とこし‐なえ〔‐なへ〕【常しなえ/長しなえ/永久】例文一覧 30件

  1. ・・・が、再び敵打の旅に上るために、楓と当分――あるいは永久に別れなければならない事を思うと、自然求馬の心は勇まなかった。彼はその日彼女を相手に、いつもに似合わず爛酔した。そうして宿へ帰って来ると、すぐに夥しく血を吐いた。 求馬は翌日から枕に・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・この調和はそれ以来、永久に我々の芸術から失われた。いや、我々が生活する東京からも失われた。私が再び頷きながら、この築地居留地の図は、独り銅版画として興味があるばかりでなく、牡丹に唐獅子の絵を描いた相乗の人力車や、硝子取りの芸者の写真が開化を・・・<芥川竜之介「開化の良人」青空文庫>
  3. ・・・「神の御名によりて命ずる。永久に神の清き愛児たるべき処女よ。腰に帯して立て」 その言葉は今でもクララの耳に焼きついて消えなかった。そしてその時からもう世の常の処女ではなくなっていた。彼女はその時の回想に心を上ずらせながら、その時泣い・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  4. ・・・然しながらお前たちをどんなに深く愛したものがこの世にいるか、或はいたかという事実は、永久にお前たちに必要なものだと私は思うのだ。お前たちがこの書き物を読んで、私の思想の未熟で頑固なのを嗤う間にも、私たちの愛はお前たちを暖め、慰め、励まし、人・・・<有島武郎「小さき者へ」青空文庫>
  5. ・・・B 君はそうすっと歌は永久に滅びないと云うのか。A おれは永久という言葉は嫌いだ。B 永久でなくても可い。とにかくまだまだ歌は長生すると思うのか。A 長生はする。昔から人生五十というが、それでも八十位まで生きる人は沢山ある。・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  6. ・・・一村二十余戸八十歳以上の老齢者五人の中の年長者であるということを、せめてもの気休めとして、予の一族は永久に父に別れた。 姉も老いた、兄も老いた、予も四十五ではないか。老なる問題は他人の問題ではない、老は人生の終焉である。何人もまぬかるる・・・<伊藤左千夫「紅黄録」青空文庫>
  7. ・・・の人は国籍もなく一定の住所もなく、きのうは味方、きょうは敵国のため、ただ労働神聖の主義をもって、その科学的な多能多才の応ずるところ、築城、建築、設計、発明、彫刻、絵画など――ことに絵画はかれをして後世永久の名を残さしめた物だが、ほとんどすべ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  8. ・・・ が、風説は雲を攫むように漠然として取留めがなく、真相は終に永久に葬むられてしまったが、歓楽極まって哀傷生ず、この風説が欧化主義に対する危惧と反感とを長じて終に伊井内閣を危うするの蟻穴となった。二相はあたかも福原の栄華に驕る平家の如くに・・・<内田魯庵「四十年前」青空文庫>
  9. ・・・ 柔和なる者は福なり、其人はキリストが再び世に臨り給う時に彼と共に地を嗣ぐことを得べければ也とのことである、地も亦神の有である、是れ今日の如くに永久に神の敵に委ねらるべき者ではない、神は其子を以て人類を審判き給う時に地を不信者の手より奪・・・<内村鑑三「聖書の読方」青空文庫>
  10. ・・・が、そういう者は例外として、真に子供の為めに尽した母に対してはその子供は永久にその愛を忘れる事が出来ない。そして、子供は生長して社会に立つようになっても、母から云い含められた教訓を思えば、如何なる場合にも悪事を為し得ないのは事実である。何時・・・<小川未明「愛に就ての問題」青空文庫>
  11. ・・・の主人には十分もすれば帰ると言って出たが、もしかしたら、永久に帰って来ないかも知れない。 並んで心斎橋筋を北へ歩いて行った。「話て、どんな話や」「…………」 幾子は黙っていた。彼も黙々としてあるいた。もう恋人同志の気分になっ・・・<織田作之助「四月馬鹿」青空文庫>
  12. ・・・日なたのなかの彼らは永久に彼らの怡しみを見棄てない。壜のなかのやつも永久に登っては落ち、登っては落ちている。 やがて日が翳りはじめる。高い椎の樹へ隠れるのである。直射光線が気疎い回折光線にうつろいはじめる。彼らの影も私の脛の影も不思議な・・・<梶井基次郎「冬の蠅」青空文庫>
  13. ・・・そよ吹く風に霧雨舞い込みてわが面を払えば何となく秋の心地せらる、ただ萌え出ずる青葉のみは季節を欺き得ず、げに夏の初め、この年の春はこの長雨にて永久に逝きたり。宮本二郎は言うまでもなく、貴嬢もわれもこの悲しき、あさましき春の永久にゆきてまたか・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  14. ・・・人間の目的は神的意識の再現たる永久的自我を実現せしめることにある。社会を改善する目的も大衆に肉体的快楽、物的満足を与えるためではない。その各々の自我を実現せしめんがためである。 かような人格価値主義に対して幸福主義――自己の快楽の追求か・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  15. ・・・   永久の貧乏 百姓達が、お前達は、いつまでたっても、──孫子の代になっても貧乏するばかりで、決して頭は上らない。と誰れかに云われる。 彼等は、それに対して返事をするすべを知らない。それは事実である。彼等は二十年、或は・・・<黒島伝治「選挙漫談」青空文庫>
  16. ・・・あるいは人間は永久にわたって懺悔の時代以上に超越するを得ないものかも知れぬ。 以上を私が現在において為し得る人生観論の程度であるとすれば、そこに芸術上のいわゆる自然主義と尠なからぬ契機のあることを認める。けれども芸術上の自然主義はもっと・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  17. ・・・今後あのように上質な着物を着る事は私には永久に無いであろう。私はそれを着て、祝賀会に出席した。羽織は、それを着ると芸人じみるので、惜しかったけれど、着用しなかった。会の翌日、私はその品物全部を質屋へ持って行った。そうして、とうとう流してしま・・・<太宰治「帰去来」青空文庫>
  18. ・・・彼の説だというのに拠れば、社会の祝福が単に制度をどうしてみたところでそれで永久的に得られるものではない。ただ銘々の我慾の節制と相互の人間愛によってのみ理想の社会に到達する事が出来るというのであるらしい。 勿論彼は世界平和の渇望者である。・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  19. ・・・――若し彼女がうけいれてくれるならば、竹びしゃく作りになって永久に田舎に止まるだろう。労働者トリオの最後の一人となって朽ちるだろう。――そしてその方が三吉の心を和ませさえした。満足した母親の顔と一緒に、彼女の影像がかぎりなくあたたかに映って・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  20. ・・・日本は永久自分の住む処、日本語は永久自分の感情を自由にいい現してくれるものだと信じて疑わなかった。 自分は今、髯をはやし、洋服を着ている。電気鉄道に乗って、鉄で出来た永代橋を渡るのだ。時代の激変をどうして感ぜずにいられよう。 夕陽は・・・<永井荷風「深川の唄」青空文庫>
  21. ・・・自然主義者はこれを永久の真理の如くにいいなして吾人生活の全面に渉って強いんとしつつある。自然主義者にして今少し手強く、また今少し根気よく猛進したなら、自ら覆るの未来を早めつつある事に気がつくだろう。人生の全局面を蔽う大輪廓を描いて、未来をそ・・・<夏目漱石「イズムの功過」青空文庫>
  22. ・・・翻って考えて見ると、子の死を悲む余も遠からず同じ運命に服従せねばならぬ、悲むものも悲まれるものも同じ青山の土塊と化して、ただ松風虫鳴のあるあり、いずれを先、いずれを後とも、分け難いのが人生の常である。永久なる時の上から考えて見れば、何だか滑・・・<西田幾多郎「我が子の死」青空文庫>
  23. ・・・ それからまた眠りに落ち、公園のベンチの上でそのまま永久に死んでしまった。丁度昔、彼が玄武門で戦争したり、夢の中で賭博をしたりした、憐れな、見すぼらしい日傭人の支那傭兵と同じように、そっくりの様子をして。・・・<萩原朔太郎「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」青空文庫>
  24. ・・・そして永久に休息しようとしている。この哀れな私の同胞に対して、今まで此室に入って来た者共が、どんな残忍なことをしたか、どんな陋劣な恥ずべき行をしたか、それを聞こうとした。そしてそれ等の振舞が呪わるべきであることを語って、私は自分の善良なる性・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  25. ・・・百千年来蛮勇狼藉の遺風に籠絡せられて、僅に外面の平穏を装うと雖も、蛮風断じて永久の道に非ず。我輩は其所謂女子敗徳の由て来る所の原因を明にして、文明男女の注意を促さんと欲する者なり。又初めに五疾の第五は智恵浅きことなりと記して、末文に至り中に・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  26. ・・・わたくしがあなたを思うほど、あなたがわたくしを思って下さるまでは、わたくしの心は永久に落ち着くことは出来まいと云うのでございます。わたくしを愛して下さることがあなたに出来るだろうかと云うのでございます。 最初にあなたに上げた手紙に書き添・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  27. ・・・その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い十字架がたって、それはもう凍った北極の雲で鋳たといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っているのでした。「ハルレヤ、ハルレヤ。」前からもうしろからも声・・・<宮沢賢治「銀河鉄道の夜」青空文庫>
  28. ・・・ロシア文学の古典の中でも、いま日本に流行しているのは、プーシュキンやゴーゴリの作品でなく、その文学の世界が、永久の分裂で血を流しているドストイェフスキーであるという事情には、いまの日本のこの社会的な心理がかかわっている。解決のない人間の間の・・・<宮本百合子「新しい文学の誕生」青空文庫>
  29. ・・・恋人との婚姻もこのまま永久に引き延ばしていたかった。そして、安次を最も残忍な方法で放逐して了ったならば、彼は秋三の嘲笑を一瞬にして見返すことが出来るように思われた。七 安次は股引の紐を結びながら裏口へ出て来ると、水溜の傍の台・・・<横光利一「南北」青空文庫>
  30. ・・・そうしてそれが、たとい時に彼を宗教へ向かわせるにしても、結局宗教芸術に現われた、「永久味」の味到に落ちつかせる。彼においては美の享楽が救いである。彼の求める「土台」は美において、最も深い「美」において、得られるのである。彼からこの「享楽」を・・・<和辻哲郎「享楽人」青空文庫>