どう‐いつ【同一】例文一覧 30件

  1. ・・・殊に僕自身を夢の中の僕と同一人格と考えれば、一層恐しい利己主義者になっている。しかも僕自身は夢の中の僕と必しも同じでないことはない。僕は一つには睡眠を得るために、また一つには病的に良心の昂進するのを避けるために〇・五瓦のアダリン錠を嚥み、昏・・・<芥川竜之介「死後」青空文庫>
  2. ・・・しかし肉体的快不快と精神的快不快とは同一の尺度に依らぬ筈である。いや、この二つの快不快は全然相容れぬものではない。寧ろ鹹水と淡水とのように、一つに融け合っているものである。現に精神的教養を受けない京阪辺の紳士諸君はすっぽんの汁を啜った後、鰻・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・今なら私は河上氏の言葉をこう解する、「河上氏も私も程度の差こそあれ、第四階級とは全く異なった圏内に生きている人間だという点においては全く同一だ。河上氏がそうであるごとく、ことに私は第四階級とはなんらの接触点をも持ちえぬのだ。私が第四階級の人・・・<有島武郎「宣言一つ」青空文庫>
  4. ・・・一つの声は一つの道を行くも、他の道を行くも、その到達点にして同一であらばかまわぬではないかと言った。短い一生の中にもすべてを知り、すべてたらんとする人間の欲念を、全然無視した叫びである。一つの声は二つの道のうち一つの道は悪であって、人の踏む・・・<有島武郎「二つの道」青空文庫>
  5. ・・・ その時、もう、これをして、瞬間の以前、立花が徒に、黒白も分かず焦り悶えた時にあらしめば、たちまち驚いて倒れたであろう、一間ばかり前途の路に、袂を曳いて、厚いふきを踵にかさねた、二人、同一扮装の女の童。 竪矢の字の帯の色の、沈んで紅・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  6. ・・・浪の畝ると同一に声が浮いたり沈んだり、遠くなったりな、近くなったり。 その内ぼやぼやと火が燃えた。船から、沖へ、ものの十四五町と真黒な中へ、ぶくぶくと大きな泡が立つように、ぼッと光らあ。 やあ、火が点れたいッて、おらあ、吃驚して喚く・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  7. ・・・論としてよりは小生一個の希望――文学に対する註文を有体に云うと、今日の享楽主義又は耽美主義の底には、沈痛なる人生の叫びを蔵しているのを認めないではないが、何処かに浮気な態度があって昔の硯友社や根岸党と同一気脈を伝うるのを慊らず思ってる。咏嘆・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  8. ・・・丁度植物学者が路傍の雑草にまで興味を持って精しく研究すると同一の態度であった。 この点では私は全く反対であった。私は自分が悪文家であるからでもあろうが、夙くから文章を軽蔑する極端なる非文章論を主張し、かつて紅葉から文壇の野獣視されて、君・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  9. ・・・このためには、その作者は、自から子供となり、子供の時代の人となって、殆ど児童と同一の感情と心理と理解をこの自然に対して持たなければならない。この点は、成人を相手とする読物以上に骨の折れることであって、技巧とか、単なる経験有無の問題でなく天分・・・<小川未明「新童話論」青空文庫>
  10. ・・・あえて佐伯をもって湖畔詩人の湖国と同一とはいわない、しかし湖国の風土を叙して そこには雨、心より降り、晴るる時、一段まばゆき天気を現わし、鳴らざりし泉は鳴り、響かざりし滝は響き、泉も滝も、水あふるれど少しも濁らず、波も泡も澄み渡り青・・・<国木田独歩「小春」青空文庫>
  11. ・・・さまざまな果実の美味は果実の種類によって性質的に異なり、同一の美味が主観の感覚によってさまざまに感じられるのではない。美味そのものの相違である。その如く「純潔な」「臆病な」「気高い」「罪深い」等の倫理的価値もそのものとして先験的に存在するの・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  12. ・・・これは自然が婦人に課したる特殊負荷であって厳粛なものでありこれがある以上、決して、職業の問題について、男子と婦人とを同一に考えるべきものではない。この意味においては、われわれは蘇露のコロンタイ女史の如く、一にも二にも託児所主義であって、男子・・・<倉田百三「婦人と職業」青空文庫>
  13. ・・・新潟では米を家畜の飼料にしたというが、勿体ない話だが、新潟の農民が自分の田で作った米と、私の地方の農民が、金を出して買った外米とは同一に談じられないのである。船長の細君でゝもない限り、なんとかして外米をうまく食べようという技巧がそこで工夫さ・・・<黒島伝治「外米と農民」青空文庫>
  14. ・・・先生の小説に出て来る模様と同一の図柄にいたしました。背中一ぱいに青い波がゆれて、まっかな薔薇の大輪を、鯖に似て喙の尖った細長い魚が、四匹、花びらにおのが胴体をこすりつけて遊んでいます。田舎の刺青師ゆえ、薔薇の花など手がけたことがない様で、薔・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  15. ・・・いわんや、コップ酒、ひや酒、ビイルとチャンポンなどに到っては、それはほとんど戦慄の自殺行為と全く同一である、と私は思い込んでいたのである。 いったい昔は、独酌でさえあまり上品なものではなかったのである。必ずいちいち、お酌をさせたものなの・・・<太宰治「酒の追憶」青空文庫>
  16. ・・・また他の人と石炭のエネルギーの問題を論じている中に、「仮りに同一量の石炭から得られるエネルギーがずっと増したとすれば、現在より多数の人間が生存し得られるかもしれないが、そうなったとした場合に、それがために人類の幸福が増すかどうかそれは疑問で・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  17. ・・・宅の近所のA家は新聞所載のA家と同一か。同一ならばその家の猫Bと、宅の庭で見かけた猫Cと同一か。そうだとすれば宅の白猫DはそのB=C猫の血族か。 これに対して与えられた事実与件はAという名前の一致。ただし近所のA家に西洋猫がいるかどうか・・・<寺田寅彦「ある探偵事件」青空文庫>
  18. ・・・カステラや鴨南蛮が長崎を経て内地に進み入り、遂に渾然たる日本的のものになったと同一の実例であろう。 自分はいつも人力車と牛鍋とを、明治時代が西洋から輸入して作ったものの中で一番成功したものと信じている。敢て時間の経過が今日の吾人をして人・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  19. ・・・彼の怒は蝮蛇の怒と同一状態である。蝮蛇は之を路傍に見出した時土塊でも木片でも人が之を投げつければ即時にくるくると捲いて決して其所を動かない。そうして扁平な頭をぶるぶると擡げるのみで追うて人を噛むことはない。太十も甞て人を打擲したことがなかっ・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  20. ・・・死したる自然は古今来を通じて同一である。活動せる人間精神の発現は版行で押したようには行かぬ。過去の文学は未来の文学を生む。生まれたものは同じ訳には行かぬ。同じ訳に行かぬものを、同じ法則で品隲せんとするのは舟を刻んで剣を求むるの類である。過去・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  21. ・・・徳行の点から見ても、宗教は自ら徳行を伴い来るものであろうが、また必ずしもこの両者を同一視することはできぬ。昔、融禅師がまだ牛頭山の北巌に棲んでいた時には、色々の鳥が花を啣んで供養したが、四祖大師に参じてから鳥が花を啣んで来なくなったという話・・・<西田幾多郎「愚禿親鸞」青空文庫>
  22. ・・・しかるに過去の経験は、旅が単なる「同一空間における同一事物の移動」にすぎないことを教えてくれた。何処へ行って見ても、同じような人間ばかり住んでおり、同じような村や町やで、同じような単調な生活を繰り返している。田舎のどこの小さな町でも、商人は・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  23. ・・・辛いのは誰しも同一だ。お前さんと平田の苦衷を察しると、私一人どうして来られるものか」「なぜそんなことをお言なさるの。私ゃそんなつもりで」「そりゃわかッてる。それで来る来ないと言うわけじゃない。実に忍びないからだ」「いや、いや、私・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  24. ・・・ゆえに漸進急進の別は方法の細目なれば、余輩は、この論者を同一視して、ひとしくこれを改進者流の人物と認めざるをえず。すなわち、今日、我が国にいて民権を主張する学者と名づくべき人なり。 民権論は余輩もはなはだもって同説なり。この国はもとより・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  25. ・・・成程、相等しき物は同一なりは尤もの次第で、他に考えようもないが、併し「何故」という観念が出て来ると、私はそれに依頼されなくなる。心理学上の識覚について云って見ても、識覚に上らぬ働きが幾らあるか知れぬ。反射的動作なぞは其卑近の一例で、斯んな心・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  26. ・・・柑類は皮の色も肉の色も殆ど同一であるが、柿は肉の色がすこし薄い。葡萄の如きは肉の紫色は皮の紫色よりも遥に薄い。あるいは肉の緑なのもある。林檎に至っては美しい皮一枚の下は真白の肉の色である。しかし白い肉にも少しは区別があってやや黄を帯びている・・・<正岡子規「くだもの」青空文庫>
  27. ・・・その無能力者を、刑法では、そう認めず、処罰にあたっては、忽ち同一の主婦が能力者として扱われるという矛盾は、残酷という以上ではないだろうか。日本の民法はしっかりと改正されなければならない。 内縁関係、未亡人の生きかたに絡む様々の苦しい絆は・・・<宮本百合子「合図の旗」青空文庫>
  28. ・・・この二階に集まった大勢の人は、一体に詞少なで、それがたまたま何か言うと、皆しらじらしい。同一の人が同一の場所へ請待した客でありながら、乗合馬車や渡船の中で落ち合った人と同じで、一人一人の間になんの共通点もない。ここかしこで互に何か言うのは、・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>
  29. ・・・それは内容それ自体が、例えば十一谷義三郎氏の諸作に於けるがごとく象徴としての智的感覚を所有したものとは同一に見ることが不可能であるとしても。これら様々な感覚派文学中でも自分は今構成派の智的感覚に興味が動き出している。芥川龍之介氏の作には構成・・・<横光利一「新感覚論」青空文庫>
  30. ・・・この画は場中最も色の薄いもので、この点では竜子氏の画と両極をなしているが、しかし日本画として新しい生面を開こうとしていることは、同一だと言ってよかろう。『いでゆ』のねらう所は恐らく温泉のとろけるように陶然とした心持ちであろう。清らかに澄んだ・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>