どう‐ぐ〔ダウ‐〕【道具】例文一覧 32件

  1. ・・・……「九月×日 俺は今日道具屋にダブル・ベッドを売り払った。このベッドを買ったのはある亜米利加人のオオクションである。俺はあのオオクションへ行った帰りに租界の並み木の下を歩いて行った。並み木の槐は花盛りだった。運河の水明りも美しかった。・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  2. ・・・彼らはいずれも、古手拭と煙草道具と背負い繩とを腰にぶら下げていた。短い日が存分西に廻って、彼の周囲には、荒くれた北海道の山の中の匂いだけがただよっていた。 監督を先頭に、父から彼、彼から小作人たちが一列になって、鉄道線路を黙りながら歩い・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3. ・・・に似て冷からず、朧夜かと思えば暗く、東雲かと見れば陰々たる中に、煙草盆、枕、火鉢、炬燵櫓の形など左右、二列びに、不揃いに、沢庵の樽もあり、石臼もあり、俎板あり、灯のない行燈も三ツ四ツ、あたかも人のない道具市。 しかもその火鉢といわず、臼・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  4. ・・・味と感化とを頒ちたいものである、古への茶の湯は今日の如く、人事の特別なものではない、世人の思う如く苦度々々しきものではない、変手古なものではない、又軽薄極まる形式を主としたものではない、形の通りの道具がなければ出来ないというものでもない・・・<伊藤左千夫「茶の湯の手帳」青空文庫>
  5. ・・・     八 青木というのは、来遊の外国人を当て込んで、箱根や熱海に古道具屋の店を開き、手広く商売が出来ていたものだが、全然無筆な男だから、人の借金証書にめくら判を押したため、ほとんど破産の状態に落ち入ったが、このごろでは多・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  6. ・・・この拗者の江戸の通人が耳の垢取り道具を揃えて元禄の昔に立返って耳の垢取り商売を初めようというと、同じ拗者仲間の高橋由一が負けぬ気になって何処からか志道軒の木陰を手に入れて来て辻談義を目論見、椿岳の浅草絵と鼎立して大に江戸気分を吐こうと計画し・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  7. ・・・それにいろ/\の諸道具が載せられていた。小さな箪笥もあった。しかしすべて一台で足りたのである。軒下には窶れた卅五六の女が乳飲児を負って悄然と立って車について行く処であった。其の日から、其の家の戸が閉って貸家となった。何処に行ったか知らない。・・・<小川未明「ある日の午後」青空文庫>
  8. ・・・寝床みたいな狭い路地だったけれど、しかしその辺は宗右衛門町の色町に近かったから、上町や長町あたりに多いいわゆる貧乏長屋ではなくて、路地の両側の家は、たとえば三味線の師匠の看板がかかっていたり、芝居の小道具づくりの家であったり、芸者の置屋であ・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  9. ・・・ 何一つ道具らしい道具の無い殺風景な室の中をじろ/\気味悪るく視廻しながら、三百は斯う呶鳴り続けた。彼は、「まあ/\、それでは十日の晩には屹度引払うことにしますから」と、相手の呶鳴るのを抑える為め手を振って繰返すほかなかった。「……・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  10. ・・・しかし、なおよく見ていると、それは一種の化粧道具で、ただそれを猫と同じように使っているんだということがわかった。しかしあまりそれが不思議なので、私はうしろから尋ねずにはいられなかった。「それなんです? 顔をコスっているもの?」「これ・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  11. ・・・死にたい奴はこの踏切で遠慮なしにやってくれるがいいや、方々へ触れまわしてやらア、こっちの商売道具だ。』 あくまで太い事をいって、立ち上がって便所へ行きながら、『その代わり便所の窓から念仏の一つも唱えてやらア。』『あれだもの』女房は苦・・・<国木田独歩「郊外」青空文庫>
  12. ・・・ブルジョアジーは労働者や、労働者や農民の出身である兵士たちを完全に彼等の道具に使おうとして、軍国主義化しようとしている。 だが青年たちは軍隊の中へ這入って行くことを拒んではならない。軍隊の中に這入って、銃の持ち方や、射撃のし方を学ばなけ・・・<黒島伝治「入営する青年たちは何をなすべきか」青空文庫>
  13. ・・・京都は堀川に金八という聞えた道具屋があった。この金八が若い時の事で、親父にも仕込まれ、自分も心の励みの功を積んだので、大分に眼が利いて来て、自分ではもう内ないない、仲間の者にもヒケは取らない、立派な一人前の男になったつもりでいる。実際また何・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  14. ・・・ しばらくして、赤い着物をきた雑役が、色々な「世帯道具」――その雑役はそんなことを云った――を運んできてくれた。「どうした? 眼が赤いようだな。」 と、俺を見て云った――「なに、じき慣れるさ。」 俺は相手から顔をそむけて・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  15. ・・・じゃらくらと更けるも知らぬ夜々の長坐敷つい出そびれて帰りしが山村の若旦那と言えば温和しい方よと小春が顔に花散る容子を御参なれやと大吉が例の額に睨んで疾から吹っ込ませたる浅草市羽子板ねだらせたを胸三寸の道具に数え、戻り路は角の歌川へ軾を着けさ・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  16. ・・・要るだけの道具はあてがう、あとは自分で働け――そのつもりです。」「えゝ、太郎さんもその気だで。」と、お菊婆さんは炉の火のほうに気をくばりながら言った。「この焚木でもなんでも、みんな自分で山から背負っておいでるぞなし。そりゃ、お前さま、こ・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  17. ・・・中には焼けあとの校庭にあつまって、本も道具もないので、ただいろいろのお話を聞いたりしている生徒もいました。そのほか公園なぞの森の中に、林間学校がいくつかひらかれていましたが、そこへかようことの出来る子たちは、全部から見ればほんの僅少な一部分・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  18. ・・・ 第一に、井伏さんは釣道具を肩にかついで旅行なされる。井伏さんが本心から釣が好きということについては、私にもいささか疑念があるのだが、旅行に釣竿をかついで出掛けるということは、それは釣の名人というよりは、旅行の名人といった方が、適切なの・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  19. ・・・ これに反してアインシュタインの取扱った対象は抽象された時と空間であって、使った道具は数学である。すべてが論理的に明瞭なものであるにかかわらず、使っている「国語」が世人に親しくないために、その国語に熟しない人には容易に食い付けない。それ・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  20. ・・・十分やって行けるようにするからと云うんで、世帯道具や何や彼や大将の方から悉皆持ち込んで、漸くまあ婚礼がすんだ。秋山さんは間もなく中尉になる、大尉になる。出来もしたろうが、大将のお引立もあったんでさ。 そこへ戦争がおっ始まった。×××の方・・・<徳田秋声「躯」青空文庫>
  21. ・・・浅草という土地がら、大道具という職業がらには似もつかず、物事が手荒でなく、口のききようも至極穏かであったので、舞台の仕事がすんで、黒い仕事着を渋い好みの着物に着かえ、夏は鼠色の半コート、冬は角袖茶色のコートを襲ねたりすると、実直な商人としか・・・<永井荷風「草紅葉」青空文庫>
  22. ・・・着した自転車の鞍とペダルとは何も世間体を繕うために漫然と附着しているものではない、鞍は尻をかけるための鞍にしてペダルは足を載せかつ踏みつけると回転するためのペダルなり、ハンドルはもっとも危険の道具にして、一度びこれを握るときは人目を・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  23. ・・・と同時に腹ん中の一切の道具が咽喉へ向って逆流するような感じに捕われた。然し、 然し今はもう総てが目の前にあるのだ。 そこには全く残酷な画が描かれてあった。 ビール箱の蓋の蔭には、二十二三位の若い婦人が、全身を全裸のまま仰向きに横・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  24. ・・・ おのおの思い思いのめかし道具を持参して、早や流しには三五人の裸美人が陣取ッていた。 浮世風呂に浮世の垢を流し合うように、別世界は別世界相応の話柄の種も尽きぬものか、朋輩の悪評が手始めで、内所の後評、廓内の評判、検査場で見た他楼の花・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  25. ・・・第一道具がいる。それに馬鹿に骨が折れて、脚が引っ吊って来る。まあ、やっぱり手を出して一文貰うか、パンでも貰うかするんだなあ。おれはこのごろ時たま一本腕をやる。きょうなんぞもやったのだ。随分骨が折れて、それほどの役には立たねえ。きまって出てい・・・<著:ブウテフレデリック 訳:森鴎外「橋の下」青空文庫>
  26. ・・・今の代の人、女子に衣服道具抔多く与へて婚姻せしむるよりも、此条々を能く教ふること一生身を保つ宝なるべし。古語に、人能く百万銭を出して女子を嫁せしむることを知て十万銭を出して子を教ふることを知らずといへり。誠なる哉。女子の親たる人、此理を知ず・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  27. ・・・木道具や窓の龕が茶色にくすんで見えるのに、幼穉な現代式が施してあるので、異様な感じがする。一方に白塗のピアノが据え附けてあって、その傍に Liberty の薄絹を張った硝子戸がある。隣の室に通じているのであろう。随分無趣味な装飾ではあるが、・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  28. ・・・(家来ランプを点して持ち来り、置いて帰り行ええ、またこの燈火が照すと、己の部屋のがらくた道具が見える。これが己の求める物に達する真直な道を見る事の出来ない時、厭な間道を探し損なった記念品だ。この十字架に掛けられていなさる耶蘇殿は定めて身に覚・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  29. ・・・「おらの道具知らないかあ。」「知らないぞお。」と森は一ぺんにこたえました。「さがしに行くぞお。」とみんなは叫びました。「来お。」と森は一斉に答えました。 みんなは、こんどはなんにももたないで、ぞろぞろ森の方へ行きました。・・・<宮沢賢治「狼森と笊森、盗森」青空文庫>
  30. ・・・小ざっぱりとした白い壁の小部屋で、ピカピカ清潔な医療道具がガラス箱の内に揃っている。白い上っぱりを着た医者が一人の女の患者を扱っているところだった。「女はどうしても姙娠やお産で歯をわるくするのです。ところが働きながら歯医者へ通うことは時・・・<宮本百合子「明るい工場」青空文庫>