どう‐とく〔ダウ‐〕【道徳】例文一覧 30件

  1. ・・・すべてが、彼の道徳上の要求と、ほとんど完全に一致するような形式で成就した。彼は、事業を完成した満足を味ったばかりでなく、道徳を体現した満足をも、同時に味う事が出来たのである。しかも、その満足は、復讐の目的から考えても、手段から考えても、良心・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  2. ・・・もし母が昔の女の道徳に囚れないで、真の性質のままで進んでいったならば、必ず特異な性格となって世の中に現われたろうと思う。 母の芸術上の趣味は、自分でも短歌を作るくらいのことはするほどで、かなり豊かにもっている。今でも時々やっているが、若・・・<有島武郎「私の父と母」青空文庫>
  3. ・・・そして、有妻の男子が他の女と通ずる事を罪悪とし、背倫の行為とし、唾棄すべき事として秋毫寛すなき従来の道徳を、無理であり、苛酷であり、自然に背くものと感じ、本来男女の関係は全く自由なものであるという原始的事実に論拠して、従来の道徳に何処までも・・・<石川啄木「性急な思想」青空文庫>
  4. ・・・しかし、その、あえてする事をためらったのは、卑怯ともいえ、消極的な道徳、いや礼儀であった。 つい信也氏も誘われた。 する事も、いう事も、かりそめながら、懐紙の九ツの坊さんで、力およばず、うつくしいばけものの、雪おんな、雪女郎の、……・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  5. ・・・ゆくまいというは道徳心の省作で、行きたい行きたいとするのは性欲の省作とでもいおうか。一方は行かない方がえいとはいうけれど、一方では行きたい行きたいの念がむらむらと抑え切れない。 もしおとよさんが、こっそり湯端へきて何とか言ったらどうしよ・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  6. ・・・ 尤もその頃は武家ですらが蓄妾を許され、町家はなお更家庭の道徳が弛廃していたから、さらぬだに放縦な椿岳は小林城三と名乗って別に一戸を構えると小林家にもまた妻らしい女を迎えた。今なら重婚であるが、その頃は門並が殆んど一夫多妻で、妻妾一つ家・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  7.  十一月十五日栃木県氏家在狭間田に開かれたる聖書研究会に於て述べし講演の草稿。 聖書は来世の希望と恐怖とを背景として読まなければ了解らない、聖書を単に道徳の書と見て其言辞は意味を為さない、聖書は旧約と新約とに分れて神・・・<内村鑑三「聖書の読方」青空文庫>
  8. ・・・これは架空的の宗教よりも強く、また何等根拠のない道徳よりももっと強くその子供の上に感化を与えている。神を信ずるよりも母を信ずる方が子供に取っては深く、且つ強いのである。実に母と子の関係は奇蹟と云っても可い程に尊い感じのするものであり、また強・・・<小川未明「愛に就ての問題」青空文庫>
  9. ・・・それは、Kの友人達が、小田のような人間を補助するということはKの不道徳だと云って、Kを非難し始めたのであった。「小田のようなのは、つまり悪疾患者見たいなもので、それもある篤志な医師などに取っては多少の興味ある活物であるかも知れないが、吾々健・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  10. ・・・     二 倫理学の入門 倫理学の祖といわれるソクラテス以来最近のシェーラーやハルトマンらの現象学派の倫理学にいたるまで、人間の内面生活ならびに社会生活の一切の道徳的に重要な諸問題が、それを一貫する原理の探究を目ざしてとり・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  11. ・・・営業的で、規則書が有り、月謝束修の制度も整然と立って居たのですが、漢学の方などはまだ古風なもので、塾規が無いのではありませんが至って漠然たるものでして、月謝やなんぞ一切の事は規則的法律的営業的で無く、道徳的人情的義理的で済んで居た方が多いの・・・<幸田露伴「学生時代」青空文庫>
  12. 第一章 死生第二章 運命第三章 道徳―罪悪第四章 半生の回顧第五章 獄中の回顧     第一章 死生       一 わたくしは、死刑に処せらるべく、いま東京監獄の一室に拘禁さ・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  13. ・・・彼にとって、そんな冒険はできない、というより、そんな「不道徳なこと」はできない、といった方がより当っている。そうだった。そしてその二つが同じように進んでいたとき、龍介は気軽に女と会えた。恵子はかえって彼に露骨な好意を見せた。女から手紙が時々・・・<小林多喜二「雪の夜」青空文庫>
  14. ・・・事実、自分の日常生活を支配しているものは、やっぱり陳い陳い普通道徳にほかならない。自分の過去現在の行為を振りかえって見ると、一歩もその外に出てはいない。それでもって、決して普通道徳が最好最上のものだとは信じ得ない。ある部分は道理だとも思うが・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  15. ・・・而して宗教的思想より進みて道徳を以て人々の行を規定し行かんと擬したるは儒教なり。この固有思想と五行等の新來思想とが合せる時、その宗教的方面に結びつきしは方士の類なり。後に道教となり風水説となれり。その道徳的方面に結びつきしは儒教也、易也。而・・・<白鳥庫吉「『尚書』の高等批評」青空文庫>
  16. ・・・主意は泰西の理学とシナの道徳と並び行なうべからざるの理を述ぶるにあり。文辞活動。比喩艶絶。これを一読するに、温乎として春風のごとく、これを再読するに、凜乎として秋霜のごとし。ここにおいて、余初めて君また文壇の人たるを知る。 今この夏、ま・・・<田口卯吉「将来の日本」青空文庫>
  17. ・・・トランプの遊びのように、マイナスを全部あつめるとプラスに変るという事は、この世の道徳には起り得ない事でしょうか。 神がいるなら、出て来て下さい! 私は、お正月の末に、お店のお客にけがされました。 その夜は、雨が降っていました。夫は、・・・<太宰治「ヴィヨンの妻」青空文庫>
  18. ・・・そしてそこで始めて、多数の公開観覧所が卑猥なものやあくどい際物で堕落し切っているのに対して、道徳的なものをもって対抗させる機会を得るだろう。教授用フィルムに簡単な幻燈でも併用すれば、従来はただ言葉の記載で長たらしくやっている地理学などの教授・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  19. ・・・彼は何故に賤業婦を愛するかという理由を自ら解釈して、道徳的及び芸術的の二条に分った。道徳的にはかつて『見果てぬ夢』という短篇小説中にも書いた通り、特種の時代とその制度の下に発生した花柳界全体は、最初から明白に虚偽を標榜しているだけに、その中・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  20. ・・・ 道徳上の事で、古人の少しもゆるさなかったことを、今の人はよほど許容する、我儘をも許す、社会がゆるやかになる、畢竟道徳的価値の変化という事が出来て来た。即ち自分というものを発揮してそれで短所欠点悉くあらわす事をなんとも思わない。そして無・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  21. ・・・而してそれが道徳の根源となる。国家主義と単なる民族主義とを混同してはならない。私の世界的世界形成主義と云うのは、国家主義とか民族主義とか云うものに反するものではない。世界的世界形成には民族が根柢とならなければならない。而してそれが世界的世界・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  22. ・・・彼等の中で、比較的忠実に読んだ人さへが、単なる英雄主義者として、反キリストや反道徳の痛快なヒーローとして、単純な感激性で崇拝して居たこと、あたかも大正期の文壇でトルストイやドストイェフスキイやを、単なる救世軍の大将として、白樺派の人々が崇拝・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  23. ・・・お前の道徳だ。だからお前にとってはそうであるより外に仕方のない運命なんだ。 犬は犬の道徳を守る。気に入ったようにやっていく。お前もやってのけろ! お前はその立派な、見かけの体躯をもって、その大きな轢殺車を曵いていく! 未成年者や・・・<葉山嘉樹「牢獄の半日」青空文庫>
  24. ・・・曾て東京に一士人あり、頗る西洋の文明を悦び、一切万事改進進歩を気取りながら、其実は支那台の西洋鍍金にして、殊に道徳の一段に至りては常に周公孔子を云々して、子女の教訓に小学又は女大学等の主義を唱え、家法最も厳重にして親子相接するにも賓客の如く・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  25. ・・・つまり東洋の儒教的感化と、露文学やら西洋哲学やらの感化とが結合って、それに社会主義の影響もあって、ここに私の道徳的の中心観念、即ち俯仰天地に愧じざる「正直」が形づくられたのだ。 併しこれは思想上の事だ。これが文学的労作と関係のある点はど・・・<二葉亭四迷「予が半生の懺悔」青空文庫>
  26. ・・・しかもけっして既成の疲れた宗教や、道徳の残滓を、色あせた仮面によって純真な心意の所有者たちに欺き与えんとするものではない。二 これらは新しい、よりよい世界の構成材料を提供しようとはする。けれどもそれは全く、作者に未知な絶えざる驚異に値す・・・<宮沢賢治「『注文の多い料理店』新刊案内」青空文庫>
  27. ・・・ 婦人の道徳の頽廃が歎かれている。しかし、これとても、一方では、食物につながった社会問題なのである。婦人の労働問題の合理的な解決が必要である一方に、食糧事情の民主的解決が緊急事となって来ている。 そのために、各種の現存の機構、組合に・・・<宮本百合子「合図の旗」青空文庫>
  28. ・・・その尊敬の情は熱烈ではないが、澄み切った、純潔な感情なのだ。道徳だってそうだ。義務が事実として証拠立てられるものでないと云うことだけ分かって、怪物扱い、幽霊扱いにするイブセンの芝居なんぞを見る度に、僕は憤懣に堪えない。破壊は免るべからざる破・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  29. ・・・煙は道徳に従うよりも、風に従う。花壇の花は終日濛々として曇って来た。煙は花壇の上から蠅を追い散らした勢力よりも、更に数倍の力をもって、直接腐った肺臓を攻撃した。患者たちは咳き始めた。彼らの一回の咳は、一日の静養を掠奪する。病舎は硝子戸で金網・・・<横光利一「花園の思想」青空文庫>
  30. ・・・対象になったのは道徳的の無知無反省と教養の欠乏とのために、自分のしている恐ろしい悪事に気づかない人でした。彼は自分の手である人間を腐敗させておきながら、自分の罪の結果をその人のせいにして、ただその人のみを責めました。彼は物的価値以外を知らな・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>