とう‐らい〔タウ‐〕【到来】例文一覧 23件

  1. ・・・ 甚太夫は喜三郎の話を聞きながら、天運の到来を祝すと共に、今まで兵衛の寺詣でに気づかなかった事を口惜しく思った。「もう八日経てば、大檀那様の御命日でございます。御命日に敵が打てますのも、何かの因縁でございましょう。」――喜三郎はこう云っ・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・ 正月早々悲劇の絶頂が到来した。お前たちの母上は自分の病気の真相を明かされねばならぬ羽目になった。そのむずかしい役目を勤めてくれた医師が帰って後の、お前たちの母上の顔を見た私の記憶は一生涯私を駆り立てるだろう。真蒼な清々しい顔をして枕に・・・<有島武郎「小さき者へ」青空文庫>
  3. ・・・ フレンチは最後の刹那の到来したことを悟った。今こそ全く不可能な、有りそうにない、嫌な、恐ろしい事が出来しなくてはならないのである。フレンチは目を瞑った。 暗黒の裏に、自分の体の不工合を感じて、顫えながら、眩暈を覚えながら、フレンチ・・・<著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」青空文庫>
  4. ・・・云わば恋の創痕の痂が時節到来して脱れたのだ。ハハハハ、大分いい工合に酒も廻った。いい、いい、酒はもうたくさんだ。」と云い終って主人は庭を見た。一陣の風はさっと起って籠洋燈の火を瞬きさせた。夜の涼しさは座敷に満ちた。・・・<幸田露伴「太郎坊」青空文庫>
  5. ・・・編輯者は、私のこんな下手な作品に対しても、わざわざペエジを空けて置いて、今か今かと、その到来を待ってくれているのである。私はそれを知っているので、いかに愚劣な作品と雖も、みだりにそれを破棄することが出来ない。義務の遂行と言えば、聞えもいいが・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  6. ・・・ともすると鎌首もたげようとする私の不眠の悲鳴を叩き伏せ、叩き伏せ、お念仏一ついまは申さず、歯を食いしばって小説の筋を考え、そうして、もっぱら睡眠の到来を期待しているのである。それは、なかなかの苦しさであった。謂わば、私は、眠りと格闘していた・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  7. ・・・必ず危機が到来する。王子と、ラプンツェルの場合も、たしかに、その懐姙、出産を要因として、二人の間の愛情が齟齬を来した。たしかに、それは神の試みであったのである。けれども王子の、無邪気な懸命の祈りは、神のあわれみ給うところとなり、ラプンツェル・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  8.  山好きの友人から上高地行を勧められる度に、自動車が通じるようになったら行くつもりだといって遁げていた。その言質をいよいよ受け出さなければならない時節が到来した。昭和九年九月二十九日の早朝新宿駅中央線プラットフォームへ行って・・・<寺田寅彦「雨の上高地」青空文庫>
  9. ・・・十回目あたりからベーアのつけていた注文の時機が到来したと見えて猛烈をきわめた連発的打撃に今までたくわえた全勢力を集注するように見え、ようやく疲れかかったカルネラの頽勢は素人目にもはっきり見られるようになった。 第十一回目のラウンドで、審・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  10. ・・・科学的な知識などは一つも持ち合わせなくても大政治家大法律家になれるし、大臣局長にも代議士にもなりうるという時代が到来した。科学的な仕事は技師技手に任せておけばよいというようなことになったのである。そうしてそれらの技術官は一国の政治の本筋に対・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  11. ・・・がかりなものが、いつかはまた繰返されるであろう。その時にはまた日本の多くの大都市が大規模な地震の活動によって将棋倒しに倒される「非常時」が到来するはずである。それはいつだかは分からないが、来ることは来るというだけは確かである。今からその時に・・・<寺田寅彦「津浪と人間」青空文庫>
  12. ・・・それが少しひどくなって来ると、自分が何かしらもっと積極的な悪事を犯していて、今にもその応報を受けるべき時節が到来しそうな心持ちになる。これがもう一歩進むと立派な精神病になるのだが幸いにそこまでにはならない。そうしてこういう時はちょっと風呂に・・・<寺田寅彦「春六題」青空文庫>
  13. ・・・がどうも分らないが、しかしその前々夜であったかやはり食後の雑談中女中にある到来ものの珍しい菓子を特に指定して持って来させたことはあったのである。 麻糸の簾がライオンになる件だけは解釈の糸口が見付からない。こんなのをうっかりフロイドにでも・・・<寺田寅彦「夢判断」青空文庫>
  14. ・・・ 要するに、従来のいわゆる統計物理学は物理学の一方の庇を借りた寄生物であったのであるが、今ではこの店子に主家を明け渡す時節が到来しつつあるのではないか。ほんとうの新統計的物理学はこれから始まるべきではないか。これはもちろん筆者のはなはだ・・・<寺田寅彦「量的と質的と統計的と」青空文庫>
  15. ・・・家厳が力をつくして育し得たる令息は、篤実一偏、ただ命これしたがう、この子は未だ鳥目の勘定だも知らずなどと、陽に憂てその実は得意話の最中に、若旦那のお払いとて貸座敷より書附の到来したる例は、世間に珍しからず。 人の智恵は、善悪にかかわらず・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  16. ・・・一応もっとも至極の説なれども、田舎の叔母より楷書の手紙到来したることなし、干鰯の仕切に楷書を見たることなし、世間日用の文書は、悪筆にても骨なしにても、草書ばかりを用うるをいかんせん。しかのみならず、大根の文字は俗なるゆえ、これに代るに蘿蔔の・・・<福沢諭吉「小学教育の事」青空文庫>
  17. ・・・否な、徒に其時節到来を待つに非ず、天下有志の善男善女が躬践実行して実例を示し、以て其時節を作らんこと、我輩の希望し勧告する所なり。一 女子の結婚は男子に等しく、他家に嫁するあり、実家に居て壻養子するあり、或は男女共に実家を離れて新家を興・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  18. ・・・この作品において、野間という作者は、そのころの左翼の学生運動を貫いていた日本に関する歴史的展望――「プロレタリア革命への転化の傾向をもつブルジョア民主主義革命の到来」の意味を十分理解して書いているし、その左翼グループから歴史的見とおしの上で・・・<宮本百合子「一九四六年の文壇」青空文庫>
  19. ・・・ 出版の統制ということを、直感的に良書のゆたかな出版時代の到来としてうけている市民は、なかりそうに思う。統制でのこった本はどんなものかということに対する一抹の杞憂が、誰の胸のなかにも在るというのが正直なところではないだろうか。 先頃・・・<宮本百合子「日本文化のために」青空文庫>
  20. ・・・九十六篇のほか小論文五百十四、戯曲六篇という尨大な制作を行い、しかも生涯借金に悩まされどおしで死んだ横溢的な世界的作家に母国語で親しめるということは、我々にとって遅すぎたとしても決して早すぎて到来した機会と言えないのである。 しかし、昨・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  21. ・・・今こそ好機が到来したのだ。鉄は熱い中にこそ打つべきだ。長椅子の上であえぎながら、彼女は報告を読み、手紙を口述し、心悸亢進の合間には熱病的な冗談をとばした。ナイチンゲールは、イギリスの陸軍病院の全組織の改善という大計画につかれているのであった・・・<宮本百合子「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」青空文庫>
  22. ・・・ブルジョア婦人運動の時代は、日本の新民主主義の段階の到来とともに去って、再びかえらないのである。 婦人民主クラブはこれからも様々の場合にめぐり合うことだろう。全クラブ員が、日本の今日の歴史が立っているところと、クラブの民主主義に対する純・・・<宮本百合子「三つの民主主義」青空文庫>
  23. ・・・ 近代倫敦ボーイのある者は生涯到来することなき自動車購入の時節を空しく待ったりしないで、たとえばこの土曜日の夕方だ。山の手をぶらぶら歩きしていた十六歳のジョンソンはふと或る門の前に止った一台のオウバアンを認めた。二人乗用の新型で、何だか・・・<宮本百合子「ロンドン一九二九年」青空文庫>