて出した俺の両手首にそれをはめた。鉄の冷たさが、吃驚させる程ヒヤリときた。「冷てえ!」 俺は思わず手をひッこめた。「冷てえ?――そうか、そうか。じゃ、シャツの袖口をのばしたり。その上からにしよう。」「有難てえ。頼む・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  9. ・・・兄は、やがて小さい珠数を手首にはめて歩いて、そうして自分のことを、愚僧、と呼称することを案出しました。愚僧は、愚僧は、とまじめに言うので、兄のお友だちも、みんな真似して、愚僧は、愚僧は、と言い合い、一時は大流行いたしました。兄にとっては、た・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  10. ・・・万事が解決してしまったのだと、なぜだかそう信ぜられて、流石にうれしく、紺絣の着物を着たまだはたち前くらいの若いお客さんの手首を、だしぬけに強く掴んで、「飲みましょうよ、ね、飲みましょう。クリスマスですもの」三 ほんの三十・・・<太宰治「ヴィヨンの妻」青空文庫>
  11. ・・・あらあらしく手首をつかんで脈をしらべた。かすかに脈搏が感じられた。生きている。生きている。胸に手をいれてみた。温かった。なあんだ。ばかなやつ。生きていやがる。偉いぞ、偉いぞ。ずいぶん、いとしく思われた。あれくらいの分量で、まさか死ぬわけはな・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  12. ・・・玄関で帰ろうとするのを、私は、Y君の手首を固くつかんで放さなかった。ちょっとでいいから、とにかく、ちょっとでいいから、奥さんも、どうぞ、と、ほとんど暴力的に座敷へあがってもらって、なにかと、わがままの理窟を言い、とうとうY君をも、酒の仲間に・・・<太宰治「酒ぎらい」青空文庫>
  13. ・・・そこで腰に鉄鍋を当てて待構えていて、腰に触る怪物の手首をつかまえてぎゅうぎゅう捻じ上げたが、いくら捻じっても捻じっても際限なく捻じられるのであった。その時刻にそこから十町も下流の河口を船で通りかかった人が、何かしら水面でぼちゃぼちゃ音がして・・・<寺田寅彦「重兵衛さんの一家」青空文庫>
  14. ・・・この魔術のだいじの品玉は全くあの弓を導く右手の手首にあるらしい。手首の関節が完全に柔らかく自由な屈撓性を備えていて、きわめて微妙な外力の変化に対しても鋭敏にかつ規則正しく弾性的に反応するということが必要条件であるらしい。もちろんこれに関して・・・<寺田寅彦「「手首」の問題」青空文庫>
  15. ・・・これもその、しびれた手さきや手首を揉んでも掻いてもなかなか直らない。これらの場合にはそのしびれた脚や腕の根元に近いところに着物のひだで圧迫された痕跡が赤く印銘されているのでそこを引っかき摩擦すればしびれはすぐに消散するのである。病気にもこん・・・<寺田寅彦「猫の穴掘り」青空文庫>
  16. ・・・身体の血が右の手首の方へ流れて来て、握っている束がにちゃにちゃする。唇が顫えた。 短刀を鞘へ収めて右脇へ引きつけておいて、それから全伽を組んだ。――趙州曰く無と。無とは何だ。糞坊主めとはがみをした。 奥歯を強く咬み締めたので、鼻から・・・<夏目漱石「夢十夜」青空文庫>
  17. ・・・それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろに浮いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光をあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。 川上の方を見ると、すすきのい・・・<宮沢賢治「銀河鉄道の夜」青空文庫>
  18. ・・・それから右手をそっちへ突き出して左手でその右手の手首をつかみこっちへ引き寄せるようにしました。すると奇体なことは木樵はみちを歩いていると思いながらだんだん谷地の中に踏み込んで来るようでした。それからびっくりしたように足が早くなり顔も青ざめて・・・<宮沢賢治「土神ときつね」青空文庫>
  19. ・・・そしてネネムをじろじろ見ていましたが、突然そばに走って来て、ネネムの右の手首をしっかりつかんで云いました。「おい。お前は森の中の昆布採りがいやになってこっちへ出て来た様子だが、一体これから何が目的だ。」 ネネムはこれはきっと探偵にち・・・<宮沢賢治「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」青空文庫>
  20. ・・・ すると何のことはない、デストゥパーゴはそのみじかいナイフを剣のように持って一生けんめいファゼーロの胸をつきながら後退りしましたしファゼーロは短刀をもつように柄をにぎってデストゥパーゴの手首をねらいましたので、三度ばかりぐるぐるまわって・・・<宮沢賢治「ポラーノの広場」青空文庫>
  21. ・・・キッコは自分の手首だか何だかもわからないような気がして呆れてしばらくぼんやり見ていました。「一けた目がすんだらこんどは二けた目を勘定して。」と先生が云いました。するとまた鉛筆がうごき出してするするっと288と二けた目までのとこへ書いてしまい・・・<宮沢賢治「みじかい木ぺん」青空文庫>
  22. ・・・ 何年もおなじ系統の職業に従事してきたことが、短く苅った頭にも、書類挾みをもった手首の表情にもあらわれている事務官が、黒い背広をきて、私たちの入ったとは反対側のドアから入ってきた。課長と大同小異の説明をした。もし、書くもののどういうとこ・・・<宮本百合子「ある回想から」青空文庫>
  23. ・・・ カンカン火のある火鉢にも手をかざさず、きちんとして居た栄蔵は、フット思い出した様に、大急ぎでシャツの手首のところの釦をはずして、二の腕までまくり上げ紬の袖を引き出した。 久々で会う主婦から、うすきたないシャツの袖口を見られたくなか・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  24.  どの新聞にも近衛公の写真が出ていて大変賑わしい。東日にのった仮装写真は、なかでも秀抜である。昔新響の演奏会で指揮棒を振っていた後姿、その手首の癖などを見馴れた近衛秀麿氏が水もしたたる島田娘の姿になって、眼ざしさえ風情ありげ・・・<宮本百合子「仮装の妙味」青空文庫>
  25. ・・・やっぱり、ベビイ・オルガンで教則本の三分の一ほどやったのであった。手首を下げた弾きかたで弾くことを教った。そのうち或る晩、本郷切通しの右側にあった高野とか云う楽器店で、一台のピアノを見た。何台も茶色だの黒だののピアノがある間にはさまって立っ・・・<宮本百合子「きのうときょう」青空文庫>
  26. ・・・無意識に右の手を挙げて受ける。手首がばったり切り落された。起ち上がって、左の手でむなぐらに掴み着いた。 相手は存外卑怯な奴であった。むなぐらを振り放し科に、持っていた白刃を三右衛門に投げ付けて、廊下へ逃げ出した。 三右衛門は思慮の遑・・・<森鴎外「護持院原の敵討」青空文庫>
  27. ・・・三郎が武術に骨を折るありさまを朝夕見ているのみか、乱世の常とて大抵の者が武芸を収める常習になっているので忍藻も自然太刀や薙刀のことに手を出して来ると、従って挙動も幾分か雄々しくなった。手首の太いのや眼光のするどいのは全くそのためだろう。けれ・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  28. ・・・彼は彼女の手首をとって引き寄せた。「寄れ、ルイザ」「陛下、侍医をお呼びいたしましょう。暫くお待ちなされませ」「寄れ」 彼女は緞帳の襞に顔を突き当て、翻るように身を躍らせて、広間の方へ馳け出した。ナポレオンは明らかに貴族の娘の・・・<横光利一「ナポレオンと田虫」青空文庫>
  29. ・・・ 勘次は安次の手首をとった。安次は両足を菱張りに曲げて立ち上った。五 秋三は麦の種播きに出掛けようと思っていた。が、勘次が安次を間もなく連れて来るにちがいなかろうと思われるとそう遠くへ行く気にもなれなかった。で、彼は軒で・・・<横光利一「南北」青空文庫>
  30. ・・・それ以上の運動は皆首の棒を握っている人形使いの手首の働きである。手は二の腕から先で、指が動くようになっている。女の手は指をそろえたままで開いたり屈めたりする。三味線を弾く時などは個々の指の動く特別の手を使う。男の手は五本の指のパッと開く手、・・・<和辻哲郎「文楽座の人形芝居」青空文庫>