どう‐ちゃく【×撞着】例文一覧 26件

  1. ・・・二十八年の長きにわたって当初の立案通りの過程を追って脚色の上に少しも矛盾撞着を生ぜしめなかったのは稀に見る例で、作者の頭脳の明澄透徹を証拠立てる。殊に視力を失って単なる記憶に頼るほかなくなってからでも毫も混錯しないで、一々個々の筋道を分けて・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  2. ・・・ひとつもこの原則に撞着矛盾するものはない。ソコデ何故に物はかく螺線的運動をするのだというのが是非起る大疑問サ。僕がこの疑問に向ッて与うる説明は易々たるものだよ。曰くサ、「最も障碍の少き運動の道は必らず螺旋的なり」というので沢山サ。一体運動の・・・<幸田露伴「ねじくり博士」青空文庫>
  3. ・・・矛盾も撞着も頓着しないで書いているところに、この随筆集の価値があるであろう。これらの矛盾撞着によって三段論法では説けない道理を解説しているところにこの書の妙味があるであろう。 第八十段にディレッタンティズムに対する箴言がある。「人ごとに・・・<寺田寅彦「徒然草の鑑賞」青空文庫>
  4. ・・・我々の自己が唯一的に個となればなるほど、自己自身を限定する事として、絶対の当為に撞着するのである。あるいは我々の自己の自覚を離れて、単なる物の知識、単なる物の存在というものもあるではないかといわれるかも知れない。しかしそれらの基礎附けも、深・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  5. ・・・ 社会のこういう矛盾と撞着、それをみんなが知っているくせに、いちいちおどろいたり、苦しんだりしないような顔でいるくせになってしまった。しかも心は晴れていない。ロシア文学の古典の中でも、いま日本に流行しているのは、プーシュキンやゴーゴリの・・・<宮本百合子「新しい文学の誕生」青空文庫>
  6. ・・・は、人間の善意が、次第に個人環境のはにかみと孤立と自己撞着から解きはなされて現代史のプログラムに近づいてゆく、その発端の物語としてあらわれる。   一九四九年六月〔一九四九年七月〕・・・<宮本百合子「あとがき(『二つの庭』)」青空文庫>
  7. ・・・ やがて、第一次ヨーロッパ大戦にまきこまれたジャックが、どういう風に国際的な資本主義経済の自己撞着と戦争の矛盾を発見し、彼のヒューマニティーに立って社会歴史の発展に対する情熱に献身するか、それは、わたしたちの前にまだ日本訳としてあらわれ・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  8. ・・・ 人間の性格や気質にいろいろの癖があったり自己撞着があったりするのも畢竟は、私たちすべてのものが、ぽつんと天地の間に湧き出たものではなくて、波瀾を極める人間社会の肉体の歴史、精神の歴史の綾の裡から、またその綾に綾を加えるものとして生れ出・・・<宮本百合子「家庭創造の情熱」青空文庫>
  9. ・・・横光氏の自我、自意識というものの認識、実感の自己撞着が現れているのであるが、同時にこの不明確にしかつかまれていない自我の問題こそ、日本における能動精神、ヒューマニズムの生活的・文学的実践に、幾多の歴史的な特色を呈しつつあるのである。 さ・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  10. ・・・ 今日我々がうけついでいる文化、感情、知性は、社会の歴史に制せられてその本質に様々の矛盾、撞着、蒙昧をもっていることは認めなければならない事実である。科学者が科学を見る態度にもこれをおのずから反映している。特に、今日の科学では未だ現実の・・・<宮本百合子「作家のみた科学者の文学的活動」青空文庫>
  11. ・・・ところが、一方に告白されているような政治的、経済的無識が彼の現実を見る目を支配しているのであるから、ジイドは基本的なところで先ず自己撞着に陥り、観念の中で、心象の中で、把握している新社会の存在が、その本質に於て、違った土台の上に建っている経・・・<宮本百合子「ジイドとそのソヴェト旅行記」青空文庫>
  12. ・・・それは日本の封建性の圧迫をつねに感じていて、そのために感受性が異常になっている日本のインテリゲンチャの間には、一九二八年以来、奇妙な自己撞着があるということである。その自己撞着は、いつも自我の解放、個人の運命の自由な展開ということについて熱・・・<宮本百合子「自我の足かせ」青空文庫>
  13. ・・・ 家屋の仕事だから、所謂家庭的な空気が負担で、家長的、父的位置と芸術家の心の自在な動きが撞着して、一層の孤立のため旅へ出るとして、やはり家をちゃんとしてくれる女が必要であろう。 文学の仕事と文学を職業とするということの間に矛盾があっ・・・<宮本百合子「職業のふしぎ」青空文庫>
  14. ・・・ 政治的成長というものは、いってみればそのような撞着的事象の本体を洞察して、その間から何か積極的な合理的な人間生活建設の可能をとらえてゆく動的な生活的叡智、行動にほかならないのであろうと思う。そして、ある場合には、婦人の真の政治的な成熟・・・<宮本百合子「女性の歴史の七十四年」青空文庫>
  15. ・・・の構成要素は、アカデミックな面において強味を加えて来ていると共に、やはり一片ならぬ矛盾、自己撞着を包蔵していることが見える。例えば中河与一氏の万葉精神に対する主観的傾倒と佐佐木信綱氏が万葉学者として抱いていられる万葉精神に対する客観的見解と・・・<宮本百合子「近頃の話題」青空文庫>
  16. ・・・れを或る尊厳、確信ある出処進退という風に理解すると、今回のオリンピックに関しては勿論、四年後のためにされている準備そのものの中に、主としてそういう抽象名詞を愛好する人の立場から見ても何か本質的にそれと撞着する観念が潜入しつつあることが感じら・・・<宮本百合子「日本の秋色」青空文庫>
  17. ・・・坂口氏が性的経験の中にだけ実在を把握するといいながら、縷々とそれについて小説を書かずにはいられない矛盾、撞着が女性を性器においてだけ見るという考えの中にそっくり映っている。そしてそれを発見した時、雄々しく堕落しようとする娘たちは、案外自分た・・・<宮本百合子「人間の結婚」青空文庫>
  18. ・・・ここに、営利会社というものの本質からの撞着の姿があるし、働く男女のおかれている社会の条件のむきつけな露出もあると思う。 国家が賃銀制その他をきわめてゆくからには、働く女のための施設について、制度としてそれを各工場や経営に行わせてゆくのは・・・<宮本百合子「働く婦人」青空文庫>
  19. ・・・の中でマルクスの心を打ったほど鋭く現実の資本主義商業の成り立ちを喝破していることと撞着するものでないというのが、バルザックの花車を押し出した一部のプロレタリア作家・理論家たちの論拠であったと見られるのである。 ところで、ここに一つの私達・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  20. ・・・さほど遠い過去でないある時期には、プロレタリア作家が人間らしく、正直になるということは取りも直さず、社会の全体性と切り離され、対立的に見られる一俗人としての弱さ、自己撞着などを、何故それが彼の中にあるかという真剣な、真に芸術らしい解剖にまで・・・<宮本百合子「ヒューマニズムへの道」青空文庫>
  21. ・・・そのような解しかたが、小林秀雄氏の小さい一文の中でさえ、他の一方で主張されている実証的態度の主張との間にあからさまな自己撞着を示しているような誤りであることが自明であるからこそ、序説以下の「経済学批判」の方法が、今日の活ける古典として物を云・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>
  22. ・・・ 今日響いている国民文学の声にある政治への文学の協力は、従って、それよりずっとずっと手前の、現在の日本をこめた世界の大多数の社会がおかれている矛盾、混乱、撞着の中でいわれているのであり、その実際条件は、当然のこととしてその呼び声にも様々・・・<宮本百合子「平坦ならぬ道」青空文庫>
  23. ・・・ 歴史の激しくうつりかわる時期には、標語めいたものはどんどんうつり変り、表面からそれを追えばそこには矛盾も撞着も生じる。時代の風波はいかようであろうとも、私たちが女として人間として、よく生きぬかなければならない自身への責任はどこへ托しよ・・・<宮本百合子「身についた可能の発見」青空文庫>
  24. ・・・ところで、今日の私たちの日暮しなるものの土台はまことに矛盾撞着甚しいものがあるのであるから、作者山本氏の与える種類の正義感の満足には一面に、その当然の性質として大きく現代の常套と妥協せざるを得ないところがある訳である。否、或は、他の多くの作・・・<宮本百合子「山本有三氏の境地」青空文庫>
  25. ・・・それを引っ繰り返して見ているうちに、サフランと云う語に撞着した。まだ植字啓源などと云う本の行われた時代の字書だから、音訳に漢字が当て嵌めてある。今でもその字を記憶しているから、ここに書いても好いが、サフランと三字に書いてある初の字は、所詮活・・・<森鴎外「サフラン」青空文庫>
  26. ・・・――しかしこれは片づける事自身に対する反感ではなくて、人生の矛盾や撞着をあまりに手軽に考える事に対する反感である。先生は望ましくない種々の事実のどうにもできない根強さを見た。そうしてそのために苦しみもがいた後、厭世的な「あきらめ」に達した。・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>