どう‐ぶつ【動物】例文一覧 32件

  1. ・・・しかし気違いでもない事がわかると、今度は大蛇とか一角獣とか、とにかく人倫には縁のない動物のような気がし出した。そう云う動物を生かして置いては、今日の法律に違うばかりか、一国の安危にも関る訣である。そこで代官は一月ばかり、土の牢に彼等を入れて・・・<芥川竜之介「おぎん」青空文庫>
  2. ・・・簡単な啼声で動物動物とが互を理解し合うように、妻は仁右衛門のしようとする事が呑み込めたらしく、のっそりと立上ってその跡に随った。そしてめそめそと泣き続けていた。 夫婦が行き着いたのは国道を十町も倶知安の方に来た左手の岡の上にある村の共・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  3. ・・・ この動物は、風の腥い夜に、空を飛んで人を襲うと聞いた……暴風雨の沖には、海坊主にも化るであろう。 逢魔ヶ時を、慌しく引き返して、旧来た橋へ乗る、と、 と鳴った。この橋はやや高いから、船に乗った心地して、まず意を安ん・・・<泉鏡花「海の使者」青空文庫>
  4. ・・・人間はいかにしてその終焉を全うすべきか、人間は必ず泣いて終焉を告げねばならぬものならば、人間は知識のあるだけそれだけ動物におとるわけである。 老病死の解決を叫んで王者の尊を弊履のごとくに捨てられた大聖釈尊は、そのとき年三十と聞いたけれど・・・<伊藤左千夫「紅黄録」青空文庫>
  5. ・・・ 僕は僕の妻を半身不随の動物としか思えないのだ。いッそ、吉弥を妾にして、女優問題などは断念してしまおうかと思って見た。 そうだ、そうだ。今の僕には女優問題などは二の町のことで、もう、とっくに、僕というものは吉弥の胸に融けてしまっているの・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  6. ・・・地質学を研究する人、動物学を研究する人はいくらもある。地質学者、動物学者はたくさんいる。しかしながら地質学、動物学を教えることのできる人は実に少い。文学者はたくさんいる、文学を教えることのできる人は少い。それゆえにこの学校に三、四十人の教授・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  7. ・・・ 乳飲児の時代から、ようやく独り歩きをする時代、そして、学校時代と考うるさえその過程の長いことは、かの他の動物に於けるとは比較にならない。病気をさせない心配から、病気になった時の心配、また、怪我をさせないように注意することから、友達の選・・・<小川未明「男の子を見るたびに「戦争」について考えます」青空文庫>
  8. ・・・小説の勉強はまずデッサンからだと言われているが、デッサンとは自然や町の風景や人間の姿態や、動物や昆虫や静物を写生することだと思っているらしく、人間の会話を写生する勉強をする人はすくない。戯曲を勉強した人が案外小説がうまいのは、彼等の書く会話・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  9. ・・・で今度はお前から注文しなさいと言えば、西瓜の奈良漬だとか、酢ぐきだとか、不消化なものばかり好んで、六ヶしうお粥をたべさせて貰いましたが、遂に自分から「これは無理ですね、噛むのが辛度いのですから、もう流動物ばかりにして下さい」と言いますので、・・・<梶井久「臨終まで」青空文庫>
  10. ・・・彼はよたよたと歩く別の動物になってしまう。遂にそれさえしなくなる。絶望! そして絶え間のない恐怖の夢を見ながら、物を食べる元気さえ失せて、遂には――死んでしまう。 爪のない猫! こんな、便りない、哀れな心持のものがあろうか! 空想を失っ・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  11. ・・・あらず、いかで自殺なる二字をもってこの二人の怪しき挙動の秘密を解き得べきぞ、貴嬢がいわゆる人とは自ら生きんことを計り自ら死なんことを謀る動物なるべし、この二つの一つを出でざる動物なるべし。 間もなく振動は全くやみぬ。われら急に内に入りて・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  12. ・・・彼によれば人間の目的は動物的有機体にもとづく快楽や、欲求を満足せしめることに存しない。人間の目的は神的意識の再現たる永久的自我を実現せしめることにある。社会を改善する目的も大衆に肉体的快楽、物的満足を与えるためではない。その各々の自我を実現・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  13. ・・・でも、そこからは、動物の棲家のように、異様な毛皮と、獣油の臭いが発散して来た。 それが、日本の兵卒達に、如何にも、毛唐の臭いだと思わせた。 子供達は、そこから、琺瑯引きの洗面器を抱えて毎日やって来た。ある時は、老人や婆さんがやって来・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  14. ・・・植物も生きている。動物も生きている。実は植物も動物もおなじものサ。婦人の手が触れると喜ぶなんかんという洒落た助倍の木もある。御辞宜を能くする卑劣の樹もある。這ッて歩いて十年たてば旅行いたし候と留守宅へ札を残すような行脚の樹もある。動物の中で・・・<幸田露伴「ねじくり博士」青空文庫>
  15. ・・・いな、彼らは、完全に一致・合同しうべきもの、させねばならぬものである。動物の群集にもあれ、人間の社会にもあれ、この二者のつねに矛盾・衝突すべき事情のもとにあるものは滅亡し、一致・合同しえたるものは繁栄していくのである。 そして、この一致・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  16. ・・・何が腐り爛れたかと薄気味悪くなって、二階の部屋から床板を引きへがして見ると、鼠の死骸が二つまでそこから出て来て、その一つは小さな動物の骸骨でも見るように白く曝れていたことを思い出した。私は恐ろしくなった。何かこう自分のことを形にあらわして見・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  17. ・・・づくのだ、生がい完全な自制を以て突き通して来た人は、死んだ後には神さまになれる、その反対に、少しでも自分を押えつけることが出来ないで、いろいろの悪いことをしたものは、次の世には、獣や、またはそれ以下の動物に生れて来るのだと信じておりました。・・・<鈴木三重吉「デイモンとピシアス」青空文庫>
  18. ・・・あのめしを噛む、その瞬間の感じのことだ。動物的な、満足である。下品な話だ。……」 私は、未だ中学生であったけれども、長兄のそんな述懐を、せっせと筆記しながら、兄を、たまらなく可哀想に思いました。A県の近衛公だなぞと無智なおだてかたはして・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  19. ・・・それから水族館へ行って両棲動物を見た。ラインゴルドで午食をして、ヨスチイで珈琲を飲んで、なんにするという思案もなく、赤い薔薇のブケエを買って、その外にも鹿の角を二組、コブレンツの名所絵のある画葉書を百枚買った。そのあとでエルトハイムに寄って・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  20. ・・・例えば植物の生長の模様、動物の心臓の鼓動、昆虫の羽の運動の仕方などがそうである。それよりも一層重要だと思うのは、万人の知っているべきはずの主要な工業経営の状況をフィルムで紹介する事である。動力工場の成り立ち、機関車、新聞紙、書籍、色刷挿画は・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  21. ・・・その下等動物を、私は初めて見た。その中には二三疋の小魚を食っているのもあった。「そら叔父さん綸が……」雪江は私に注意した。釣をする人たちによって置かれた綸であった。松原が浜の突角に蒼く煙ってみえた。昔しの歌にあるような長閑さと麗かさがあ・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  22. ・・・現時園内に在る建築物は帝室博物館と動物園との二所を除いて、其他のものは諸学校の校舎と共に悉く之を園外の地に移すべく、又谷中一帯の地を公園に編入し、旧来の寺院墓地は之を存置し、市民の居宅を取払ったならば稍規模の大なる公園となす事ができるであろ・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  23. ・・・太十は従来農家の附属物たる馬ととの外には動物は嫌いであった。猫も二三度飼ったけれど皆酷く窶れて鳴声も出せないように成って死んだ。猫がないので鼠は多かった。竹藪をかぶった太十の家は内も一杯煤だらけで昼間も闇い程である。天井がないので真黒な太い・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  24. ・・・実は私も動物園の熊のようにあの鉄の格子の檻の中に入って山の上へ上げられた一人であります。があれは生活上別段必要のある場所にある訳でもなければまたそれほど大切な器械でもない、まあ物数奇である。ただ上ったり下ったりするだけである。疑もなく道楽心・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  25. ・・・日本の詩人や文学者は、動物のやうに感覚がよく発育して居る。どんな深遠な美の秘密でさへも、いやしくも感覚される限りに於て、すぐに本質を嗅ぎつけてしまふ。彼等は全く動物の叡智を持つてる。その不可思議な独特の叡智によつて、彼等はボードレエルを嗅ぎ・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  26.  人間の腹より生まれ出でたるものは、犬にもあらずまた豕にもあらず、取りも直さず人間なり。いやしくも人間と名の附く動物なれば、犬豕等の畜類とは自ずから区別なかるべからず。世人が毎度いう通りに、まさしく人は万物の霊にして、生まれ・・・<福沢諭吉「家庭習慣の教えを論ず」青空文庫>
  27. ・・・もの、化さうな傘かす寺の時雨かな西の京にばけもの栖て久しくあれ果たる家ありけり今は其さたなくて春雨や人住みて煙壁を洩る 狐狸にはあらで幾何か怪異の聯想を起すべき動物を詠みたるもの、獺の住む水も・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  28. ・・・今日は一つうんとおもしろいことをやりましょう。動物園をあなたはきらいですか」と言いました。 ホモイが、 「うん。きらいではない」と申しました。 狐が懐から小さな網を出しました。そして、 「そら、こいつをかけておくと、とんぼで・・・<宮沢賢治「貝の火」青空文庫>
  29. ・・・ 人間を動物的に低める性的誇張は、ファシズムの一つの方法です。ナチスが青年男女を「わが陣営」にひきつけるためにとった方法は、いわゆる性の解放でした。正しい民主的な社会を求める人々は、こういう性のこみちから人間を人間でなくするような人間破・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  30. ・・・人は社会を成す動物だ。樵夫は樵夫と相交って相語る。漁夫は漁夫と相交って相語る。予は読書癖があるので、文を好む友を獲て共に語るのを楽にして居た。然るに国民之友の主筆徳富猪一郎君が予の語る所を公衆に紹介しようと思い立たれて、丁度今猪股君が予に要・・・<森鴎外「鴎外漁史とは誰ぞ」青空文庫>