どく‐しゃ【読者】例文一覧 30件

  1. ・・・ どうもこの頃は読者も高級になっていますし、在来の恋愛小説には満足しないようになっていますから、……もっと深い人間性に根ざした、真面目な恋愛小説を書いて頂きたいのです。 保吉 それは書きますよ。実はこの頃婦人雑誌に書きたいと思っている小・・・<芥川竜之介「或恋愛小説」青空文庫>
  2. ・・・こうなる以上は、私の所言を発表して、読者にお知らせしておくのが便利と考えられる。 農繁の時節にわざわざ集まってくださってありがたく思います。しかし今日はぜひ諸君に聞いていただかねばならぬ用事があったことですから悪しからず許してく・・・<有島武郎「小作人への告別」青空文庫>
  3. ・・・を主張しているかはすでに読者の知るごとくである。じつに彼らは、抑えても抑えても抑えきれぬ自己その者の圧迫に堪えかねて、彼らの入れられている箱の最も板の薄い処、もしくは空隙に向ってまったく盲目的に突進している。今日の小説や詩や歌のほとんどすべ・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  4. ・・・いわゆる文壇餓殍ありで、惨憺極る有様であったが、この時に当って春陽堂は鉄道小説、一名探偵小説を出して、一面飢えたる文士を救い、一面渇ける読者を医した。探偵小説は百頁から百五十頁一冊の単行本で、原稿料は十円に十五円、僕達はまだ容易にその恩典に・・・<泉鏡花「おばけずきのいわれ少々と処女作」青空文庫>
  5. ・・・S・S・Sとは如何なる人だろう、と、未知の署名者の謎がいよいよ読者の好奇心を惹起した。暫らくしてS・S・Sというは一人の名でなくて、赤門の若い才人の盟社たる新声社の羅馬字綴りの冠字で、軍医森林太郎が頭目であると知られた。 鴎外は早熟であ・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  6. ・・・ 事、キリスト教と学生とにかんすること多し、しかれどもまた多少一般の人生問題を論究せざるにあらず、これけだし余の親友京都便利堂主人がしいてこれを発刊せしゆえなるべし、読者の寛容を待つ。  明治三十年六月二十日東京青山において・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  7. ・・・ 併し古い例であるが、故独歩の作品中のある物の如きは、読んでいると、如何にも作者自身が自然に対して思った孤独と云った感じが、一種云い難い力を以て読者の胸に迫るのを感ずる。独歩その人が悠々たる自然に対して独り感じたんだなと思うその姿がまざ・・・<小川未明「動く絵と新しき夢幻」青空文庫>
  8. ・・・は大阪弁の美しさを文学に再現したという点では、比類なきものであるが、しかし、この小説を読んだある全くズブの素人の読者が「あの大阪弁はあら神戸言葉や」と言った。「細雪」は大阪と神戸の中間、つまり阪神間の有閑家庭を描いたものであって、それだけに・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  9. ・・・ 読者は幼時こんな悪戯をしたことはないか。それは人びとの喧噪のなかに囲まれているとき、両方の耳に指で栓をしてそれを開けたり閉じたりするのである。するとグワウッ――グワウッ――という喧噪の断続とともに人びとの顔がみな無意味に見えてゆく。人・・・<梶井基次郎「器楽的幻覚」青空文庫>
  10. ・・・僕は世間の読者のつもりで聴いているから。失敬、横になって聴くよ。』 秋山は煙草をくわえて横になった。右の手で頭を支えて大津の顔を見ながら目元に微笑をたたえている。『親とか子とかまたは朋友知己そのほか自分の世話になった教師先輩のごとき・・・<国木田独歩「忘れえぬ人々」青空文庫>
  11. ・・・まず問いを同じくする書物こそ読者にとって良書なのである。かような良書の中で、自分の問いに、深く、強く、また行きわたって精細にこたえてくれる書物があるならば、それは愛読書となり、指導書となるであろう。かような愛読書ないし指導書は一生涯中数える・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  12. ・・・してもお染・久松を描きましても、それをかなり隔たった時にして書きまして、すべてに、これは過ぎた昔の事であるという過去と名のついた薄い白いレースか、薄青い紗のきれのようなものを被けて置いて、それを通して読者に種々なる相を示して居るのでございま・・・<幸田露伴「馬琴の小説とその当時の実社会」青空文庫>
  13. ・・・先生曰く、事を紀して読者をして見るが如くならしむるは至難の業である。若し能く記事の文に長ずれば往くとして可ならざるなしであると。蓋し岡松先生の教に従ったのである。今先生の記事文の一節を掲げよう。 一日ルソー歩してワンセンヌに赴く。偶・・・<幸徳秋水「文士としての兆民先生」青空文庫>
  14. ・・・ 透谷君がよく引っ越して歩いた事は、已に私は話した事があるから、知っている読者もあるであろうと思うが、一時高輪の東禅寺の境内を借りて住んでいた事があって、彼処で娘のふさ子さんが生れた。彼処に一人食客がいた事は、戸川君も一度書いた事がある・・・<島崎藤村「北村透谷の短き一生」青空文庫>
  15. ・・・ 次兄は、この創刊号には、何も発表なさらなかったようですが、この兄は、谷崎潤一郎の初期からの愛読者でありました。それから、また、吉井勇の人柄を、とても好いていました。次兄は、酒にも強く、親分気質の豪快な心を持っていて、けれども、決して酒・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  16. ・・・該博な批評家の評註は実際文化史思想史の一片として学問的の価値があるが、そうでない場合には批評される作家も、読者も、従って批評者も結局迷惑する場合が多いように思われる。そういう批評家のために一人の作家が色々互いに矛盾したイズムの代表者となって・・・<寺田寅彦「浅草紙」青空文庫>
  17.    一 私は今年四十二才になる。ちょうどこの雑誌の読者諸君からみれば、お父さんぐらいの年頃であるが、今から指折り数えると三十年も以前、いまだに忘れることの出来ないなつかしい友達があった。この話はつくりごとでないから・・・<徳永直「こんにゃく売り」青空文庫>
  18. ・・・わたくしはもし当時の遊記や日誌を失わずに持っていたならば、読者の倦むをも顧ずこれを採録せずにはいなかったであろう。 わたくしは遊廓をめぐる附近の町の光景を説いて、今余すところは南側の浅草の方面ばかりとなった。吉原から浅草に至る通路の重な・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  19. ・・・大いに世の佶屈難句なる者と科を異にし、読者をして覚えず快を称さしむ。君齢わずかに二十四、五。しかるに学殖の富衍なる、老師宿儒もいまだ及ぶに易からざるところのものあり。まことに畏敬すべきなり。およそ人の文辞に序する者、心誠これを善め、また必ず・・・<中江兆民「将来の日本」青空文庫>
  20. ・・・如何に人間の弱点を書いたものでも、その弱点の全体を読む内に何処にかこれに対する悪感とか、あるいは別に倫理的の要求とかが読者の心に萌え出づるような文学でなければならぬ。これが人心の自然の要求で、芸術もまたこの範囲にある。今の一部の小説が人に嫌・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  21. ・・・分析とは、物が方法的に見出され、如何に果が因に因るかを見る方法である。読者はそれに従って、注意深く、含まれたる凡てに目を注ぐならば、あたかも自分が見出した如く完全に証明せられ、理解せられる方法である。綜合というのは、これに反し定義、要請、公・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  22. ・・・同じやうに我等の書物に於ける装幀――それは内容の思想を感覚上の趣味によつて象徴し、色や、影や、気分や、紙質やの趣き深き暗示により、彼の敏感の読者にまで直接「思想の情感」を直覚させるであらうところの装幀――に関して、多少の行き届いた良心と智慧・・・<萩原朔太郎「装幀の意義」青空文庫>
  23. ・・・時は蒸し暑くて、埃っぽい七月下旬の夕方、そうだ一九一二年頃だったと覚えている。読者よ! 予審調書じゃないんだから、余り突っ込まないで下さい。 そのムンムンする蒸し暑い、プラタナスの散歩道を、私は歩いていた。何しろ横浜のメリケン波戸場の事・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  24. ・・・ けだし意味深遠なる著書は読者の縁もまた遠くして、発兌の売買上に損益相償うを得ず、これを流行近浅の雑書に比すれば、著作の心労は幾倍にして、所得の利益は正しくその割合に少なし。大著述の世に出でざるも偶然に非ざるなり。いずれも皆、学問上には・・・<福沢諭吉「学問の独立」青空文庫>
  25. ・・・のみならず、読者に対してはどうかと云うに、これまた相済まぬ訳である……所謂羊頭を掲げて狗肉を売るに類する所業、厳しくいえば詐欺である。 之は甚い進退維谷だ。実際的と理想的との衝突だ。で、そのジレンマを頭で解く事は出来ぬが、併し一方生活上・・・<二葉亭四迷「予が半生の懺悔」青空文庫>
  26. ・・・因って翁の小伝を掲げて読者の瀏覧に供せんとす。歌と伝と相照し見ば曙覧翁眼前にあらん。竹の里人付記〔『日本』明治三十二年四月二十三日〕<正岡子規「曙覧の歌」青空文庫>
  27. ・・・三文文士がこの字で幼稚な読者をごまかし、説教壇からこの字を叫んで戦争を煽動し、最も軽薄な愛人たちが、彼等のさまざまなモメントに、愛を囁いて、一人一人男や女をだましています。 愛という字は、こんなきたならしい扱いをうけていていいでしょうか・・・<宮本百合子「愛」青空文庫>
  28. ・・・その時新聞社の一記者は我文に書後のようなものを添えて読者に紹介せられた。その語中にこの森というものは鴎外漁史だとことわってあった。予は当時これを読んで不思議な感を作した。この鴎外漁史と云う称は、予の久しく自ら署したことのないところのものであ・・・<森鴎外「鴎外漁史とは誰ぞ」青空文庫>
  29. ・・・そうでしょう、読者諸君。 その内に日は名残りなくほとんど暮れかかッて来て雲の色も薄暗く、野末もだんだんと霞んでしまうころ、変な雲が富士の裾へ腰を掛けて来た。原の広さ、天の大きさ、風の強さ、草の高さ、いずれも恐ろしいほどに苛めしくて、人家・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  30. ・・・それに伴なって老夫婦は徐々に歓喜の絶頂に導かれて行くのであるが、それはまた読者にとっても歓喜の絶頂となるのである。 三島の明神とはこの苦難を味わった長者のことである。長者の妻もまた讃岐の国の一の宮として祀られている。我々はここにも苦しむ・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>