どう‐せ例文一覧 35件

  1. ・・・何でも事の起りは、あの界隈の米屋の亭主が、風呂屋で、隣同志の紺屋の職人と喧嘩をしたのですな。どうせ起りは、湯がはねかったとか何とか云う、つまらない事からなのでしょう。そうして、その揚句に米屋の亭主の方が、紺屋の職人に桶で散々撲られたのだそう・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  2. ・・・其処が地球と違ってるね』『其処ばかりじゃない』『どうせ違ってるさ。それでね、僕も看客の一人になってその花道を行ったとし給え。そして、並んで歩いてる人から望遠鏡を借りて前の方を見たんだがね、二十里も前の方にニコライの屋根の尖端が三つば・・・<石川啄木「火星の芝居」青空文庫>
  3. ・・・ 立花も莞爾して、「どうせ、騙すくらいならと思って、外套の下へ隠して来ました。」「旨く行ったのね。」「旨く行きましたね。」「後で私を殺しても可いから、もうちと辛抱なさいよ。」「お稲さん。」「ええ。」となつかしい低・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  4. ・・・ 去年母の三年忌で、石塔を立て、父の名も朱字に彫りつけた、それも父の希望であって、どうせ立てるならばおれの生きてるうちにとのことであったが、いよいよでき上がって供養をしたときに、杖を力に腰をのばして石塔に向かった父はいかにも元気がなく影・・・<伊藤左千夫「紅黄録」青空文庫>
  5. ・・・ もうどうしても逃る事が出来ないのだからと云って首を討った翌日親の様子をきいてかくれて居た身をあらわして出て来たのをそのままつかまってこの女も討れてしまった。どうせ一度はさがされて見つけ出されるものを、「お前が早く出れば何の事もなくて助・・・<著:井原西鶴 訳:宮本百合子「元禄時代小説第一巻「本朝二十不孝」ぬきほ(言文一致訳)」青空文庫>
  6. ・・・「今の僕なら、君」と少し多言になって来た。友人は、酒のなみなみつげてる猪口を右の手に持ったがまた、そのままおろしてしまった。「今の僕なら、どうせ、役場の書記ぐらいで満足しとるのやもの、徴兵の徴の字を見ても、ぞッとする程の意気地なしやけど、あ・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  7. ・・・というと、まだ話が仕足りなさそうな容子で、「どうせ最う眠られんから運動がてら其辺まで送って行こう」とムックリ起上って、そこそこに顔を洗ってから一緒に家を出で、津の守から坂町を下り、士官学校の前を市谷見附まで、シラシラ明けのマダ大抵な家の雨戸・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  8.  フットボールは、あまり坊ちゃんや、お嬢さんたちが、乱暴に取り扱いなさるので、弱りきっていました。どうせ、踏んだり、蹴ったりされるものではありましたけれども、すこしは、自分の身になって考えてみてくれてもいいと思ったのであります。 し・・・<小川未明「あるまりの一生」青空文庫>
  9. ・・・「明日だって、どうせ外へ出てでかすんだろうがね、それじゃ私の方で困らあね。今夜何か品物でも預かっとこう。」「品物といって――何しろ着のみ着のままで……」「さっきお前さんが持って上った日和下駄、あれは桐だね。鼻緒は皮か何だね。」・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  10. ・・・ 焼餅やきや言うてしまへんでしたか。どうせそんなことでっしゃろ。なにが、僕が焼餅やきますかいな。彼女の方が余っ程焼餅やきでっせ。一緒に道歩いてても、僕に女子の顔見たらいかん、こない言いよりまんねん。活動見ても、綺麗な女優が出て来たら、眼エつ・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  11. ・・・気まぐれな兄の性質が考えられるだけに、どうせ老父の家へ帰ったって居つけるものではないと思ったのだ。「しかし酒だけは、先も永いことだから、兄さんと一緒に飲んでいるというわけにも行きますまいね。そりゃ兄さんが一人で二階で飲んでる分にはちっと・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  12. ・・・「棘はどうせあの時立てたに違いない」峻は昼間のことを思い出していた。ぴしゃっと地面へうつっぶせになった時の勝子の顔はどんなだったろう、という考えがまた蘇えって来た。「ひょっとしてあの時の痩我慢を破裂させているのかもしれない」そんなこ・・・<梶井基次郎「城のある町にて」青空文庫>
  13. ・・・「ありがとう、どうせ長くはあるまい。」と今来た男は捨てばちに言って、投げるように腰掛けに身をおろして、両手で額を押え、苦しい咳をした。年ごろは三十前後である。「そう気を落とすものじゃアない、しっかりなさい」と、この店の亭主が言った。・・・<国木田独歩「窮死」青空文庫>
  14. ・・・その他のものはどうせことごとく生滅する夢幻にすぎないのだから、恐るべきは過ちや、失則や、沈淪ではなくして、信仰を求める誠の足りなさである。     二 母性愛 私の目に塵が入ると、私の母は静かに私を臥させて、乳房を出して乳汁・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  15. ・・・「おい、もう帰ろうぜ。」 安部が云った。 中隊の兵舎から、準備に緊張したあわただしい叫びや、叱咤する声がひびいて来た。「おい、もう帰ろうぜ。」安部が繰かえした。「どうせ行かなきゃならんのだ。」 空気が動いた。そして脂肪や、焦・・・<黒島伝治「橇」青空文庫>
  16. ・・・川音と話声と混るので甚く聞き辛くはあるが、話の中に自分の名が聞えたので、おのずと聞き逸すまいと思って耳を立てて聞くと、「なあ甲助、どうせ養子をするほども無い財産だから、嚊が勧める嚊の甥なんぞの気心も知れねえ奴を入れるよりは、怜悧で天賦の良い・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  17. ・・・「行儀がわるい」女は下から龍介を見上げた。「寒いんだよ。それより、君はこれを敷け」彼は女に座布団を押してやった。が、女は「いいの」と言って、押しかえしてよこした。「――冷えるぜ」「どうせねえ」そして、すすめるとまた「いいの」・・・<小林多喜二「雪の夜」青空文庫>
  18. ・・・私は私で、もう一度自分の書斎を二階の四畳半に移し、この次ぎは客としての次郎をわが家に迎えようと思うなら、それもできない相談ではないように見えて来た。どうせ今の住居はあの愛宕下の宿屋からの延長である。残る二人の子供に不自由さえなくば、そう想っ・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  19. ・・・「それはそうですけれど、どうせこちらへ運ばなければならないのでしょう?」「ええ」「ではこの押入には、下の方はあたしのものが少しばかりはいっておりますから、あなたは当分上の段だけで我慢してくださいましな」「………」「ねえ」・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  20. ・・・これは、有名の詩句なんだそうだが、誰の詩句やら、浅学の私には、わからぬ。どうせ不埒な、悪文学者の創った詩句にちがいない。ジイドがそれを引用している。ジイドも相当に悪業の深い男のようである。いつまで経っても、なまぐさ坊主だ。ジイドは、その詩句・・・<太宰治「鬱屈禍」青空文庫>
  21. ・・・聞こえたに相違ないが振り向いてもみない。どうせ碌なことではないと知っているのだろう。一時思い止まったが、また駆け出した。そして今度はその最後の一輌にようやく追い着いた。 米の叺が山のように積んである。支那人の爺が振り向いた。丸顔の厭な顔・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  22. ・・・細君からして随分こんな事には無頓着な人だと見える。どうせあんな異人さんのおかみさんになるくらいの人だからと下宿の主婦は説明していたそうな。しかし細君はごく大人しい好人物だというので近所の気受けはあまり悪い方ではなかったらしい。 主人のジ・・・<寺田寅彦「イタリア人」青空文庫>
  23. ・・・ 去年のあのころ、道太の頭脳はまるで鉄槌で打ちのめされたようになっていたので、それを慰めるつもりで、どうせ今日は立てないからと、辰之助は彼をこの家へ引っ張ってきた。それは四日の日で、道太は途中少し廻り道をして、墓参をしてから、ここへやっ・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  24. ・・・「ハーイ、わしがおふくろは専売局の便所掃除でござります。どうせ身分がちごうけん、考えもちがいましょうたい」 高わらいしながら、そのくせポロポロ涙をこぼしている小野をみると、学生たちも黙ってしまう。それで、そのつぎにくる瞬間をおそれて・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  25. ・・・「何よ」と対手はいった。然しそれが余り突然なので対手はいつものように揶揄って見たくなった。「まさか俺がこっちゃあるめえな」とすぐにつけ足した。「どうせ犬殺しの手にかけるなら自分でやっちまった方がいいと思って……」 太・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  26. ・・・けれどもまず諸君よりもそんな方面に余計頭を使う余裕のある境遇におりますから、こういう機会を利用して自分の思ったところだけをあなた方に聞いていただこうというのが主眼なのです。どうせあなた方も私も日本人で、現代に生れたもので、過去の人間でも未来・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  27. ・・・「何とでもおっしゃい。どうせあなたには勝いませんよ」と、お梅は立ち上りながら、「御膳はお後で、皆さんと御一しょですね。もすこししてからまた参ります」と、次の間へ行ッた。 誰が覗いていたのか、障子をぴしゃりと外から閉てた者がある。・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  28. ・・・きまって出ている場所と、きまってくれるお得意とがなけりゃあ、この商売は駄目だ。どうせ貧乏人は皆くたばるのだ。皆そう云っていらあ。ひどい奴等だよ、金持と云う奴等は。」「なぜぬすっとをしない。」爺いさんが荒々しい声で云った。 この詞は一・・・<著:ブウテフレデリック 訳:森鴎外「橋の下」青空文庫>
  29. ・・・やった所で、どうせ足りッこは無い。 ジレンマ! ジレンマ! こいつでまた幾ら苦められたか知れん。これが人生観についての苦悶を呼起した大動機になってるんだ。即ちこんな苦痛の中に住んでて、人生はどうなるだろう、人生の目的は何だろうなぞという・・・<二葉亭四迷「予が半生の懺悔」青空文庫>
  30. ・・・しかし先日も鬼が笑って居たから気にならないでもないがどうせ死んでから自由は利かないサ ただあきらめて居るばかりだ。時に近頃隣の方が大分騒がしいが何でも華族か何かがやって来たようだ。華族といや大そうなようだが引導一つ渡されりャ華族様も平民様も・・・<正岡子規「墓」青空文庫>