でん‐わ【電話】例文一覧 30件

  1. ・・・工場から電話です。今日あちらへ御見えになりますか、伺ってくれろと申すんですが………」 洋一が店へ来ると同時に、電話に向っていた店員が、こう賢造の方へ声をかけた。店員はほかにも四五人、金庫の前や神棚の下に、主人を送り出すと云うよりは、むし・・・<芥川竜之介「お律と子等と」青空文庫>
  2. ・・・ 書類が一山片づいた後、陳はふと何か思い出したように、卓上電話の受話器を耳へ当てた。「私の家へかけてくれ給え。」 陳の唇を洩れる言葉は、妙に底力のある日本語であった。「誰?――婆や?――奥さんにちょいと出て貰ってくれ。――房・・・<芥川竜之介「影」青空文庫>
  3. ・・・……御威勢のほどは、後年地方長官会議の節に上京なされると、電話第何番と言うのが見得の旅館へ宿って、葱のおくびで、東京の町へ出らるる御身分とは夢にも思われない。 また夢のようだけれども、今見れば麺麭屋になった、丁どその硝子窓のあるあたりへ・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  4. ・・・……一見は利かずとも、電話で言込めば、と云っても、威勢よく酒の機嫌で承知をしない。そうして、袖たけの松の樹のように動かない。そんな事で、誘われるような婦ではなかったのに、どういう縁か、それでは、おかみさんに聞いて許しを得て。……で、おも屋に・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  5. ・・・電灯が試験的に点火されても一時間に十度も二十度も消えて実地の役に立つものとは誰も思わなかった。電話というものは唯実験室内にのみ研究されていた。東海道の鉄道さえが未だ出来上らないで、鉄道反対の気焔が到る処の地方に盛んであった。 二十五年前・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  6. ・・・また、電話をかけることを習いました。まだ田舎にいて、経験がなかったからです。山本薪炭商の主人は、先生からきいたごとく、さすがに苦労をしてきた人だけあって、はじめて田舎から出てきた賢一のめんどうをよくみてくれました。薪や炭や、石炭を生産地から・・・<小川未明「空晴れて」青空文庫>
  7. ・・・くて、路地の両側の家は、たとえば三味線の師匠の看板がかかっていたり、芝居の小道具づくりの家であったり、芸者の置屋であったり、また自前の芸者が母親と猫と三人で住んでいる家であったりして、長屋でありながら電話を引いている家もあるというばかりでな・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  8. ・・・「今、司令部から電話掛って来て、あわてて駈けつけて行きやがった。赤鬼みたいに酔っぱらっとったが、出て行く時は青鬼みたいに青うなっとったぜ。どうやら、日本は降伏するらしい。明日の正午に、重大放送があるということだ」「えっ? 降伏……?・・・<織田作之助「昨日・今日・明日」青空文庫>
  9. ・・・ すぐにも電報と思ったが、翌朝方丈の電話を借りさせて、東京の弟の勤め先きへすぐ来るようにとかけさせた。弟の来たのは昼ごろだった。「じつはね、Fを国へ帰そうと思ってね、……いや別にそんなことで疳癪を起したというわけでもないんだがね、じ・・・<葛西善蔵「父の出郷」青空文庫>
  10. ・・・私は弟からの電話でこの八日に出てきたが、それから六日目の十三日に父は死んだのだった。「やっぱし死にに出てきたようなものだったね。ああなるといくらかそんなことがわかるものかもしれないな。それにしても東京へ出てきて死んでくれてよかった。田舎・・・<葛西善蔵「父の葬式」青空文庫>
  11. ・・・        下 此二人の少女は共に東京電話交換局でから後も二三度会って多少事情を知って居る故、かの怪しい噂は信じなかったが、此頃になって、或という疑が起らなくもなかった。というのもお秀の祖母という人が余り心得の善い人でな・・・<国木田独歩「二少女」青空文庫>
  12.  京橋区三十間堀に大来館という宿屋がある、まず上等の部類で客はみな紳士紳商、電話は客用と店用と二種かけているくらいで、年じゅう十二三人から三十人までの客があるとの事。 ある年の五月半ばごろである。帳場にすわっておる番頭の・・・<国木田独歩「疲労」青空文庫>
  13. ・・・ 私は自分の娘が監獄にはいったからといって、救援会にノコ/\やってくるのが何だかずるいような気がしてならないのですが…… 娘は二三ヵ月も家にいないかと思っていると、よく所かつの警察から電話がかゝってきました。お前の娘を引きとるの・・・<小林多喜二「疵」青空文庫>
  14. ・・・ 龍介は街に入ると、どこかのカフェーに入って、Sに電話をかけてみようと思った。が彼の通ってゆく途中の一軒一軒が、彼を素直な気持で入らせなかった。結局、彼は行きつけの本屋に寄って、電話を借り、Sにかけた。交換手がひっこんで、相手が出る、そ・・・<小林多喜二「雪の夜」青空文庫>
  15. ・・・今までかけちごうて逢わざりければ俊雄をそれとは思い寄らず一も二も明かし合うたる姉分のお霜へタッタ一日あの方と遊んで見る知恵があらば貸して下されと頼み入りしにお霜は承知と呑み込んで俊雄の耳へあのね尽しの電話の呼鈴聞えませぬかと被せかけるを落魄・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  16. ・・・「いずれ会社のものを伺わせます、その節は電話で申上げますッて、そう言ってくれ給え」 と附添えて言った。大塚さんが客を謝るというは、めずらしいことだった。 書生が出て行った後、大塚さんはその部屋の内を歩いて、そこに箪笥が置いて・・・<島崎藤村「刺繍」青空文庫>
  17. ・・・章坊は、「今度は電話だ」と言って、二つの板紙の筒を持って出てくる。筒の底には紙が張ってあって、長い青糸が真ん中を繋いでいる。勧工場で買ったのだそうである。章坊は片方の筒を自分に持たせて、しばらく何かしら言って、「ね、解ったでしょう?・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  18. ・・・たとえば、僕のうちの電話番号はご存じの通り4823ですが、この三桁と四桁の間に、コンマをいれて、4,823と書いている。巴里のように 48 | 23 とすれば、まだしも少しわかりよいのに、何でもかでも三桁おきにコンマを附けなければならぬ、と・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  19. ・・・やがて佐吉さんから私に電話がかかって来て、れいの所へ来いということだったので、私はほっと救われた気持で新しい浴衣に着更え、家を飛んで出ました。れいの所とは、お酒のお燗を五十年間やって居るのが御自慢の老爺の飲み屋でありました。そこへ行ったら佐・・・<太宰治「老ハイデルベルヒ」青空文庫>
  20. ・・・それに、電話がすぐそばにあるので、間断なしに鳴ってくる電鈴が実に煩い。先生、お茶の水から外濠線に乗り換えて錦町三丁目の角まで来ておりると、楽しかった空想はすっかり覚めてしまったような侘しい気がして、編集長とその陰気な机とがすぐ眼に浮かぶ。今・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  21. ・・・すぐに非常号音を鳴らします。すぐに電話で潜水夫を呼び寄せます。無論同時に秘密警察署へも報告をいたしまして、私立探偵事務所二箇所へ知らせましたそうで。」「なるほど。シエロック・ホルムス先生に知らせたのだね。」 門番はおれの顔を見た。そ・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  22. ・・・これと、ずっと後に警察で電話をかけたりする場面とはどうも全く別の世界のような気がする。ポリー母子がミリナーの店の前で飾り窓の中のマヌカンを見ている。そこへ近づくメッサーの姿が窓ガラスに映ってだんだん大きくなるのが印象的な迫力をもっている。「・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  23. ・・・ 料理を誂えておいて、辰之助が馴染の女でも呼ぶらしく自身電話をかけている間に、道太は風呂場へ行った。そして水をうめているところへ彼もやってきた。「去年の九月を思いだすね」道太は湯に浸りながら言った。「さよさよ。あの時はどうも……・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  24. ・・・『たけくらべ』や『今戸心中』のつくられた頃、東京の町にはまだ市区改正の工事も起らず、従って電車もなく、また電話もなかったらしい。『今戸心中』をよんでも娼妓が電話を使用するところが見えない。東京の町々はその場処場処によって、各固有の面目を・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  25. ・・・婆さんの淀みなき口上が電話口で横浜の人の挨拶を聞くように聞える。 宜しければ上りましょうと婆さんがいう。余はすでに倫敦の塵と音を遥かの下界に残して五重の塔の天辺に独坐するような気分がしているのに耳の元で「上りましょう」という催促を受けた・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  26. ・・・一昨日の第二限ころなんか、なぜ燈台の灯を、規則以外に間〔一字分空白〕させるかって、あっちからもこっちからも、電話で故障が来ましたが、なあに、こっちがやるんじゃなくて、渡り鳥どもが、まっ黒にかたまって、あかしの前を通るのですから仕方ありません・・・<宮沢賢治「銀河鉄道の夜」青空文庫>
  27. ・・・事件当夜、立川市の警察署長は立川国警から電話をうけて、八時半頃三鷹附近で事件がおきるから注意して警戒にあたれと、命令をうけたと二十七日『アカハタ』記者に語っています。電話をかけた立川国警署長は、「同様な意味の電話が国警本部から八時半頃あった・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  28. ・・・ 二三人の同僚が食堂へ立ったとき、電話のベルが鳴った。給仕が往って暫く聞いていたが、「少々お待下さい」と云って置いて、木村の処へ来た。「日出新聞社のものですが、一寸電話口へお出下さいと申すことです。」 木村が電話口に出た。「・・・<森鴎外「あそび」青空文庫>
  29. ・・・さっき、電話をかけたんだからね、もう直ぐなんだから。」「あたし、さきへ死ぬわ、もう、苦しくって。」「よしよし、安心してればいい。何も心配しなくてもいい。」と彼はいった。 妻は頷くと眼を大きく開いたまま部屋の中を見廻した。一羽の鴉・・・<横光利一「花園の思想」青空文庫>
  30. ・・・しかし我々の前の十年は、汽車、汽船、電信、電話、特に自動車の発達によって、我々の生活をほとんど一変した。飛行機、潜航艇等が戦術の上に著しい変化をもたらしたのもわずかこの十年以来のことである。その他百千の新発明、新機運。それが未曾有の素早さで・・・<和辻哲郎「世界の変革と芸術」青空文庫>