どく‐ぶつ【毒物】例文一覧 4件

  1. ・・・家人を食った蚊の腹は、あかく透きとおり、私を食った蚊の腹は、くろく澱んで、白紙にこぼれて、かの毒物のにおいがする。「蚊も、まやくの血をのんでは、ふらふら。」というユウモラスな意味をふくんだ、あかい血、くろい血。おのれの、はじめの短篇集、「晩・・・<太宰治「創生記」青空文庫>
  2. ・・・棘のある毒物の感じである。紅蓮、というのは当っていない。もっと凝固して、濃い感じである。いかにも、兇暴の相である。とぐろを巻いて、しかも精悍な、ああ、それは蝮蛇そっくりである。私の眉にさえ、刺されるような熱さを覚えた。火事は、異様の臭気がす・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  3. ・・・これを譬えば、毒物を以て直にこれを口に喰らわしめずして、その毒を瓦斯に製し空気に混じて吸入せしむるが如し。これを無情といわざるを得んや。鬼蛇の名称差支なかるべし。 また一種の主人あり。これを公務家と名づく。甚だしき遊蕩の沙汰は聞かれざれ・・・<福沢諭吉「教育の事」青空文庫>
  4. ・・・青酸加里を毒物と知っている人民も、政府予算の八五%は働く人民の懐からまき上げるという、間接殺人は頂いて、更に二百万人の馘首をしようとしている保守政府を頂いてもよさそうな輿論を示すものさえある。中毒する大豆粉にも、政府の命令ならば感謝する日本・・・<宮本百合子「目をあいて見る」青空文庫>