どく‐だん【独断】例文一覧 30件

  1. ・・・あって一向小説家らしくなかった人、政治家を志ざしながら少しも政治家らしくなかった人、実業家を希望しながら企業心に乏しく金の欲望に淡泊な人、謙遜なくせに頗る負け嫌いであった人、ドグマが嫌いなくせに頑固に独断に執着した人、更に最う一つ加えると極・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  2. ・・・子供に飯を食べさせている最中に飛び出して来たという女のあわて方は、彼等の夫婦関係がただごとでない証拠だと、新吉は独断していた。夜更けの時間のせいかも知れない。 しかし、ふと女が素足にはいていた藁草履のみじめさを想いだすと、もう新吉は世間・・・<織田作之助「郷愁」青空文庫>
  3. ・・・ 日蓮のかような自負は、普遍妥当の科学的真理と、普通のモラルとしての謙遜というような視角からのみみれば、独断であり、傲慢であることをまぬがれない。しかし一度視角を転じて、ニイチェ的な暗示と、力調とのある直観的把握と高貴の徳との支配する世・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  4. ・・・ただ野暮ったくもったい振り、何の芸も機智も勇気も無く、図々しく厚かましく、へんにガアガア騒々しいものとばかり独断していたのである。空襲の時にも私は、窓をひらいて首をつき出し、隣家のラジオの、一機はどうして一機はどうしたとかいう報告を聞きとっ・・・<太宰治「家庭の幸福」青空文庫>
  5. ・・・僕をはじめて見た女の子なら、僕が生まれた時からこんなに鼻が赤くて、しかもこの後も永久に赤いのだと独断するにきまっています。」真剣に主張している。 私は、ばかばかしく思ったが、懸命に笑いを怺えて、「じゃ、ミルクホールは、どうでしょう。・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  6. ・・・結婚式の時にはいていたのだから仙台平というものに違い無いと、独断している様子なのである。けれども、私は貧しくて、とても仙台平など用意できない状態だったので、結婚式の時にも、この紬の袴で間に合せて置いたのである。それを家内が、どういうものだか・・・<太宰治「善蔵を思う」青空文庫>
  7. ・・・すべて仏教の焼き直しであると独断していた。 白石のシロオテ訊問は、その日を以ておしまいにした。白石はシロオテの裁断について将軍へ意見を言上した。このたびの異人は万里のそとから来た外国人であるし、また、この者と同時に唐へ赴いたものもあ・・・<太宰治「地球図」青空文庫>
  8. ・・・昔あったから、いまもそれと同じような運命をたどるものがあるというような、いい気な独断はよしてくれ。 いのちがけで事を行うのは罪なりや。そうして、手を抜いてごまかして、安楽な家庭生活を目ざしている仕事をするのは、善なりや。おまえたちは、私・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  9. ・・・しかも、チエホフを読んだことのある青年ならば、父は退職の陸軍二等大尉、母は傲慢な貴族、とうっとりと独断しながら、すこし歩をゆるめるであろう。また、ドストエーフスキイを覗きはじめた学生ならば、おや、ネルリ! と声を出して叫んで、あわてて外套の・・・<太宰治「葉」青空文庫>
  10. ・・・本文は、すべて平仮名のみにて、甚だ読みにくいゆえ、私は独断で、適度の漢字まじりにする。盲人の哀しい匂いを消さぬ程度に。     葛原勾当日記。天保八酉年。○正月一日。同よめる。  たちかゑる。としのはしめは。なにとなく。・・・<太宰治「盲人独笑」青空文庫>
  11. ・・・私がわざわざ妻を連れて来たのは妻も亦テツさんと同じように貧しい育ちの女であるから、テツさんを慰めるにしても、私などよりなにかきっと適切な態度や言葉をもってするにちがいないと独断したからであった。しかし、私はまんまと裏切られたのである。テツさ・・・<太宰治「列車」青空文庫>
  12. ・・・それはとにかく彼がミュンヘンの小学で受けたローマカトリックの教義と家庭におけるユダヤ教の教義との相対的な矛盾――因襲的な独断独断の背馳が彼の幼い心にどのような反応を起させたか、これも本人に聞いてみたい問題である。 この時代の彼の外観に・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  13. ・・・たとえば水晶で作られたようなプランクトンがスクリーンいっぱいに活動しているのを見る時には、われわれの月並みの宇宙観は急に戸惑いをし始め、独断的な身勝手イデオロギーの土台石がぐらつき始めるような気がするであろう。不幸にしてこういう映画の、こと・・・<寺田寅彦「映画の世界像」青空文庫>
  14. ・・・尤も科学者の中には往々そういう大事な根本義を忘れて、自分の既得の知識だけでは決して不可能を証明することの出来ない事柄を自分の浅はかな独断から否定してしまって、あとでとんだ恥をかくという例もあえて稀有ではない。こうした独断的否定はむしろ往々に・・・<寺田寅彦「西鶴と科学」青空文庫>
  15. ・・・留めにしては言いおおせ言い過ぎになってなんの余情もなくなり高圧的命令的独断的な命題になるのであろう。「にて」はこの場合総合の過程を読者に譲ることによって俳諧の要訣を悉しているであろう。 発句は完結することが必要であるが連俳の平句は完結し・・・<寺田寅彦「俳諧の本質的概論」青空文庫>
  16. ・・・ たとえば子音転訛の方則のごときでも、独断的の考えを捨てて、可能なるものの中から甲乙丙……等の作業仮定を設けて、これらにそれぞれ相当するPを算出し、また一方この仮定による実際の比較統計の符合の率を算出し、この両者を比較して、その結果から・・・<寺田寅彦「比較言語学における統計的研究法の可能性について」青空文庫>
  17. ・・・すなわちかくのごとき漠然たる議論を並べた結果、一部の読者には誤解を生じまた一部の学者からは独断の邪説でとして攻撃される虞が甚だ少なくないように思う。ある読者はますますあるいは始めていわゆる精密科学の基礎の案外薄弱な事を考えて、その価値と効果・・・<寺田寅彦「方則について」青空文庫>
  18. ・・・とかくに芝居を芝居、画を画とのみして、それらの芸術的情趣は非常な奢侈贅沢に非ざれば決して日常生活中には味われぬもののように独断している人たちは、容易に首肯しないかも知れないが、便所によって下町風な女姿が一層の嬌艶を添え得る事は、何も豊国や国・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  19. ・・・僕は最初からカッフェーに働いている女をば、その愚昧なことは芸者より甚しいものと独断していたからである。又文学好きだと言われる婦人は、平生文学書類を手にだもしない女に比すれば却て智能に乏しく、其趣味は遥に低いものだと思っていたからである。然し・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  20.         一 カント哲学以来、デカルト哲学は棄てられた。独断的、形而上学的と考えられた。哲学は批評的であり、認識論的でなければならないと考えられている。真の実在とは如何なるものかを究明して、そこからすべての問題・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  21. ・・・是れは自分の意なれども父上には語る可らず、何々は自分一人の独断なり母上には内証などの談は、毎度世間に聞く所なれども、斯くては事柄の善悪に拘わらず、既に骨肉の間に計略を運らすことにして、子女養育の道に非ざるなり。一 女子既に成長して家庭又・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  22.  この頃いったいに女のひとの身なりが地味になって来たということは、往来を歩いてみてもわかる。 ひところは本当にひどくて、女の独断がそのまま色彩のとりあわせや帽子の形やにあらわれているようで、そういう人たちがいわば無邪気で・・・<宮本百合子「新しい美をつくる心」青空文庫>
  23. ・・・その客観のうすら明りのなかに、何とたくさんの激情の浪費が彼女の周囲に渦巻き、矛盾や独断がてんでんばらばらにそれみずからを主張しながら、伸子の生活にぶつかり、またそのなかから湧きだして来ていることだろう。「伸子」で終った一巡の季節は、「二・・・<宮本百合子「あとがき(『二つの庭』)」青空文庫>
  24. ・・・ 日本精神という四字が過去十数年間、その独断と軍国主義的な狂言で、日本の精神の自然にのびてゆく道をさえぎっていた罪過ははかりしれないほどふかい。作家横光利一の文学の破滅と人間悲劇の軸は、彼の理性、感覚が戦時的な「日本的なもの」にひきずら・・・<宮本百合子「偽りのない文化を」青空文庫>
  25. ・・・たいため、チンとした花嫁姿が一時も早く見たかったため殆ど独断的に定めてしまったと云ってもいいほどである。 気心の知れない赤の他人にやるよりはと云い出したお節の話が、お節自身でさえ予気(して居なかったほど都合よく運んで、別にあらたまった片・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  26. ・・・このような基本点での独断を強引に押しつけようとする非難に屈さないのは、むしろ当然ではあるまいか。誠意ある批評とか完成のための忠言とかいうものは、こういう本質のずれた議論の上になりたつものではない。 革命的小市民というのは、社会の現状に一・・・<宮本百合子「河上氏に答える」青空文庫>
  27. ・・・―― 彼の作品のあるものには、現代社会の機構や社会の生産にたずさわる労働大衆の現実について、当時としてもおどろかれる無智と独断が示されている。ローレンスは、自分がその底から生れ出て来た大衆を信頼しないし、このんでいなかった。何をするにも・・・<宮本百合子「傷だらけの足」青空文庫>
  28. ・・・神川平助の性格でもあるのだが、年齢が語る幾歳月の生活感情の習慣が、代官神川の農民救済の善意を独断なものにして、そこからの悲劇がかもされてゆく。その父の仕事を支持しながら、そのやりかたには、人間的に反撥する荘太郎を中心においたとしたら、この一・・・<宮本百合子「作品の主人公と心理の翳」青空文庫>
  29. ・・・の講話というのをふと見ていると、向上ということには進歩と退歩の二つがあって、進歩することだけでは向上にはならず、退歩を半面でしていなければ真の向上とはいいがたいという所に接し、私は自分の考えのあながち独断でなかったことに喜びを感じたことがあ・・・<横光利一「作家の生活」青空文庫>
  30. 独断 芸術的効果の感得と云うものは、われわれがより個性を尊重するとき明瞭に独断的なものである。従って個性を異にするわれわれの感覚的享受もまた、各個の感性的直感の相違によりてなお一段と独断的なものである。それ故に文学上に於ける感覚・・・<横光利一「新感覚論」青空文庫>