てつ‐じん【哲人/哲仁】例文一覧 16件

  1. ・・・孔子、孟子、荘子、――そのほか支那からは哲人たちが、何人もこの国へ渡って来ました。しかも当時はこの国が、まだ生まれたばかりだったのです。支那の哲人たちは道のほかにも、呉の国の絹だの秦の国の玉だの、いろいろな物を持って来ました。いや、そう云う・・・<芥川竜之介「神神の微笑」青空文庫>
  2. ・・・それがまたまじめで、健康で、生活とか人生とかいうことの意味を深く弁えている哲人のようにも、彼には思われたりした。そしてこの春福島駅で小僧を救った――時の感想が胸に繰返された。「そうだ! 田舎へ帰るとああした事件や、ああした憫れな人々もた・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  3.      一 女性と信仰 男子は傷をこしらえることで人間の文明に貢献するけれども、婦人はもっと高尚なことで、すなわち傷をくくることで社会の進歩に奉仕するといった有名な哲人がある。この人間の文化の傷を繃帯するということ・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  4. ・・・超人説ケル小心、恐々ノ人ノ子、笑イナガラ厳粛ノコトヲ語レ、ト秀抜真珠ノ哲人、叫ンデ自責、狂死シタ。自省直ケレバ千万人ト言エドモ、――イヤ、握手ハマダマダ、ソノ楯ノウラノ言葉ヲコソ、「自省直カラザレバ、乞食ト会ッテモ、赤面狼狽、被告、罪人、酒・・・<太宰治「創生記」青空文庫>
  5. ・・・、やっぱり浮気、奇妙に学者ぶる奴は、やっぱり本当の学者、酒乱の真似をする奴は、まさしく本物の酒乱、芸術家ぶる奴は、本当の芸術家、大石良雄の酔狂振りも、あれは本物、また、笑いながら厳粛の事を語れと教える哲人ニイチェ氏も、笑いながら、とはなんだ・・・<太宰治「鉄面皮」青空文庫>
  6. ・・・先日、私は新宿の或る店へはいって、ひとりでビイルを飲んでいたら、女の子が呼びもしないのに傍へ寄って来て、「あんたは、屋根裏の哲人みたいだね。ばかに偉そうにしているが、女には、もてませんね。きざに、芸術家気取りをしたって、だめだよ。夢を捨・・・<太宰治「容貌」青空文庫>
  7. ・・・今眼前にこの岩手山の実に立派な姿を眺め、その麓に展開する山川の実に美しい多様な変化を味わっていると、どうしても日本はやはり八百万の神々の棲処であり、英雄の国であり、哲人の国であり、食うことと飲むことの外にまだ色々様々大事なことのある国だとし・・・<寺田寅彦「札幌まで」青空文庫>
  8. ・・・日本人でゲーテやシェークスピアの研究もおもしろいが、しかし、ドイツ人がゲーテを研究したように、芭蕉その他の哲人を研究しなければ、日本人はやはりドイツ人と肩を並べる資格をもたないであろう。・・・<寺田寅彦「俳諧の本質的概論」青空文庫>
  9. ・・・チェルシーの哲人と人が言囃すのは御前の事かと問う。なるほど世間ではわしの事をチェルシーの哲人と云うようじゃ。セージと云うは鳥の名だに、人間のセージとは珍らしいなと演説者はからからと笑う。村夫子はなるほど猫も杓子も同じ人間じゃのにことさらに哲・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  10. ・・・支那の哲人荘子は、かつて夢に胡蝶となり、醒めて自ら怪しみ言った。夢の胡蝶が自分であるか、今の自分が自分であるかと。この一つの古い謎は、千古にわたってだれも解けない。錯覚された宇宙は、狐に化かされた人が見るのか。理智の常識する目が見るのか。そ・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  11. ・・・そして其の極は詰り人間の生活の極だとでも申しましょうか、哲人の価値は神の光栄でございます。痴人は人類の悲歎でございます。其故、私は真に徹した生活をして居る者の価値は、日常生活の風習の差異等を眼中に置かない共鳴を持つと信じて居ります。然し、私・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  12. ・・・一八八七年、五十九歳に達したトルストイと四十三歳のソフィヤ夫人とは銀婚式をあげ、恐らくそれは世界的大芸術家、社会改良家、哲人としての名誉にふさわしい家族的祝祭であったであろうが、トルストイは自分の日記に向ってただ一行、恐ろしい含蓄をもって書・・・<宮本百合子「ジャンの物語」青空文庫>
  13. ・・・カサスの山にしばりつけられ、日毎新しくなる肝臓を日毎にコーカサスの禿鷹についばまれて永遠に苦しみつづけなければならない罰を蒙った、というこの物語の結末を、後代からは叡智の選手のように見られたギリシアの哲人たち誰もが変えようとしなかった。・・・<宮本百合子「なぜ、それはそうであったか」青空文庫>
  14. ・・・由来、犬を飼って愛すようなものは幾分哲人の風格をおび、たとえばモーリス・メーテルリンクでも、すばらしい犬の物語を書いているように云々……と。 なるほど、川端康成は老成の筆ぶりで「わが犬の記」を書き、綿々たる霊の讚歌「抒情歌」を書き、決し・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>
  15. ・・・神の道は嶮しい、神は残酷だ、と言った哲人の言葉がしみじみと胸にこたえる。――もとよりこの場合に私は自分の行為が「大きい不幸」をかもしたとは思っていない。なぜなら、彼らの心はこの事によって痛みを感じるにはあまり不死身だからである。しかし私は彼・・・<和辻哲郎「転向」青空文庫>
  16. ・・・小説家であるよりもむしろ哲人に近かった。そのためか、先生の作物に写実味の乏しいことは、さほど気にならない。 私は先生の芸術に著しいイデエを認める。一の作物の結構はすべてそのイデエから出ているように思う。この意味で先生の作物はかなり「作ら・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>