て・る【照る】例文一覧 30件

  1. ・・・「子を思う親の心は日の光世より世を照る大きさに似て」 とも詠じている。 母上が亡くなった時、お前たちは丁度信州の山の上にいた。若しお前たちの母上の臨終にあわせなかったら一生恨みに思うだろうとさえ書いてよこしてくれたお前たちの叔父・・・<有島武郎「小さき者へ」青空文庫>
  2. ・・・そ、朝々の煙も細くかの柳を手向けられた墓のごとき屋根の下には、子なき親、夫なき妻、乳のない嬰児、盲目の媼、継母、寄合身上で女ばかりで暮すなど、哀に果敢ない老若男女が、見る夢も覚めた思いも、大方この日が照る世の中のことではあるまい。 髯あ・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  3. ・・・ こうして、おじいさんは日の照る日中は村から、村へ歩きましたけれど、晩方にはいつも、この城跡にやってきて、そこにあった、昔の門の大きな礎石に、腰をかけました。そして、暮れてゆく海の景色をながめるのでありました。「ああ、なんといういい・・・<小川未明「海のかなた」青空文庫>
  4. ・・・空はところどころ曇って、日がバッと照るかと思うときゅうにまた影げる。水ぎわには昼でも淡く水蒸気が見えるが、そのくせ向河岸の屋根でも壁でも濃くはっきりと目に映る。どうしてももう秋も末だ、冬空に近い。私は袷の襟を堅く合せた。「ねえ君、二三日・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  5. ・・・ 闇にも歓びあり、光にも悲あり、麦藁帽の廂を傾けて、彼方の丘、此方の林を望めば、まじまじと照る日に輝いて眩ゆきばかりの景色。自分は思わず泣いた。<国木田独歩「画の悲み」青空文庫>
  6. ・・・あたかも野辺にさすらいて秋の月のさやかに照るをしみじみと眺め入る心持と或は似通えるか。さりとて矢も楯もたまらずお正の許に飛んで行くような激越の情は起らないのであった。 ただ会いたい。この世で今一度会いたい。縁あらば、せめて一度此世で会い・・・<国木田独歩「恋を恋する人」青空文庫>
  7. ・・・馬ようやく船に乗りて船、河の中流に出ずれば、灘山の端を離れてさえさえと照る月の光、鮮やかに映りて馬白く人黒く舟危うし。何心なくながめてありしわれは幾百年の昔を眼前に見る心地して一種の哀情を惹きぬ。船回りし時われらまた乗りて渡る。中流より石級・・・<国木田独歩「小春」青空文庫>
  8. ・・・この時はちょうど午後一時ごろで冬ながら南方温暖の地方ゆえ、小春日和の日中のようで、うらうらと照る日影は人の心も筋も融けそうに生あたたかに、山にも枯れ草雑りの青葉少なからず日の光に映してそよ吹く風にきらめき、海の波穏やかな色は雲なき大空の色と・・・<国木田独歩「鹿狩り」青空文庫>
  9. ・・・そよ吹く風は忍ぶように木末を伝ッた、照ると曇るとで雨にじめつく林の中のようすが間断なく移り変わッた、あるいはそこにありとある物すべて一時に微笑したように、隈なくあかみわたッて、さのみ繁くもない樺のほそぼそとした幹は思いがけずも白絹めく、やさ・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  10. ・・・光は暗黒に照る。而して暗黒は之を悟らざりき。云々。」私はこの文章を、この想念を、難解だと思った。ほうぼうへ持って廻ってさわぎたてたのである。 けれども、あるときふっと角度をかえて考えてみたら、なんだ、これはまことに平凡なことを述べている・・・<太宰治「もの思う葦」青空文庫>
  11. ・・・円く照る明月のあすをと問わば淋しからん。エレーンは死ぬより外の浮世に用なき人である。 今はこれまでの命と思い詰めたるとき、エレーンは父と兄とを枕辺に招きて「わがためにランスロットへの文かきて玉われ」という。父は筆と紙を取り出でて、死なん・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  12. ・・・観魚亭夕風や水青鷺の脛を打つ四五人に月落ちかゝる踊かな日は斜関屋の槍に蜻蛉かな柳散り清水涸れ石ところ/″\かひがねや穂蓼の上を塩車鍋提げて淀の小橋を雪の人てら/\と石に日の照る枯野かなむさゝびの小鳥喰み居る枯・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  13. ・・・坂、坂は照る照る鈴、鈴鹿は曇る、あいのあいの土山雨がふる、ヨーヨーと来るだろう。向うの山へ千松がと来るだろう。そんなのはないよ。五十四郡の思案の臍と来るよ。思案の臍とはどんな臍だろう。コイツは可笑しい、ハハハハハ痛い痛い痛い横腹の痛みをしゃ・・・<正岡子規「煩悶」青空文庫>
  14. ・・・ 日が強く照るときは岩は乾いてまっ白に見え、たて横に走ったひび割れもあり、大きな帽子を冠ってその上をうつむいて歩くなら、影法師は黒く落ちましたし、全くもうイギリスあたりの白堊の海岸を歩いているような気がするのでした。 町の小学校でも・・・<宮沢賢治「イギリス海岸」青空文庫>
  15. ・・・日がかんかんどこか一とこに照る時か、また僕たちが上と下と反対にかける時ぶっつかってしまうことがあるんだ。そんな時とまあふたいろにきまっているねえ。あんまり大きなやつは、僕よく知らないんだ。南の方の海から起って、だんだんこっちにやってくる時、・・・<宮沢賢治「風野又三郎」青空文庫>
  16. ・・・雲がきれて陽が照るしもう雨は大丈夫だ。さっきも一遍云ったのだがもう一度あの禿の所の平べったい松を説明しようかな。平ったくて黒い。影も落ちている。どこかであんなコロタイプを見た。及川やなんか知ってるんだ。よすかな。いいや。やろう。〔さ・・・<宮沢賢治「台川」青空文庫>
  17. ・・・ 七十と七十六になった老婆は、暫く黙って、秋日に照る松叢を見ていた。 沢や婆が帰る時、植村の婆さんは、五十銭やった。「其辺さ俺も出て見べ」 二人は並んで半町ばかり歩いた。〔一九二六年六月〕・・・<宮本百合子「秋の反射」青空文庫>
  18. ・・・物蔭の小高いところから、そちらを見下すと、そこには隈なく陽が照るなかに、優美な装束の人たちが、恭々しいうちにも賑やかでうちとけた供まわりを随えて、静かにざわめいている。 黒い装束の主人たる人物は、おもむろに車の方へ進んでいる。が、まだ牛・・・<宮本百合子「あられ笹」青空文庫>
  19. ・・・ 暫く話してから、西日の照る往来に出、間もなく、自分は、アタールという名を忘却した。 それから、クマラスワミーとは友情が次第に濃やかになり、十月頃彼が帰るまで、我々は、ヨネ・野口をおいては親しい仲間として暮した。種々な恋愛問題なども・・・<宮本百合子「思い出すこと」青空文庫>
  20. ・・・高く耀き 照る日のように崇高にどうしていつもなれないだろう。あまりの大望なのでしょうか?神様。     *自分は 始め 天才かと思った。   あわれ あわれ は……。然し、その夢も 醒めた。 有難・・・<宮本百合子「五月の空」青空文庫>
  21. ・・・ 想像の豊かな若者なら、きっとその蔭に照る強い日の色、風の光、色彩の濃い熱帯の鳥の翼ばたきをまざまざと想うことが出来るに違いない。 そう思って見れば、これ等の瑞々しい紫丁香花色の花弁の上には敏感に、微に、遠い雲の流れがてりはえている・・・<宮本百合子「小景」青空文庫>
  22. ・・・柔い若葉をつけたばかりの梧桐はかぜにもまれ、雨にたたかれた揚句、いきなりかっと照る暑い太陽にむされ、すっかりぐったりしおれたようになって、澄んだ空の前に立って居る。 六月の樹木と思えない程どす黒く汚く見えた。     六月二十四・・・<宮本百合子「一九二三年夏」青空文庫>
  23. ・・・ 三日雨 四日ぱっと照る。 両日の間に叔母上の死体を、小島さんのところに来た水兵の手で埋り出し、川島、棺作りを手伝って、やっと棺におさめ、寺に仮埋葬す。その頃、東京から小南着。 五日頃から、倒れなかった田舎の百姓家に避難し、・・・<宮本百合子「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」青空文庫>
  24. ・・・彼等の宮を支えている雲の柱が静に、流れ移ったり、照る光がうつろったりする。やがてヴィンダー ああ、つまらない。(欠伸何と云う沈滞しきった有様だ。又この間のように面白いことでも起って呉れないかな。目が醒めるぜ。ミーダ 人間のアーリ・・・<宮本百合子「対話」青空文庫>
  25. ・・・ 父さんは、朝日がキラキラ照る窓ぎわへ腰かけて、昨夜工合がわるかったラジオを熱心に直している。ミーチャは口をあけてそれを見物してたところだ。 ミーチャは、風呂場へ行った。水道栓のわきに、低くミーチャの手拭と歯ブラシとがぶら下ってる。・・・<宮本百合子「楽しいソヴェトの子供」青空文庫>
  26. ・・・ 太陽の照るうちは、それでもまぎれている彼女は、夜、特に月の大層美しいような晩には、その水のような光りの流れる部屋に坐りながら、何という慕わしさで、ついこの間まで続いていた「あの頃」を思い出したことであろう。 多勢の友達を囲りに坐ら・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  27. ・・・ 此処ば、ばかりにおててんとうさまが照るんじゃあるまいし。 覚えてろ。と云うなり奥さんを小突いて何か荷物でもまとめるつもりか向うの方へ行くと、奥さんは奥さんでヒョロヒョロしながら、「出て行け出て行け。とあとを・・・<宮本百合子「二十三番地」青空文庫>
  28. ・・・見ると、日の照る縁側に、まだ起きぬけのままの姿で、友達が立っている。ただのんきに佇んでいるのではない。丁度自分のところまで閉めた硝子戸によりそい、凝っと動かず注意をあつめて庭の方を視ているのだ。私は生きもの同士が感じ合う直覚で、ひとりでに抜・・・<宮本百合子「春」青空文庫>
  29. ・・・『春を待つ心』が大人にならない少女の心によって自然の日が照るように自然の雨が降るように書かれた文章とすれば『癩者の魂』はおとなの文学作品という意識によって筋をたてられ、描写され、まとめられている作品である。読者は、それらの作品が、現代ジャー・・・<宮本百合子「病菌とたたかう人々」青空文庫>
  30. ・・・どこか底の方に、ぴりっとした冬の分子が潜んでいて、夕日が沈み掛かって、かっと照るような、悲哀を帯びて爽快な処がある。まあ、年増の美人のようなものだね。こんな日にもぐらもちのようになって、内に引っ込んで、本を読んでいるのは、世界は広いが、先ず・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>