どう‐ぎ〔ダウ‐〕【道義】例文一覧 30件

  1. ・・・芸術的の衝動は性欲に加担し、道義的の衝動は聖書に加担しました。私の熱情はその間を如何う調和すべきかを知りませんでした。而して悩みました。その頃の聖書は如何に強烈な権威を以て私を感動させましたろう。聖書を隅から隅にまですがりついて凡ての誘惑に・・・<有島武郎「『聖書』の権威」青空文庫>
  2. ・・・ こういう道義的アナーキズム時代における人の品行は時代の背景を斟酌して考慮しなければならない。椿岳は江戸末季の廃頽的空気に十分浸って来た上に、更にこういう道義的アナーキズム時代に遭逢したのだから、さらぬだに世間の毀誉褒貶を何の糸瓜とも思・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  3. ・・・子供が彼等を見、彼等に対する考えこそ、人間として、一番高貴な、同情深い、且つ道義的のものではないでしょうか。 たとえば、屠殺場へ引かれて行く、歩みの遅々として進まない牛を見た時、或は多年酷使に堪え、もはや老齢役に立たなくなった、脾骨の見・・・<小川未明「天を怖れよ」青空文庫>
  4. ・・・ 支配下に強圧されて、職業意識にしかのみ生きない教師等が、なんで、児童を善く感化し、これに、真理と道義の観念を与えることができましょう。 私達は、知りつゝ出来ずにいるが、児童の教育に、その先生を選択しなければならぬごとく、書物を求む・・・<小川未明「読むうちに思ったこと」青空文庫>
  5. ・・・敗戦、戦災、失業、道義心の頽廃、軍閥の横暴、政治の無能。すべて当然のことであり、誰が考えても食糧の三合配給が先決問題であるという結論に達する。三歳の童子もよくこれを知っているといいたいところである。円い玉子はこのように切るべきだと、地球が円・・・<織田作之助「郷愁」青空文庫>
  6. ・・・ような大腹中の人には、馬琴の小説はイヤに偏屈で、隅から隅まで尺度を当ててタチモノ庖丁で裁ちきったようなのが面白くなくも見えましょうが、それはそれとして置いて、馬琴の大手腕大精力と、それから強烈な自己の道義心と混淆化合してしまった芸術上の意見・・・<幸田露伴「馬琴の小説とその当時の実社会」青空文庫>
  7. ・・・せいぜい華やかにやるがいい、と今は全く道義を越えて、目前の異様な戦慄の光景をむさぼるように見つめていました。誰も見た事の無いものを私はいま見ている、このプライド。やがてこれを如実に描写できる、この仕合せ。ああ、この男は、恐怖よりも歓喜を、五・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  8. ・・・問題は単に智愚を界する理性一遍の墻を乗り超えて、道義の圏内に落ち込んで来るのである。 木村項だけが炳として俗人の眸を焼くに至った変化につれて、木村項の周囲にある暗黒面は依然として、木村項の知られざる前と同じように人からその存在を忘れられ・・・<夏目漱石「学者と名誉」青空文庫>
  9. ・・・人を教育するとか導くとか精神的にまた道義的に働きかけてその人のためになるという事だと解釈されるとちょっと困るのです。人のためにというのは、人の言うがままにとか、欲するがままにといういわゆる卑俗の意味で、もっと手短かに述べれば人の御機嫌を取れ・・・<夏目漱石「道楽と職業」青空文庫>
  10. ・・・孝子が出て来たり、貞女が出て来たり、その他いろいろの人物が出て来て、すべて読者の徳性を刺激してその刺激に依って事をなす、すなわち読者を動かそうと云う方法を講じますから、その刺激を与える点は取りも直さず道義的であると同時に芸術的に違ない。(文・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  11. ・・・またある人はどこかで道義心に満足を与えない作物は、作りたくない読みたくないと断言します。また他の人は意思の発現に伴う荘厳の情緒を得なければ、文芸上のあるものを味うた気がしないとまで主張するかも知れない。これらの時代もこれらの人々もことごとく・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  12. ・・・ただ金を所有している人が、相当の徳義心をもって、それを道義上害のないように使いこなすよりほかに、人心の腐敗を防ぐ道はなくなってしまうのです。それで私は金力には必ず責任がついて廻らなければならないといいたくなります。自分は今これだけの富の所有・・・<夏目漱石「私の個人主義」青空文庫>
  13. ・・・ 今日の世界的道義はキリスト教的なる博愛主義でもなく、又支那古代の所謂王道という如きものでもない。各国家民族が自己を越えて一つの世界的世界を形成すると云うことでなければならない、世界的世界の建築者となると云うことでなければならない。・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  14. ・・・ 民主的な検事局というならば、あらゆる場合、基本的な人権の劬り、事件関係に対する社会の現実に立ったリアルな科学的洞察、真の道義的責任のありどころを明確にすることがのぞまれて当然である。一つの行為に対する法的処罰が、道義上の判断と評価とに・・・<宮本百合子「石を投ぐるもの」青空文庫>
  15. ・・・仮に二つのものを一つに結び合わして考えたい心持のひとは、二つに分けられたままにただそれを並べてくっつけて云って、結果としては科学知識プラス宗教或は科学知識にプラス道義とかいう形に止った。 人間精神の溌剌さは、現実のうちではそういう不器用・・・<宮本百合子「科学の精神を」青空文庫>
  16. ・・・ 家庭というものについても、現代は観念の上で、或は道義の論として大変大切にいわれながら、家庭の現実では菓子一つの実例にしろ甚だ不如意におかれている。家庭における明日の価値の創りてとしての若い男女は結婚や家庭生活に対して前に向ったそれぞれ・・・<宮本百合子「家庭と学生」青空文庫>
  17. ・・・政治が、わたしたちの社会的な良心と道義、そして良識の判断に土台をおいた動きである以上、明日に育つきょうの小さいものを正しく評価するということは、全く当然なことではないだろうか。政治について婦人のもたなければならない自覚をもてと云われるなら、・・・<宮本百合子「現代史の蝶つがい」青空文庫>
  18. ・・・関東軍の威勢は日本の運命を左右し一人一人の首ねっこを押えていただけに、この歴史的事実にたいして、一般の人々の抱いている人間的道義的侮蔑は深く鋭いものである。日本の武士道とやまとだましいのはりこの面のうらの、醜さ、卑劣さとして、世界的に唾棄さ・・・<宮本百合子「ことの真実」青空文庫>
  19. ・・・と打算は国際的であって、ファシズムの粉砕、世界の永続的な平和確立のための努力という、世界憲章のたてまえやポツダム宣言の履行と矛盾しながら、なおかつ資本は資本と結びつき得る本質のものであり、その利害には道義をつきのけたつよい共通性が生きている・・・<宮本百合子「三年たった今日」青空文庫>
  20. ・・・というなら同じ卑俗さにしろわかりもするが、その現実はふせて、炭の空俵一俵でどれだけ米を炊くことが出来るかというようなところから、物の不足は感謝のみなもとという風な、道義化された説がなされていることは、二重の恥辱であると思った。 科学につ・・・<宮本百合子「市民の生活と科学」青空文庫>
  21. ・・・日本の近代文学におけるデカダンスやエロティシズムは、封建的な形式的道義・習俗にたいする人間性の叛乱としてあらわれたものでした。古い例でいえば、徳川末期の武家権力の崩壊期に、経済的実力をもってきた町人階級が、士農工商の封建身分制にたいする反抗・・・<宮本百合子「一九四六年の文壇」青空文庫>
  22. ・・・ 都内の小学校の生活は、街と家庭にあふれる社会の悪にさらされていて、十一歳から十五歳までの子供の道義は、めちゃめちゃにされている。それならば十六歳から二十歳の若い人々がめぐり合っているのは何だろう。性的好奇心の刺戟。思うままに金をつかっ・・・<宮本百合子「戦争はわたしたちからすべてを奪う」青空文庫>
  23. ・・・それらの人々は、経済的に、政治的に祖国を破綻させたとともに、民族の道義をも難破させた。戦争を強行するためには、すべての人民が、理不尽な強権に屈従しなければ不便であった。その目的のために、考え、判断し、発言し、それに準じて行動する能力を奪った・・・<宮本百合子「その源」青空文庫>
  24. ・・・我々はそこに、精神の自由さと道義的背景の硬さとを感じ得るように思う。 やや時代の下るもののうち注目すべきは、『多胡辰敬家訓』である。これはたぶんシャビエルが日本へ渡来したころの前後に書かれたものであろう。多胡辰敬は尼子氏の部将で、石見の・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  25. ・・・かくのごとく父は、私利をはかって超個人的道義的任務を忘れたものをすべて腐敗せるものとして憎悪する。自己の身命を超個人的道義的任務に捧げるもののみが、正しいと見られるのである。儒教は自己の身命を「人倫の道」に捧げよと命ずる。すべての詔勅もまた・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>
  26. ・・・五 予は道義を説く。愛を説く。ある人はそれを陳腐と呼ぶだろう。しかし予は陳腐なるものの内に新しい生命を見いだした喜びを語るのである。陳腐なる殻のうちに秘められたる漿液のうまさを伝えようとするのである。陳腐なるものは生命を持た・・・<和辻哲郎「『偶像再興』序言」青空文庫>
  27. ・・・そうして、ほんとうの生の頽廃まで行かないにしても、とにかく道義的脊骨を欠いた、生に対して不誠実な、なまこのような人間になってしまいます。これは確かに大きい危険です。 それでは青春を厳格に束縛し鍛錬して行くのがいいか。――もちろんそれはい・・・<和辻哲郎「すべての芽を培え」青空文庫>
  28. ・・・すべて自己の道義的気質に抵触するものに対する本能的な気短い怒りである。従って、自己の確かでない感傷的な青年であった私は、自分が道義的にフラフラしているゆえをもって無意識に先生を恐れた。そうして先生の方へ積極的に進んで行く代わりに、先生の冷た・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>
  29. ・・・我々はここに享楽的浮浪人としての画家、道義的価値に無関心な官能の使徒としての画家を見ずして、人類への奉仕・真善美の樹立を人間最高の目的とする人類の使徒としての画家を見る。もとより画家である限り、その奉仕は「美」への奉仕に限られている。しかし・・・<和辻哲郎「『劉生画集及芸術観』について」青空文庫>
  30. ・・・物暗き牢獄に鉄鎖のとなりつつ十数年の長きを「道義」のために平然として忍ぶ。荘厳なる心霊の発現である。兄弟は一人と死に二人と斃る。愛する同胞の可憐なる瞳より「生命」の光が今消え去らんとする一瞬にも彼らは互いに二間の距離を越えて見かわすのみであ・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>