てっ‐ぽう〔‐パウ〕【鉄砲/鉄×炮】例文一覧 30件

  1. ・・・すると小杉君が、「鉄砲疵が無くっちゃいけねえだろう、こゝで一発ずつ穴をあけてやろうか」と云った。 けれども桂月先生は、小供のように首をふりながら、「なに、これでたくさんだ」と云い/\その黐だらけの二羽の鴨を古新聞に包んで持って帰った。・・・<芥川竜之介「鴨猟」青空文庫>
  2. ・・・ぱちぱちという音のほかに、ぱんぱんと鉄砲をうつような音も聞こえていた。立ちどまってみると、ぼくのからだはぶるぶるふるえて、ひざ小僧と下あごとががちがち音を立てるかと思うほどだった。急に家がこいしくなった。おばあさまも、おとうさんも、おかあさ・・・<有島武郎「火事とポチ」青空文庫>
  3. ・・・あの、翼、あの、帯が、ふとかかる時、色鳥とあやまられて、鉄砲で撃たれはしまいか。――今朝も潜水夫のごときしたたかな扮装して、宿を出た銃猟家を四五人も見たものを。 遠くに、黒い島の浮いたように、脱ぎすてた外套を、葉越に、枝越に透して見つけ・・・<泉鏡花「小春の狐」青空文庫>
  4. ・・・…… 我が手で、鉄砲でうった女の死骸を、雪を掻いて膚におぶった、そ、その心持というものは、紅蓮大紅蓮の土壇とも、八寒地獄の磔柱とも、譬えように口も利けぬ。ただ吹雪に怪飛んで、亡者のごとく、ふらふらと内へ戻ると、媼巫女は、台所の筵敷に居敷・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  5. ・・・『こないなことなら、いッそ、割腹して見せてやる』とか、『鉄砲腹をやってやる』とか、なかなか当るべからざる勢いであったんや。然し、いよいよ僕等までが召集されることになって、高須大佐のもとに後備歩兵聨隊が組織され、それが出征する時、待ちかまえと・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  6. ・・・どこの田や、圃でも、鉄砲を持った、勇ましいかがしを立てている。」といいました。 これをきいて、太吉じいさんは、「なるほどそうかな、弓なんて、なにするものか、昔の鳥は知っても、このごろの鳥たちは知るまいて。」と、いって、おじいさんは弓・・・<小川未明「からすとかがし」青空文庫>
  7. ・・・なに鳥だろうと、下男はその方を見ていると、ズドンといって鉄砲を打つ音が聞こえました。すると、さっき見た鳥は飛びあがって、今度ははるかかなたをさして飛んでいってしまいました。だれか、打ちそこなったのだなと思っていると、そこへ猟師がやってきまし・・・<小川未明「北の国のはなし」青空文庫>
  8. ・・・「狐の剃刀とか雀の鉄砲とか、いい加減なことをよく言うぜ」「なんだ、その植物ならほんとうにあるんだよ」「顔が赤いよ」「不愉快だよ。夢の事実で現実の人間を云々するのは。そいじゃね。君の夢を一つ出してやる」「開き直ったね」・・・<梶井基次郎「雪後」青空文庫>
  9. 『鹿狩りに連れて行こうか』と中根の叔父が突然に言ったので僕はまごついた。『おもしろいぞ、連れて行こうか、』人のいい叔父はにこにこしながら勧めた。『だッて僕は鉄砲がないもの。』『あはははははばかを言ってる、お前に鉄砲が打てるものか・・・<国木田独歩「鹿狩り」青空文庫>
  10. ・・・時々列車からおりて、鉄砲で打ち合いをやった。そして、また列車にかえって、飯を焚いた。薪が燻った。冬だった。機関車は薪がつきて、しょっちゅう動かなくなった。彼は二カ月間顔を洗わなかった。向うへ着いた時には、まるで黒ン坊だった。息が出来ぬくらい・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  11. ・・・ 豆をはぜらすような鉄砲の音が次第に近づいて来た。 ウォルコフのあとから逃げのびたパルチザンが、それぞれ村へ馳せこんだ。そして、各々、家々へ散らばった。       二 ユフカ村から四五露里距っている部落――C附近を・・・<黒島伝治「パルチザン・ウォルコフ」青空文庫>
  12. ・・・私もあの鶏のような作がきっと出来るというのなら、イヤも鉄砲も有りはしなかったのですがネ。」と謙遜の布袋の中へ何もかも抛り込んでしまう態度を取りにかかった。世の中は無事でさえあれば好いというのなら、これでよかったのだ。しかし若崎のこの答は・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  13. ・・・而して誰も見て居ないと豆鉄砲などを取り出して、ぱちりぱちりと打って遊んで居たこともある。そういうところへ誰かが出て来ると、さあ周章て鉄砲を隠す、本を繰る、生憎開けたところと読んで居るところと違って居るのが見あらわされると大叱言を頂戴した。あ・・・<幸田露伴「少年時代」青空文庫>
  14. ・・・は割前の金届けんと同伴の方へ出向きたるにこれは頂かぬそれでは困ると世間のミエが推っつやっつのあげくしからば今一夕と呑むが願いの同伴の男は七つのものを八つまでは灘へうちこむ五斗兵衛が末胤酔えば三郎づれが鉄砲の音ぐらいにはびくりともせぬ強者その・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  15. ・・・仲間がだんだん死んでいきましてね。鉄砲で打たれたり、波に呑まれたり、飢えたり、病んだり、巣のあたたまるひまもない悲しさ。あなた。沖の鴎に潮どき聞けば、という唄がありますねえ。わたくし、いつかあなたに有名病についてお話いたしましたけど、なに、・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  16. ・・・ 俺は鉄砲撃ちなんだ。鉄砲撃ちの平田といえば、このへんでは、知らない者は無いんだ。お好みに応じて何でも撃ってあげますよ。鴨はどうです。鴨なら、あすの朝でも田圃へ出て十羽くらいすぐ落して見せる。朝めし前に、五十八羽撃ち落した事さえあるんだ。嘘・・・<太宰治「親友交歓」青空文庫>
  17. ・・・「古池やかわず飛び込む水の音」はもちろんであるが「灰汁桶のしずくやみけりきりぎりす」「芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな」「鉄砲の遠音に曇る卯月かな」等枚挙すれば限りはない。 すべての雑音はその発音体を暗示すると同時にまたその音の広がる空間・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  18. ・・・たとえば「鉄砲の遠音に曇る卯月かな」というのがある。同じ鉄砲でもアメリカトーキーのピストルの音とは少しわけがちがう。「里見えそめて午の貝吹く」というのがある。ジャズのラッパとは別の味がある。「灰汁桶のしずくやみけりきりぎりす」などはイディル・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  19. ・・・忘れもしねえ、暑い土用の最中に、餒じい腹かかえて、神田から鉄砲洲まで急ぎの客人を載せって、やれやれと思って棍棒を卸すてえとぐらぐらと目が眩って其処へ打倒れた。帰りはまた聿駄天走りだ。自分の辛いよりか、朝から三時過ぎまでお粥も啜らずに待ってい・・・<徳田秋声「躯」青空文庫>
  20. ・・・一同は遂にがたがた寒さに顫出す程、長評定を凝した結果、止むを得ないから、見付出した一方口を硫黄でえぶし、田崎は家にある鉄砲を準備し、父は大弓に矢をつがい、喜助は天秤棒、鳶の清五郎は鳶口、折から、少く後れて、例年の雪掻きにと、植木屋の安が来た・・・<永井荷風「狐」青空文庫>
  21. ・・・釣魚をするとか玉を突くとか、碁を打つとか、または鉄砲を担いで猟に行くとか、いろいろのものがありましょう。これらは説明するがものはないことごとく自から進んで強いられざるに自分の活力を消耗して嬉しがる方であります。なお進んではこの精神が文学にも・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  22. ・・・上部に鉄の格子を穿けて中央の孔から鉄砲を打つと云う仕懸の後世のものでは無論ない。いずれの時、何者が錬えた盾かは盾の主人なるウィリアムさえ知らぬ。ウィリアムはこの盾を自己の室の壁に懸けて朝夕眺めている。人が聞くと不可思議な盾だと云う。霊の盾だ・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  23. ・・・支那人は馳け廻った。鉄砲や、青竜刀や、朱の総のついた長い槍やが、重吉の周囲を取り囲んだ。「やい。チャンチャン坊主奴!」 重吉は夢中で怒鳴った、そして門の閂に双手をかけ、総身の力を入れて引きぬいた。門の扉は左右に開き、喚声をあげて突撃・・・<萩原朔太郎「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」青空文庫>
  24. ・・・ここにおいてか、剣術の道場を開て少年を教る者あり(旧来、徒士以下の者は、居合い、柔術、足軽は、弓、鉄砲、棒の芸を勉るのみにて、槍術、剣術を学ぶ者、甚だ稀。子弟を学塾に入れ或は他国に遊学せしむる者ありて、文武の風儀にわかに面目を改め、また先き・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  25. ・・・彼の発明の蒸汽船車なり、鉄砲軍器なり、また電信瓦斯なり、働の成跡は大なりといえども、そのはじめは錙朱の理を推究分離して、ついにもって人事に施したる者のみ。その大を見て驚くなかれ、その小を見て等閑に附するなかれ。大小の物、皆偶然に非ざるなり。・・・<福沢諭吉「物理学の要用」青空文庫>
  26. ・・・ ある明方、須利耶さまが鉄砲をもったご自分の従弟のかたとご一緒に、野原を歩いていられました。地面はごく麗わしい青い石で、空がぼうっと白く見え、雪もま近でございました。 須利耶さまがお従弟さまに仰っしゃるには、お前もさような慰みの殺生・・・<宮沢賢治「雁の童子」青空文庫>
  27. ・・・ 鳥捕りは二十疋ばかり、袋に入れてしまうと、急に両手をあげて、兵隊が鉄砲弾にあたって、死ぬときのような形をしました。と思ったら、もうそこに鳥捕りの形はなくなって、却って、「ああせいせいした。どうもからだに恰度合うほど稼いでいるくらい・・・<宮沢賢治「銀河鉄道の夜」青空文庫>
  28. ・・・或る村では、都会から派遣された集団農場の組織者が、窓越しに鉄砲を射たれて死んだ。せっかく村へよこされたトラクターが深夜何者かによって破壊されたという例は一再ならず我々の耳目にさえふれたのである。   ┌─────────────────・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  29. ・・・農村ブルジョアの富農は反対で、窓ガラス越しに鉄砲をブチ込み積極的な青年を殺したりした。坊主をおふせで食わせ飲ますのは富農だ。坊主と富農は互に十字架につらまって、農村の集団化の邪魔をする。 坊主を村から追っぱらえ! レーニンの云った通・・・<宮本百合子「モスクワの姿」青空文庫>
  30. ・・・細川家に召し抱えられてから、千石取って、鉄砲五十挺の頭になっていた。四月二十九日に安養寺で切腹した。五十三歳である。藤本猪左衛門が介錯した。大塚は百五十石取りの横目役である。四月二十六日に切腹した。介錯は池田八左衛門であった。内藤がことは前・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>