てん‐ぷく【転覆/×顛覆】例文一覧 22件

  1. ・・・……いかがわしいが、生霊と札の立った就中小さな的に吹当てると、床板ががらりと転覆って、大松蕈を抱いた緋の褌のおかめが、とんぼ返りをして莞爾と飛出す、途端に、四方へ引張った綱が揺れて、鐘と太鼓がしだらでんで一斉にがんがらん、どんどと鳴って、そ・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  2. ・・・になったりポンプの水を被ったりした商品、歪げたり破れたりしたボール箱の一と山、半破れの椅子や腰掛、ブリキの湯沸し、セメント樽、煉瓦石、材木の端片、ビールの空壜、蜜柑の皮、紙屑、縄切れ、泥草履と、塵溜を顛覆返したように散乱ってる中を煤けた顔を・・・<内田魯庵「灰燼十万巻」青空文庫>
  3. ・・・この絵を描いたろうそくを山の上のお宮にあげて、その燃えさしを身につけて、海に出ると、どんな大暴風雨の日でも、けっして、船が転覆したり、おぼれて死ぬような災難がないということが、いつからともなく、みんなの口々に、うわさとなって上りました。・・・<小川未明「赤いろうそくと人魚」青空文庫>
  4. ・・・この絵を描いた蝋燭を山の上のお宮にあげてその燃えさしを身に付けて、海に出ると、どんな大暴風雨の日でも決して船が顛覆したり溺れて死ぬような災難がないということが、いつからともなくみんなの口々に噂となって上りました。「海の神様を祭ったお宮様・・・<小川未明「赤い蝋燭と人魚」青空文庫>
  5. ・・・中にも極楽寺の良観は、日蓮は宗教に名をかって政治の転覆をはかる者であると讒訴した。時節柄当局の神経は尖鋭となっていたので、ついにこの不穏の言動をもって、人心を攪乱するところの沙門を、流罪に処するということになった。 これは貞永式目に出家・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  6. ・・・列車を顛覆され、おまけに、パルチザンの襲撃を受けて、あわくって逃げだしたこともある。傷は、武器と戦闘の状況によって異るのだ。鉄砂の破片が、顔一面に、そばかすのように填りこんだ者は爆弾戦にやられたのだ。挫折や、打撲傷は、顛覆された列車と共に起・・・<黒島伝治「氷河」青空文庫>
  7. ・・・けれども、かなりの重傷で、とても助からぬと見て竹青は、一声悲しく高く鳴いて数百羽の仲間の烏を集め、羽ばたきの音も物凄く一斉に飛び立ってかの舟を襲い、羽で湖面を煽って大浪を起し忽ち舟を顛覆させて見事に報讐し、大烏群は全湖面を震撼させるほどの騒・・・<太宰治「竹青」青空文庫>
  8. ・・・そのおもなる原因は、畢竟そういう天災がきわめてまれにしか起こらないで、ちょうど人間が前車の顛覆を忘れたころにそろそろ後車を引き出すようになるからであろう。 しかし昔の人間は過去の経験を大切に保存し蓄積してその教えにたよることがはなはだ忠・・・<寺田寅彦「天災と国防」青空文庫>
  9. ・・・聾盲とみに耳目を開きて声色に逢うが如く、一時は心事を顛覆するや必せり。心事顛覆したり、また判断の明識あるべからず。かくの如きはすなわち、辛苦数年、順良の生徒を養育して、一夜の演説、もってその所得を一掃したるものというべし。 ただにこれを・・・<福沢諭吉「経世の学、また講究すべし」青空文庫>
  10. ・・・ これより余は著述に従事し、もっぱら西洋の事情を日本人に示して、古学流の根底よりこれを顛覆せんことを企てたる、その最中に、王政維新の事あり。兵馬匆卒の際、言論も自由なれば、思うがままに筆を揮うてはばかるところなく、有形の物については物理・・・<福沢諭吉「成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ」青空文庫>
  11. ・・・「それがら木折ったり転覆したりさな。」「それから、それからどうだい。」「家もぶっこわさな。」「それから。それから、あとはどうだい。」「あかしも消さな。」「それからあとは? それからあとは? どうだい。」「シャップ・・・<宮沢賢治「風の又三郎」青空文庫>
  12. ・・・「それがら、樹折ったり転覆したりさな。」「それから? それから、どうだい。」「それがら、稲も倒さな。」「それから? あとはどうだい。」「家もぶっ壊さな。」「それから? それから? あとはどうだい。」「砂も飛ばさな・・・<宮沢賢治「風野又三郎」青空文庫>
  13. ・・・なぜならビジテリアン諸君の主張は比較解剖学の見地からして正に根底から顛覆するからである。見給え諸君の歯は何枚あります。三十二枚、そうです。でその中四枚が門歯四枚が犬歯それから残りが臼歯と智歯です。でそんなら門歯は何のため、門歯は食物を噛み取・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  14. ・・・この活動の間にマリアは多くの危険にさらされ、一九一五年の四月のある晩は、病院からの帰り、自動車が溝に落ちて顛覆して負傷したこともあった。が、娘たちがそのことを知ったのは再び彼女が出発した後、偶然化粧室で血のついた下着を見つけ、同時に新聞がそ・・・<宮本百合子「キュリー夫人」青空文庫>
  15. ・・・ ジャーナリズムにはあらわれることのなかったこの期間の努力で、民主的文学の基本的理解の転覆は防がれたのであった。昨年の新日本文学会第五回大会で行われた窪川鶴次郎の報告「批評の任務」は、少くともそのようないきさつを経た上での報告であった。・・・<宮本百合子「現代文学の広場」青空文庫>
  16. ・・・しかし大臣となって、いかな魔法のためか、その椅子はぐらつきつつ顛覆しないときまってみると、なかなか人間をはなれた発言をする。物価庁が、原稿料を基準に、という意見を発表するとき、湛山の役所風なヴァリエーションを感ずる。表通りは固めて、裏はふつ・・・<宮本百合子「豪華版」青空文庫>
  17. ・・・明治維新は近代のヨーロッパ社会に勃興した市民階級が封建社会に君臨した王権を転覆し歴史を前進させた革命ではなかった。日本のブルジョアジーが薩長閥によって作られた政府の権力と妥協し、形を変えて現れた旧勢力に屈従することによって資本主義が社会へ歩・・・<宮本百合子「女性の歴史」青空文庫>
  18. ・・・の母権顛覆が起ったのは、バッハオーフェンがエスキュロスの悲劇の章句によって説明したように女神アテネが良人アガメムノンと良人の父とを殺害した母親クリテムネストラを殺して復讐した息子オレステスを無罪にしたことから由来しているというよりは、人間の・・・<宮本百合子「先駆的な古典として」青空文庫>
  19. ・・・船が難破しかかったとき、最後にその船を転覆させて自分たちの命もすてさせてしまうのは、舷の傾いた方へ我を失って塊りすがりつく未訓練な乗客の重量である。その通りのことが生じて来る。批判は発展的にされず、対比的にされる。ああではない、だからこう、・・・<宮本百合子「全体主義への吟味」青空文庫>
  20. ・・・爆発した線路で汽車が顛覆しそうになっている物凄い絵が描いてある。そこで蟹も我慢出来ずに鋏で突いた。これが満蒙出兵だそうです。すると、猿は、虎、狼などが集まっている国際連盟にかけつけて、告げ口をしている。しかし、蟹は眼尻をつりあげて柿の木の下・・・<宮本百合子「「モダン猿蟹合戦」」青空文庫>
  21. ・・・という人生根本原則が顛覆しない限り、あらゆる人生の美、醜に面してつねに沈着なのである。 八月某日。デイリイ・ミラアに面白い記事がある。ロンドン市の「疲れた婦人の休養所」の一つがX嬢その他数人の献金によって数年来経営されて来た。ところ・・・<宮本百合子「ロンドン一九二九年」青空文庫>
  22. ・・・ 勘次の身体は秋三を抱きながら、どっと後の棺を倒して蒲団の上へ顛覆した。安次の半身は棺から俯伏に飛び出した。四つの足は跳ね合った。安次の死体は二人に蹴りつけられる度毎に、へし折れた両手を振って身を踊らせた。と、間もなく、二人は爆ぜた栗の・・・<横光利一「南北」青空文庫>