でっぷり例文一覧 19件

  1.  ある婦人雑誌社の面会室。 主筆 でっぷり肥った四十前後の紳士。 堀川保吉 主筆の肥っているだけに痩せた上にも痩せて見える三十前後の、――ちょっと一口には形容出来ない。が、とにかく紳士と呼ぶのに躊躇することだけは事実・・・<芥川竜之介「或恋愛小説」青空文庫>
  2. ・・・何為か、その上、幼い記憶に怨恨があるような心持が、一目見ると直ぐにむらむらと起ったから――この時黄色い、でっぷりした眉のない顔を上げて、じろりと額で見上げたのを、織次は屹と唯一目。で、知らぬ顔して奥へ通った。「南無阿弥陀仏。」 と折・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  3. ・・・――がさがさと遣っていると、目の下の枝折戸から――こんな処に出入口があったかと思う――葎戸の扉を明けて、円々と肥った、でっぷり漢が仰向いて出た。きびらの洗いざらし、漆紋の兀げたのを被たが、肥って大いから、手足も腹もぬっと露出て、ちゃんちゃん・・・<泉鏡花「二、三羽――十二、三羽」青空文庫>
  4. ・・・小柄だが、角力取りのようにでっぷり肥っているので、その汚なさが一層目立つ。濡雑巾が戎橋の上を歩いている感じだ。 しかし、うらぶれた感じはない。少し斜視がかった眼はぎょろりとして、すれちがう人をちらと見る視線は鋭い。朝っぱらから酒がはいっ・・・<織田作之助「四月馬鹿」青空文庫>
  5. ・・・ 頭の少しはげた、でっぷりとふとった客は「ウン」と言ったぎり黄金縁めがねの中で細い目をぱちつかして、鼻下のまっ黒なひげを右手でひねくりながら考えている。それを見て大森は煙草を取って煙草盆をつつきながら静かに、「それとも呼ぼうか?」・・・<国木田独歩「疲労」青空文庫>
  6. ・・・十八貫もある、でっぷり肥った、髯のある男だ。彼の靴は、固い雪を蹴散らした。いっぱいに拡がった鼻の孔は、凍った空気をかみ殺すように吸いこみ、それから、その代りに、もうもうと蒸気を吐き出した。 彼は、屈辱と憤怒に背が焦げそうだった。それを、・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  7. ・・・ 彼は、疲れない程度に馬を進めながら、暫らくして、兵卒と将校とが云い合っていた方を振りかえった。 でっぷり太った大隊長が浅黒い男の傍に立っていた。大隊長は怒って唇をふくらましていた。そこから十間ほど距って、背後に、一人の将校が膝をつ・・・<黒島伝治「橇」青空文庫>
  8. ・・・もう一寸一寸に暗くなって行く時、よくは分らないが、お客さんというのはでっぷり肥った、眉の細くて長いきれいなのが僅に見える、耳朶が甚だ大きい、頭はよほど禿げている、まあ六十近い男。着ている物は浅葱の無紋の木綿縮と思われる、それに細い麻の襟のつ・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  9. ・・・と、でっぷり肥ったる大きな身体を引包む緞子の袴肩衣、威儀堂々たる身を伏せて深々と色代すれば、其の命拒みがたくて丹下も是非無く、訳は分らぬながら身を平め頭を下げた。偉大の男はそれを見て、笑いもせねば褒めもせぬ平然たる顔色。「よし、よし・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  10. ・・・あんな綺麗な男となら、わたしはいつでも一緒に死んであげるのにさ』とでっぷり太った四十くらいの、吹出物だらけの女中がいって、皆を笑わせていました。それから私は五年間四国、九州と渡り歩き、めっきり老け込んでしまいました。そうしてしだいに私は軽ん・・・<太宰治「貨幣」青空文庫>
  11. ・・・あれで、本当だと思います。でっぷり太って居られて、てこでも動かない感じで、あぐらをかいて、そうして眼鏡越しに、じろりと私を見る、あの大きい眼も、本当に孤高なお方の眼でございました。私は、あなたの画を、はじめて父の会社の寒い応接室で見た時と同・・・<太宰治「きりぎりす」青空文庫>
  12. ・・・からだは、ひどく、でっぷり太っている。背丈は、佐伯よりも、さらに少し低いくらいである。おしゃれの様子で、襟元をやたらに気にして直しながら、「佐伯君、少し乱暴じゃありませんか。」と真面目な口調で言って、「僕は、親にさえ、こういう醜い顔を見・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  13. ・・・うしろに二人、でっぷり太った男が立っているでしょう? 眼鏡をかけているのが、その顔役の人で、もうひとりの、色の白いのが撮影所の所長です。この所長は、とても腰の低いひとで、一介の書生に過ぎぬ私を、それこそ下にも置かず、もてなしてくれました。商・・・<太宰治「小さいアルバム」青空文庫>
  14. ・・・五十近いでっぷり肥った赤ら顔でいつも脂ぎって光っていたが、今考えてみるとなかなか頭の善さそうな眼付きをしていた。夏の暑い盛りだと下帯一つの丸裸で晩酌の膳の前にあぐらをかいて、渋団扇で蚊を追いながら実にうまそうに杯をなめては子供等を相手にして・・・<寺田寅彦「重兵衛さんの一家」青空文庫>
  15. ・・・老先生と若先生と二人で患家を引受けていたが、老先生の方はでっぷりした上品な白髪のお茶人で、父の茶の湯の友達であった。たしか謡曲や仕舞も上手であったかと思う。若先生も典型的な温雅の紳士で、いつも優長な黒紋付姿を抱車の上に横たえていた。うちの女・・・<寺田寅彦「追憶の医師達」青空文庫>
  16. ・・・ 三日の夕方、東交代表河野争議部長が、下唇を突出し気味に背中を堅くして椅子にかけている山下局長に向って整理案撤回要求書を差し出しているところを撮った写真が出た。でっぷり太った角がりでチョビ髭を生やした河野が詰襟服姿で起立し、要求書の両端・・・<宮本百合子「電車の見えない電車通り」青空文庫>
  17. ・・・に乗って大学通りを走っている、でっぷり太った中背の男の説明から始る。 初めの三行目から作者は自分の言葉で服装について一部のパリ人の抱いている常識を非難しながら、その男がやっととある玄関の前で馬車を下りると、もう直ぐそこでとびかかるように・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  18. ・・・しかし、きょうの日本の便乗悪鬼は、鼻の下にチョビ髭をはやして外国語を話す紳士首相の姿をしていたり、さもなければ、でっぷり艷のいい二重顎にふとって、白いバラなどを胸にかざった党首としてあらわれたりしている。 言論・出版の自由は、世界の公約・・・<宮本百合子「便乗の図絵」青空文庫>
  19. ・・・ 四番目の叔母は私の母とは一つ違いの妹だった。でっぷりよく肥えた顔にいちめん雀斑が出来ていて鼻の孔が大きく拡がり、揃ったことのない前褄からいつも膝頭が露出していた。声がまた大きなバスで、人を見ると鼻の横を痒き痒き、細い眼でいつも又この人・・・<横光利一「洋灯」青空文庫>