てん‐しつ【天質】例文一覧 18件

  1. ・・・女の才能がこの社会と家庭生活の事情の中で伸ばされていないことは、男の天質も決して人間らしく伸ばされてはいないことを語っている。才能も殺されている。それに対して女が遺憾に思う気持と、男が遺憾に思っている気持とを互に知りあい信じあうこと、そして・・・<宮本百合子「明日をつくる力」青空文庫>
  2. ・・・ただ従来、そのひとの程度というとき、個人的な限度で、各人の天質とか仁とかいう範囲でだけ内容づけられていたものを、もっと社会的な複雑な要因の綯いまぜられたものの動きとして感じているから、そういう実質でかりに我々の程度というときには、個人に及ぼ・・・<宮本百合子「異性の間の友情」青空文庫>
  3. ・・・詩人よ、すぐれた天質を高めよ。詩が理性のうたであるときいて、しりごみした旧い詩人たちの素朴さ。わたしたちの理論が情熱の美感と一致するとき――実感の新しい誕生によってこそ、わたしたちのささやかな存在も人類のよろこびの小さい花となります。又して・・・<宮本百合子「鉛筆の詩人へ」青空文庫>
  4. ・・・深田氏は、くねくね式説話には向かぬ天質の人に生れているのではなかろうか。やっぱり正面から当るたちではなかろうか。深田氏はこの作を書き終ることで、その点をどう考え、作家としての自己をどう発見しておられるか。私はそれらのことを、考えるのである。・・・<宮本百合子「落ちたままのネジ」青空文庫>
  5. ・・・これ等はただ、その人の内奥にある人格的な天質がそれ自身で見出すべき道に暗示を与え、自身の判断を待つ場合、思考の内容を豊富にするという点にのみ価値を持っていると思います。 私は、過去に多くの人々が真愛に達し、輝きの自体と成ったのを知ってい・・・<宮本百合子「偶感一語」青空文庫>
  6. ・・・を観て深く刻まれた感動を、ケーテが四年の間じっと持ち続けて、ついに作品にまとめたということは、ケーテという婦人画家の天質の一つの特質を語るものではないだろうか。モティーフを、自身の感情の奥深くまで沈潜させ、すっかりわがものとしきらなければ作・・・<宮本百合子「ケーテ・コルヴィッツの画業」青空文庫>
  7. ・・・ブランデスは品がいい天質のひとですね、私はやはり同じ作家の研究について、そういう感じをうけました。そして、ところどころで思わずにやついた。ブランデスはあんなに鋭く背景となった十八世紀時代の動きを分析していながら『人間喜劇』の作者が、上品な詩・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  8. ・・・ある女性が詩人であるということと、作家であるということとのちがいをきめるのは、文学の天質のちがいであることは明瞭である。そのように、小説をかく婦人と児童のために書く婦人とは、めいめいの文学の天質のちがいに立っているのであって、程度の高低だの・・・<宮本百合子「子供のためには」青空文庫>
  9. ・・・を熟読して、春のやおぼろは自身の天質がこれからの小説を書いてゆくには適していないことを知って、遂に小説をやめたということが、先生自身の回想として書かれていた。 この插話は、おどろくような自分を見る眼のあきらかさと同時に、聰明というものの・・・<宮本百合子「時代と人々」青空文庫>
  10. ・・・往年、その事大主義的な天質に従って学生運動の頭領となった一人の男が、同じ天質に従って今日は文化に対する統制の旗ふりとなっている現実である。小林多喜二的なものや芥川龍之介的なものが、発展的に批判されなければならないのは、もとより明かであるが、・・・<宮本百合子「数言の補足」青空文庫>
  11. ・・・坪内逍遙が戯曲と沙翁劇の翻訳に自分の一生を方向づける決心をしたのは、この二葉亭の小説の深い芸術の力にうたれて、小説家として自分の天質のうちにある浅薄さを知ったためであった。逍遙は率直に自分でそのことを書いている。 ところが、文学の仕事と・・・<宮本百合子「生活者としての成長」青空文庫>
  12. ・・・きわめて柔軟で同情に富む天質をもって生れ、従ってその時代の人間性を強調する息吹きにも感じ易かったシドニー・ハーバートは、フロレンスの指揮と指導の性質にひきよせられ、公共の目的のためには全く献身的な独特な友情を保った。そのほか、このグループの・・・<宮本百合子「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」青空文庫>
  13. ・・・の作者が、その真率でたゆみない天質によって、社会現象に対しては常にまともから相応ずる生き方で、今日までを打ち貫いて来ていることは、作品を一読して、その基調を明かに感じるのである。それでいながら、この作者には、口を開いてそのような経験を語ると・・・<宮本百合子「文学における古いもの・新しいもの」青空文庫>
  14. ・・・雄壮という資質は腕力的ということでないのは知れきったことであるし、真の雄壮は、感傷的な自己陶酔を最も厭い嫌って、真実を愛そうとする天質であることも、言を俟たないであろう。 国民の文学という場合、自身の雄壮を自身の耳に向ってうたう感懐に立・・・<宮本百合子「文学は常に具体的」青空文庫>
  15. ・・・で朝から夜までこき使われる者、理由もなく殴られ得る下積の存在として、天質の豪気さ、敏感さ、熟考的な傾向と共に、少年ゴーリキイの生活及び人間に対する観察力は非常に発達している。殆ど辛辣でさえある。現実は強く彼を鍛え、書物に対する判断、芸術にお・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  16. ・・・けれども、屑拾い小僧であり、板片のかっぱらいであった小さいゴーリキイを、かっぱらいの徒党のうちへつなぎきりにしなかった彼の天質の健全な力が、この場合にも一つの新しい疑問の形をとってその働きを現わした。これらの連中は、いつ、何を話してもとどの・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」青空文庫>
  17. ・・・マリア自身、いかにもロシアの女らしいゆたかな生活力と天質に燃えながら、しかも同時代のロシアの歴史の精華と何の接触ももつことができず、それどころか、全く誤った見かたにおかれた彼女の境遇を私は哀れに思う。 当時全ヨーロッパが最良の精力をつく・・・<宮本百合子「マリア・バシュキルツェフの日記」青空文庫>
  18. ・・・で教育小説をかいたと云われているけれど、この作者の天質にはロマンティックな詩人としての要素が決定的なものとして働いていると思う。「青春彷徨」の結末にしろ「車輪の下」の最後にしろ、ヘッセは、誠意をこめて辿って来た精神と肉体の葛藤の終りを、いつ・・・<宮本百合子「若き精神の成長を描く文学」青空文庫>