で‐なおし〔‐なほし〕【出直し】例文一覧 14件

  1. ・・・そして辞儀の一つもする事を覚えてから出直すなら出直して来い。馬鹿」 そして部屋をゆするような高笑が聞こえた。仁右衛門が自分でも分らない事を寝言のようにいうのを、始めの間は聞き直したり、補ったりしていたが、やがて場主は堪忍袋を切らしたとい・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  2. ・・・一旦破寺――西明寺はその一頃は無住であった――その庫裡に引取って、炉に焚火をして、弁当を使ったあとで、出直して、降積った雪の森に襲い入ると、段々に奥深く、やがて向うに青い水が顕われた、土地で、大沼というのである。 今はよく晴れて、沼を囲・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  3. ・・・この様子に小宮山は、しばらく腕組をして、黙って考えていましたが、開き直ったという形で、「篠田、色々話はあるが、何も彼も明日出直して来よう、それまでまあ君心を鎮めて待ってくれ。それじゃ託り物を渡したぜ。」「ええ。」「いえ、託り物は・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  4. ・・・ 一旦家へ帰ってから出直してもよし、直ぐに出掛けても怪しゅうはあらず、またと……誰か誘おうかなどと、不了簡を廻らしながら、いつも乗って帰る処は忘れないで、件の三丁目に彳みつつ、時々、一粒ぐらいぼつりと落ちるのを、洋傘の用意もないに、気に・・・<泉鏡花「妖術」青空文庫>
  5. ・・・僕は、出発の当時、井筒屋の主人に、すぐ、僕が出直して来なければ、電報で送金すると言っておいたのだ。 先刻から、正ちゃんもいなくなっていたが、それがうちへ駆けつけて来て、「きイちゃんが、今、方々の払いをしておる」と、注進した。「じ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  6. ・・・ こういって、猟師は、打つのをやめて、また、出直してこようと家へもどろうとしたのであります。 その途中で、知らない猟人に出あいました。その猟人もこれから山へ、くまを打ちにゆこうというのです。その男は、傲慢でありまして、なにも獲物なし・・・<小川未明「猟師と薬屋の話」青空文庫>
  7. ・・・』『まア出直した方がいいねエ、どうせ死ぬなら月でもいい晩の方がまだしゃれてらア。』『いやな、』と娘は言って座敷の方へどたばたと逃げ出してしまった。『出直した、出直した。その方がいい、あばよ、』と言って主人はよろめきながら出て来た・・・<国木田独歩「郊外」青空文庫>
  8. ・・・この愚僧は、たいへんおしゃれで、喫茶店へ行く途中、ふっと、指輪をはめて出るのを忘れて来たことに気がつき、躊躇なくくるりと廻れ右して家へ引きかえし、そうしてきちんと指輪をはめて、出直し、やあ、お待ちどおさま、と澄ましていました。 私は大学・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  9. ・・・と田島は、むしろ恐怖におそわれ、キヌ子同様の鴉声になり、「でも、また出直して来てもいいんだよ。」「何か、こんたんがあるんだわ。むだには歩かないひとなんだから。」「いや、きょうは、本当に、……」「もっと、さっぱりなさいよ。あなた、・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  10. ・・・じゃ一度熊本へ帰ってまた出直してくるさ」「出直して来ちゃ気が済まない」「いろいろなものに済まないんだね。君は元来強情過ぎるよ」「そうでもないさ」「だって、今までただの一遍でも僕の云う事を聞いた事がないぜ」「幾度もあるよ」・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  11. ・・・が届いたから出直して一度伺おう。我輩の下宿の体裁は前回申し述べたごとくすこぶる憐れっぽい始末だが、そういう境界に澄まし返って三十代の顔子然としていられるかと君方はきっと聞くに違いない。聞かなくっても聞く事にしないとこっちが不都合だからまず聞・・・<夏目漱石「倫敦消息」青空文庫>
  12. ・・・いずれまた今晩でも出直して来るんじゃ」「よござんすよ、お前さんなんざアどうせ不実だから」「何じゃ。不実じゃ」「名山さん、金盥が明いたら貸しておくれよ」と、今客を案内して来た小式部という花魁が言ッた。「小式部さん、これを上げよ・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  13. ・・・ プロレタリア・リアリズムにむかっての具体的な出直しの試みとして、ソヴェトの文学は大胆に生産の場所からの生のままの報告を、領分の中にとりいれはじめた。 ラップの機関紙『十月』をあけて見ると、生活記録とか、生活の道とかいう特別欄がある・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  14. ・・・ 夕方になって、口入の上さんは出直して、目見えの女中を連れて来た。二十五六位の髪の薄い女で、お辞儀をしながら、横目で石田の顔を見る。襦袢の袖にしている水浅葱のめりんすが、一寸位袖口から覗いている。 石田は翌日島村を口入屋へ遣って、下・・・<森鴎外「鶏」青空文庫>