とう‐ぜん〔タウ‐〕【×蕩然】例文一覧 3件

  1. ・・・――ただ一雫の露となって、逆に落ちて吸わりょうと、蕩然とすると、痛い、疼い、痛い、疼いッ。肩のつけもとを棒切で、砂越しに突挫いた。」「その怪我じゃ。」「神職様。――塩で釣出せぬ馬蛤のかわりに、太い洋杖でかッぽじった、杖は夏帽の奴の持・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  2. ・・・、七輪へ載せ、尉を払い、火箸であしらい、媚かしい端折のまま、懐紙で煽ぐのに、手巾で軽く髪の艶を庇ったので、ほんのりと珊瑚の透くのが、三杯目の硝子盃に透いて、あの、唇だか、その珊瑚だか、花だか、蕾だか、蕩然となる。「町子嬢、町子嬢。」・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  3. ・・・何物にかぎらず多年使い馴れた器物を愛惜して、幾度となく之を修繕しつつ使用していたような醇朴な風習が今は既に蕩然として後を断ったのも此の一事によって推知せられる。 明治三十年の春明治座で、先代の左団次が鋳掛松を演じた時、鋳掛屋の呼び歩く声・・・<永井荷風「巷の声」青空文庫>