とく‐ゆう〔‐イウ〕【特有】例文一覧 30件

  1. ・・・んでいる東京湾、いろいろな旗を翻した蒸汽船、往来を歩いて行く西洋の男女の姿、それから洋館の空に枝をのばしている、広重めいた松の立木――そこには取材と手法とに共通した、一種の和洋折衷が、明治初期の芸術に特有な、美しい調和を示していた。この調和・・・<芥川竜之介「開化の良人」青空文庫>
  2. ・・・そこでその生徒は立ち上って、ロビンソン・クルウソオか何かの一節を、東京の中学生に特有な、気の利いた調子で訳読した。それをまた毛利先生は、時々紫の襟飾へ手をやりながら、誤訳は元より些細な発音の相違まで、一々丁寧に直して行く。発音は妙に気取った・・・<芥川竜之介「毛利先生」青空文庫>
  3. ・・・新鮮な朝の空気と共に、田園に特有な生き生きとした匂いが部屋じゅうにみなぎった。父は捨てどころに困じて口の中に啣んでいた梅干の種を勢いよくグーズベリーの繁みに放りなげた。 監督は矢部の出迎えに出かけて留守だったが、父の膝許には、もうたくさ・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  4. ・・・それに挾まれて、不規則な小亜細亜特有な鋭からぬ鼻。大きな稍々しまりのない口の周囲には、小児の産毛の様な髯が生い茂って居る。下の大きな、顴骨の高い、耳と額との勝れて小さい、譬えて見れば、古道具屋の店頭の様な感じのする、調和の外ずれた面構えであ・・・<有島武郎「かんかん虫」青空文庫>
  5. ・・・そうしてそこには日本人特有のある論理がつねに働いている。 しかも今日我々が父兄に対して注意せねばならぬ点がそこに存するのである。けだしその論理は我々の父兄の手にある間はその国家を保護し、発達さする最重要の武器なるにかかわらず、一度我々青・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  6. ・・・維新の革命で江戸の洗練された文化は田舎侍の跋扈するままに荒され、江戸特有の遊里情調もまた根底から破壊されて殺風景なただの人肉市場となってしまった。蓄妾もまた、勝誇った田舎侍が分捕物の一つとして扱ったから、昔の江戸の武家のお部屋や町家の囲女の・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  7. ・・・緑雨の最後の死亡自家広告は三馬や一九やその他の江戸作者の死生を茶にした辞世と共通する江戸ッ子作者特有のシャレであって、緑雨は死の瞬間までもイイ気持になって江戸の戯作者の浮世三分五厘の人生観を歌っていたのだ。 この緑雨の死亡自家広告と旅順・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  8. ・・・北海沿岸特有の砂丘は海岸近くに喰い止められました、樅は根を地に張りて襲いくる砂塵に対していいました、ここまでは来るを得べししかしここを越ゆべからずと。北海に浜する国にとりては敵国の艦隊よりも恐るべき砂丘は、戦闘艦ならずし・・・<内村鑑三「デンマルク国の話」青空文庫>
  9. ・・・だ草が、自然に刎ね返って、延び上った姿、青い葉の裏に、青い円い体に銀光の斑点の付いている裸虫の止っているのも啼く虫と見えて、ぎょっとしたこと、其の時の小さな心臓の鼓動、かゝる空溝に生えている草叢にすら特有の臭い、其等は、今、こうやって机に向・・・<小川未明「感覚の回生」青空文庫>
  10. ・・・そして、博奕打ちに特有の商人コートに草履ばきという服装の男を見ると、いきなりドンと突き当り、相手が彼の痩せた体をなめて掛ってくると、鼻血が出るまで撲り合った。 ある日、そんな喧嘩のとき胸を突かれて、げッと血を吐いた。新聞社にいたころから・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  11. ・・・ しかし一代は衰弱する一方で、水の引くようにみるみる痩せて行き、癌特有の堪え切れぬ悪臭はふと死のにおいであった。寺田はもはや恥も外聞も忘れて、腫物一切にご利益があると近所の人に聴いた生駒の石切まで一代の腰巻を持って行き、特等の祈祷をして・・・<織田作之助「競馬」青空文庫>
  12. ・・・併し斯うした商売の人間に特有――かのような、陰険な、他人の顔を正面に視れないような変にしょぼ/\した眼附していた。「……で甚だ恐縮な訳ですが、妻も留守のことで、それも三四日中には屹度帰ることになって居るのですから、どうかこの十五日まで御・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  13. ・・・何と言ったらいいか、この手の婦特有な狡猾い顔付で、眼をきょろきょろさせている。眼顔で火鉢を指したり、そらしたり、兄の顔を盗み見たりする。こちらが見てよくわかっているのにと思い、財布の銀貨を袂の中で出し悩みながら、彼はその無躾に腹が立った。・・・<梶井基次郎「城のある町にて」青空文庫>
  14. ・・・三反か四反歩の、島特有の段々畠を耕作している農民もたくさんある。養鶏をしている者、養豚をしている者、鰯網をやっている者もある。複雑多岐でその生活を見ているだけでもなか/\面白い。このなかに身をひそめているのはひそめかたがあると思われるのであ・・・<黒島伝治「田舎から東京を見る」青空文庫>
  15. ・・・ 軍隊特有な新しい言葉を覚えた。からさせ、──云わなくても分っているというような意。まんさす、──二年兵ける、しゃしくに。──かっぱらうこと。つる。──いじめること。太鼓演習、──兵卒を二人向いあって立たせ、お互いに両手・・・<黒島伝治「入営前後」青空文庫>
  16. ・・・或いはちゃんと覚えている癖に、成長した社会人特有の厚顔無恥の、謂わば世馴れた心から、けろりと忘れた振りして、平気で嘘を言い、それを取調べる検事も亦、そこのところを見抜いていながら、その追究を大人気ないものとして放棄し、とにかく話の筋が通って・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  17. ・・・愛げの無い子供だったせいかも知れませぬが、しかしそれにしても、その意地悪さが、ほとんど道理を絶して、何が何やら、話のどこをどう聞けばよいのか、ほとんど了解不可能な性質を帯びていまして、やはりあれは女性特有の乱酔とでも思うより他に仕方が無いよ・・・<太宰治「男女同権」青空文庫>
  18. ・・・ 絶壁の幕のかなたに八月の日光に照らされた千曲川沿岸の平野を見おろした景色には特有な美しさがある。「せみ鳴くや松のこずえに千曲川。」こんな句がひとりでにできた。 帰りに沓掛の駅でおりて星野行きの乗合バスの発車を待っている間に乗り組ん・・・<寺田寅彦「あひると猿」青空文庫>
  19. ・・・ 帰路は夕日を背負って走るので武蔵野特有の雑木林の聚落がその可能な最も美しい色彩で描き出されていた。到る処に穂芒が銀燭のごとく灯ってこの天然の画廊を点綴していた。 東京へ近よるに従って東京の匂いがだんだんに濃厚になるのがはっきり分か・・・<寺田寅彦「異質触媒作用」青空文庫>
  20. ・・・塀や門構えは、関西特有の瀟洒なものばかりであった。「こちらへ行ってみましょう」桂三郎は暗い松原蔭の道へと入っていった。そしてそこにも、まだ木香のするような借家などが、次ぎ次ぎにお茶屋か何かのような意気造りな門に、電燈を掲げていた。 ・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  21. ・・・涼しい滝縞の暖簾を捲きあげた北国特有の陰気な中の間に、著物を著かえているおひろの姿も見えた。「おいでなさい」お絹は二人を迎えたが、母親とはまた違って、もっときゃしゃな体の持主で、感じも瀟洒だったけれど、お客にお上手なんか言えない質である・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  22. ・・・大分禿げ上った頭には帽子を冠らず、下駄はいつも鼻緒のゆるんでいないらしいのを突掛けたのは、江戸ッ子特有の嗜みであろう。仲間の職人より先に一人すたすたと千束町の住家へ帰って行く。その様子合から酒も飲まなかったらしい。 この爺さんには娘が二・・・<永井荷風「草紅葉」青空文庫>
  23. ・・・奈良漬にすると瓜特有の青くさい匂がなくなるからである。 明治十二、三年のころ、虎列拉病が両三度にわたって東京の町のすみずみまで蔓衍したことがあった。路頭に斃れ死するものの少くなかった話を聞いた事がある。しかしわたくしが西瓜や真桑瓜を食う・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  24. ・・・これこそ己を空うして他を包む我国特有の主体的原理である。之によって立つことは、何処までも我国体の精華を世界に発揮することである。今日の世界史的課題の解決が我国体の原理から与えられると云ってよい。英米が之に服従すべきであるのみならず、枢軸国も・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  25. ・・・そして、頭部の方からは酸敗した悪臭を放っていたし、肢部からは、癌腫の持つ特有の悪臭が放散されていた。こんな異様な臭気の中で人間の肺が耐え得るかどうか、と危ぶまれるほどであった。彼女は眼をパッチリと見開いていた。そして、その瞳は私を見ているよ・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  26. ・・・ おもては、船特有の臭気の外に、も一つ「安田」の臭いが混ざって、息詰らせていた。 水夫達は、死体の周囲に黙って立っていた。そして時々、耳から耳へ、何か囁かれた。 コーターマスターは、ボースンの耳へ口をつけた。「死んだのかい」・・・<葉山嘉樹「労働者の居ない船」青空文庫>
  27. ・・・某の事物には各其特有の形状備りあれば、某の意も之が為に隠蔽せらるる所ありて明白に見われがたし。之を譬うるに張三も人なり、李四も亦人なり。人に二なければ差別あるべき筈なし。然るに此二人のものを見て我感ずる所に差別あるは何ぞや。人の意尽く張三に・・・<二葉亭四迷「小説総論」青空文庫>
  28. ・・・無駄な一本の畦幅さえそこには見られない、きっちりとすき間もなく一望果ない田圃になっていて、盆地特有のむしあつさの中に、ぞっくりと稲の葉なみをそろえて立っているのである。通ったのは、丁度田舎の盆の間であったから、田圃には全く人かげがなかった。・・・<宮本百合子「青田は果なし」青空文庫>
  29. ・・・廐の臭いや牛乳の臭いや、枯れ草の臭い、及び汗の臭いが相和して、百姓に特有な半人半畜の臭気を放っている。 ブレオーテの人、アウシュコルンがちょうど今ゴーデルヴィルに到着した。そしてある辻まで来ると、かれは小さな糸くずが地上に落ちているのを・・・<著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩「糸くず」青空文庫>
  30. ・・・またスーダンの国家の特有の組織はイスラムよりもはるか前からあり、ニグロ・アフリカの耕作や教育の技術、市民的な秩序や手工芸などは、中央ヨーロッパにおけるよりも千年も古いのである。「アフリカ的なるもの」は、要約して言えば、合目的的、峻厳、構・・・<和辻哲郎「アフリカの文化」青空文庫>