とく‐い【特異】例文一覧 30件

  1. ・・・その僕の感想文というのは、階級意識の確在を肯定し、その意識が単に相異なった二階級間の反目的意識に止まらず、かかる傾向を生じた根柢に、各階級に特異な動向が働いているのを認め、そしてその動向は永年にわたる生活と習慣とが馴致したもので、両階級の間・・・<有島武郎「片信」青空文庫>
  2. ・・・これは確かに北海道の住民の特異な気質となって現われているようだ。若しあすこの土地に人為上にもっと自由が許されていたならば、北海道の移住民は日本人という在来の典型に或る新しい寄与をしていたかも知れない。欧洲文明に於けるスカンディナヴィヤのよう・・・<有島武郎「北海道に就いての印象」青空文庫>
  3. ・・・もし母が昔の女の道徳に囚れないで、真の性質のままで進んでいったならば、必ず特異な性格となって世の中に現われたろうと思う。 母の芸術上の趣味は、自分でも短歌を作るくらいのことはするほどで、かなり豊かにもっている。今でも時々やっているが、若・・・<有島武郎「私の父と母」青空文庫>
  4. ・・・この小房の縁に踞して前栽に対する時は誰でも一種特異の気分が湧く。就中椿岳が常住起居した四畳半の壁に嵌込んだ化粧窓は蛙股の古材を両断して合掌に組合わしたのを外框とした火燈型で、木目を洗出された時代の錆のある板扉の中央に取附けた鎌倉時代の鉄の鰕・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  5. ・・・けれど、それが自分達のものとなるには、それに伴う特異性のあることも考えなければならない。そうした認識と批判とを没しさせる、最大な原因は、今日の資本主義に基点を置く、ヂャナリズムの然らしめることです。この悪い風潮は黙々として、自己の生産に従事・・・<小川未明「文化線の低下」青空文庫>
  6. ・・・ 彼が風変りな題材と粘り強い達者な話術を持って若くして文壇へ出た時、私は彼の逞しい才能にひそかに期待して、もし彼が自重してその才能を大事に使うならば、これまでこの国の文壇に見られなかったような特異な作家として大成するだろうと、その成長を・・・<織田作之助「鬼」青空文庫>
  7. ・・・日光とか碓氷とか、天下の名所はともかく、武蔵野のような広い平原の林が隈なく染まって、日の西に傾くとともに一面の火花を放つというも特異の美観ではあるまいか。もし高きに登りて一目にこの大観を占めることができるならこの上もないこと、よしそれができ・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  8. ・・・かような宗教経験の特異な事実は、客観的には否定も、肯定もできない。今後の心霊学的研究の謙遜な課題として残しておくよりない。しかし日蓮という一個の性格の伝記的な風貌の特色としては興趣わくが如きものである。     八 身延の隠棲・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  9. ・・・釣も釣でおもしろいが、自分はその平野の中の緩い流れの附近の、平凡といえば平凡だが、何ら特異のことのない和易安閑たる景色を好もしく感じて、そうして自然に抱かれて幾時間を過すのを、東京のがやがやした綺羅びやかな境界に神経を消耗させながら享受する・・・<幸田露伴「蘆声」青空文庫>
  10. ・・・其一例を示せば、 我日本国の帝室は地球上一種特異の建設物たり。万国の史を閲読するも此の如き建設物は一個も有ること無し。地上の熱度漸く下降し草木漸く萠生し那辺箇辺の流潦中若干原素の偶然相抱合して蠢々然たる肉塊を造出し、日照し風乾かし耳・・・<幸徳秋水「文士としての兆民先生」青空文庫>
  11. ・・・而してその特異なる點は天文暦日に關するもの也。即ち天に關する分子なり。 次に舜典に徴するに、舜は下流社會の人、孝によりて遂に帝位を讓られしが、その事蹟たるや、制度、政治、巡狩、祭祀等、苟も人君が治民に關して成すべき一切の事業は殆どすべて・・・<白鳥庫吉「『尚書』の高等批評」青空文庫>
  12. ・・・私が少しでも、あなたに関心を持っているとしたら、それはあなたの特異な職業に対してであります。市民を嘲って芸術を売って、そうして、市民と同じ生活をしているというのは、なんだか私には、不思議な生物のように思われ、私はそれを探求してみたかったとい・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  13. ・・・青扇が日頃、へんな自矜の怠惰にふけっているのを真似て、この女も、なにかしら特異な才能のある夫にかしずくことの苦労をそれとなく誇っているのにちがいないと思ったのである。爽快な嘘を吐くものかなと僕は内心おかしかった。けれどこれしきの嘘には僕も負・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  14. ・・・背後に、元老の鶴屋北水の頑強な支持もあって、その特異な作風が、劇壇の人たちに敬遠にちかいほどの畏怖の情を以て見られていた。さちよの職場は、すぐにきまった。鴎座である。そのころの鴎座は、素晴しかった。日本の知識人は、一様に、鴎座の努力を尊敬し・・・<太宰治「火の鳥」青空文庫>
  15. ・・・けれども、さすがに病床の粥腹では、日頃、日本のあらゆる現代作家を冷笑している高慢無礼の驕児も、その特異の才能の片鱗を、ちらと見せただけで、思案してまとめて置いたプランの三分の一も言い現わす事が出来ず、へたばってしまった。あたら才能も、風邪の・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  16. ・・・白っぽい砂礫を洗う水の浅緑色も一種特別なものであるが、何よりも河の中洲に生えた化粧柳の特異な相貌はこれだけでも一度は来て見る甲斐があると思われた。この柳は北海道にはあるが内地ではここだけに限られた特産種で春の若芽が真赤な色をして美しいそうで・・・<寺田寅彦「雨の上高地」青空文庫>
  17. ・・・それほどに、この池は、風致の上から見た大学にとって特異なものである。それが一夜の火事でだいぶんに変わった。こういう変化は無論不可逆的変化である。これからさきどんなに美しく変わるかしれないが、大正十二年以前に、大学の門をくぐった人々の中にある・・・<寺田寅彦「池」青空文庫>
  18. ・・・     映画芸術の特異性 芸術としての映画が他のいろいろの芸術に対していかなる特異性をもっているかを考えてみよう。 大概の芸術は人類の黎明時代にその原型をもっている。文学は文字の発明以前から語りものとして伝わり、絵画彫・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  19. ・・・この映画の独自な興味は結局太鼓の音と靴音とこれに伴なう兵隊の行列によって象徴された特異なモチーフをもって貫かせた楽曲的構成にあると思われる。そうしてその単純明白なモチーフが非常に多面的立体的に取り扱われているために、同じものの繰り返しが少し・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  20. ・・・これにはきっと特別な細胞や繊維の特異性があるに相違ないが、ちょっとした動物学の書物などには、こうしたいちばんわれらの知りたいようなおもしろいことが書いてないようである。 主人公のバック氏が傘蛇に襲われ上着を脱いでかぶせて取り押える場面が・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  21. 一 影なき男 一種の探偵映画である。しかしこの映画のおもしろみはストーリーの猟奇的な探偵趣味よりもむしろウィリアム・パウェルという男とマーナ・ロイという女とこの二人の俳優の特異なパーソナリティの組み合わせと、その二人で代表された・・・<寺田寅彦「映画雑感(※[#ローマ数字7、1-13-27])」青空文庫>
  22. ・・・ そうした特異な部落を称して、この辺の人々は「憑き村」と呼び、一切の交際を避けて忌み嫌った。「憑き村」の人々は、年に一度、月のない闇夜を選んで祭礼をする。その祭の様子は、彼ら以外の普通の人には全く見えない。稀れに見て来た人があっても、な・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  23. ・・・芭蕉がこの特異のところを賞揚せずして、かえってこれを排斥せんとしたるを見れば、彼はその複雑的美を解せざりし者に似たり。 芭蕉は一定の真理を言わずして時に随い人により思い思いの教訓をなすを常とす。その洒堂を誨えたるもこれらの佳作を斥けたる・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  24. ・・・世界の民主主義発達史のなかの特異な一頁である。<宮本百合子「兄と弟」青空文庫>
  25. ・・・こに手がかりを見出し、ほんのちょっとでもこの現実をましな方に向けるような意志をもって生きて行く、それが生であり『集団行進』が人間のそのような喜び、悲しみ、憤りを盛っているからこそ、既成の所謂歌壇に対し特異な価値を主張し得るのであると信じます・・・<宮本百合子「歌集『集団行進』に寄せて」青空文庫>
  26. ・・・ 何もこの人が書かなくてもと思える小説ということは、題材として特異な経験がそこにないというのではなくて、ありふれたような事象でもありふれなく生き貫く個々の文学精神が萎靡してしまっているということにほかならない。その人をして小説をかかしめ・・・<宮本百合子「今日の文学の諸相」青空文庫>
  27. ・・・日本に於ける作家の社会的立場の特異性、貧弱さは、このことにも充分に現われているのである。 岸田国士氏等によっても、文学及び作家の真の発展のために文壇が今は妨げとなっていることが言われている。これまでの狭い職業組合的な文壇が、個々の作家に・・・<宮本百合子「今日の文学の鳥瞰図」青空文庫>
  28. ・・・これらの作品の題材の特異性、特異性を活かすにふさわしい陰影の濃い粘りづよい執拗な筆致等は、主人公の良心の表現においても、当時の文壇的風潮をなしていた行為性、逆流の中に突立つ身構えへの憧憬、ニイチェ的な孤高、心理追求、ドストイェフスキー的なる・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  29. ・・・ここに偶像礼拝と密接に相関する芸術製作の特異な例があるのである。芸術鑑賞がその根源を製作者の内生に発するごとく、偶像礼拝もまたその根源を偶像製作者の内生に発する。我々は祖先の内のこの製作者を、もっともっと尊敬しなければならない。 芸術家・・・<和辻哲郎「偶像崇拝の心理」青空文庫>
  30. ・・・われわれは知力の傾向に従って、特異な点を常に看過しようとするけれども、実際はすべてが全然特異なのである。 またわれわれは漠然と「顔」ということをいうが実際にわれわれが経験するのは個々別々な、特殊な人相であって一般的な「顔」ではない。人相・・・<和辻哲郎「自己の肯定と否定と」青空文庫>