どう‐やら例文一覧 30件

  1. ・・・が、簾の外の往来が、目まぐるしく動くのに引換えて、ここでは、甕でも瓶子でも、皆赭ちゃけた土器の肌をのどかな春風に吹かせながら、百年も昔からそうしていたように、ひっそりかんと静まっている。どうやらこの家の棟ばかりは、燕さえも巣を食わないらしい・・・<芥川竜之介「運」青空文庫>
  2. ・・・わたくしは数馬の怨んだのも、今はどうやら不思議のない成行だったように思って居りまする。」「じゃがそちの斬り払った時に数馬と申すことを悟ったのは?」「それははっきりとはわかりませぬ。しかし今考えますると、わたくしはどこか心の底に数馬に・・・<芥川竜之介「三右衛門の罪」青空文庫>
  3. ・・・「お主は川森さんの縁のものじゃないんかの。どうやら顔が似とるじゃが」 今度は彼れの返事も待たずに長顔の男の方を向いて、「帳場さんにも川森から話いたはずじゃがの。主がの血筋を岩田が跡に入れてもらいたいいうてな」 また彼れの方を・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  4. ・・・ 虫ではない、確かに鳥らしく聞こえるが、やっぱり下の方で、どうやら橋杭にでもいるらしかった。「千鳥かしらん」 いや、磯でもなし、岩はなし、それの留まりそうな澪標もない。あったにしても、こう人近く、羽を驚かさぬ理由はない。 汀・・・<泉鏡花「海の使者」青空文庫>
  5. ・・・「糠袋を頬張って、それが咽喉に詰って、息が塞って死んだのだ。どうやら手が届いて息を吹いたが。……あとで聞くと、月夜にこの小路へ入る、美しいお嬢さんの、湯帰りのあとをつけて、そして、何だよ、無理に、何、あの、何の真似だか知らないが、お嬢さ・・・<泉鏡花「絵本の春」青空文庫>
  6. ・・・省作にからかわれるのがどうやらうれしいようにも見えるけれど、さあ仕事となれば一生懸命に省作を負かそうとするなどははなはだ無邪気でよい。 清さんと清さんのお袋といっしょにおとよさんは少しあとになってくる。おとよさんは決して清さんといっしょ・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  7. ・・・「民さんはそんなに野菊が好き……道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」 民子は分けてやった半分の野菊を顔に押しあてて嬉しがった。二人は歩きだす。「政夫さん……私野菊の様だってどうしてですか」「さアどうしてということはないけ・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  8. ・・・この際、外に看護してくれるものはなかったんさかい、それが矢ッ張り大石軍曹であったらしい、どうやら、その声も似とった。」「それが果して気違いであったなら、随分しッかりした気狂いじゃアないか?」「無論気狂いにも種類があるもんと見にゃなら・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  9. ・・・岸島からさらに中洲へ廻って、中洲は例のお仙親子の住居を訪れるので、一昨日媼さんがお光を訪ねた時の話では、明日の夕方か、明後日の午後にと言ったその午後がもう四時すぎ、昨日もいたずらに待惚け食うし、今日もどうやら当てにならないらしく思われたので・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  10. ・・・ 絹代とは田中絹代、一夫とは長谷川一夫だとどうやらわかったが、高瀬とは高瀬なにがしかと考えていると、「貴方は誰ですの?」「高瀬です」 つい言った。「まあ」 さすがに暫らくあきれていたようだったが、やがて、「高瀬は・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  11. ・・・ていた秋山八郎君は、その後転々として流転の生活を送った末、病苦と失業苦にうらぶれた身を横たえたのが東成区北生野町一丁目ボタン製造業古谷新六氏方、昨二十二日本紙記事を見た古谷氏は“人生紙芝居”の相手役がどうやら自宅の二階にいる秋山君らしいと知・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  12. ・・・これでまあどうやら無事にすんだというわけだね。それでは今夜はひとつゆっくりと、おやじの香典で慰労会をさしてもらおうじゃないか」 連日の汗を旅館の温泉に流して、夕暮れの瀬川の音を座敷から聴いて、延びた頤髯をこすりながら、私はホッとした気持・・・<葛西善蔵「父の葬式」青空文庫>
  13. ・・・と苦しげな息の下から止ぎれ止ぎれに言って、あとはまた眼を閉じ、ただ荒い息づかいが聞えるばかりでした。どうやらそのまま眠ってゆく様子です。 やれやれ眠って呉れた、と二昼夜眠らなかった私は今夜こそ一寸でも眠らねばならぬと考えて、毛布にくるま・・・<梶井久「臨終まで」青空文庫>
  14. ・・・ 訊きながら私は、今日はいつもの仔猫がいないことや、その前足がどうやらその猫のものらしいことを、閃光のように了解した。「わかっているじゃないの。これはミュルの前足よ」 彼女の答えは平然としていた。そして、この頃外国でこんなのが流・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  15. ・・・彼らもどうやらそうした二人らしいのであった。 一人の青年はビールの酔いを肩先にあらわしながら、コップの尻でよごれた卓子にかまわず肱を立てて、先ほどからほとんど一人で喋っていた。漆喰の土間の隅には古ぼけたビクターの蓄音器が据えてあって、磨・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  16. ・・・ お神さんはしきりと幸ちゃんをほめて、実はこれは毎度のことであるが、そして今度の継母はどうやら人が悪そうだからきっと、幸ちゃんにはつらく当たるだろうと言ッた。『いい歳をしてもう今度で三度めですよ、第一小供がかあいそうでさア。』『・・・<国木田独歩「郊外」青空文庫>
  17. ・・・ 自分はたちどまった……心細くなってきた、眼に遮る物象はサッパリとはしていれど、おもしろ気もおかし気もなく、さびれはてたうちにも、どうやら間近になッた冬のすさまじさが見透かされるように思われて。小心な鴉が重そうに羽ばたきをして、烈しく風・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  18. ・・・この見地からするとどうやら外米は吾々には自然でなく、栄養上からもよいとは云えないことになりそうだ。しかし、食わずに生きてはいられない。が、なるべく食いたくない。そこで、病気だと云って内地米ばかりを配給して貰う者が出てくる──一度や二度はその・・・<黒島伝治「外米と農民」青空文庫>
  19. ・・・ それから源三はいよいよ分り難い山また山の中に入って行ったが、さすがは山里で人となっただけにどうやらこうやら「勘」を付けて上って、とうとう雁坂峠の絶頂へ出て、そして遥に遠く武蔵一国が我が脚下に開けているのを見ながら、蓬々と吹く天の風が頬・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  20. ・・・が立つか立たぬか性悪者めと罵られ、思えばこの味わいが恋の誠と俊雄は精一杯小春をなだめ唐琴屋二代の嫡孫色男の免許状をみずから拝受ししばらくお夏への足をぬきしが波心楼の大一坐に小春お夏が婦多川の昔を今に、どうやら話せる幕があったと聞きそれもなら・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  21. ・・・彼もどうやら若い農夫として立って行けそうに見えて来た。 いったい、私が太郎を田舎に送ったのは、もっとあの子を強くしたいと考えたからで。土に親しむようになってからの太郎は、だんだん自分の思うような人になって行った。それでも私は遠く離れてい・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  22. ・・・ 昨年、九月、甲州の御坂峠頂上の天下茶屋という茶店の二階を借りて、そこで少しずつ、その仕事をすすめて、どうやら百枚ちかくなって、読みかえしてみても、そんなに悪い出来ではない。あたらしく力を得て、とにかくこれを完成させぬうちは、東京へ帰る・・・<太宰治「I can speak」青空文庫>
  23. ・・・次には、この土塊の円筒の頂上へ握りこぶしをぐうっと押し込むと、筒の頭が開いて内にはがらんとした空洞ができ、そうしてそれが次第に内部へ広がると同時に、胴体の側面が静かにふくれ出してどうやら壺らしいものの形が展開されて行くのである。それから壺の・・・<寺田寅彦「空想日録」青空文庫>
  24. ・・・「あの人は何でもや。来るたんびに何かないかって、茶棚を探すのや。お酒も好きですね」お絹は癖で、詰まったような鼻で冷笑うように言った。「今でもやっぱり遊ぶのかね」「どうやら。家へあまりいらしゃらんさかえ。前かって、そうお金を費った・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  25. ・・・ それでも、職長仲間の血縁関係や、例えば利平のように、親子で勤めている者は、その息子を会社へ送り込んで、どうやら、二百人足らずのスキャップで、一方争議団を脅かすため、一面機械を錆つかせない程度には、空の運転をしていたのである。「君、・・・<徳永直「眼」青空文庫>
  26. ・・・例えば永代橋辺と両国辺とは、土地の商業をはじめ万事が同じではなかったように、吉原の遊里もまたどうやらこうやら伝来の風習と格式とを持続して行く事ができたのである。 泉鏡花の小説『註文帳』が雑誌『新小説』に出たのは明治三十四年で、一葉柳浪二・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  27. ・・・る男女のもの共に浮気の性質にて、末の松山浪越さじとの誓文も悉皆鼻の端の嘘言一時の戯ならんとせんに、末に至って外に仔細もなけれども、只親仁の不承知より手に手を執って淵川に身を沈むるという段に至り、是ではどうやら洒落に命を棄て見る如く聞えて話の・・・<二葉亭四迷「小説総論」青空文庫>
  28. ・・・なるほどどうやら己も一生というものの中に立っていたらしゅうは思われる。しかし己は高が身の周囲の物事を傍観して理解したというに過ぎぬ。己と身の周囲の物とが一しょに織り交ぜられた事は無い。周囲の物に心を委ねて我を忘れた事は無い。果ては人と人とが・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  29. ・・・そしてとどうやらこっちを見ながらわびるように誘うようになまめかしく呟いた。そして足音もなく土間へおりて戸をあけた。外ではすぐしずまった。女はいろいろ細い声で訴えるようにしていた。男は酔っていないような声でみじかく何か訊きかえしたりしていた。・・・<宮沢賢治「泉ある家」青空文庫>
  30. ・・・まさかとおもい、どうやらこれならとおもって一票を入れた社会党、民主党、民自党、びっくりばこのようにそのふたがはねあがったら昭和電工、相つぐ涜職事件で日本の民主化は、瓦石をかぶった。ゆうべ、花束をもって国会を訪問した全逓の婦人たちの話が放送さ・・・<宮本百合子「新しい潮」青空文庫>