てつ‐や【徹夜】例文一覧 30件

  1. ・・・果然お君さんはほとんど徹夜をして、浪子夫人に与うべき慰問の手紙を作ったのであった。―― おれはこの挿話を書きながら、お君さんのサンティマンタリスムに微笑を禁じ得ないのは事実である。が、おれの微笑の中には、寸毫も悪意は含まれていない。お君・・・<芥川竜之介「葱」青空文庫>
  2. ・・・ いずれも、花骨牌で徹夜の今、明神坂の常盤湯へ行ったのである。 行違いに、ぼんやりと、宗吉が妾宅へ入ると、食う物どころか、いきなり跡始末の掃除をさせられた。「済まないことね、学生さんに働かしちゃあ。」 とお千さんは、伊達巻一・・・<泉鏡花「売色鴨南蛮」青空文庫>
  3. ・・・じつは毎夜徹夜しているからである。 私の徹夜癖は十九歳にはじまり、その後十年間この癖がなおらず、ことに近年は仕事に追われる時など、殆んど一日も欠さず徹夜することがしばしばである。それ故、およそ一年中の夜明けという夜明けを知っていると言っ・・・<織田作之助「秋の暈」青空文庫>
  4. ・・・「日によって違うが、徹夜で仕事すると、七八十本は確実だね。人にもくれてやるから、百本になる日もある」「一本二円として、一日二百円か。月にして六千円……」 私は唸った。「それだけ全部闇屋に払うのか」「いや、配給もあるし、な・・・<織田作之助「鬼」青空文庫>
  5. ・・・銀座裏の宿舎でこの原稿を書きはじめる数時間前は、銀座のルパンという酒場で太宰治、坂口安吾の二人と酒を飲んでいた――というより、太宰治はビールを飲み、坂口安吾はウイスキーを飲み、私は今夜この原稿のために徹夜のカンヅメになるので、珈琲を飲んでい・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  6. ・・・昨夜から徹夜をしているらしいことは、皮膚の色で判った。 橙色の罫のはいった半ぺらの原稿用紙には「時代の小説家」という題と名前が書かれているだけで、あとは空白だった。私はその題を見ただけで、反動的ファッショ政治の嵐の中に毅然として立ってい・・・<織田作之助「四月馬鹿」青空文庫>
  7. ・・・月に三度の公休日にも映画ひとつ見ようとせず、お茶ひとつ飲みにも行かず、切り詰め切り詰めた一人暮しの中で、せっせと内職のミシンを踏み、急ぎの仕立の時には徹夜した。徹夜の朝には、誰よりも早く出勤した。 そして、自分はみすぼらしい服装に甘んじ・・・<織田作之助「旅への誘い」青空文庫>
  8. ・・・覚悟をきめてからは、毎晩徹夜でこの小説に掛りきりで、ヒロポンを注射する度数が今までの倍にふえた。何をそんなに苦労するかというと、僕は今まで簡潔に書く工夫ばかししていたので一回三枚という分量には困らぬはずだったのに、どうしても一回四枚ほしい。・・・<織田作之助「文学的饒舌」青空文庫>
  9. ・・・ 其夜、看護婦は徹夜をしました。私は一時間程横になりましたが、酸素が切れたので買いに走りました。そのうちに夜が明けたので、看護婦を休ませて交替しました。病人は余程その看護婦が気に入らなかったと見えて、すぐ帰して仕舞えと言います。私が暫く・・・<梶井久「臨終まで」青空文庫>
  10. ・・・』『どうせ徹夜でさあ。』 秋山は一向平気である。杯を見つめて、『しかし君が眠けりゃあ寝てもいい。』『眠くはちっともない、君が疲れているだろうと思ってさ。僕は今日晩く川崎を立って三里半ばかしの道を歩いただけだから何ともないけれ・・・<国木田独歩「忘れえぬ人々」青空文庫>
  11. ・・・ゆうべまた徹夜でばくちだな? 帰れ、帰れ。お客さんを連れて来たんだ。」 老人は起き上り、私達にそっと愛想笑いを浮べ、佐吉さんはその老人に、おそろしく丁寧なお辞儀をしました。江島さんは平気で、「早く着物を着た方がいい。風邪を引くぜ。あ・・・<太宰治「老ハイデルベルヒ」青空文庫>
  12. ・・・も二つ三つ、つたない作品を発表していて、或る朝、井伏さんの奥様が、私の下宿に訪ねてこられ、井伏が締切に追われて弱っているとおっしゃったので、私が様子を見にすぐかけつけたところが、井伏さんは、その前夜も徹夜し、その日も徹夜の覚悟のように見受け・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  13. ・・・でも何でも無く、ほんとうに、それから四、五日経って、まあ、あつかましくも、こんどはお友だちを三人も連れて来て、きょうは病院の忘年会があって、今夜はこれからお宅で二次会をひらきます、奥さん、大いに今から徹夜で飲みましょう、この頃はどうもね、二・・・<太宰治「饗応夫人」青空文庫>
  14. ・・・きょう、只今徹夜にて仕事中、後略のまま。津島修二様。早川生。」 月日。「玉稿昨日頂戴しました。先日、貴兄からのハガキどういう理由だかはっきりしなかったところ、昨日の原稿を読んで意味がよくわかりました。先日の僕の依頼に就て、態度が・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  15. ・・・わかい研究生たちと徹夜で騒ぎました。焼酎も、ジンも飲みました。きざな、ばかな女ですね。 愚痴は、もう申しますまい。私は、いさぎよく罰を受けます。窓のそとの樹の枝のゆれぐあいで、風がひどいなと思っているうちに、雨が横なぐりに降って来ました・・・<太宰治「水仙」青空文庫>
  16. ・・・ゆうべ徹夜で計算したところに依ると、三百円で、素晴らしい本が出来る。それくらいなら、僕ひとりでも、どうにかできそうである。君は詩を書いてポオル・フォオルに読ませたらよい。僕はいま海賊の歌という四楽章からなる交響曲を考えている。できあがったら・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  17. ・・・ 家屋の彼方では、徹夜して戦場に送るべき弾薬弾丸の箱を汽車の貨車に積み込んでいる。兵士、輸卒の群れが一生懸命に奔走しているさまが薄暮のかすかな光に絶え絶えに見える。一人の下士が貨車の荷物の上に高く立って、しきりにその指揮をしていた。・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  18. ・・・ 一本の稲の穂を教材とするのでも、一生懸命骨を折って三日も四日も徹夜して教程をこしらえてかかるからかえっていけないではないかと思う。不用意に取って来た一草一木を机上に置いて一時間のあいだ無言で児童といっしょにひねくり回したり虫めがねで見・・・<寺田寅彦「さるかに合戦と桃太郎」青空文庫>
  19. ・・・昔の山の手の住民が浅草の芝居を見に行くために前夜から徹夜で支度して夜のうちに出かけて行った話と比較してみるとあまりにも大きな時代の推移である。しかしそういう昔の人の感じた面白さと、今のラジオを聞く人の面白さとの比較はどうなるかそれは分からな・・・<寺田寅彦「ラジオ雑感」青空文庫>
  20. ・・・例えば読書生が徹夜勉強すれば、その学芸の進歩如何にかかわらず、ただその勉強の一事のみを以て自ら信じ自ら重んずるに足るべし。寺の僧侶が毎朝早起、経を誦し粗衣粗食して寒暑の苦しみをも憚らざれば、その事は直ちに世の利害に関係せざるも、本人の精神は・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  21. ○先日徹夜をして翌晩は近頃にない安眠をした。その夜の夢にある岡の上に枝垂桜が一面に咲いていてその枝が動くと赤い花びらが粉雪のように細かくなって降って来る。その下で美人と袖ふれ合うた夢を見た。病人の柄にもない艶な夢を見たものだ。〔『ホ・・・<正岡子規「夢」青空文庫>
  22. ・・・それのみでない蒲団の上に横になって、右の肱をついて、左の手に原稿紙を持って、書く時には原稿紙の方を動かして右の手の筆の尖へ持って往てやるという次第だから、ただでも一時間か二時間かやると肩が痛くなる。徹夜などした時は、仕事がすんでから右の手を・・・<正岡子規「ランプの影」青空文庫>
  23. ・・・、Sunday――Aと Brick Church に行き、カーネギー夫人に会いかえりに Fifth ave を歩いて、Maison Facile で Supper を食べ、夜の中を散歩してかえり、殆ど徹夜して、ミス コーフィールドのことに就・・・<宮本百合子「「黄銅時代」創作メモ」青空文庫>
  24. ・・・カールが徹夜しながら「書物の海」に埋れて社会発展の歴史とその理論を学んでいる時、ハイネは一つの詩を創るごとにカールに見せに持って来た。時々、カールに辛い点をつけられると、ハイネはその詩を夫人イエニーにみてもらった。こうしてハイネの生涯をかざ・・・<宮本百合子「カール・マルクスとその夫人」青空文庫>
  25. ・・・三月の初め、私が徹夜した黎明であった。重く寒い暗藍色の東空に、低く紅の横雲の現れたのが、下枝だけ影絵のように細かく黒くちらつかせる檜葉の葉ごしに眺められた。閉め切った硝子戸の中はまだ夜だ。壮重な夜あけを凝っと見て居ると、何処かで一声高らかに・・・<宮本百合子「木蔭の椽」青空文庫>
  26. ・・・に巡礼をやり、今やっているゴーゴリの芝居では何をやっているか、旦那さんの方はきっと徹夜して小説かいてるでしょう。今夜見物する予定でしたが叔父様をお送りしたからやめになりました。 この近所には千葉で三年ばかり暮すことになった山田さんの奥さ・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  27. ・・・長いものを書くためには徹夜などもってのほかですからね。このためには大分がん張らないとどうしても夜更かしになるから困ります。稲ちゃん一家は、徹夜が日常です。こまったものね。今度の手紙はこれで一まずおしまいにいたします。リンゴをあがって下さい。・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  28. ・・・しかし秀麿は寝る時必ず消して寝る習慣を持っているので、それが附いていれば、又徹夜して本を読んでいたと云うことが分かる。それで奥さんは手水に起きる度に、廊下から見て、秀麿のいる洋室の窓の隙から、火の光の漏れるのを気にしているのである。・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  29. ・・・地味な縞の、鈍い、薄青い色の勝った何やらの単物に袴を着けて、少し前屈みになって据わっている。徹夜をした人の目のように、軽い充血の痕の見えている目は、余り周囲の物を見ようともせずに、大抵直前の方向を凝視している。この男の傍には、少し背後へ下が・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>
  30. ・・・バアルはその夜徹夜して書きたいような心持ちになったが、筆をとってみると一語さえも書くことはできない。デュウゼについて初めて何か書けそうになったのはそれから四週間の後である。それまでは旅行から得る新しい刺激によって、わずかに頭の整理を続けてい・・・<和辻哲郎「エレオノラ・デュウゼ」青空文庫>