て‐せい【手製】例文一覧 20件

  1. ・・・大なおくび、――これに弱った――可厭だなあ、臭い、お爺さん、得ならぬにおい、というのは手製りの塩辛で、この爺さん、彦兵衛さん、むかし料理番の入婿だから、ただ同然で、でっち上る。「友さん腸をおいて行きねえ。」婆さんの方でない、安達ヶ原の納戸で・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  2. ・・・猟はこういう時だと、夜更けに、のそのそと起きて、鉄砲しらべをして、炉端で茶漬を掻っ食らって、手製の猿の皮の毛頭巾を被った。筵の戸口へ、白髪を振り乱して、蕎麦切色の褌……いやな奴で、とき色の禿げたのを不断まきます、尻端折りで、六十九歳の代官婆・・・<泉鏡花「眉かくしの霊」青空文庫>
  3. ・・・ドウしてコンナ、そこらに転がってる珍らしくもないものを叮嚀に写して、手製とはいえ立派に表紙をつけて保存する気になったのか今日の我々にはその真理が了解出来ないが、ツマリ馬琴に傾倒した愛読の情が溢れたからであるというほかはない。私の外曾祖父とい・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  4. ・・・家伝薬だというわけではなし、名前が通っているというわけでもなし、正直なところ効くか効かぬかわからぬような素人手製の丸薬を、裏長屋同然の場所で売っていて誰が買いに来るものか。 無論、お前もそのことは百も承知してか、ともかく宣伝が第一だと、・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  5. ・・・箱は光だったが、中身は手製の代用煙草だった。それには驚かなかったが、バラックの中で白米のカレーライスを売っているのには驚いた。日本へ帰れば白米なぞ食べられぬと諦めていたし、日本人はみな藷ばかり食べていると聴いて帰ったのに、バラックで白米の飯・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  6. ・・・行李の中には私たち共用の空気銃、Fが手製の弓を引くため買ってきた二本の矢、夏じゅう寺内のK院の古池で鮒を釣って遊んだ継ぎ竿、腰にさげるようにできたテグスや針など入れる箱――そういったものなど詰められるのを、さすがに淋しい気持で眺めやった。妻・・・<葛西善蔵「父の出郷」青空文庫>
  7. ・・・勿論例の主義という手製料理は大嫌ですが、さりとて肉とか薯とかいう嗜好にも従うことが出来ません」「それじゃア何だろう?」と井山がその尤もらしいしょぼしょぼ眼をぱちつかした。「何でもないんです、比喩は廃して露骨に申しますが、僕はこれぞと・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  8. ・・・いずれも自分の親としてよい年輩の人々で、その中の一人は手製の東坡巾といったようなものを冠って、鼠紬の道行振を被ているという打扮だから、誰が見ても漢詩の一つも作る人である。他の二人も老人らしく似つこらしい打扮だが、一人の濃い褐色の土耳古帽子に・・・<幸田露伴「野道」青空文庫>
  9. ・・・髪はこの手合にお定まりのようなお手製の櫛巻なれど、身だしなみを捨てぬに、小官吏の細君などが四銭の丸髷を二十日も保たせたるよりは遥に見よげなるも、どこかに一時は磨き立たる光の残れるが助をなせるなるべし。亭主の帰り来りしを見て急に立上り、「・・・<幸田露伴「貧乏」青空文庫>
  10. ・・・海上の船から山中の庵へ米苞が連続して空中を飛んで行ってしまったり、紫宸殿を御手製地震でゆらゆらとさせて月卿雲客を驚かしたりなんどしたというのは活動写真映画として実に面白いが、元亨釈書などに出て来る景気の好い訳は、大衆文芸ではない大衆宗教で、・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  11. ・・・三吉はまた大悦びで、おばあさんが手製のふかしたてのパンを患者仲間の居る部屋々々へ配りに行くこともあった。 おげんが過ぎ去った年月のことをしみじみ胸に浮べることの出来たのも、この静かな医院に移ってからであった。部屋に居て聞くと、よく蛙が鳴・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  12. ・・・若い妻と裏にあった茶の新芽を摘んで、急こしらえの火爐を拵えて、長火鉢で、終日かかって、団子の多い手製の新茶をつくって飲んだこともあった。田舎の茶畠に、笠を被った田舎娘の白い顔や雨に濡れた茶の芽を貫目にかけて筵にあける男の顔や、火爐に凭りかか・・・<田山花袋「新茶のかおり」青空文庫>
  13. ・・・ 疾くに故人となった甥の亮が手製の原始的な幻燈を「発明」したのは明らかにこれらの刺激の結果であったと思われる。その「器械」は実に原始的なものであった。本箱の上に釘を二本立ててその間にわずかに三寸四角ぐらいの紙を張ったのがスクリーンである・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  14. ・・・日曜日の本町の市で、手製の牡丹餅などと一緒にこのいたどりを売っている近郷の婆さんなどがあった。そのせいか、自分の虎杖の記憶には、幼時の本町市の光景が密接につながっている。そうして、肉桂酒、甘蔗、竹羊羹、そう云ったようなアットラクションと共に・・・<寺田寅彦「郷土的味覚」青空文庫>
  15. ・・・西洋人は自然を勝手に手製の鋳型にはめて幾何学的な庭を造って喜んでいるのが多いのに、日本人はなるべく山水の自然をそこなうことなしに住居のそばに誘致し自分はその自然の中にいだかれ、その自然と同化した気持ちになることを楽しみとするのである。 ・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  16. ・・・投網の錘をたたきつぶした鉛球を糸くずでたんねんに巻き固めたものを心とし鞣皮――それがなければネルやモンパ――のひょうたん形の片を二枚縫い合わせて手製のボールを造ることが流行した。横文字のトレードマークのついた本物のボールなどは学校のほかには・・・<寺田寅彦「野球時代」青空文庫>
  17. ・・・大将「これはモナコ王国に於てばくちの番をしたとき貰ったのじゃ。」特務曹長「はあ実に恐れ入ります。」大将「これはどうじゃ。」特務曹長「どこの勲章でありますか。」大将「手製じゃ手製じゃ。わしがこさえたのじゃ。」特務曹長「・・・<宮沢賢治「饑餓陣営」青空文庫>
  18. ・・・まわりに、茶のみ茶碗、鮭カンの半分以上からになったの、手製のパンなどが、ひろげられている。 静かな、すみとおった空気の中に、いもの焼ける匂いが微かに漂いはじめた。「そろそろやけて来たらしいね」「……もうすこうしね」「そっちの・・・<宮本百合子「風知草」青空文庫>
  19. ・・・ 町にで、記念のために買った本や、メキシカンの手製の元始的な壺などを並べた中で、する生活。 机によって、彼が、カーキの粗い素朴なシャーツの広い肩を丸めながら物をよんで居るのを見る心持、其は私が且つて弟の後姿のいつの間にか青年に成・・・<宮本百合子「無題(二)」青空文庫>
  20. ・・・という題で三百枚ほど書き、例によって手製の表紙をつけて綴じて持っていたのを、また気のむくままに書き直した。最後の一句を書き終ったのは、夜更けであったが、私は自身の感動を抑えることが出来ず、父と母とが寝ているところへ原稿をもって侵入して行った・・・<宮本百合子「行方不明の処女作」青空文庫>