とく‐せい【特性】例文一覧 30件

  1. ・・・彼は僕よりも三割がた雄の特性を具えていた。ある粉雪の烈しい夜、僕等はカッフェ・パウリスタの隅のテエブルに坐っていた。その頃のカッフェ・パウリスタは中央にグラノフォンが一台あり、白銅を一つ入れさえすれば音楽の聞かれる設備になっていた。その夜も・・・<芥川竜之介「彼 第二」青空文庫>
  2. ・・・机上に置いて玩味し、黙読し考うるのは、むしろ書物そのものが持つ特性でありましょう。私などどうしても、書物を読んで、それから得た知識でなければ、真に身にならない気がします。一つは雑誌であると、百貨店へ行ったように他へ気が散るからであります。・・・<小川未明「書を愛して書を持たず」青空文庫>
  3. ・・・ たとえば、同じ海にしても、北方の海と、南方の海とは、色彩、感覚、特性等から、その人々に与えつゝある影響に至るまで異るのであります。従って、その地方の子供達が海洋に対する空想、憧憬は、決して同じいものではなかったばかりでなく、これに・・・<小川未明「新童話論」青空文庫>
  4. ・・・改革の手段に暴力を用いる用いないの点よりも、この人間の特性の貶斥は最も許し難き冒涜である。人間の道徳意識そのものはマルクスによって泥を塗られただけで少しも高められず、退化するのみである。『キリスト教の本質』を書いたフォイエルバッハの人間の共・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  5. ・・・るに、舜は下流社會の人、孝によりて遂に帝位を讓られしが、その事蹟たるや、制度、政治、巡狩、祭祀等、苟も人君が治民に關して成すべき一切の事業は殆どすべて舜の事蹟に附加せられ、且人道中最大なる孝道は、舜の特性として傳へらるゝを見る。即ち知る、舜・・・<白鳥庫吉「『尚書』の高等批評」青空文庫>
  6. ・・・この少女も、もはや無意識にその特性を体得していやがる、といまいましく思っているうちに、少女は傍のテエブルから、もの憂げに牛乳の瓶を取りあげ、瓶のままで静かに飲みほした。はっと気附いた。病身。あれだ、あの素晴らしいからだの病後の少女だ。ああ、・・・<太宰治「美少女」青空文庫>
  7. ・・・そのモンタージュは純然たる夢の編成法であり、しかもかなりによく夢の特性をつかんでいる。たとえば月を断ち切る雲が、女の目を切る剃刀を呼び出したり、男の手のひらの傷口から出て来る蟻の群れが、女の腋毛にオーバーラップしたりする。そういう非現実的な・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  8. ・・・おそらくあらゆる猫族の特性を最も顕著に備えた、言わば最も猫らしい猫の中の雌猫らしい雌猫であるかもしれない。実際よくねずみを捕って来た。家の中にはとうからねずみの影は絶えているらしいのに、どこからか大小いろいろのねずみをくわえて来た。しかし必・・・<寺田寅彦「子猫」青空文庫>
  9. ・・・のエネルギー分布の統計的形式によって、いろいろな不規律放射像の不規則さの様式特性が定まると考えられる、言わば規則正しい像は単線スペクトルに当たり、不規則なのは一種の連続スペクトルあるいは帯状スペクトルに当たるのである。こう考えると、形が不規・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  10. ・・・ 気候の変化が人間の生理にも若干の影響があるかもしれないとすると、それが胎児の特異性に多少の効果を印銘することが全然ないとも限らないし、そうなると生まれ年の干支とその人の特性とが、少なくもある期間については多少の相関を示す場合がないとも・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  11. ・・・人の話によるとなかなかよく日本人の特性をうがっていて、むしろ日本人の美点を表現しているそうですが、タケラモに恐れてまだ見ません。     ベルリンから 今度の旅行中は天気の悪い日が多くて、ことにスイスでは雨や霧のためにア・・・<寺田寅彦「先生への通信」青空文庫>
  12. ・・・なんだかドイツ人の群集の中で英国人のある特性そのものが嘲笑の目的物になっているような気がした。そしてその特性は自分もあまり好かないものであるのにかかわらず、この時はなんだか聴衆の悪じゃれを不愉快に感じた。それでもやっぱりおかしい事はおかしか・・・<寺田寅彦「旅日記から(明治四十二年)」青空文庫>
  13. ・・・九州人と東北人と比べると各個人の個性を超越するとしてもその上にそれぞれの地方的特性の支配が歴然と認められる。それで九州人の自然観や東北人の自然観といったようなものもそれぞれ立派に存立しうるわけである。しかし、ここでは、それらの地方的特性を総・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  14. ・・・従順な特性は消えてしまって、野獣の本性があまりに明白に表われるのである。 蚊帳自身かあるいは蚊帳越しに見える人影が、猫には何か恐ろしいものに見えるのかもしれない。あるいは蚊帳の中の青ずんだ光が、森の月光に獲物をもとめて歩いた遠い祖先の本・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  15. ・・・は一つの不思議な特性をもっていた。自分が風呂場へはいる時によくいっしょにくっついて来る。そして自分が裸になるのを見てそこに脱ぎすてた着物の上にあがって前足を交互にあげて足踏みをする、のみならず、その爪で着物を引っかきまたもむような挙動をする・・・<寺田寅彦「備忘録」青空文庫>
  16. ・・・複雑な特性を簡単に纏める学者の手際と脳力とには敬服しながらも一方においてその迂濶を惜まなければならないような事が彼らの下した定義を見るとよくあります。その弊所をごく分りやすく一口に御話すれば生きたものを故と四角四面の棺の中へ入れてことさらに・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  17. ・・・ なお余論として以上二種の文芸の特性についてちょっと比較してみますと、浪漫派は人の気を引立てるような感激性の分子に富んでいるには違ないが、どうも現世現在を飛び離れているの憾みを免かれない。妄りに理想界の出来事を点綴したような傾があるかも・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  18. ・・・それからこの知を割り、情を割り、その作用の特性によってまたいろいろに識別して行きます。この方面は主として心理学者と云うものが専門として担任しているから、これらの人に聞くのが一番わかりやすい。もっとも心理学者のやる事は心の作用を分解して抽象し・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  19. ・・・ 技術的に諷刺的表現の或る自由さを身につけた頃、小熊さんや私の属していた文学の団体は解かれて、その前後の時代的な社会と文学との波瀾の間で小熊さんの諷刺性は、周囲の刺激に対して鋭く反応せずにいられない特性とともに、何処となく諷刺一般におちい・・・<宮本百合子「旭川から」青空文庫>
  20. ・・・これは、日本が近代工業国として持っている歴史的な独特性である。故細井和喜蔵氏によって著わされた「女工哀史」はそういう特性をもった日本の若い無抵抗な労働婦人が、ある時代に経なければならなかった生活記録として、世界的な意味をもつ古典なのである。・・・<宮本百合子「新しい婦人の職場と任務」青空文庫>
  21. ・・・けれども、何年、何の時代に、どういう情勢のもとに起ったことだという意味での具体性のないのが、アレゴリーの中の行為の特性である。 ところで、ごく簡単にしらべて、こういう特徴を見つけたアレゴリーがプロレタリアの文学として、実際どのくらい役に・・・<宮本百合子「新たなプロレタリア文学」青空文庫>
  22. ・・・それらのことから派生して、日本の作家はこれまであまり個々の才能を過大に評価しすぎたし、文学創造の過程にある心的な独自性、ほかの精神活動にないメンタルな特性の主張を、おおざっぱに文学の純粋性だの、文学性だのという概念でかためてしまってきた。そ・・・<宮本百合子「ある回想から」青空文庫>
  23. ・・・の美しさから思いめぐらしても、音楽にある民族的な特性というものを、音楽の外からの解釈や説明でつけ加えても、それが芸術音楽としての内在的な充実感となって来ないということは、しみじみわかる。そしてまた、音そのものの記号の上にだけ民族的特徴をとら・・・<宮本百合子「音楽の民族性と諷刺」青空文庫>
  24. ・・・ 現在では女性の――生活の様式がどうしても単調で変化に乏しいと云う点、自分が女性としての性的生活を完全に営んでいなかった事又は、女性の一人として同性の裡に入っていると、自分達の特性に対して馴れ切って無自覚に成りがちであると一緒に、却って・・・<宮本百合子「概念と心其もの」青空文庫>
  25. ・・・しかし、女の人は、母親になるという特性をもっていますから、その母性は保護されなければなりません。また、働いていた人が年をとって、働けなくなった時に、社会がそれを保護してやらなければなりません。 本当に、働く権利をもつということの内容には・・・<宮本百合子「幸福について」青空文庫>
  26. ・・・一九五〇年度の文学現象のこのような特性は、それ自身として決して孤立した社会現象ではないのである。 そのようなこんにち、一方では、社会的・歴史的な人類としてわれわれが生きている証左たる、理性の覚醒としての文学、を要望する思いが、切実である・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  27. ・・・「知識階級それ自身の特性を自覚し、飽くまでそれ自身の能力の自覚にもとづいて立ち上っているもの」と理論づけられたのである。 舟橋聖一氏の作品「ダイヴィング」芹沢光治良氏「塩壺」等、いずれも能動精神を作品において具体化しようと試みられて、当・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  28. ・・・しかしこの言葉が自分の頭に残って、幾度か反復せられている間に、だんだんそれが木下と離し難いものとなり、木下の特性を示すもののように思われて来た。今度彼の『地下一尺集』を読んで最初に頭に浮かんだのも、実はこの言葉である。「享楽人」を単に「・・・<和辻哲郎「享楽人」青空文庫>
  29. ・・・性慾の衝動に動く浮薄な男を描き、あるいは山国海辺、あるいは大都会小都会の風物情緒を描く時には、それがあらゆる階級の男女や東西南北の諸地方を材料とするにかかわらず、またそれぞれの境遇や土地をおのおのその特性によって描いているにかかわらず、結局・・・<和辻哲郎「「自然」を深めよ」青空文庫>
  30. ・・・それは時にあるいは有閑階級にのみ可能な非実践の実践として、すなわち搾取者の奢侈として特性づけられ得るであろう。あるいはまた怯懦な知識階級の特色としての現実逃避であるとも見られるであろう。しかしこれらの観照は「悠々たる」観の世界を持つものとは・・・<和辻哲郎「『青丘雑記』を読む」青空文庫>