てっとう‐てつび【徹頭徹尾】例文一覧 29件

  1. ・・・だからそう云う史料は始めから否定している僕にとっては、折角の君の名論も、徹頭徹尾ノンセンスと云うよりほかはない。まあ待ち給え。それは君はそう云う史料の正確な事を、いろいろの方面から弁護する事が出来るでしょう。しかし僕はあらゆる弁護を超越した・・・<芥川竜之介「西郷隆盛」青空文庫>
  2. ・・・翁には主人が徹頭徹尾、鑑識に疎いのを隠したさに、胡乱の言を並べるとしか、受け取れなかったからなのです。 翁はそれからしばらくの後、この廃宅同様な張氏の家を辞しました。 が、どうしても忘れられないのは、あの眼も覚めるような秋山図です。・・・<芥川竜之介「秋山図」青空文庫>
  3. ・・・閣下はそんな俗人じゃない。徹頭徹尾至誠の人だ。」 しかし青年は不相変、顔色も声も落着いていた。「無論俗人じゃなかったでしょう。至誠の人だった事も想像出来ます。ただその至誠が僕等には、どうもはっきりのみこめないのです。僕等より後の人間・・・<芥川竜之介「将軍」青空文庫>
  4. ・・・従ってこれから私が申上げようと思う話も、実はあなたが御想像になるほど、現実の世界と懸け離れた、徹頭徹尾あり得べからざる事件と云う次第ではありません。いや、東京の夜の秘密を一通り御承知になった現在なら、無下にはあなたも私の話を、莫迦になさる筈・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  5. ・・・見るから浮薄らしい風の、軽躁な、徹頭徹尾虫の好かぬ男だ。私は顔を見るのもいやです。せっかく楽しみにしてここへ来たに、あの男のために興味索然という目に遇わされた。あんなものと交際して何の益がありましょう。あなたはまたどこがよくって、あんな男が・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  6. ・・・かかる人間はアトム的な個人の人格と人格とが、後から相互の黙契によって結びつき、社会をつくるのでなく、当初から相互融入的であり、その住居、衣食、言語風習まで徹頭徹尾共同生活態に依属しているところの、アトム的ならぬ共同人間である人倫の事実は外に・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  7. ・・・たとい満足な解決が与えられなくとも、解決の方法をつくし、その難点と及び限界とを良心的に示してくれるならば、われわれは深き感謝を持たねばならぬ。徹頭徹尾会心の書というものはあるものではない。 私の場合でいえば、リップスの倫理学も私には充全・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  8. ・・・そこは、徹頭徹尾、攻撃に終始する既成政党の演説会に比して、よほど整い、つじつまが会っている。 しかし、演説の言葉、形式が、百姓には、どうも難解である。研究会で、理論闘争をやるほどのものではないにしろ、なお、その臭味がある。そこで、百姓は・・・<黒島伝治「選挙漫談」青空文庫>
  9. ・・・北さんが何と言っても、私は、この帰郷の計画に就いては、徹頭徹尾悲観的であった。とんでもない事になるぞという予感があった。私は、この十年来、東京に於いて実にさまざまの醜態をやって来ているのだ。とても許される筈は無いのだ。「なあに、うまくい・・・<太宰治「帰去来」青空文庫>
  10. ・・・若き兵士たり、それから数行の文章の奥底に潜んで在る不安、乃至は、極度なる羞恥感、自意識の過重、或る一階級への義心の片鱗、これらは、すべて、銭湯のペンキ絵くらいに、徹頭徹尾、月並のものである。私は、これより数段、巧みに言い表わされたる、これら・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  11. ・・・兎に角、あの原稿は徹頭徹尾、君のそういう思い過しに出ているものだから、大変お気の毒だけれども書き直してはくれないだろうか。どうしても君が嫌だと云えば、致し方がないけれども、こういう誤解や邪推に出発したことで君と喧嘩したりするのは、僕は嫌だ。・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  12. ・・・ ――この小説は徹頭徹尾、観念的である。肉体のある人物がひとりとして描かれていない。すべて、すり硝子越しに見えるゆがんだ影法師である。殊に主人公の思いあがった奇々怪々の言動は、落丁の多いエンサイクロペジアと全く似ている。この小説の主人公・・・<太宰治「猿面冠者」青空文庫>
  13. ・・・これは、ひょっとしたら、馬場と私との交際は、はじめっから旦那と家来の関係にすぎず、徹頭徹尾、私がへえへえ牛耳られていたという話に終るだけのことのような気もする。 ああ、どうやらこれは語るに落ちたようだ。つまりそのころの私は、さきにも鳥渡・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  14. ・・・伊村説は、徹頭徹尾誤謬であったという事が証明せられた。ウソであったのである。私は、サタンでなかったのである。へんな言いかたであるが、私は、サタンほど偉くはない。この世の君であり、この世の神であって、彼は国々の凡ての権威と栄華とをもっているの・・・<太宰治「誰」青空文庫>
  15. ・・・要するに私の恋の成立不成立は、チャンスに依らず、徹頭徹尾、私自身の意志に依るのである。私には、一つのチャンスさえ無かったのに、十年間の恋をし続け得た経験もあるし、また、所謂絶好のチャンスが一夜のうちに三つも四つも重っても、何の恋愛も起らなか・・・<太宰治「チャンス」青空文庫>
  16. ・・・宗教的どころか、徹頭徹尾、人為的である。けれども、これにも何か不思議がある。人為の極度にも、何かしら神意が舞い下るような気がしないか。エッフェル鉄塔が夜と昼とでは、約七尺弱、高さに異変を生ずるなど、この類である。鉄は、熱に依って多少の伸縮が・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  17. ・・・ 今銀座のカッフェーに憩い、仔細に給仕女の服装化粧を看るに、其の趣味の徹頭徹尾現代的なることは、恰当世流行の婦人雑誌の表紙を見る時の心持と変りはない。一代の趣味も渾然として此処まで堕落してしまって、又如何ともすることの出来ぬものに成り了・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  18. ・・・云い換えれば研究の対象をどこまでも自分から離して眼の前に置こうとする。徹頭徹尾観察者である。観察者である以上は相手と同化する事はほとんど望めない。相手を研究し相手を知るというのは離れて知るの意でその物になりすましてこれを体得するのとは全く趣・・・<夏目漱石「中味と形式」青空文庫>
  19. ・・・ 従って余の博士を辞退したのは徹頭徹尾主義の問題である。この事件の成行を公けにすると共に、余はこの一句だけを最後に付け加えて置く。――明治四四、四、一五『東京朝日新聞』――<夏目漱石「博士問題の成行」青空文庫>
  20. ・・・ヘダ・ガブレルと云う女は何の不足もないのに、人を欺いたり、苦しめたり、馬鹿にしたり、ひどい真似をやる、徹頭徹尾不愉快な女で、この不愉快な女を書いたのは有名なイブセン氏であります。大変に虚栄心に富んだ女房を持った腰弁がありました。ある時大臣の・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  21. ・・・ゆめゆめあるまじき事にして、徹頭徹尾、恕の一義を忘れず、形体こそ二個に分かれたれども、その実は一身同体と心得て、始めて夫婦の人倫を全うするを得べし。故に夫婦家に居るは人間の幸福快楽なりというといえども、本来この夫婦は二個の他人の相合うたるも・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  22. ・・・さわれ曙覧は徹頭徹尾『万葉』を擬せんと務めたるに非ず。むしろその思うままを詠みたるが自ら『万葉』に近づきたるなり。しこうして彼の歌の『万葉』に似ざるところははたして『万葉』に優るところなりや否や、こは最大切なる問題なり。 余は断定を下し・・・<正岡子規「曙覧の歌」青空文庫>
  23. ・・・誦するにも堪えぬ芭蕉の俳句を註釈して勿体つける俳人あれば、縁もゆかりもなき句を刻して芭蕉塚と称えこれを尊ぶ俗人もありて、芭蕉という名は徹頭徹尾尊敬の意味を表したる中に、咳唾珠を成し句々吟誦するに堪えながら、世人はこれを知らず、宗匠はこれを尊・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  24. ・・・ですからよくよく突き詰めて見ますれば、人は自分が生きるために働き、自分が成長するために学び、自分達の社会を一歩でも前進させるために自分達がよい政治を行ってゆくのが徹頭徹尾民主主義的な社会と申しますが、いわゆるブルジョア民主主義といわれる歴史・・・<宮本百合子「幸福の建設」青空文庫>
  25. ・・・対立して描かれている工場内反革命分子は、徹頭徹尾の悪玉だ。 劇の第一幕から終りまで、二つの型の対立的争闘が描かれてあるだけで、卓抜で精力的なコムソモールは、反動傾向の中にまじっている浮動的な分子を正しい建設に協力させ獲得するために組織的・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  26. ・・・ これ以外には決してないと思われる仕事に対して、たとい量は少く、範囲は狭くあろうとも、彼女の真面目さは絶大であった。徹頭徹尾一生懸命であった。 そして、些細な失策や、爪ずきには決してひるまない希望を持っていたのである。 けれども・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  27. ・・・女であるならば、戦争中ひとしずくでも涙をこぼした覚えのある女であるならば、戦争に徹頭徹尾反対した政党があったという事実を意味ふかくかえりみるのではないだろうか。その事実のうちに、千万言にまさる道義が存在することを今にして会得するであろうと信・・・<宮本百合子「婦人の一票」青空文庫>
  28. ・・・それゆえに彼女は徹頭徹尾独特の芸を有するがごとくに見え、また他人の成功しない所で成功するのである。これが彼女の秘密だ。 例をもって説明しよう。今諸君の前に一人の音楽の天才が現われたとする。彼は普通の人のごとくに歩み、語り、食い、眠る。こ・・・<和辻哲郎「エレオノラ・デュウゼ」青空文庫>
  29. ・・・しかもこれらの風物は徹頭徹尾著者の人格に滲透せられているのである。「観る」とはただ受容的に即自の対象を受け取ることではない。観ること自身がすでに対象に働き込むことである、という仕方においてのみ対象はあるのである。我は没せられつつ、しかも対象・・・<和辻哲郎「『青丘雑記』を読む」青空文庫>