とく‐ぎ【徳義】例文一覧 27件

  1. ・・・道理や徳義の此門内に入るを許さざれば也。 蓋し司法権の独立完全ならざる東洋諸国を除くの外は此如き暴横なる裁判、暴横なる宣告は、陸軍部内に非ざるよりは、軍法会議に非ざるよりは、決して見ること得ざる所也。 然り是実に普通法衙の苟も為さざ・・・<幸徳秋水「ドレフュー大疑獄とエミール・ゾーラ」青空文庫>
  2. ・・・従って小説戯曲の材料は七分まで、徳義的批判に訴えて取捨選択せられるのであります。恋を描くにローマン主義の場合では途中で、単に顔を合せたばかりで直ぐに恋情が成立ち、このために盲目になったり、跛足になったりして、煩悶懊悩するというようなことにな・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  3. ・・・がそれは徳義上の問題で事実上の問題にはなりません。事実の大局から云えば活力を吾好むところに消費するというこの工夫精神は二六時中休みっこなく働いて、休みっこなく発展しています。元々社会があればこそ義務的の行動を余儀なくされる人間も放り出してお・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  4. ・・・評家は自己の得意なる趣味において専門教師と同等の権力を有するを得べきも、その縄張以外の諸点においては知らぬ、わからぬと云い切るか、または何事をも云わぬが礼であり、徳義である。 これらの条項を机の上に貼り附けるのは、学校の教師が、学校の課・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  5. ・・・どうせ無関係な第三者がひとの艶書のぬすみ読みをするときにこっけいの興味が加わらないはずはないわけであるが、書き手が節操上の徳義を負担しないで済むくろうとのような場合には、この興味が他の厳粛な社会的観念に妨げられるおそれがないだけに、読み手は・・・<夏目漱石「手紙」青空文庫>
  6. ・・・世の中には徳義的に観察するとずいぶん怪しからぬと思うような職業がありましょう。しかもその怪しからぬと思うような職業を渡世にしている奴は我々よりはよっぽどえらい生活をしているのがあります。しかし一面から云えば怪しからぬにせよ、道徳問題として見・・・<夏目漱石「道楽と職業」青空文庫>
  7. ・・・モラル・バックボーンという何でもない英語を翻訳すると、徳義的脊髄という新奇でかつ趣のある字面が出来る。余の行為がこの有用な新熟語に価するかどうかは、先生の見識に任せて置くつもりである。(余自身はそれほど新らしい脊髄がなくても、不便宜なしに誰・・・<夏目漱石「博士問題とマードック先生と余」青空文庫>
  8. ・・・だから忠臣でも孝子でももしくは貞女でも、ことごとく完全な模範を前へおいて、我々ごとき至らぬものも意思のいかん、努力のいかんに依っては、この模範通りの事ができるんだといったような教え方、徳義の立て方であったのです。もっとも一概に完全と云いまし・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  9. ・・・次には忠、孝、義侠心、友情、おもな徳義的情操はその分化した変形と共に皆標準になります。この徳義的情操を標準にしたものを総称して善の理想と呼ぶ事ができます。この事はもっと委細に御話したいが時間がないから略して次に移ります。精神作用の第三は・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  10. ・・・泥棒をして懲役にされた者、人殺をして絞首台に臨んだもの、――法律上罪になるというのは徳義上の罪であるから公に所刑せらるるのであるけれども、その罪を犯した人間が、自分の心の径路をありのままに現わすことが出来たならば、そうしてそのままを人にイン・・・<夏目漱石「模倣と独立」青空文庫>
  11. ・・・私が独立した一個の日本人であって、けっして英国人の奴婢でない以上はこれくらいの見識は国民の一員として具えていなければならない上に、世界に共通な正直という徳義を重んずる点から見ても、私は私の意見を曲げてはならないのです。 しかし私は英文学・・・<夏目漱石「私の個人主義」青空文庫>
  12. ・・・例えば女の天性妊娠するの約束なるが故に妊娠中は斯く/\の摂生す可しと、特に女子に限りて教訓するが如きは至極尤に聞ゆれども、男女共に犯す可らざる不徳を書並べ、男女共に守る可き徳義を示して、女ばかりを責るとは可笑しからずや。犬の人にかみつきて却・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  13. ・・・ かくの如くして多年の成跡を見るに、幾百の生徒中、時にあるいは不行状の者なきに非ずといえども、他の公私諸学校の生徒に比して、我が慶応義塾の生徒は徳義の薄き者に非ず、否なその品行の方正謹直にして、世事に政談にもっとも着実の名を博し、塾中、・・・<福沢諭吉「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」青空文庫>
  14. ・・・今一歩を譲り、人生は徳義を第一として、これに兼ぬるに物理の知識をもってすれば、もって社会の良民たるに恥じず。経世の学は必ずしもこれを学問として学ばざるも、おのずから社会の実際にあたりてこれを得ること容易なり。 たとえば今の日本政府にてい・・・<福沢諭吉「経世の学、また講究すべし」青空文庫>
  15. ・・・父母の品行方正にして其思想高尚なれば自から家風の美を成し、子女の徳義は教えずとても自然に美なる可し。左れば父母たる者の身を慎しみ家を治むるは独り自分の利益のみに非ず、子孫の為めに遁る可らざる義務なりと知る可し。一 家の美風その箇条は様々・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  16. ・・・論者その人の徳義薄くして、その言論演説、もって人を感動せしむるに足らざるか、夫子自から自主独立の旨を知らざるの罪なり。天下の風潮は、つとに開進の一方に向いて、自主独立の輿論はこれを動かすべからず。すでにその動かすべからざるを知らば、これにし・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  17. ・・・ およそ徳教の書は、古聖賢の手になり、またその門に出でしものにして、主義のいかんにかかわらず、天下後世の人がその書を尊信するは、その聖賢の徳義を尊信するがゆえなり。支那の四書五経といい、印度の仏経といい、西洋のバイブルといい、孔孟、釈迦・・・<福沢諭吉「読倫理教科書」青空文庫>
  18. ・・・即ち家に居るの徳義よりも、世に処するの徳義を専らにするものの如し。この一点において我輩が見る所を異にすると申すその次第は、敢えて論者の道徳論を非難するにはあらざれども、前後緩急の別について問う所のものなきを得ざるなり。 世界開闢の歴史を・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  19. ・・・然るに世に智徳の二字を熟語となし、智恵といえば徳もまた、これに従うものの如く心得、今日、西洋の文明は智徳の両者より成立つものなれば、智恵を進むるには徳義もまた進めざるべからずとて、或る学者はしきりに道徳の教をしき、もって西洋の文明に至らんと・・・<福沢諭吉「文明教育論」青空文庫>
  20. ・・・そういう面で役に立つならば、役に立てた人に対する徳義として沈黙しているべきことでもあろう。 現在北支で経過している事件の性質は、全く素人の一市民として見ても、世界歴史の上に豊富、多岐な内容をもっていることがわかる。歴史小説の題材としての・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>
  21. ・・・ 両性間の純な徳義、敏感な礼節、美しい共力はどうして得られるか。今日の生活、社会の習慣はまだまだ此等の獲得を困難なものにしています。男性も女性も、第一というところ、最も理想的というところを絶えず目ざしていて、決して雑作なく其処に着き過た・・・<宮本百合子「惨めな無我夢中」青空文庫>
  22. ・・・革命的指導者の最大の徳義は、世界とその国の客観的情勢を自分がそれを好都合と感じるか、感じないかということにかかわらず、革命の課題にそって正確に把握することであるということを理解していた人たちであった。人民とその指導者との間にまごころからの信・・・<宮本百合子「三つの愛のしるし」青空文庫>
  23. ・・・けれども、英国人たる者が生得権として敬虔、真実な徳義を持つと云う信条は決して否定しない。自分等は選ばれたる者で、特別な精神高揚の努力なしで、仁慈に達せられると思って居る。自分の金を出して一つの教会を建てる騒々しい成上りものは、そう云うことで・・・<宮本百合子「無題(四)」青空文庫>
  24. ・・・これは、十分この作者としてとりあげられる種類の人間的徳義心の問題である。こういう徳義は、パーウェルの母であるとかないとかいうことではない。大処高所から自分とわが子の運命の意味を見とおして、互に傷つきながらゆるがぬ情愛を持つ親は、現在の世の中・・・<宮本百合子「山本有三氏の境地」青空文庫>
  25. ・・・祖先の霊があるかのように背後を顧みて、祖先崇拝をして、義務があるかのように、徳義の道を踏んで、前途に光明を見て進んで行く。そうして見れば、僕は事実上極蒙昧な、極従順な、山の中の百姓と、なんの択ぶ所もない。只頭がぼんやりしていないだけだ。極頑・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  26. ・・・だいぶ大勢の積りだし、不参の人もありそうだから、飛入をしても構わないのですが、それでは徳義上行かれぬなんぞと、あなたの事だから云うかも知れない。しかし二三日前に逢った時、あなたにはわたくしから話をして見て、来られるようなら、お連申すかも知れ・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>
  27. ・・・ただ先生はその正義の情熱のために、信ずる所をまげる事ができなかった。徳義的脊骨があまりにも固かった。それが卑屈と妥協と中途半端とに慣れた世間の眼に珍しく見えたまでである。 しかし常識的という事が道義的鈍感を意味するならば、先生は常識的で・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>