と‐ぎれ【途切れ/跡切れ】例文一覧 25件

  1. ・・・すると甚太夫は途切れ途切れに、彼が瀬沼兵衛をつけ狙う敵打の仔細を話し出した。彼の声はかすかであったが、言葉は長物語の間にも、さらに乱れる容子がなかった。蘭袋は眉をひそめながら、熱心に耳を澄ませていた。が、やがて話が終ると、甚太夫はもう喘ぎな・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・ 明い電燈の光に満ちた、墓窖よりも静な寝室の中には、やがてかすかな泣き声が、途切れ途切れに聞え出した。見るとここにいる二人の陳彩は、壁際に立った陳彩も、床に跪いた陳彩のように、両手に顔を埋めながら……… 東京。 突然『影』の・・・<芥川竜之介「影」青空文庫>
  3. ・・・それからお敏が、自分も新蔵の側へ腰をかけて、途切れ勝にひそひそ話し出したのを聞くと、成程二人は時と場合で、命くらいは取られ兼ねない、恐しい敵を控えているのです。 元来あのお島婆さんと云うのは、世間じゃ母親のように思っていますが、実は遠縁・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  4. ・・・ 二人の言葉はぎこちなく途切れてしまった。彼は堅い決心をしていた。今夜こそは徹底的に父と自分との間の黒白をつけるまでは夜明かしでもしよう。父はややしばらく自分の怒りをもて余しているらしかったが、やがて強いてそれを押さえながら、ぴちりぴち・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  5. ・・・ 会話はぷつんと途切れてしまった。帳場は二度の会見でこの野蛮人をどう取扱わねばならぬかを飲み込んだと思った。面と向って埒のあく奴ではない。うっかり女房にでも愛想を見せれば大事になる。「まあ辛抱してやるがいい。ここの親方は函館の金持ち・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  6. ・・・ と、かさに掛って、勢よくは言いながら、胸が迫って声が途切れた。「後生だから。」「はい、……あの、こうでございますか。」「上手だ。自分でも髪を結えるね。ああ、よく似合う。さあ、見て御覧。何だ、袖に映したって、映るものかね。こ・・・<泉鏡花「小春の狐」青空文庫>
  7. ・・・ と云う時、言葉が途切れた。二人とも目を据えて瞻るばかり、一時、屋根を取って挫ぐがごとく吹き撲る。「気が騒いでならんが。」 と雑所は、しっかと腕組をして、椅子の凭りに、背中を摺着けるばかり、びたりと構えて、「よく、宮浜に聞い・・・<泉鏡花「朱日記」青空文庫>
  8. ・・・ 分けても、真白な油紙の上へ、見た目も寒い、千六本を心太のように引散らして、ずぶ濡の露が、途切れ途切れにぽたぽたと足を打って、溝縁に凍りついた大根剥の忰が、今度は堪らなそうに、凍んだ両手をぶるぶると唇へ押当てて、貧乏揺ぎを忙しくしながら・・・<泉鏡花「露肆」青空文庫>
  9. ・・・話は一寸途切れてしまった。 何と言っても幼い両人は、今罪の神に翻弄せられつつあるのであれど、野菊の様な人だと云った詞についで、その野菊を僕はだい好きだと云った時すら、僕は既に胸に動悸を起した位で、直ぐにそれ以上を言い出すほどに、まだまだ・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  10. ・・・ それから二、三日過ぎて、偶然沼南夫妻の在籍する教会の牧師のU氏を尋ねると、U氏はちょっとした咄の途切れに、「Yはこの頃君のとこへ行くかい?」といった。「二、三日前に来て近々故郷へ帰るといってました。」「その他に一身上の咄は何も・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  11. ・・・明治四十二年から四年へかけて西洋へ行っている間だけがちょっと途切れてはいるが、心持ちの上では、この明治三十二年以後今日まではただひとつながりの期間としか思われない。従って自分の東京と銀座に関する記憶は、――のような三つの部分から成り立ってい・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  12. ・・・と男は驚きの舌を途切れ途切れに動かす。「知らぬ路にこそ迷え。年古るく住みなせる家のうちを――鼠だに迷わじ」と女は微かなる声ながら、思い切って答える。 男はただ怪しとのみ女の顔を打ち守る。女は尺に足らぬ紅絹の衝立に、花よりも美くしき顔・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  13. ・・・ 一度途切れた村鍛冶の音は、今日山里に立つ秋を、幾重の稲妻に砕くつもりか、かあんかあんと澄み切った空の底に響き渡る。「あの音を聞くと、どうしても豆腐屋の音が思い出される」と圭さんが腕組をしながら云う。「全体豆腐屋の子がどうして、・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  14. ・・・その声は力なく、途切れ途切れではあったが、臨終の声と云うほどでもなかった。彼女の眼は「何でもいいからそうっとしといて頂戴ね」と言ってるようだった。 私は義憤を感じた。こんな状態の女を搾取材料にしている三人の蛞蝓共を、「叩き壊してやろう」・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  15. ・・・ 吉里の涙に咽ぶ声がやや途切れたところで、西宮はさぴたを拭っていた手を止めて口を開いた。「私しゃ気の毒でたまらない。実に察しる。これで、平田も心残りなく古郷へ帰れる。私も心配した甲斐があるというものだ。実にありがたかッた」 吉里・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  16. ・・・三二年から足かけ十三年の間に、わたしが奴隷の言葉をもってにしろ、ものをかき発表することの出来たのは、途切れ途切れに三年と九ヵ月だけであった。   一九四七年十二月〔一九四八年一月〕・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」青空文庫>
  17. ・・・ れんは思いがけないことなので、考えながら途切れ途切れに答えた。「はい――はい」 然し、程なく云われたことの全部の意味を理解すると、彼女の胡麻塩の頭の先から爪先まで、何とも云えず嬉しそうな光が、ぱあっと流れさした。 れんは、・・・<宮本百合子「或る日」青空文庫>
  18. ・・・だんだん途切れ途切れになり、急に近く大きく聴えたかと思うと、スーッと微になる。いきなり、「一ちゃん」 一太ははっとしてあっちこっち見廻した。「ちょっとこっちへおいで」「ほら、一ちゃん、おばさんが何か御用だよ」 一太は立っ・・・<宮本百合子「一太と母」青空文庫>
  19. ・・・第一に手がかじかんで、私のこの一ヵ月継続中の風邪のもとは、つい炭が途切れかかったときの記念です。 それにつれて、昔芥川龍之介の書いていた支那游記のなかのことを思い出します。或る支那の文人に会いに行ったら、紫檀の高い椅子卓子、聯が懸けられ・・・<宮本百合子「裏毛皮は無し」青空文庫>
  20. ・・・看守と雑役とが途切れ途切れそのことについて話すのを、留置場じゅうが聞いている。二つの監房に二十何人かの男が詰っているがそれらはスリ、かっぱらい、無銭飲食、詐欺、ゆすりなどが主なのだ。 看守は、雑役の働く手先につれて彼方此方しながら、・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  21. ・・・ 久しく途切れたからこれを書き今日はこの位でもう出します。この頃は時候がわるいらしいから呉々お大事に。こんな空を見て臥ているのは残念ですね。 九月七日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より〕 九月七日夜。今夜八日ぶりでお・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  22. ・・・ 声が車輪の音の間に途切れて分らない。私は、六つばかりの赤いジャケツを着た女の子をつれた男が、本気な好奇心を動かされた表情でいろいろと満鉄のことを訊きたがっている様子に、注意をひかれた。水道局か何かに勤め、目下のところ月給はとっているが・・・<宮本百合子「東京へ近づく一時間」青空文庫>
  23. ・・・行進して来る組合の人々は互にぎっちり腕を組み合って、組合旗を守り、元気よいというよりも気のたった大声をはりあげメーデーの歌をうたいつつ、ゆっくり進むかと思うと、腕を組み合ったまま急にかけだして、途切れそうになる行列をつないで、進んでゆく。前・・・<宮本百合子「メーデーに歌う」青空文庫>
  24. ・・・その言葉が思わず途切れ途切れに私の唇からほとばしった。どうも御苦労様でした、そういう感動が私の体じゅうを震わすのであったが、物々しい儀式の空気に制せられてそれは表現されなかった。 父は建築家としての活動にまめであった。且つ、建築家という・・・<宮本百合子「わが父」青空文庫>
  25. ・・・そこで話もたちまち途切れた。途切れたか、途切れなかッたか、風の音に呑まれて、わからないが、まずは確かに途切れたらしい。この間の応答のありさまについてまたつらつら考えれば年を取ッた方はなかなか経験に誇る体があッて、若いのはすこし謹み深いように・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>