て‐つだい〔‐つだひ〕【手伝い】例文一覧 30件

  1. ・・・自分はその手伝いをしながら、きょうは粘液の少ないようにと思った。しかし便器をぬいてみると、粘液はゆうべよりもずっと多かった。それを見た妻は誰にともなしに、「あんなにあります」と声を挙げた。その声は年の七つも若い女学生になったかと思うくらい、・・・<芥川竜之介「子供の病気」青空文庫>
  2. ・・・貧家に人となった尊徳は昼は農作の手伝いをしたり、夜は草鞋を造ったり、大人のように働きながら、健気にも独学をつづけて行ったらしい。これはあらゆる立志譚のように――と云うのはあらゆる通俗小説のように、感激を与え易い物語である。実際又十五歳に足ら・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・彼は座敷に荷物を運び入れる手伝いをした後、父の前に座を取って、そのしぐさに対して不安を感じた。今夜は就寝がきわめて晩くなるなと思った。 二人が風呂から上がると内儀さんが食膳を運んで、監督は相伴なしで話し相手をするために部屋の入口にかしこ・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  4. ・・・単なる好奇心が少しぐらつきだして、後戻りしてその子供のために扉をしめる手伝いをしてやろうかとふと思ってみたが、あすこまで行くうちには牛乳瓶がもうごろごろと転げ出しているだろう。その音を聞きつけて、往来の子供たちはもとより、向こう三軒両隣の窓・・・<有島武郎「卑怯者」青空文庫>
  5. ・・・ 前垂掛――そう、髪もいぼじり巻同然で、紺の筒袖で台所を手伝いながら――そう、すなわち前に言った、浜町の鳥料理の頃、鴾氏に誘われて四五度出掛けた。お妻が、わが信也氏を知ったというはそこなのである。が、とりなりも右の通りで、ばあや、同様、・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  6. ・・・ここに、杢若がその怪しげなる蜘蛛の巣を拡げている、この鳥居の向うの隅、以前医師の邸の裏門のあった処に、むかし番太郎と言って、町内の走り使人、斎、非時の振廻り、香奠がえしの配歩行き、秋の夜番、冬は雪掻の手伝いなどした親仁が住んだ……半ば立腐り・・・<泉鏡花「茸の舞姫」青空文庫>
  7. ・・・ 手伝いの人々がいつのまにか来て下に働いておった。屋根裏から顔を出して先生と呼ぶのは、水害以来毎日手伝いに来てくれる友人であった。<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  8. ・・・民子は僕を手伝いとして山畑の棉を採ってくることになった。これはもとより母の指図で誰にも異議は云えない。「マアあの二人を山の畑へ遣るッて、親というものよッぽどお目出たいものだ」 奥底のないお増と意地曲りの嫂とは口を揃えてそう云ったに違・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  9. ・・・が、だんだん僕の私行があらわれて来るに従って、吉弥の両親と会見した、僕の妻が身受けの手伝いにやって来たなど、あることないことを、狭い土地だから、じきに言いふらした。 それに、吉弥が馬鹿だから、のろけ半分に出たことでもあろう、女優になって・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  10. ・・・写字をしたり口授を筆記したりして私の仕事の手伝いをしていた。面胞だらけの小汚ない醜男で、口は重く気は利かず、文学志望だけに能書というほどではないが筆札だけは上手であったが、その外には才も働きもない朴念人であった。 沼南が帰朝してから間も・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  11. ・・・伯父さんの家にあってその手伝いをしている間に本が読みたくなった。そうしたときに本を読んでおったら、伯父さんに叱られた。この高い油を使って本を読むなどということはまことに馬鹿馬鹿しいことだといって読ませぬ。そうすると、黙っていて伯父さんの油を・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  12. ・・・会葬者の中には無論金之助もいたし、お仙親子も手伝いに来ていたのである。 で、葬式の済むまでは、ただワイワイと傍のやかましいのに、お光は悲しさも心細さも半ば紛らされていたのであるが、寺から還って、舅の新五郎も一まず佃の家へ帰るし、親類親内・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  13. ・・・なまめいているといえば、しかし、引っ越しの日に手伝いに来ていた玉子という見知らぬ女も、首筋だけ白粉をつけていて、そして浜子がしていたように浴衣の裾が短かく、どこかなまめいているように、子供心にも判りました。玉子はあと片づけがすんでも帰らぬと・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  14. ・・・……お君が嫁いだ後、金助は手伝い婆さんを雇って家の中を任せていたのだが、選りによって婆さんは腰が曲り、耳も遠かった。「このたびはえらい御不幸な……」 と挨拶した婆さんに抱いていた子供を預けると、お君は一張羅の小浜縮緬の羽織も脱がず、・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  15. ・・・そして自分の無能と不心得から、無惨にも離散になっている妻子供をまとめて、謙遜な気持で継母の畠仕事の手伝いをして働こう。そして最も素朴な真実な芸術を作ろう……」などと、それからそれと楽しい空想に追われて、数日来の激しい疲労にもかかわらず、彼は・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  16. ・・・「俺れんちの薪を積む手伝いでもして呉れろよ。」 スパイは、三人が集ったのを、何かたくらんでいると睨んでいた。この男は、藤井先生がY村で教えていた頃の生徒だ。そのくせ、昔の先生に対してさえ、今は、官憲としての権力を振りまわして威張っていた・・・<黒島伝治「鍬と鎌の五月」青空文庫>
  17. ・・・ 角屋の大きな荒物屋に手伝いに行っていたお安が、兄のことから暇が出て戻ってきた。「お安や、健は何したんだ?」 母親は片方の眼からだけ涙をポロ/\出しながら、手荷物一つ持って帰ってきた娘にきいた。「キョウサントウだかって……」・・・<小林多喜二「争われない事実」青空文庫>
  18. ・・・まだ柱時計一つかかっていない炉ばたには、太郎の家で雇っているお霜婆さんのほかに、近くに住むお菊婆さんも手伝いに来てくれ、森さんの母さんまで来てわが子の世話でもするように働いていてくれた。 私は太郎と二人で部屋部屋を見て回るような時を見つ・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  19. ・・・ ウイリイはだんだんに、力の強い大きな子になって、父親の畠仕事を手伝いました。 或ときウイリイが、こやしを車につんでいますと、その中から、まっ赤にさびついた、小さな鍵が出て来ました。ウイリイはそれを母親に見せました。それは、先に乞食・・・<鈴木三重吉「黄金鳥」青空文庫>
  20. ・・・スバーが、それを噛めるようにしてやる そうやって長いこと坐り、釣の有様を見ている時、彼女は、どんなにか、プラタプの素晴らしい手伝い、真個の助けとなって、自分が此世に只厄介な荷物ではないことを証拠だてたく思ったでしょう! けれども、何もす・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  21. ・・・「手伝いましょう。どんどんお書きになってください。僕がそれを片はしから清書いたしますから。」 井伏さんも、少し元気を取り戻したようで、握り飯など召し上りながら、原稿用紙の裏にこまかい字でくしゃくしゃと書く。私はそれを一字一字、別な原・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  22. ・・・ 月島丸が沈没して、その捜索が問題となった時に、中村先生がいろいろの考案をされて、当時学生であったわれわれがお手伝いをして予備実験をやった。なんでも大きなラッパのようなものをこしらえて、それをあの池の水中に沈め、別の所へ、小さなボイラー・・・<寺田寅彦「池」青空文庫>
  23. ・・・二円の利益は母親やきょうだいたちの手伝いもふくめてであるが、母親はなんでも倅の家出をおそれていた。「そりゃな、東京の金はとれやすいかも知らんが、入りやすい金は出やすいもんだよ。まして月々におくるという金は、なかなかのこっちゃない」 ・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  24. ・・・ この声の誰であるかを聞きわけて、唖々子は初めて安心したらしく、砂利の上に荷物を下したが、忽命令するような調子で、「手伝いたまえ。ばかに重い。」「何だ。」「質屋だ。盗み出した。」「そうか。えらい。」とわたしは手を拍った。・・・<永井荷風「梅雨晴」青空文庫>
  25. ・・・奥底のない打ち明けたお話をすると、当時の私はまあ肴屋が菓子家へ手伝いに行ったようなものでした。 一年の後私はとうとう田舎の中学へ赴任しました。それは伊予の松山にある中学校です。あなたがたは松山の中学と聞いてお笑いになるが、おおかた私の書・・・<夏目漱石「私の個人主義」青空文庫>
  26. ・・・急がしったらなんの、こう忙しくなればささげのつるでもいいから手伝いに頼みたいもんだ。」 ブドリは思わず近寄っておじぎをしました。「そんならぼくを使ってくれませんか。」 すると二人は、ぎょっとしたように顔をあげて、あごに手をあてて・・・<宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」青空文庫>
  27. ・・・村では、子供でも養蚕の手伝いをした。彼女は、「私しゃ、気味がわるうござんしてね、そんな虫、大嫌さ」と、東京弁で断った。縫物も出来なかった。五月には、「お百姓なんて辛いもんだね、私にゃ半日辛棒もなりませんや」と、肩を動して笑っ・・・<宮本百合子「秋の反射」青空文庫>
  28. ・・・働いたものは血によごれている、小屋を焼く手伝いばかりしたものは、灰ばかりあびている。その灰ばかりあびた中に、畑十太夫がいた。光尚が声をかけた。「十太夫、そちの働きはどうじゃった」「はっ」と言ったぎり黙って伏していた。十太夫は大兵の臆・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  29. ・・・栖方は酒を注ぐ手伝いの知人の娘に軽い冗談を云ったとき、親しい応酬をしながらも、娘は二十一歳の博士の栖方の前では顔を赧らめ、立居に落ち付きを無くしていた。いつも両腕を組んだ主宰者の技師は、静かな額に徳望のある気品を湛えていて、ひとり和やかに沈・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  30. ・・・彼は銅色の足に礼をしたと同じ心持ちで、黒くすすけた農家の土間や農事の手伝いで日にやけた善良な農家の主婦たちに礼をしました。彼が親しみを感ずることができなかったのは、こういう村でもすでに見いだすことのできる曖昧宿で、夜の仕事のために昼寝をして・・・<和辻哲郎「土下座」青空文庫>