てん‐し【天子】例文一覧 18件

  1. ・・・…… 昔、支那に、ある天子さまがあって、すべての国をたいらげられて、りっぱな御殿を建てて、栄誉・栄華な日を送られました。天子さまはなにひとつ自分の思うままにならぬものもなければ、またなにひとつ不足というものもないにつけて、どうかしてでき・・・<小川未明「不死の薬」青空文庫>
  2. ・・・北は身延山、南は鷹取山、西は七面山、東は天子山也。板を四枚つい立てたるが如し。此外を回りて四つの河あり。北より南へ富士河、西より東へ早河、此は後也。前に西より東へ波木井河の中に一つの滝あり、身延河と名づけたり。中天竺の鷲峰を此処に移せるか。・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  3. ・・・帽子の下に天子印の、四五間さきの空気をくんくんさせる高価な化粧品をしのばせていた。そして、彼らが市街のいずれかへ消えて行って、今夜ひっかえしてくる時には、靴下や化粧品のかわりに、ルーブル紙幣を、衣服の下にかくしている。そんな奴があった。・・・<黒島伝治「国境」青空文庫>
  4. ・・・……東京イ来てもう五十日からになるのに、まだ天子さんのお通りになる橋も拝見に行っとらんのじゃないけ。」 両人は所在なさに、たび/\こんな話を繰り返えした。天子さんのお通りになる橋とは二重橋のことだった。「今日、清三が会社から戻ったら・・・<黒島伝治「老夫婦」青空文庫>
  5. ・・・客と主人との間の話で、今日学校で主人が校長から命ぜられた、それは一週間ばかり後に天子様が学校へご臨幸下さる、その折に主人が御前で製作をしてご覧に入れるよう、そしてその製品を直に、学校から献納し、お持帰りいただくということだったのが、解ったの・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  6. ・・・しかし古い立派な人の墓を掘ることは行われた事で、明の天子の墓を悪僧が掘って種の貴い物を奪い、おまけに骸骨を足蹴にしたので罰が当って脚疾になり、その事遂に発覚するに至った読むさえ忌わしい談は雑書に見えている。発掘さるるを厭って曹操は多くの偽塚・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  7. ・・・まだまだ此外に今上皇帝と歴代の天子様の御名前が書いてある軸があって、それにも御初穂を供える、大祭日だというて数を増す。二十四日には清正公様へも供えるのです。御祖母様は一つでもこれを御忘れなさるということはなかったので、其他にも大黒様だの何だ・・・<幸田露伴「少年時代」青空文庫>
  8. ・・・ これらの點より推さばこの傳説作者は、天地人三才の思想を背景にして、之を創作せるものなるべく、漢人殊に儒教が天子に望む所は公明正大、その間に一點の私を插むなからんことなれば、この理想を堯に托してその禪讓をつくり、人道の理想を舜に、勤勉の・・・<白鳥庫吉「『尚書』の高等批評」青空文庫>
  9. ・・・ アーサーは我とわが胸を敲いて「黄金の冠は邪の頭に戴かず。天子の衣は悪を隠さず」と壇上に延び上る。肩に括る緋の衣の、裾は開けて、白き裏が雪の如く光る。「罪あるを許さずと誓わば、君が傍に坐せる女をも許さじ」とモードレッドは臆する気色も・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  10. ・・・今でも天子様などにはむやみには近づけません。私はまだ拝謁をしませんが、昔は一般から見て今の天皇陛下以上に近づきがたい階級のものがたくさんおったのです。一国の領主に言葉を交えるのすら平民には大変な異例でしょう。土下座とか云って地面へ坐って、ピ・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  11. ・・・徳川家が将軍に成った末で余り勢いは強くなかったけれども、とにかく将軍というものが政権を持っておってその上に天子様がおられるという。これは一般の法則でないという処から、習慣的に続いて来た幕府というものを引っ繰り返したというのは、その引っ繰り返・・・<夏目漱石「模倣と独立」青空文庫>
  12. ・・・支那は天子蒙塵の辱を受けつつある。英国はトランスヴールの金剛石を掘り出して軍費の穴を填めんとしつつある。この多事なる世界は日となく夜となく回転しつつ波瀾を生じつつある間に我輩のすむ小天地にも小回転と小波瀾があって我下宿の主人公はその尨大なる・・・<夏目漱石「倫敦消息」青空文庫>
  13. ・・・ たとえば往古支那にて、天子の宮殿も、茆茨剪らず、土階三等、もって安しというといえども、その宮殿は真実安楽なる皇居に非ず。かりに帝堯をして今日にあらしめなば、いかに素朴節倹なりといえども、段階に木石を用い、屋もまた瓦をもって葺くことなら・・・<福沢諭吉「教育の目的」青空文庫>
  14. ・・・月二十六日はみなの衆も存知の通り、二十六夜待ちじゃ。月天子山のはを出でんとして、光を放ちたまうとき、疾翔大力、爾迦夷波羅夷の三尊が、東のそらに出現まします。今宵は月は異なれど、まことの心には又あらはれ給わぬことでない。穂吉どのも、ただ一途に・・・<宮沢賢治「二十六夜」青空文庫>
  15. ・・・ここは天子さんのとこでそんな警部や何かのとこじゃないんだい。ずうっと奥へ行こうよ。」 私もにわかに面白くなりました。「おい、東北長官というものを見たいな。どんな顔だろう。」「鬚もめがねもあるのさ。先頃来た大臣だってそうだ。」・・・<宮沢賢治「二人の役人」青空文庫>
  16. ・・・ ねーえ と引っぱってというが如し だに おいでた だかね 居ますんね〔欄外に〕ジンゲル Roll accident adapt angel そんな字が見える 天使、天子と書いてある。細い、くろ豆のような女・・・<宮本百合子「一九二七年春より」青空文庫>
  17. ・・・けれども学校では同じ位にいじめられて居たけれども、「何んだい、天子様の御前で弾いて見せるぞ」 涙をこぼしながらそう云って居た。 家にかえるとすぐ誰が居ても斯う云って居た。「ネエ母ちゃん、芸人だって偉いんだネー、天子様の前でだ・・・<宮本百合子「つぼみ」青空文庫>
  18. ・・・京都には、かつてわが国を無階級で自由な一国に統一して合理的な政治によって万民をうるおした聖天子の末裔があらせられる。そのむかしの自由な日本はこの聖天子を幕府とおきかえることによって再生する。」この一文をよむわれらの脳裏に愛郷塾が髣髴し、社会・・・<宮本百合子「文学に関する感想」青空文庫>