てん‐ぶん【天分】例文一覧 29件

  1. ・・・ これは、私にとって、特殊的な場合でありますが、長男は、来年小学校を出るのですが、図画、唱歌、手工、こうしたものは自からも好み、天分も、その方にはあるのですが、何にしても、数学、地理、歴史というような、与えられたる事実を記憶したりする学・・・<小川未明「男の子を見るたびに「戦争」について考えます」青空文庫>
  2. ・・・この点は、成人を相手とする読物以上に骨の折れることであって、技巧とか、単なる経験有無の問題でなく天分にもよるのであるが、また、いかに児童文学の至難なるかを語る原因でもあります。 もし、その作者が、真実と純愛とをもって世上の子供達を見た時・・・<小川未明「新童話論」青空文庫>
  3.  主義を異にし、主張を異にしている作家は、各自の天分ある主観によって人生を異った方面から解釈している。材料を異った方面から採って来ている。或主義と或主義と相容れないのは、人生に対する解釈が異い、観方が異うからである。或る作家は社会に生起・・・<小川未明「若き姿の文芸」青空文庫>
  4. ・・・長谷川も凌いでいた、富岡の塾でも一番出来が可かった、先生は常に自分を最も愛して御坐った、然るに自分は家計の都合で中学校にも入る事が出来ず、遂に官費で事が足りる師範学校に入って卒業して小学教員となった。天分に於ては決して彼等二三子には、劣らな・・・<国木田独歩「富岡先生」青空文庫>
  5. ・・・婦人も男子と同じく、その天分にしたがって、社会生活の職分を分担すべきである。それによって生活の充実と向上とまた個性の発展とをはかるべきである。実際今日においては職業婦人は有閑婦人よりも、その生命の活々しさと、頭脳の鋭さと、女性美の魅力さえも・・・<倉田百三「婦人と職業」青空文庫>
  6. ・・・ 勝治は父に似ず、からだも大きく、容貌も鈍重な感じで、そうしてやたらに怒りっぽく、芸術家の天分とでもいうようなものは、それこそ爪の垢ほども無く、幼い頃から、ひどく犬が好きで、中学校の頃には、闘犬を二匹も養っていた事があった。強い犬が好き・・・<太宰治「花火」青空文庫>
  7. ・・・とか、最大公約数とかいったようなものになるという、そういう本質的内在的な理由もあったであろうが、また一方では、はじめはただ各個人の主観的詠嘆の表現であったものが、後に宮廷人らの社交の道具になり、感興や天分の有無に関せずだれも彼もダンスのステ・・・<寺田寅彦「俳句の型式とその進化」青空文庫>
  8. ・・・同時にいたずら好きの天分をも発揮して、ガス管内に空気を押し込み、先生の祈祷が始まると燈火が自然に消えるという趣向を案出し実行した。その頃彼の父は彼に農業の趣味を養うために郷里で豚を飼わせ、その収入を彼の小使銭に充てた。この銭は多くは化学材料・・・<寺田寅彦「レーリー卿(Lord Rayleigh)」青空文庫>
  9. ・・・しかしこれは決して凡兆という人の特異の天分を無視してこの人をこれだけの点から非難する意では毛頭ないのである。この人の句がうまく適度に混入しているために一巻に特殊な色彩の律動を示していることは疑いもないことであるが、ただもし凡兆型の人物ばかり・・・<寺田寅彦「連句雑俎」青空文庫>
  10. ・・・刺激に対して急劇な反応を示さないのはこの男の天分であるが、それにしても彼の年齢と、この問題の性質から一般的に見たところで、重吉の態度はあまり冷静すぎて、定量未満の興味しかもちえないというふうに思われた。自分は少し不審をいだいた。 元来自・・・<夏目漱石「手紙」青空文庫>
  11. ・・・今日の作物がこれまで進歩したのは作家の天分にもよるだろうけれども大部分は競争の賜物だろうと考えます。英国の政党が立憲政治の始まった時から二派に分れている。あれは偶然のような必然のような歴史を有しているが相互に相互を研究し啓発すると云う大原則・・・<夏目漱石「文壇の趨勢」青空文庫>
  12. ・・・しかし、彼のすべての芸術的天分、プロレタリア解放への永い年月の実践を、最も効果的に国際的に輝かしく未来に向って意味をあらしめたものこそは、ロシアにおけるプロレタリアートの勝利であったことについては、沈黙を守っている。 われわれはゴーリキ・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>
  13. ・・・家庭のまわりのものに影響の及ぼさぬ程の熱気とぼしい存在で、巨大な芸術的天分を発揮し得よう筈はなく、それらの人々の子は誇りをもって父を語ることこそ自然である。だが私は、最も人間性の発展、独自性、時代性、そこに生じるさまざまの軋轢、抗争の価値を・・・<宮本百合子「鴎外・漱石・藤村など」青空文庫>
  14. ・・・「志賀さんが男で、あれだけの天分と、経済力とをもって自分の境地を守り得るのと、一人の女の作家が、いまの世の中でめぐり合うものとは、全くちがうんじゃないでしょうか。防ぎきれるものですか、否応なくこわされますよ。内からも外からも。だからこそ・・・<宮本百合子「折たく柴」青空文庫>
  15. ・・・ 種々な点から反省して見て、自分には、今日女性が作家としてまだ完全に近い発達を遂げていないのは、箇性の芸術的天分と、過去の文化的欠陥が遺伝的に女性の魂そのものに与えた、深い悲しむべき影響との間に起る、微細な、然し力強い矛盾に原因している・・・<宮本百合子「概念と心其もの」青空文庫>
  16. ・・・ 窪川稲子の業績や将来の発展というものは、それ故すべての積極的な、忍耐づよい、天分あるプロレタリア作家の生涯に対して云い得るように、全く階級の力の多岐多難な発展の過程とともに語られて初めて本質に迫り得るものであると思う。歴史の新たな担い・・・<宮本百合子「窪川稲子のこと」青空文庫>
  17. ・・・で豊富な生活力が自然の豊かさそのままの活力と現実性とであふれ動く姿として母の生涯を描いたと同じように、世代の動きによってスーザンによりひろい知的な領域と芸術の天分とをもたらした。そして、やはり、判断と行動との原動力を、常に「どうしてもしなけ・・・<宮本百合子「『この心の誇り』」青空文庫>
  18. ・・・非常に天分ある大作家でも、矛盾相剋するブルジョア階級の世界観の環内に止っているところにあっては、文学的練磨がつみ重ねられ、才能が流暢に物語り出すにつれ益々その作家に現れる矛盾は、その作家自身にとって克服し難い妥協なく顕著なものとなって来る。・・・<宮本百合子「作家研究ノート」青空文庫>
  19. ・・・文学的才能、音楽、絵画の天分が、強い透明な焔で科学的天稟の間に統一され切っているのではない。寺田氏は、豊富な自分の才能のあの庭、この花園と散策する姿において、魅力を感じる人々に限りない愛着を抱かせているのである。 チンダルのアルプス紀行・・・<宮本百合子「作家のみた科学者の文学的活動」青空文庫>
  20. ・・・ 芸術家としての素質に就いて女性をどう観るかという事に就いては、私は女性にも十分に芸術家になり得る天分は賦与されていると思います。趣味の上から、その生活に湿いのある点から、或いはその環境が女性の上に及ぼす体験から、到底男性に持ち得ないと・・・<宮本百合子「女流作家として私は何を求むるか」青空文庫>
  21. ・・・全的人間性の登場の可能に対する観念そのものさえ蹂躙しつつ、階級社会の時々刻々の現実生活はどのようにわれわれをゆがめ、才能や天分を枯渇せしめているかという憤ろしい今日の実際を、ローゼンタールの生活と文学における性格の研究の論文はくっきりと抉り・・・<宮本百合子「新年号の『文学評論』その他」青空文庫>
  22. ・・・そしてこういう表現をとる生活への心配りが、やはりこの天分ゆたかな婦人画家の努力の一面となって、今日あらしめているところに女の生活への伝統の力がうかがわれる。 計画された意思のつよさという点で、藤村を何となし思いくらべさせる。・・・<宮本百合子「「青眉抄」について」青空文庫>
  23. ・・・よい天分、然し芸で立つ気はない。男、弟子の一人ですいて居るらしいのを知りもちかけ、金を出させようとす。 男、心のことと思う。ソゴし、駄目。 友達であった女、神戸に鳥屋をして居、それを、男のために売りたい。相談して岡田をひっかけ買わす・・・<宮本百合子「一九二五年より一九二七年一月まで」青空文庫>
  24. ・・・ メイエルホリドの天分の豊かなこと。それはソヴェトの観衆が十分知りぬいているどころか、世界に知られている事実。常に研究的で、新しい試みに対して大胆であること。それも、例えば一九二一年から二八、九年までの仕事ぶりを見れば分る。メイエルホリ・・・<宮本百合子「ソヴェトの芝居」青空文庫>
  25. ・・・人間が、或る場合自己の天分によって却って身を過つことがあるように、一国にしても、或る時には、その是とすべき伝統的習俗によって、却って真実な人間的生活に破綻を生ぜしめることが多くあります。それ故、徒に新奇を競うて、外国人の営む生活の形骸を真似・・・<宮本百合子「男女交際より家庭生活へ」青空文庫>
  26. ・・・何故、左様な天分を与えて生んで呉れた! 涙が、押えても流れた。母と自分の為、一生の用意の為、自分は、心のあらいざらいの熱誠をこめて、話した。 母も泣かれる。 私なんかは、如何う云われようが、何と思われようがお前の芸術さえ、崇高な・・・<宮本百合子「二つの家を繋ぐ回想」青空文庫>
  27. ・・・ゲーテは女との結合、離別に際していつも自身の天才に対する、或る点では坊ちゃんらしい自尊自衛から自由になり得ていないのであるが、ゴーリキイは自分の才能と女の天分との比較裁量などということはしていない。一人の女としてその女なりの生活を認め、同時・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」青空文庫>
  28. ・・・――お前にどんな天分があるか。お前の自信が虫のよいうぬぼれでない証拠はどこにあるのだ。 そこで私は考える。――私には物に食い入るかなりに鋭い眼がある。一つの人格、一つの世相、一つの戦い、その秘められた核を私は一本の針で突き刺して見せる。・・・<和辻哲郎「生きること作ること」青空文庫>
  29. ・・・ 私はこの種の僧侶のうち、特に天分の豊かであった少数のものが、単に「受くる者」「味わう者」である事に満足せずして、進んで「与うる者」「作る者」となったことを、少しの不自然もなく想像し得ると思う。 芸術鑑賞と宗教的帰依とが一つであった・・・<和辻哲郎「偶像崇拝の心理」青空文庫>