とく‐しゅ【特殊】例文一覧 30件

  1. ・・・なんだかこう、神聖なる刑罰其物のような、ある特殊の物、強大なる物、儼乎として動かざる物が、実際に我身の内に宿ってでもいるような心持がする。無論ある程度まで自分を英雄だと感じているのである。奥さんのような、かよわい女のためには、こんな態度の人・・・<著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」青空文庫>
  2. ・・・     二 むろん思想上の事は、かならずしも特殊の接触、特殊の機会によってのみ発生するものではない。我々青年は誰しもそのある時期において徴兵検査のために非常な危惧を感じている。またすべての青年の権利たる教育がその一部分――・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  3. ・・・最も手取早くいえば私は詩人という特殊なる人間の存在を否定する。詩を書く人を他の人が詩人と呼ぶのは差支ないが、その当人が自分は詩人であると思ってはいけない、いけないといっては妥当を欠くかもしれないが、そう思うことによってその人の書く詩は堕落す・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  4. ・・・ これは、私にとって、特殊的な場合でありますが、長男は、来年小学校を出るのですが、図画、唱歌、手工、こうしたものは自からも好み、天分も、その方にはあるのですが、何にしても、数学、地理、歴史というような、与えられたる事実を記憶したりする学・・・<小川未明「男の子を見るたびに「戦争」について考えます」青空文庫>
  5. ・・・其処には只だ一つ宗教というものがあって、其所へ逃げて行く事は出来るけれども、又一面より見れば此の宗教という者も、一種の禁欲主義に外ならないではないか、人間的な生活――此の煩わしい現実の生活から離れて、特殊な欲望を禁じて強いて自らを其の上に置・・・<小川未明「絶望より生ずる文芸」青空文庫>
  6. ・・・不断の感激を心に持するということは、其の人が特殊な理想主義者でなければならない。人間性の為めの勇敢な戦士であらねばならぬ。現実が極めて安意な無目的の状態に見えるのも、或いは希望の光りに輝いて見えるのも畢竟、主観的の問題である。其の人を離れて・・・<小川未明「囚われたる現文壇」青空文庫>
  7. ・・・それはまあ一般に言えば人の秘密を盗み見るという魅力なんですが、僕のはもう一つ進んで人のベッドシーンが見たい、結局はそういったことに帰着するんじゃないかと思われるような特殊な執着があるらしいんです。いや、そんなものをほんとうに見たことなんぞは・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  8. ・・・ 喬はその話を聞いたとき、女自身に病的な嗜好があるのなればとにかくだがと思い、畢竟廓での生存競争が、醜いその女にそのような特殊なことをさせるのだと、考えは暗いそこへ落ちた。 その女はおしのように口をきかぬとS―は言った。もっとも話を・・・<梶井基次郎「ある心の風景」青空文庫>
  9. ・・・じつに武蔵野にかかる特殊の路のあるのはこのゆえである。 されば君もし、一の小径を往き、たちまち三条に分かるる処に出たなら困るに及ばない、君の杖を立ててその倒れたほうに往きたまえ。あるいはその路が君を小さな林に導く。林の中ごろに到ってまた・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  10. ・・・ただ文芸には文芸の約束があり、倫理学にはその特殊の約束があるのみである。カントの道徳哲学を読んで人間理性の自律の崇高感に打たれないものはないであろう。 倫理学は人間行為の指導原理と法則とを与えようとするのみならず、また学者の個性をも表現・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  11. ・・・ここには同じ宗教的日本主義者として今日彼に共鳴するところの多い私が、私の目をもって見た日蓮の本質的性格と、特殊的相貌の把握とを、今の日本に生きつつある若き世代の青年たちに、活ける示唆と、役立つべき解釈とによって伝えたいと思うのである。・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  12. ・・・女優や、音楽家や、画家、小説家のような芸術的天分ある婦人や、科学者、女医等の科学的才能ある婦人、また社会批評家、婦人運動実行家等の社会的特殊才能ある婦人はいうまでもなく、教員、記者、技術家、工芸家、飛行家、タイピストの知能的職業方面への婦人・・・<倉田百三「婦人と職業」青空文庫>
  13.  農民文学に対する、プロレタリア文学運動の陣営内における関心は、最近、次第にたかまってきている。日本プロレタリア作家同盟では、農民文学に対する特殊な研究会が持たれた。ハリコフでの国際革命作家拡大プレナムの決議は日本のプロレタ・・・<黒島伝治「農民文学の問題」青空文庫>
  14. ・・・で、プロレタリアートは、現在の戦争に対しても、それが、吾々を解放へ導くものであるか、或は、吾々をなお圧迫するものであるか、その歴史的特殊性を分析することが必要である。 フランス革命は、人類の歴史に新しい時代を開いた。それからパリ・コンミ・・・<黒島伝治「反戦文学論」青空文庫>
  15. ・・・愛するとは、もっと別な、母の気持も含まれた、血のつながりを感じさせるような、特殊の感情なのではなかろうか。私は、あの人を愛していない。科学者としての私の道を、はじめからひとりで歩いていたつもりなのに、どうしてこう突然に、失敬な、いまわしい決・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  16. ・・・あんな無智な百姓女ふぜいに、そよとでも特殊な愛を感じたとあれば、それは、なんという失態。取りかえしの出来ぬ大醜聞。私は、ひとの恥辱となるような感情を嗅ぎわけるのが、生れつき巧みな男であります。自分でもそれを下品な嗅覚だと思い、いやであります・・・<太宰治「駈込み訴え」青空文庫>
  17. ・・・楽屋落の処に、特殊の興味のあるような話で、それをまた面白く可笑しく話して聞せる。 しかしポルジイにはそれが面白くなくなって来た。折角の話を半分しか聞かないことがある。自分の行きたくて行かれない処の話を、人伝に聞いては満足が出来なくたった・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  18. ・・・従って中等学校では生徒がある特殊な専門に入るだけの素養が出来次第その学科に対するだけの免状をやる事にすればいい。前に中学卒業試験全廃を唱えたのは、つまりこうして高等教育の関門を打破する意味と思われる。尤も彼も全然あらゆる能力験定をやめるとい・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  19. ・・・そのたびに今もいる鴨羽の雌は人間で言わば仲を取りなし顔とでもいったような様子でそば近く寄って行って、いつもとは少しちがった特殊な低い鳴き声を発していたそうであったが、そのうちにある日突然その暴君の雄鳥の姿が池では見られなくなったそうである。・・・<寺田寅彦「あひると猿」青空文庫>
  20. ・・・の受くる安心の度は微弱なもので、競争その他からいらいらしなければならない心配を勘定に入れると、吾人の幸福は野蛮時代とそう変りはなさそうである事は前御話しした通りである上に、今言った現代日本が置かれたる特殊の状況に因って吾々の開化が機械的に変・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  21. ・・・けれども先生の性質が如何にも淡泊で丁寧で、立派な英国風の紳士と極端なボヘミアニズムを合併したような特殊の人格を具えているのに敬服して教授上の苦情をいうものは一人もなかった。 先生の白襯衣を着た所は滅多に見る事が出来なかった。大抵は鼠色の・・・<夏目漱石「博士問題とマードック先生と余」青空文庫>
  22. ・・・各国家民族が自己に即しながら自己を越えて一つの世界的世界を構成すると云うことは、各自自己を越えて、それぞれの地域伝統に従って、先ず一つの特殊的世界を構成することでなければならない。而して斯く歴史的地盤から構成せられた特殊的世界が結合して、全・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  23. ・・・ 西洋の詩人や文学者に、あれほど広く大きな影響をあたへたニイチェが、日本ではただ一人、それも死前の僅かな時期に於ける一小説家だけに影響をあたへたといふことは、まことに特殊な不思議の現象と言はねばならない。そのくせニイチェの名前だけは、日・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  24. ・・・なぜなら学者の説によれば、方角を知覚する特殊の機能は、耳の中にある三半規管の作用だと言うことだから。 余事はとにかく、私は道に迷って困惑しながら、当推量で見当をつけ、家の方へ帰ろうとして道を急いだ。そして樹木の多い郊外の屋敷町を、幾度か・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  25. ・・・それに黴の臭いの外に、胸の悪くなる特殊の臭気が、間歇的に鼻を衝いた。その臭気には靄のように影があるように思われた。 畳にしたら百枚も敷けるだろう室は、五燭らしいランプの光では、監房の中よりも暗かった。私は入口に佇んでいたが、やがて眼が闇・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  26. ・・・そして、この現象は、本年のはじめ頃から日本の文学者の一部の間に特殊な傾向をもって強調されていた作家の社会性の拡大への要求、大人の文学への要求、国民の文学と称せられるものへの要求と根をつらねた文学的性格を具えている点においても、文学上相当の意・・・<宮本百合子「明日の言葉」青空文庫>
  27. ・・・主権在民という憲法にこういう矛盾が含まれていることは日本の歴史の特殊性である。ちょうど人間が胎児であったとき、その成長の過程で、ごく初期の胎生細胞はだんだん消滅して、すべて新しい細胞となって健康な赤ん坊として生れてくる。けれどももし何かの自・・・<宮本百合子「明日をつくる力」青空文庫>
  28. ・・・このような話の真実性は、感覚の特殊に鋭敏な高田としても確証の仕様もない、ただの噂の程度を正直に梶に伝えているだけであることは分っていた。しかし、戦局は全面的に日本の敗色に傾いている空襲直前の、新緑のころである。噂にしても、誰も明るい噂に餓え・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  29. ・・・天才は勉強だ、彼らの才能はさほど特殊なものではない、才能少なくして偉大な人間になった人はあらゆる方面にある、彼らはただごまかしをしない、堅実な、辛抱強い Handwerker-Ernst があったのだ。――こういう言葉が私に力をつけてくれま・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>
  30. ・・・ある程度の成功を見せているのは、右のごとき事情にもとづくとも考えられる。 このことは歴史画のみならず、一般に複雑な情緒や事件を現わす画についても言える。ある特殊な情緒に動いている人間の顔などは、モデルに頼ることができぬ。実生活のあるきわ・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>