でん‐しゅう〔‐シフ〕【伝習】例文一覧 20件

  1. ・・・すなわち彼には、人間の偉大に関する伝習的迷信がきわめて多量に含まれていたとともに、いっさいの「既成」と青年との間の関係に対する理解がはるかに局限的であった。そうしてその思想が魔語のごとく当時の青年を動かしたにもかかわらず、彼が未来の一設計者・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  2. ・・・特にワグマンについて真面目に伝習したとは思われないが、ブラシの使い方や絵具の用法等、洋画のテクニックの種々の知識を教えられた事はあるようだ。明治八、九年頃の画家番附に淡島椿岳の上に和洋画とあるのを以て推すと、洋画家としてもまた相応に認められ・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  3. ・・・Huyghens, Young が微粒子説を打破したのもファラデーが action at a distance を無視したのでも、アインスタインが時と空間に関する伝習的の考えを根本から引っくり返して相対率原理の基礎を置いたのでも、いずれにし・・・<寺田寅彦「科学上における権威の価値と弊害」青空文庫>
  4. ・・・ 津田君といえども伝習の羈絆を脱却するのは困難である。あるいは支那人や大雅堂蕪村やあるいは竹田のような幻像が絶えず眼前を横行してそれらから強い誘惑を受けているように見える。そしてそれらに対抗して自分の赤裸々の本性を出そうとする際に、従来・・・<寺田寅彦「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」青空文庫>
  5. ・・・その語彙の中に連想と暗示の極度な圧縮が必要であるということ、それからまたそういう圧縮が可能となるための基礎条件として日本人のような特異な自然観が必要であること、なおその上に環境条件として古来の短詩形の伝習によって圧縮が完成され、そうしてでき・・・<寺田寅彦「俳句の精神」青空文庫>
  6. ・・・定見とは伝習の道徳観と並に審美観とである。これを破却するは曠世の天才にして初めて為し得るのである。 わたしの眼に映じた新らしき女の生活は、あたかも婦人雑誌の表紙に見る石版摺の彩色画と殆撰ぶところなきものであった。新しき女の持っている情緒・・・<永井荷風「十日の菊」青空文庫>
  7. ・・・ この学校は中学の内にてもっとも新なるものなれば、今日の有様にて生徒の学芸いまだ上達せしにはあらざれども、その温和柔順の天稟をもって朝夕英国の教師に親炙し、その学芸を伝習し、その言行を聞見し、愚痴固陋の旧習を脱して独立自主の気風に浸潤す・・・<福沢諭吉「京都学校の記」青空文庫>
  8. ・・・ チェホフは小市民的卑俗さ、愚劣な伝習というようなものを常に鋭く諷刺し、その下らなさ加減を興味深い短篇の中へ素敵な技術でもり込んでいる。然し、チェホフの諷刺は、どこまでも、自由主義人道主義的インテリゲンチアの諷刺だ。というのは、チェホフ・・・<宮本百合子「新たなプロレタリア文学」青空文庫>
  9. ・・・義民にしろ、英雄にしろ、それに対する封建の伝習は否定して、しかも猶民衆の要求の焦点として歴史のなかに存在するものではないだろうか。そして、それは甚兵衛の場合のような周囲の必然と個人の心理を動機とするより、もっと異った人間と歴史の他の積極面で・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  10. ・・・ 日本のような社会の伝習の中では、現在まだ男の幸福は、女として女が求めている幸福への条件を承認しないことで守られている部分もあるというような、哀れな危っかしい状態に置かれている。男も女も互の幸福については、互を自身の冒険として見なければ・・・<宮本百合子「幸福の感覚」青空文庫>
  11. ・・・ 感化院では、よくなったと認められる少年たちを小僧や徒弟に出し、この世で一本立ちになる修業をさせるのであるが、小僧、徒弟の日暮しは、現在の日本では、まだまだ封建的な伝習の中につながれている。その見とおしに向って、一定の希望をつなぎ、常識・・・<宮本百合子「作品のテーマと人生のテーマ」青空文庫>
  12. ・・・其上に、長い伝習と、不具な教育とは、女性自らの体力と智力とをも束縛して居ります。従って、現代の日本の女性の裡には無数の夭折する――心理的の意味に於て――力が埋められて居ります。何物をも産出する事の不可能なよき魂がございます。よく成ろうとする・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  13. ・・・困窮な下層小市民の家庭から出て、大学教育まで受け、時代の波に洗われて親が描いたような出世の道は辿らなかった一青年が、遂に自分の教養、知性のまやかしものであることに思い到って、出生した社会層の伝習とその粗野な表現に新しい人間的値うちを見出す心・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  14. ・・・ 婦人を男と区別しては考えていない、ということは、男尊女卑的な過去の伝習に対して、何歩か歩み出された考えかたである。けれども、単純に男と女とがかりに平等であったとして、それで社会の幸福と女の幸福とは創り出されて行くものだろうか。かりに男・・・<宮本百合子「女性の現実」青空文庫>
  15. ・・・ 斯うして、荒れやすい土を耕し、意地の悪い冬枯と戦うにも只、昔からの伝習だの、自分の小さい経験などを頼む事ほかしない。此処いらの純農民は、随分と貧しい生活をして居る。 養蚕は比較的一般に行われて、随って桑畑も多い。けれ共、大業にする・・・<宮本百合子「農村」青空文庫>
  16. ・・・しかも、それらの勇敢な良心的な若い息子や娘等の努力をも、未だ打挫くだけ、暗い伝習の力はつよい。岩倉侯の娘が転向した後、自殺した。無限の語られざる訴えを、私は心に銘じて今日も忘れ得ないのである。 東郷元帥というひとが、日本の資本主義の発展・・・<宮本百合子「花のたより」青空文庫>
  17. ・・・ 然し、例えば彼女のように、或る程度の人格的覚醒と同時に、伝習的虚弱さを具有する今日の多数の女性の為には、少くとも、生活の根本動機を自己の心意に置き得る丈の役には立つと思います。 良心の疚しさを、種々な自他の慣習的弁護で云い繕いなが・・・<宮本百合子「ひしがれた女性と語る」青空文庫>
  18. ・・・ 結局常識の世界の方が住みよい、というような言葉によって表現される作家の或る近頃の感情や市民的平民的な日常の伝習の姿に対して和して同ぜず式な或るポーズで対していることと、作家が今日の現実の常識を描き、大衆を描こうとする情熱とが一つもので・・・<宮本百合子「文学の大衆化論について」青空文庫>
  19. ・・・ 私たちが、今日の時々刻々を歴史として明確に自分の生活の足の裏へじかに感覚しつつ生きてゆく習慣に馴らされていないということは、人間の歴史としての、飾らない歴史の感情に馴らされて来ていない過去の思考の伝習の影響でもある。 歴史が、ほかな・・・<宮本百合子「文学のディフォーメイションに就て」青空文庫>
  20. ・・・ところが、日が経つにつれて殆ど総ての職業の平凡さ、種々の職場内の伝習の固陋さ、自分にあてがわれる仕事の詰らなさが遣り切れなくなって来る。いろいろの意味で発展的な系統的な部署へつけられる娘は少くて、大概は機械的な、力のあまる、単調な場所におく・・・<宮本百合子「若い娘の倫理」青空文庫>