とがめ【×咎め】例文一覧 30件

  1. ・・・しかしそれは咎めずとも好い。肉体は霊魂の家である。家の修覆さえ全ければ、主人の病もまた退き易い。現にカテキスタのフヮビアンなどはそのために十字架を拝するようになった。この女をここへ遣わされたのもあるいはそう云う神意かも知れない。「お子さ・・・<芥川竜之介「おしの」青空文庫>
  2. ・・・しかしこれは咎めずとも好い。わたしの意外に感じたのは「偉大なる画家は名前を入れる場所をちゃんと心得ている」と言う言葉である。東洋の画家には未だ甞て落款の場所を軽視したるものはない。落款の場所に注意せよなどと言うのは陳套語である。それを特筆す・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・おれは気の毒に思うたから、女は咎めるにも及ぶまいと、使の基安に頼んでやった。が、基安は取り合いもせぬ。あの男は勿論役目のほかは、何一つ知らぬ木偶の坊じゃ。おれもあの男は咎めずとも好い。ただ罪の深いのは少将じゃ。――」 俊寛様は御腹立たし・・・<芥川竜之介「俊寛」青空文庫>
  4. ・・・胆を裂くような心咎めが突然クララを襲った。それは本統はクララが始めから考えていた事なのだ。十六の歳から神の子基督の婢女として生き通そうと誓った、その神聖な誓言を忘れた報いに地獄に落ちるのに何の不思議がある。それは覚悟しなければならぬ。それに・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  5. ・・・だと咎めている。私は今論者の心持だけは充分了解することができる。しかしすでに国家が今日まで我々の敵ではなかった以上、また自然主義という言葉の内容たる思想の中心がどこにあるか解らない状態にある以上、何を標準として我々はしかく軽々しく不徹底呼ば・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  6. ・・・ 気咎めに、二日ばかり、手繰り寄せらるる思いをしながら、あえて行くのを憚ったが――また不思議に北国にも日和が続いた――三日めの同じ頃、魂がふッと墓を抜けて出ると、向うの桃に影もない。…… 勿体なくも、路々拝んだ仏神の御名を忘れようと・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  7. ・・・ 女房はそれかあらぬか、内々危んだ胸へひしと、色変るまで聞咎め、「ええ、亡念の火が憑いたって、」「おっと、……」 とばかり三之助は口をおさえ、「黙ろう、黙ろう、」と傍を向いた、片頬に笑を含みながら吃驚したような色である。・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  8. ・・・民子が少し長居をすると、もう気が咎めて心配でならなくなった。「民さん、またお出よ、余り長く居ると人がつまらぬことを云うから」 民子も心持は同じだけれど、僕にもう行けと云われると妙にすねだす。「あレあなたは先日何と云いました。人が・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  9.       一 隣の家から嫁の荷物が運び返されて三日目だ。省作は養子にいった家を出てのっそり戻ってきた。婚礼をしてまだ三月と十日ばかりにしかならない。省作も何となし気が咎めてか、浮かない顔をして、わが家の門をくぐった・・・<伊藤左千夫「春の潮」青空文庫>
  10. ・・・ やがて春風荘の一室に落ちつくと、父は、俺はあの時お前の若気の至りを咎めて勘当したが、思えば俺の方こそ若気の至りだとあとで後悔した。新聞を見たのでたまりかねて飛んできたが、見れば俺も老けたがお前ももうあまり若いといえんな、そうかもう三十・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  11. ・・・悪い男云々を聴き咎めて蝶子は、何はともあれ、扇子をパチパチさせて突っ立っている柳吉を「この人私の何や」と紹介した。「へい、おこしやす」種吉はそれ以上挨拶が続かず、そわそわしてろくろく顔もよう見なかった。 お辰は娘の顔を見た途端に、浴衣の・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  12. ・・・と、彼も子供の顔を見た刹那に、自分の良心が咎められる気がした。一日二日相手に遊んでいるうち、子供の智力の想ったほどにもなく発達しておらないというようなことも、彼の気持を暗くした。「俺も正式に学校でも出ていて、まじめに勤めをするとか、翻訳・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  13. ・・・ 石田はその路を通ってゆくとき、誰かに咎められはしないかというようなうしろめたさを感じた。なぜなら、その路へは大っぴらに通りすがりの家が窓を開いているのだった。そのなかには肌脱ぎになった人がいたり、柱時計が鳴っていたり、味気ない生活が蚊・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  14. ・・・そこで源三は川から二三間離れた大きな岩のわずかに裂け開けているその間に身を隠して、見咎められまいと潜んでいると、ちょうど前に我が休んだあたりのところへ腰を下して憩んだらしくて、そして話をしているのは全く叔父で、それに応答えをしているのは平生・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  15. ・・・故人成田屋が今の幸四郎、当時の染五郎を連れて釣に出た時、芸道舞台上では指図を仰いでも、勝手にしなせいと突放して教えてくれなかったくせに、舟では染五郎の座りようを咎めて、そんな馬鹿な坐りようがあるかと激しく叱ったということを、幸四郎さんから直・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  16. ・・・尤も、親しげに言葉の取換される様子を見たというまでで、以前家に置いてあった書生が彼女の部屋へ出入したからと言って、咎めようも無かったが……疑えば疑えなくもないようなことは数々あった……彼は鋭い刃物の先で、妻の白い胸を切開いて見たいと思った程・・・<島崎藤村「刺繍」青空文庫>
  17. ・・・ 西鶴を生んだ日本に、西鶴型の科学者の出現を望むのは必ずしも空頼めでないはずであるが、ただそういう型の学者は時にアカデミーの咎めを受けて成敗される危険がないとも限らない。これも、いつの世にも変らない浮世の事実であろう。 余談では・・・<寺田寅彦「西鶴と科学」青空文庫>
  18. ・・・ 人から咎められなくても自分でも気が咎めるのは、一度どこかで書いたような事をもう一度別の随筆の中で書かなければ工合の悪いようなはめになった時である。尤もそれ自身では同じ事柄でも前後の関係がちがって来ればその内容もまたちがった意義をもって・・・<寺田寅彦「随筆難」青空文庫>
  19. ・・・ お絹からいえば、道太に皆ながつれていってもらうのに、辰之助を差し措くことはその間に何か特別の色がつくようで、気に咎めた。辰之助を除外すれば、色気はないにしても、慾気か何かの意味があって、道太を引きつけておくように、道太の姉たちに思われ・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  20. ・・・永代の橋の上で巡査に咎められた結果、散々に悪口をついて捕えられるなら捕えて見ろといいながら四、五人一度に橋の欄干から真逆様になって水中へ飛込み、暫くして四、五間も先きの水面にぽっくり浮み出して、一同わアいと囃し立てた事なぞもあった。・・・<永井荷風「夏の町」青空文庫>
  21. ・・・しかしわたくしたち二人、二十一、二の男に十六、七の娘が更け渡る夜の寒さと寂しさとに、おのずから身を摺り寄せながら行くにもかかわらず、唯の一度も巡査に見咎められたことがなかった。今日、その事を思返すだけでも、明治時代と大正以後の世の中との相違・・・<永井荷風「雪の日」青空文庫>
  22. ・・・もなすという瘠我慢も圧迫も微弱になったため、一言にして云えば徳義上の評価がいつとなく推移したため、自分の弱点と認めるようなことを恐れもなく人に話すのみか、その弱点を行為の上に露出して我も怪しまず、人も咎めぬと云う世の中になったのであります。・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  23. ・・・故に我輩は単に彼等の迷信を咎めずして、其由て来る所の原因を除く為めに、文明の教育を勧むるものなり。一 人の妻と成ては其家を能く保べし。妻の行ひ悪敷放埒なれば家を破る。万事倹にして費を作べからず。衣服飲食抔も身の分限に随ひ用ひて奢・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  24. ・・・然るに論者は性急にして、鏡に対して反射の醜なるを咎め、瓜に向いて茄子たらざるを怒り、その議論の極意を尋ぬれば、実物にかかわらずして反射の影を美ならしめ、瓜の蔓にも茄子を生ぜしむるの策ありと、公にこれを口に唱えざれば暗に自からこれを心の底に許・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  25. ・・・春の夜に尊き御所を守身かな春惜む座主の連歌に召されけり命婦より牡丹餅たばす彼岸かな滝口に灯を呼ぶ声や春の雨よき人を宿す小家や朧月小冠者出て花見る人を咎めけり短夜や暇賜はる白拍子葛水や入江の御所に詣づれば・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  26. ・・・これをしも、祭司次長が諸君に告げんと欲して、敢て咎めらるべきでない。諸君、吾人は内外多数の迫害に耐えて、今日迄ビジテリアン同情派の主張を維持して来た。然もこれ未だ社会的に無力なる、各個人個人に於てである。然るに今日は既にビジテリアン同情派の・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  27. ・・・ インガは思わずきき咎めた。「何です?」「薄暗い隅っこで若僧といちゃついてる!」 ルイジョフは、居合わせる多勢の労働者に向って叫んだ。「見たんだ! 俺は自分で見たんだ! これが、正しいっていうのか? え?」 インガは・・・<宮本百合子「「インガ」」青空文庫>
  28. ・・・電気――エレキへの科学者としての興味をひかれ、実験を試みたことから、幕末の平賀源内が幕府から咎めを蒙った事実も忘れ難い。科学博物館編の「江戸時代の科学」という本は、簡単ではあるが、近代科学に向って動いた日本の先覚者たちの苦難な足跡を伝えてい・・・<宮本百合子「科学の常識のため」青空文庫>
  29. ・・・酒が好きで、別人なら無礼のお咎めもありそうな失錯をしたことがあるのに、忠利は「あれは長十郎がしたのではない、酒がしたのじゃ」と言って笑っていた。それでその恩に報いなくてはならぬ、その過ちを償わなくてはならぬと思い込んでいた長十郎は、忠利の病・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  30. ・・・それで旅人に宿を貸して足を留めさせたものにはお咎めがあります。あたり七軒巻添えになるそうです」「それは困りますね。子供衆もおいでなさるし、もうそう遠くまでは行かれません。どうにかしようはありますまいか」「そうですね。わたしの通う塩浜・・・<森鴎外「山椒大夫」青空文庫>