てん‐かん〔‐クワン〕【転換】例文一覧 30件

  1. ・・・そこで、彼は、わざと重々しい調子で、卑下の辞を述べながら、巧にその方向を転換しようとした。「手前たちの忠義をお褒め下さるのは難有いが、手前一人の量見では、お恥しい方が先に立ちます。」 こう云って、一座を眺めながら、「何故かと申し・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  2. ・・・ 少将は足を伸ばしたまま、嬉しそうに話頭を転換した。「また榲マルメロが落ちなければ好いが、……」<芥川竜之介「将軍」青空文庫>
  3. ・・・ 多くのことは、人の心の持方、人の境遇の転換によって、波の寄せるように、暗影と光明とを伴って一去一来しているのだ。この意味に於て、私は時が偉大な裁判者だと信ずるのである。<小川未明「波の如く去来す」青空文庫>
  4. ・・・そんな訳で自分は何かに気持の転換を求めていた。金がなくなっていたので出歩くにも出歩けなかった。そこへ家から送ってくれた為替にどうしたことか不備なところがあって、それを送り返し、自分はなおさら不愉快になって、四日ほど待っていたのだった。その日・・・<梶井基次郎「泥濘」青空文庫>
  5. ・・・時代が憂鬱ならば時代を転換せんとの意欲は起こらないのか。社会革新の情熱や、民族的使命の自覚はどこにおき忘れたのであろう。反逆の意志さえなきにまさるのである。永遠の恋、死に打ちかつ抱擁、そうしたイデーはもう「この春の流行」ではないとでも思って・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  6. ・・・今や新しい転換がきつつある。 しかし日蓮の熱誠憂国の進言も幕府のいれるところとならず、何の沙汰もなかった。それのみか、これが機縁となって、翌月二十八日夜に松葉ヶ谷草庵が焼打ちされるという法難となって報いられた。「国主の御用ひなき法師・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  7. ・・・「偉大なる転換の一年」を読んでいたシーシコフは、頭を上げて、スヰッチをひねった。電灯が消えた。番小屋は真暗になった。と、その反対に、外界の寒気と氷の夜の風景が、はっきりと窓に映ってきた。 河を乗り起してやってくる馬橇が見えた。警戒兵とし・・・<黒島伝治「国境」青空文庫>
  8.  小豆島にいて、たまに高松へ行くと気分の転換があって、胸がすツとする。それほど変化のない日々がこの田舎ではくりかえされている。しかし汽車に乗って丸亀や坂出の方へ行き一日歩きくたぶれて夕方汽船で小豆島へ帰ってくると、やっぱり安・・・<黒島伝治「四季とその折々」青空文庫>
  9. ・・・「中隊を止めて、方向転換をやらせましょうか。」 しかし、その瞬間、パッと煙が上った。そして程近いところから発射の音がひびいた。「お――い、お――い」 患者が看護人を呼ぶように、力のない、救を求めるような、如何にも上官から呼び・・・<黒島伝治「橇」青空文庫>
  10. ・・・たいていの人は、この戦争は無意味だと考えるようになった。転換。敵は米英という事になった。         × ジリ貧という言葉を、大本営の将軍たちは、大まじめで教えていた。ユウモアのつもりでもないらしい。しかし私はその言葉を、笑いを・・・<太宰治「苦悩の年鑑」青空文庫>
  11. ・・・から離れることが出来ず、きれいに気分を転換させて別の事を書くなんて鮮やかな芸当はおぼつかなく、あれこれ考え迷った末に、やはりこのたびは「右大臣実朝」の事でも書くより他に仕方がない、いや、実朝というその人に就いては、れいの三百枚くらいの見当で・・・<太宰治「鉄面皮」青空文庫>
  12. ・・・佐野君は話題の転換をこころみた。「出征したのよ。」「誰が?」「わしの甥ですよ。」じいさんが答えた。「きのう出発しました。わしは、飲みすぎて、ここへ泊ってしまいました。」まぶしそうな表情であった。「それは、おめでとう。」佐野君・・・<太宰治「令嬢アユ」青空文庫>
  13. ・・・ 第一にはカットからカット、場面から場面への転換の呼吸がいい。たとえばおつたと茂兵衛とが二階と下でかけ合いの対話をするところでも、ほんのわずかな呼吸の相違でたまらなく退屈になるはずのがいっこう退屈しないで見ていられるのはこの編集の呼吸の・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  14. ・・・ここの気分の急角度の転換もよくできている。 モーリスがシャトーの玄関をはいってから、人けのない広間をうろつきまた駆け回る場面の伴奏も抑揚変化が割合によくできていて人を飽きさせない。 医者が姫君を診察するとき、心臓の鼓動をかたどるチン・・・<寺田寅彦「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」青空文庫>
  15. ・・・これが子音転換すれば「タマ」になる。 髑髏を「されかうべ」と言う。この「され」は「曝れ」かもしれないが、ペルシア語の sar は頭である。「唐児わげ」を「からわ」という。日本紀に角子を「あげまきからわ」と訓してあるそうで、もしかする・・・<寺田寅彦「言葉の不思議」青空文庫>
  16. ・・・毎日の仕事に疲れた頭をどうにかもみほごして気持ちの転換を促し快いあくびの一つも誘い出すための一夕の保養としてはこの上もないプログラムの構成であると思われる。むしろ無意味に笑ったり、泣いたりすることの「生理的効果」のほうが実は大衆観客のみなら・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  17. ・・・に相違ないだろうが、これがヒチリキの子音転換とも見られるのがおもしろい。またポーランドのピスチャルカと称するものは六孔の縦吹きのした笛であるが、この品物自身もその名前とともにヒチリキに類するのが不思議である。 南洋のソロモン群島中のある・・・<寺田寅彦「日本楽器の名称」青空文庫>
  18. ・・・それが急に不徳義に転換するのである。問題は単に智愚を界する理性一遍の墻を乗り超えて、道義の圏内に落ち込んで来るのである。 木村項だけが炳として俗人の眸を焼くに至った変化につれて、木村項の周囲にある暗黒面は依然として、木村項の知られざる前・・・<夏目漱石「学者と名誉」青空文庫>
  19. ・・・は九十度の角度を一どきに廻ってしまった、その急廻転のために思いがけなき功名を博し得たと云う御話しは、明日の前講になかという価値もないから、すぐ話してしまう、この時まで気がつかなかったがこの急劇なる方向転換の刹那に余と同じ方角へ向けて余に尾行・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  20. ・・・言論が客観的な真理に立つ可能とその必然をますと共に、人民の生活意識が、人間らしい欲求の自覚とその行動に進むにつれ、新聞はおのずから一転換を誘われて、再び、金儲け事業としてではない新聞の内容と組織とになろうとしている。様々の形で、そういう動き・・・<宮本百合子「明日への新聞」青空文庫>
  21. ・・・今から考えれば、その欲望は、作者が感情錯乱の中からそうとは自覚しないで求めた一つの客観性、客観的態度への転換の要求であったと思う。作者は一面では現実逃避して「古き小画」に没頭したのであったが、三ヵ月にあまるこの仕事への没頭――調べたり、ノー・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」青空文庫>
  22. ・・・民主的な日本への転換がいいはじめられ、ブルジョア民主主義という言葉が、半封建的日本という表現とともに、常用語のために生れた。軍国主義の餌じきとされて来ていた日本人民の人間性・知性が重圧をとりのぞかれてむら立つように声をあげはじめたとき、自我・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  23. ・・・同時に、都会の工場が、何故こうも平和産業に転換することがのろいのであろう。これ迄は変則なインフレ景気で工員たちも遊んで暮せる金があったかもしれないが、現在、人々は遊んで餓えたいか、真面目に働いて安心して食いたいか、二つに一つの答えに迫られて・・・<宮本百合子「現実に立って」青空文庫>
  24. ・・・十五日までは勤労動員で奴隷的労働をしていた青年労働者たちが、三ヵ月ののち、そこに出来た労働組合の青年部員と組織されたにしても、その気持がすっぱりと階級の意識と階級の規律とにつらぬかれた青年労働者として転換しないのはやむを得ないことであった。・・・<宮本百合子「五〇年代の文学とそこにある問題」青空文庫>
  25. ・・・ 第一次の欧州大戦ののち世界の文学は非常に変化して、日本も文学の歴史に一つの転換を示した。 今日から明日へかけて私たちの吸う空気のなかに感じられている現代の波立ちは、その間からどんな文学を生み出して行くのだろう。そのことは、つまり私・・・<宮本百合子「古典からの新しい泉」青空文庫>
  26. ・・・ 民主日本への歴史的な転換は、当然文学にも新しい窓をひらいた。民主的な文学という欲求がある。しかし、今日のごく若い文学の働き手、または今日読者であるが未来は作家と期待される人々にとって、民主の文学といっても、なんとなしいきなりつき出され・・・<宮本百合子「作家の経験」青空文庫>
  27. ・・・人間社会と自然とは、人間による自然力の最大な受用、制御、生産力への転換としての関係にある。そこで、人間社会の構成が生産手段の進歩、複雑化するにつれて、同じ人間であっても、直接、体でもって自然と組打ち、泥にまびれ、水にぬれ、坑にもぐって働かね・・・<宮本百合子「自然描写における社会性について」青空文庫>
  28. ・・・を書き、次第に彼の宗教的転換がはじまった。民話をかきはじめ、当時のロシアのギリシャ教の神学への批判をかき、「我が懺悔」「我が宗教」「我等何をなすべきか」等を著し、好きな狩猟をも、楽しみのための殺戮に反対してやめてしまった。次から次へと生れて・・・<宮本百合子「ジャンの物語」青空文庫>
  29. ・・・「地区の人々」「転換時代」について、われわれの学ぶところもそこであると思う。例えば、「地区の人々」をよんで、読者諸君はあの作品が従来の同志小林の作品に比べて、大変落付きがあり、文章にまでも大らかな確乎性が漲りはじめていることを感じたであろう・・・<宮本百合子「小説の読みどころ」青空文庫>
  30. ・・・ ところでこのような意味の転換が行なわれるための最も重大な急所は、最初に「面」が「役割」の意味になったということである。面をただ顔面彫刻としてながめるだけならばこのような意味は生じない。面が生きた人を己れの肢体として獲得する力を持てばこ・・・<和辻哲郎「面とペルソナ」青空文庫>