とき【時】 の意味

  1. 過去から現在、現在から未来へと、一方的また連続的に流れていくと考えられているもの。物事の変化・運動によって認識される。時間。「時が流れる」「時がたつ」「時を刻む」
  1. 時法によって示される、1日のうちの特定の時点や時間帯。また、その時法に基づく単位時間。時刻。刻限。日本では明治6年(1873)以来、平均太陽時によって一昼夜を24等分し、太陽が子午線を通過する時刻の12時間前を零時とする時法が行われている。また一般に、24時を午前・午後の12時ずつに分けて、零時を午前零時、12時を午後零時とよぶ慣習もある。昔の時法には、1日を等分する定時法と、昼夜を別個に等分する不定時法とがあり、単位時間の長さは、不定時法では季節や場所によって異なった。定時法は古代律令時代には既にあり、漏刻(水時計)を用いて1日を12等分し、各時刻に十二支を配して、鼓や鐘を鳴らして時を告げた。真夜中の子 (ね) の刻に9回、丑 (うし) の刻に8回というぐあいに一時 (いっとき) ごとに一打減らすもので、そのため、昼夜の各時刻を九つ…四つとも表した。近世になると、昼夜をそれぞれ6等分する不定時法が広く行われた。時刻の表し方は古代と同様であるが、各時刻はさらに2等分されて半とよばれたり、3等分されて上・中・下とよばれたりした。
  1. 時間の流れの一点。時刻。また、時刻を知らせること。「時の鐘」「時をつくる」
  1. ある時期。
  1. ㋐関心がおかれている時代や年代。ころ。「時は幕末、所は江戸」「時の首相」
  1. ㋑季節。時候。「紅葉の時」「時の物でもてなす」「時なし大根」
  1. 時勢。世の成り行き。「時に身をまかせる」「時に従う」
  1. 何らかの状況を伴った、時間のひとくぎり。
  1. ㋐さまざまな状況を念頭に置いた、不特定の時期。場合。「時に応じた方策」「あいさつのしかたも時と場所による」
  1. ㋑状況が明示できない、漠然とした時期。「時には失敗もある」「時として、そんなことも起こる」
  1. ㋐ちょうどよい機会。好機。「しかるべき時を待つ」「逆転の時をうかがう」
  1. ㋑(「秋」とも書く)重要な時期。「危急存亡の時」
  1. わずかな間。一時。また、当座。臨時。「時借り」「時貸し」
  1. 定められた期日。期限。「時を切って金を貸す」「返済の時が迫る」
  1. 10 (行為や状態を表す連体修飾を受けて)
  1. ㋐ある状態になっている時点や時期。「家に着いた時、母はいなかった」「幼稚園の時は、やんちゃ坊主だった」
  1. ㋑ある状況を仮定的に表す。おり。場合。「地震の時はどうしよう」
  1. 11 (「どき」の形で接尾語的に用いて)まさにその時期。また、それにふさわしい時期。「食事時で店が混む」「今時の若者」
  1. 12時制 (じせい) 」に同じ。
  1. 13 陰陽道 (おんようどう) で、事を行うのに適した日時。暦の吉日。
    • 「暦の博士召して、―問はせなどし給ふほどに」〈・葵〉
  1. 14 天台真言などの密教で行う、定時の勤行 (ごんぎょう) 。時の修法。
    • 「その夜行幸にて侍りしかば、暁の御―ひきあげて」〈弁内侍日記

とき【時】の慣用句

  1. 時移り事去る
    • 《陳鴻「長恨歌伝」から》歳月とともにさまざまなものが変化してゆく。
      「さるほどに―・って、世の変はりゆく有様は」〈平家・二〉
  1. 時極まれば而ち転ず
    • 《「史記」平準書から》時勢は行き着くところまで行くとやがて転じる。社会は時代によって変化してゆくものだということ。
  1. 時極まれば転ず
  1. 時知らず
    • 時期をわきまえない。四季の区別もなく、年じゅう変化がない。
      「―◦ぬ山は富士の嶺(ね)いつとてか鹿(か)の子まだらに雪のふるらむ」〈伊勢・九〉
  1. 時ぞともなし
    • いつという定まった時もない。いつも。年がら年じゅう。
      「いたづらに雲ゐる山の松の葉の―・き五月雨の空」〈玉葉集・夏〉
  1. 時となく
    • いつという時を定めず。常に。ひっきりなしに。
      「忘れ草我が紐に付く―思ひ渡れば生けりともなし」〈・三〇六〇〉
  1. 時と場合
    • その時々とその場の状況。「時と場合によって対策も異なる」
  1. 時無し
    • いつと定まった時がない。
      「み吉野の耳我(みみが)の嶺に―・くそ雪は降りける」〈・二五〉
    • 不幸・失意の境遇にある。
      「東宮の御時の学士にて侍りしを、―・くおはしませば」〈今鏡・一〉
  1. 時成る
    • その時刻が来る。その時期になる。
      「その日は立ち騒ぎて、―・りぬれば、今はとて」〈更級
  1. 時に遇う
    • よい時節にあう。時勢にあって栄える。「―・って社業が発展する」
    • 幸運にであう。
      「三代の帝に仕うまつりて、―・ひけれど」〈伊勢・一六〉
  1. 時に遇えば鼠も虎となる
    • 時運に恵まれると、つまらない者でも権勢を振るうようになる。
  1. 時に当たる
    • その時にさしあたる。その時にのぞむ。
      「近衛院に位を奪はれたりしかば…―・って恥辱を抱く」〈保元・上〉
    • ふさわしい時期になる。
      「その上今の相国は、―・る職に達し、世に聞こえたる才幹なり」〈太平記・二七〉
  1. 時に従う
    • 世のなりゆきに従う。時勢に従う。
  1. 時に付く
    • その時の権勢にまかせる。
      「―・けたるをこそ、世人も許すめれ」〈・竹河〉
  1. 時に取りて
    • 場合によって。
      「人、木石にあらねば、―物に感ずる事なきにあらず」〈徒然・四一〉
  1. 時に臨む
    • その時になる。その時にさしあたる。「―・んでは、陣頭に立って戦う」
  1. 時に因る
    • その時のなりゆきや状況に応ずる。「どう対応するかは―・る」
  1. 時の代官、日の奉行
    • 世の中をうまく渡っていくには、その時々の権勢ある者に従っているのがよいということのたとえ。
  1. 時の花をかざす
    • 時節の花を挿頭(かざし)にすることから、時勢にあって繁栄する。
  1. 時の用には鼻をも削ぐ
    • 急を要する大事な場合には鼻を切り落とすような手段でもとったほうがよい。危急の際には手段を選ばぬことのたとえ。時の用には鼻を欠け。
  1. 時は得難くして失い易し
    • 好機はなかなかめぐってこないもので、たとえ来たにしても油断をするとすぐ去ってしまう。
  1. 時は金なり
    • Time is money.》時は貴重であるからむだに過ごしてはならない。
  1. 時は人を待たず
    • 年月は過ぎやすく、好機は失われやすいことをいう。歳月人を待たず。
  1. 時分かず
    • 季節の区別がない。四季に関係ない。いつの時季でも。
      「湯の原に鳴く葦田鶴(あしたづ)は我(あ)がごとく妹(いも)に恋ふれや―◦ず鳴く」〈・九六一〉
    • 「―◦ず降れる雪かと見るまでに垣根もたわに咲ける卯の花」〈拾遺・夏〉
    • [補説]文化庁が発表した平成20年度「国語に関する世論調査」では、「事件の後には、時を分かたず、厳重な警備が行われた」という例文を掲げ、「時を分かたず」について、「(ア)すぐに」「(イ)いつも」「(ア)と(イ)の両方」「(ア)(イ)とは全く別の意味」「分からないの」中から、その意味を選ばせている。解答率は(ア)66.8パーセント、(イ)14.1パーセント。国語課は(イ)を本来の意味とするが、この意味で使われている例はほとんどないのが実状で、例文の場合は(ア)(イ)どちらにも解釈可能である。
      国語課が調査対象とした「時を分かたず」は多くの国語辞典には採録されていない。また、新聞紙上等にも使用例を見出すのが難しい。そこで本書では古語「時分かず」を見出し語として立て、語釈も古語用例に従った。なお、国語課担当官によると、「昼夜を分かたず」の「分かたず」に注目し、これに「時を」を付けた「時を分かたず」を調査対象とし、本来の意味を「いつも」とした由である。
  1. 時を争う
    • 物事を、少しでも早く行おうとする。一刻を争う。「救急車は―・う患者のためにある」
  1. 時を失う
    • よい時機を逃がす。「―・って事業の拡張はならなかった」
    • 時世に入れられず、権勢を失う。失意の人となる。
      「いつかまた春のみやこの花を見む時失へる山がつにして」〈・須磨〉
  1. 時を移さず
    • すぐさま。即刻。「時を移さず実行する」
  1. 時を得顔
    • よい時機にあって栄え、いかにも得意そうなようす。「時を得顔に振る舞う」
  1. 時を得る
    • 《「列子」説符の「時を得る者は昌(さか)え、時を失う者は亡ぶ」から》よい時機にめぐりあって栄える。時機をうまくとらえて利用する。
  1. 時を稼ぐ
    • 他の事で時間を長びかせているうちに、準備や用意を進める。時間を稼ぐ。「照会が済むまで世間話で―・ぐ」
  1. 時を奏す
    • 昔、宮中で夜警の武士が時刻を告げ知らせる。
      「時奏する、いみじうをかし」〈・二九〇〉
  1. 時を撞く
    • 時刻を知らせる鐘を撞き鳴らす。
  1. 時をつくる
    • 鶏が鳴いて夜明けの時を知らせる。
  1. 時を待つ
    • 時機を待つ。好機が来るのを待つ。「―・って旗上げする」
    • 死期を待つ。
      「あさましう沈ませ給ひて、ただ―・つばかりの御有様なり」〈栄花・花山尋ぬる中納言〉
  1. 時を見る
    • 時勢やよい時機を判断する。「―◦見て話をつける」
  1. 時を分かたず