とお‐えん〔とほ‐〕【遠縁】例文一覧 16件

  1. ・・・と云う或遠縁のお婆さんが一人「ほんとうに御感心でございますね」と言った。しかし僕は妙なことに感心する人だと思っただけだった。 僕の母の葬式の出た日、僕の姉は位牌を持ち、僕はその後ろに香炉を持ち二人とも人力車に乗って行った。僕は時々居睡り・・・<芥川竜之介「点鬼簿」青空文庫>
  2. ・・・ 元来あのお島婆さんと云うのは、世間じゃ母親のように思っていますが、実は遠縁の叔母とかで、お敏の両親が生きていた内は、つき合いさえしなかったものだそうです。何でも代々宮大工だったお敏の父親に云わせると、「あの婆は人間じゃねえ。嘘だと思っ・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  3. ・・・お部屋方の遠縁へ引取られなさいましたのが、いま、お話のありました箔屋なのです。時節がら、箔屋さんも暮しが安易でないために、工場通いをなさいました。お邸育ちのお慰みから、縮緬細工もお上手だし、お針は利きます。すぐ第一等の女工さんでごく上等のも・・・<泉鏡花「縷紅新草」青空文庫>
  4. ・・・荒木はその家の遠縁に当る男らしく、師匠に用事のある顔をして、ちょこちょこ稽古場へ現われては、美しい安子に空しく胸を焦していたが、安子が稽古に通い出して一月許りたったある日、町内に不幸があって師匠がその告別式へ顔出しするため、小一時間ほど留守・・・<織田作之助「妖婦」青空文庫>
  5. ・・・私の遠縁の男なんです。嫁をもらったばかりの若い百姓です。 そいつに召集令状が来て、まるでもう汽車に乗った事もないような田舎者なのですから、私が青森の部隊の営門まで送りとどけてやったのですが、それが、入隊してないというのです。いったん、営・・・<太宰治「嘘」青空文庫>
  6. ・・・とうとう、私の父が世話して、私の家と遠縁の佳いお嬢さんをもらってあげた。中畑さんは、間もなく独立して呉服商を営み、成功して、いまでは五所川原町の名士である。この中畑さん御一家に、私はこの十年間、御心配やら御迷惑やら、実にお手数をかけてしまっ・・・<太宰治「帰去来」青空文庫>
  7. ・・・ 私は、そうだと答えたかったのだけれど、そうすると、なんだかお金持の子供を鼻にかけるようで私のロマンチックな趣味に合わなかったから、いやちがう、僕はあの家の遠縁に当る苦学生であるが、そんなことは、どうでもいい、十年ぶりでやっと思いが叶っ・・・<太宰治「デカダン抗議」青空文庫>
  8. ・・・ 妹は、あすの私たちの食料を心配して、甲府市から一里半もある山の奥の遠縁の家へ、出発した。私たち親子四人は、一枚の敷蒲団を地べたに敷き、もう一枚の掛蒲団は皆でかぶって、まあここに踏みとどまっている事にした。さすがに私は疲れた。子供を背負・・・<太宰治「薄明」青空文庫>
  9. ・・・その酒屋さんと、姉妹の家とは、遠縁である。血のつながりは無い。すなわち三浦酒造店である。三浦君の生家である。 三浦君にも妹がひとりある。きょうだいは、それだけである。その妹さんは、二十。下吉田の姉妹と似た年である。だから三人姉妹のように・・・<太宰治「律子と貞子」青空文庫>
  10. ・・・ あのころの田舎の初節句の祝宴はたいてい二日続いたもので、親類縁者はもちろん、平素はあまり往来せぬ遠縁のいとこ、はとこまで、中にはずいぶん遠くからはるばる泊まりがけで出て来る。それから近村の小作人、出入りの職人まで寄り集まって盛んな祝い・・・<寺田寅彦「竜舌蘭」青空文庫>
  11. ・・・ 女は妻の遠縁に当たるものの次女であった。その関係でときどき自分の家に出はいるところからしぜん重吉とも知り合いになって、会えば互いに挨拶するくらいの交際が成立した。けれども二人の関係はそれ以上に接近する機会も企てもなく、ほとんど同じ距離・・・<夏目漱石「手紙」青空文庫>
  12. ・・・夫婦は相談して、おしまの遠縁の娘とその娘に似合の若者とを養子にした。夫婦養子をしたわけだ。元気者ではあるが年とった者ばかりの家へ、極若い男は兵役前という夫婦が加ったから、生活は華やかになった。勇吉もおしまも、老年の平和な幸福が数年先に両手を・・・<宮本百合子「田舎風なヒューモレスク」青空文庫>
  13. ・・・ それでもまさかそんな事も出来ないから遠縁の親類へいつもの注文通り、 二十二三の少しは教育のあるみっともなくないのをたのんでやった。 も一方先に頼んだ方のが無いと悪いと思ってであった。 父親が帰ってから、さきは、泣いた様・・・<宮本百合子「蛋白石」青空文庫>
  14. ・・・この遠縁の若者は、輜重輪卒に行って余り赤ぎれへ油をしませながら馬具と銃器の手入れをしたので、靴をみがくことまで嫌いになって帰って来た男である。 午後になって、私は家を出かけ、もよりのバスの停留場に立った。この線はふだんでも随分待たなけれ・・・<宮本百合子「電車の見えない電車通り」青空文庫>
  15. ・・・ 尾世川は尚子の遠縁に当る人で、彼女の紹介で藍子は知ったのであった。「――あの人名がわるいんですよ」「へえ――誰にきいて」「だって、あんな規知なんて名つけるから、逆さになっちゃったんでしょう」「馬鹿仰云い!」 二人は・・・<宮本百合子「帆」青空文庫>
  16. ・・・ 日夜妻と母親との口論に圧しつけられながら食堂のテーブルに製図板をのせて、ニージニの商人の倉庫だの店の修繕だのの図を引いている主人は、遠縁のゴーリキイに、約束どおり製図の修業をさせようとした。耳に鉛筆を挾み、長い髪をした主人が、或る日、・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>