どう‐せい【同×棲】例文一覧 29件

  1. ・・・だから僕は結婚後、僕等の間の愛情が純粋なものでない事を覚った時、一方僕の軽挙を後悔すると同時に、そう云う僕と同棲しなければならない妻も気の毒に感じたのだ。僕は君も知っている通り、元来体も壮健じゃない。その上僕は妻を愛そうと思っていても、妻の・・・<芥川竜之介「開化の良人」青空文庫>
  2. ・・・予の全集は出版せられしや? 答 君の全集は出版せられたれども、売行きはなはだ振わざるがごとし。 問 予の全集は三百年の後、――すなわち著作権の失われたる後、万人の購うところとなるべし。予の同棲せる女友だちは如何? 答 彼女は書肆・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  3. ・・・後に母の母が同棲するようになってからは、その感化によって浄土真宗に入って信仰が定まると、外貌が一変して我意のない思い切りのいい、平静な生活を始めるようになった。そして癲癇のような烈しい発作は現われなくなった。もし母が昔の女の道徳に囚れないで・・・<有島武郎「私の父と母」青空文庫>
  4. ・・・それが、純粋自然主義にあってはたんに見、そして承認するだけの事を、その同棲者が無遠慮にも、行い、かつ主張せんとするようになって、そこにこの不思議なる夫婦は最初の、そして最終の夫婦喧嘩を始めたのである。実行と観照との問題がそれである。そうして・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  5. ・・・ 母と妹とは自分達夫婦と同棲するのが窮屈で、赤坂区新町に下宿屋を開業。それも表向ではなく、例の素人下宿。いやに気位を高くして、家が広いから、それにどうせ遊んでいる身体、若いものを世話してやるだけのこと、もっとも性の知れぬお方は御免被ると・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  6. ・・・と言い出してお源は涙声になり「お前さんと同棲になってから三年になるが、その間真実に食うや食わずで今日はと思った日は一日だって有りやしないよ。私だって何も楽を仕様とは思わんけれど、これじゃ余りだと思うわ。お前さんこれじゃ乞食も同然じゃ無い・・・<国木田独歩「竹の木戸」青空文庫>
  7. ・・・久しく同棲しているうちに、彼は、妻の感覚や感情の動き方が、隅々まで分るような気がした。 妻が見せた二反は、彼は一寸見たきりだったが、如何にも子供がほしがりそうなものだった。彼女は、頻りに地質もよさそうだと、枕頭で呟いたりしていた。子供が・・・<黒島伝治「窃む女」青空文庫>
  8. ・・・で、マア、その娘もおれの所へ来るという覚悟、おれも行末はその女と同棲になろうというつもりだった。ところが世の中のお定まりで、思うようにはならぬ骰子の眼という習いだから仕方が無い、どうしてもこうしてもその女と別れなければならない、強いて情を張・・・<幸田露伴「太郎坊」青空文庫>
  9. ・・・駄目、駄目、もうすこし男性の心情が理解されそうなものだとか、もうすこし他の目に付かないような服装が出来そうなものだとか、もうすこしどうかいう毅然とした女に成れそうなものだとか、過る同棲の年月の間、一日として心に彼女を責めない日は無かった――・・・<島崎藤村「刺繍」青空文庫>
  10. ・・・ おおかたヒステリイの女とでも同棲をはじめたのであろうと思った。 ついこのあいだ、二月のはじめころのことである。僕は夜おそく思いがけない女のひとのおとずれを受けた。玄関へ出てみると、青扇の最初のマダムであったのである。黒い毛のショオ・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  11. ・・・とうとうこの女は、私と同棲三年目に、私を捨てて逃げて行きました。へんな書き置きみたいなものを残して行きましたが、それがまた何とも不愉快、あなたはユダヤ人だったのですね、はじめてわかりました、虫にたとえると、赤蟻です、と書いてあるのです。何の・・・<太宰治「男女同権」青空文庫>
  12. ・・・もう、この頃、私は或る女のひとと同棲をはじめていたのです。でも、こんな工合いに大袈裟に腕組みをしているところなど、やっぱり少し気取っていますね。もっとも、この写真を写す時には、私もちょっと気取らざるを得なかったのです。私の両側に立っている二・・・<太宰治「小さいアルバム」青空文庫>
  13. ・・・         ☆ 高野さちよは、そのひとつきほどまえ、三木と同棲をはじめていた。数枝いいひと、死んでも忘れない、働かなければ、あたし、死ぬる、なんにも言えない、鴎は、あれは、唖の鳥です、とやや錯乱に似た言葉を書き残して、・・・<太宰治「火の鳥」青空文庫>
  14. ・・・に気づいた。同棲、以来、七年目。蟹について 阿部次郎のエッセイの中に、小さい蟹が自分のうちの台所で、横っ飛びに飛んだ。蟹も飛べるのか、そう思ったら、涙が出たという文章があった。あそこだけは、よし。 私の家の庭にも、ときた・・・<太宰治「もの思う葦」青空文庫>
  15. ・・・物足りないというのは言い過ぎであろうが、ほんとうに孤独な人間がある場合には同棲のねずみに不思議な親しみを感ずるような事も不可能ではないように思われたりした。 そのうちにどこからともなく、水のもれるようにねずみの侵入がはじまった。一度通路・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  16. ・・・情が許せば、静かなこの町で隠逸な余生を楽しむ場合、陽気でも陰気でもなく、意気でも野暮でもなく、なおまた、若くもなく老けてもいない、そしてばかでも高慢でもない代りに、そう悧巧でも愚図でもないような彼女と同棲しうるときの、寂しい幸福を想像しない・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  17. ・・・あんまりお調子づいて、この論法一点張りで東西文明の比較論を進めて行くと、些細な特種の実例を上げる必要なくいわゆる Maison de Papierに住んで畳の上に夏は昆虫類と同棲する日本の生活全体が、何よりの雅致になってしまうからである。珍・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  18. ・・・それと共に男女同棲の生活をも決して嫌っていたのではない。今日になってこれを憶えば、そのいずれにも懐しい記憶が残っている。わたくしはそのいずれを思返しても決して慚愧と悔恨とを感ずるようなことはない。さびしいのも好かったし、賑なのもまたわるくは・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  19. ・・・男の同志はその女に性的な要求を感じ、「同棲しているのなら近所に変に思われない為にでも、本当の夫婦になってしまわなければ不便でもあるし、不自然でもある」といい出す。女はそのことに同意できない感情で苦しむ。同志というより一人の好きでない男という・・・<宮本百合子「新しい一夫一婦」青空文庫>
  20. ・・・ 自分との同棲者でなかった間、ドミトリーはインガの才能を理解していたらしかった。然し今は、インガも彼と同じく建設の闘士であると思うことが、彼には出来ない。 わるいことは、ドミトリーに、自分を持ち上げようとする本気な努力がないことだ。・・・<宮本百合子「「インガ」」青空文庫>
  21. ・・・離婚後の扶助料を以て暗々裡に良人を威嚇しつつ同棲生活を続ける夫人連や、利己的の恥ずべき動機から離婚訴訟を起して、良人の心に致命傷を与えるのみならず、自分の魂にまで泥をかける或種の、数に於て多い夫人達がどうして自覚ある人格者と申せますでしょう・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  22. ・・・という小説が再版されるようになったが、その中に、その小説の主人公である青年闘士が女の同情者、そして愛人と同棲生活をして、困難を経てゆくことが書かれている。ある種の人々はそれについて共産党員の間にはハウスキーパーという一つの制度があって、自分・・・<宮本百合子「社会生活の純潔性」青空文庫>
  23. ・・・ 東洋大学で同級であった男と同棲、子供、震災、京都の日活の用で、男京都に居るうち、友達にだまされて無一文、やどで、ひどいあつかい。 製畳機を作る店の月報を出すことを、宿やの主人とその家の主とできめ、月給二人の細君連で相談して四十五円・・・<宮本百合子「一九二五年より一九二七年一月まで」青空文庫>
  24. ・・・何人かの男と友愛から進んで同棲し、そして何人かのそれらの男のもとから去った。理由は、この小説の最後をなしているアナンドとの深刻、複雑な政治的背景をもつ悲劇的別離をのぞいて、常に「深切や恋愛に憧れ」つつ「これらのものを恐れる」気持、「人は恋を・・・<宮本百合子「中国に於ける二人のアメリカ婦人」青空文庫>
  25. ・・・劉向高という、同じ年ぐらいの少しは文字のよめる男が、春桃と同棲している。向高は、春桃が一日の稼ぎを終って廂房に戻って来ると、いつも彼女の背をもみ、足をたたいてやった。そして商売の上では、価のある紙質や書類をよりわける。向高は、春桃をどうして・・・<宮本百合子「春桃」青空文庫>
  26. ・・・ ヴィアルドオ夫人と知ってから後もロシアに住んでいた五〇年代の初め三年間ばかり、ツルゲーネフは非常な美人であるが、文盲な農奴の娘であるアブドーチャ・イワーノと同棲していたことがある。アブドーチャはツルゲーネフの娘を生んだ。ツルゲーネフは・・・<宮本百合子「ツルゲーネフの生きかた」青空文庫>
  27. ・・・ けれども、結果は悪く、三年同棲する間に、女性がその良人に対して持ち得る極限の侮蔑と、恥と憤とを味って離婚してしまいました。 生活の安全、幸福と云うものは、只、金でだけ保障されると思って媒妁人は、心から彼女の為を計って、却って、富の・・・<宮本百合子「ひしがれた女性と語る」青空文庫>
  28. ・・・「すべての人間の中に、言葉や行為のみならず感情の矛盾が、角ばって具合わるく同棲している。」その気まぐれな跳梁が自分自身の裡にも感じられる。これがゴーリキイを苦しめ、圧した。「初めて魂の疲労と、心臓の中の毒々しい黴を感じた。」ロシアの民衆にと・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  29. ・・・ 例えば、或る中年を越した左翼的生活経験をもつ一人の男が、過去の家庭生活を更えて、妻子と離れ仕事に於ても共通点のある若い女と同棲生活に入ろうと欲する。その欲望は、男にのこされている生涯がそう永いものではないという見透しや、男一生の思い出・・・<宮本百合子「もう少しの親切を」青空文庫>