てっ・する【徹する】例文一覧 17件

  1. ・・・ズボリと踏込んだ一息の間は、冷さ骨髄に徹するのですが、勢よく歩行いているうちには温くなります、ほかほかするくらいです。 やがて、六七町潜って出ました。 まだこの間は気丈夫でありました。町の中ですから両側に家が続いております。この辺は・・・<泉鏡花「雪霊記事」青空文庫>
  2. ・・・ 地上に住む者は、地の匂いを充分に嗅がなければ、其の生活に徹することが出来ない。それに其の地を離れた時には、もはや、自分等の本当の生活というものは、無くなってしまった時であります。地上に住む人間が、最も親しい土や木や、水のほんとうの色を・・・<小川未明「草木の暗示から」青空文庫>
  3. ・・・それであるから現実に徹することは、自己の生活に徹するに外ならないのである。もし其処に似而非現実主義というものがあると仮定すれば、それは自己のない生活である。個性のない生活である。而してそうした生活から生れる所の芸術は、形式の芸術、模倣の芸術・・・<小川未明「囚われたる現文壇」青空文庫>
  4. ・・・合気の術は剣客武芸者等の我が神威を以て敵の意気を摧くので、鍛錬した我が気の冴を微妙の機によって敵に徹するのである。正木の気合の談を考えて、それが如何なるものかを猜することが出来る。魔法の類ではない。妖術幻術というはただ字面の通りである。しか・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  5. ・・・もっと端的にわれらの実行道徳を突き動かす力が欲しい、しかもその力は直下に心眼の底に徹するもので、同時に讃仰し羅拝するに十分な情味を有するものであって欲しい。私はこの事実をわれらの第一義欲または宗教欲の発動とも名づけよう。あるいはこんなことを・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  6. ・・・何せ、眼光紙背に徹する読者ばかりを相手にしているのだから、うっかりできない。あんまり緊張して、ついには机のまえに端座したまま、そのまま、沈黙は金、という格言を底知れず肯定している、そんなあわれな作家さえ出て来ぬともかぎらない。 謙譲を、・・・<太宰治「一歩前進二歩退却」青空文庫>
  7. ・・・それが、なんとも言えず、骨のずいに徹するくらいの冷厳な語調であった。底知れぬ軽蔑感が、そのたった一語に、こめられて在った。僕は、まいった。酔いもさめた。けれども苦笑して、「あ、失礼。つい酔いすぎて。」と軽く言ってその場をごまかしたが、腸・・・<太宰治「水仙」青空文庫>
  8. ・・・三年ぶりに見る、ふるさとの山川が、骨身に徹する思いであった。「ねえ、伯父さん、おねがい。あたしは、これからおとなしくするんだから、おとなしくしなければならないのだから、あたしをあまり叱らないでね。まちのお友達とも、誰とも、顔を合せたくな・・・<太宰治「火の鳥」青空文庫>
  9. ・・・これと反対に、読んでおのずから胸の透くような箇所があれば、それはきっと著者のほんとうに骨髄に徹するように会得したことをなんの苦もなく書き流したところなのである。 この所説もはなはだ半面的な管見をやや誇張したようなきらいはあろうが、おのず・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  10. ・・・無限上に徹する大空を鋳固めて、打てば音ある五尺の裏に圧し集めたるを――シャロットの女は夜ごと日ごとに見る。 夜ごと日ごとに鏡に向える女は、夜ごと日ごとに鏡の傍に坐りて、夜ごと日ごとのはたを織る。ある時は明るきはたを織り、ある時は暗きはた・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  11. ・・・たとえ多くの人に記憶せられ、惜まれずとも、懐かしかった親が心に刻める深き記念、骨にも徹する痛切なる悲哀は寂しき死をも慰め得て余りあるとも思う。 最後に、いかなる人も我子の死という如きことに対しては、種々の迷を起さぬものはなかろう。あれを・・・<西田幾多郎「我が子の死」青空文庫>
  12. ・・・日本の文学は庶民の生活の中から生れたものであるとし、現代作家の任務は現代の庶民の生活にとけ込んでその朝夕のいとなみとその涙と笑いとをあるがままに描き徹することに於て庶民の生きるべき方向と道とが自ら示されるという見解である。『人民文庫』の人々・・・<宮本百合子「今日の文学の鳥瞰図」青空文庫>
  13. ・・・ こんにちの社会的現実が頽廃的であることと、それを描くこと、虚無に徹することで新たな人間性を見出すと主張されて来た文壇的な文学は、はたして、頽廃を描き得る社会性や情熱を蔵しているであろうか。頽廃を描く文学であるか、あるいは文学そのものの・・・<宮本百合子「十月の文芸時評」青空文庫>
  14. ・・・洋画家が日本画家のような大きな画題を捕えないのは、一つには目前に在るものの美しさに徹するということが、十分彼らの心情を充たすに足る大事業であるためであり、二つには目前の自然をさえ十分にコナし得ないものが、歴史的な、あるいは超自然的な形象を描・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>
  15. ・・・著者が一人旅の心を説くのも、我執に徹することによって我から脱却し、自然に遊ぶ境地に至らんがためであった。ただ我執の立場にとどまる旅行記からは、我々は何の感銘も受けることができない。脱我の立場において異境の風物が語られるとき、我々はしばしば驚・・・<和辻哲郎「『青丘雑記』を読む」青空文庫>
  16. ・・・私たちはありのままを露呈するということを少しもはばからなかったし、またそれを妨げようとする力をも骨身に徹するほどには経験していなかった。地方の農村で育った私でさえそうであったから、東京の山の手で育った連中は、一層そうであったであろう。ちょう・・・<和辻哲郎「藤村の個性」青空文庫>
  17. ・・・現実の外に夢を築こうとするのではなくて現実の底に徹する力強いたじろがない態度を獲得しようとするのである。先生の人格が昇って行く道はここにあった。公正の情熱によって「私」を去ろうとする努力の傍には、超脱の要求によって「天」に即こうとする熱望が・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>